【ミャンマー】エーヤワディー川のイルカウォッチングと、地元の人に出会う旅

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<岸にパゴダ(仏塔)が見えるエーヤワディー川 ©Kanmuri Yuki>

どこか遠く知らない国で、その土地の人の生活を間近に眺め、語らい、自然を愛でることができたら...。

そんな願いを抱くことはあっても、到底叶いやしないと諦めるのが常ではないでしょうか。

ところがなんと、実際にそういう経験ができる旅先があるのです!

目次

ミャンマーの『非』観光地を行く船旅

その場所とは、ミャンマー。30年ほど前まではビルマと呼ばれていた国です。ミャンマーを北から南にほぼ縦断するエーヤワディー川流域には、古くからバガン、マンダレー、インワ、ザガインなどの古都が栄えており、昔から重要な水路だったことがうかがえます。

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<エーヤワディー川を行くボートの舳先(へさき) ©Kanmuri Yuki>

私が辿ったのは、このエーヤワディー川の全長2,170kmのうち、北方カチン州のバモー(Bhamo)/マンダレー(Mandalay)間の400km余り。飛行機だと1時間もかからない距離を、船で6日かけてゆったり航行しました。

貸し切りボートのデッキからは、景色が左右に絵巻物のように広がり、ところどころにある集落にはパゴダの尖塔が光ります。まれにすれ違う小舟の漁師や子供らと手を振り合いながら、360度の風景を楽しむ以外は、1日に平均2度下船し、焼き物のアトリエや金鉱山、史跡、地元の村々を訪れました。

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<色鮮やかな布とパゴダが印象的な集落 ©Kanmuri Yuki>

これ以上ないくらいゆったり流れた数日間は、どこを切り取っても私にとってはハイライトですが、いくつかの見どころをご紹介させていただきます。

聖なる島シュエ・ボーチュン

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<1000年の歴史を持つシュエ・ボーチュン ©Kanmuri Yuki

バモーを出たあと、川幅の狭い渓谷を抜けると、ホーリーランド(聖なる島)と呼ばれる大きな中州があります。ここに建つのが、1000年の歴史を持つ寺院、シュエ・ボーチュン(Shwe Baw Kyunn)です。

作家ジョージ・オーウェルが過ごしたカター

カターは、イギリス人作家ジョージ・オーウェルが1920年代に警官として勤務した町です。この時の体験をもとにした『ビルマの日々(Burmese Days)』はオーウェルの処女作となりました。当時オーウェルが暮らした建物や、小説のモデルとなった英国人の住んだ家は、今も残っていて見学できます。

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<ジョージ・オーウェルが住んだ家 ©Kanmuri Yuki>

若者が僧籍に入ることを祝うパレードに遭遇しました。着飾った女性やダンサー、音楽隊、トラックに象などが長々と並んでいましたが、パレードが近づいてくると大人も子どももそわそわしはじめ、しまいには仕事を放ったらかして道に飛び出す様子は、微笑ましいものでした。

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<偶然行き合わせたパレード©Kanmuri Yuki>

ビルマ文明発祥の地タガウン

ビルマ文明が興った土地と言われるタガウンでは、考古学博物館を見学しました。博物館前には遺跡もあり、歴史を感じる場所です。

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<タガウンの市場にて ©Kanmuri Yuki>

漁を手伝うイルカたち

ところで、エーヤワディー川には現在約80頭のイルカが生息しています。

このイルカたちは、漁師の漁を手伝うことで知られており、これは世界的にも珍しい、エーヤワディー川でだけ見られる漁法なのだそうです。

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<くるりと回り尾びれを見せるイルカ©Kanmuri Yuki>

漁師に案内され、小舟で湖のように静かな川面に滑り出しわずか数分後。漁師たちが、イルカの声を真似ながら、櫂(かい/オール)で舟のヘリを叩くと....!驚いたことに、本当にイルカが寄ってくるではありませんか。

伝統の漁法では、イルカが魚を追い込んでおいて、網を投げるタイミングを漁師に知らせてくれるのだそうです。今では、できる人もイルカも減ってしまったそうですが、漁師のいるところにイルカが寄ってくるのを見ると、まだまだ両者の絆はつながっているのだなぁと感じました。

名も知らぬ村々とそこに住む人々

船を下りて歩いたいくつかの場所は、Googleマップにも載っていない小さな村々ですが、そこで目にした景色や、笑みを交わした人々の表情は、いまも心に強く残っています。

例えば、船を降り砂地の坂を上りきると、ピーナッツとトウモロコシの青々とした畑が広がっている村の風景。

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<青々と広がる畑の向こうにはエーヤワディー川が流れている©Kanmuri Yuki>

豆を剥いたり、チリ(唐辛子)を刻んだり、玉ねぎを油で揚げたりと、村中で忙しく立ち働いていた女性たち。

大海に落ちた砂粒を探すほどにあてどもない作業で金を探る鉱夫たち。

土を混ぜ、ろくろを回し、陶器づくりに精を出す職人の器用な手つき。

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<陶器のアトリエにて ©Kanmuri Yuki>

ガイドのアウンさんによれば、ミャンマーは客人を喜ぶ国民性だということ。たしかに、どんな村のどんな場所でも、みな気さくに話しかけてくれましたし、カメラを向ければはにかんだ笑顔で応えてくれました。

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<パレード用におめかしした牛車 ©Kanmuri Yuki>

ひとつひとつ挙げればきりがないですが、あぜ道で立ち話した女性の家に上がらせてもらったり、遠足中の高校生たちにもみくちゃにされるほど歓待を受けたりといった体験に加えて、たまたま行き合わせた結婚式やお葬式(!)でさえ、まぁご飯を食べていきなさいなと声を掛けられたのは新鮮な驚きでした。

托鉢(たくはつ)僧に食物を提供するのが日常である彼らにとって、食べ物を分かち合うことは、息をするのと同じくらい自然なことなのかもしれません。

ゴールデン・ミャンマー・バタフライ社の貸し切りクルーズ

今回利用したのは、ゴールデン・ミャンマー・バタフライ(Golden Myanmar Butterfly)社のエーヤワディー・バタフライ(Ayeyarwaddy Buttefly)ボートです。ダブルのゲストルーム2部屋と、ガイド用のシングル1部屋はそれぞれ、シャワー、トイレ、エアコン完備。

デッキには、テーブルや椅子、デッキチェアが置かれ、ダイニングルーム兼ゲストが寛げるスペースとなっています。

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<6日間お世話になったエーヤワディー・バタフライ©Kanmuri Yuki>

3度の食事はデッキで、ウェスタンスタイルやアジアンスタイルなど、希望の料理を希望の時間に出してもらえます。ウェスタンスタイルは一度も頼まなかったので分かりませんが、ミャンマー料理に限って言えば文句なしの味の良さで、毎日バラエティに富んだ食事を堪能しました。

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<揚げ物とサラダとスープ(左)/その後のメイン(右)。果物のデザートもつきます©Kanmuri Yuki>

船のスタッフは、乗組員も入れて7人。つかず離れず気配り上手が揃っていました。

嬉しかったサービスのひとつに夜の焚火があります。毎晩人気のない浜辺を選んで停泊しては、流木を集め火を焚いてくれたのです。人家一軒見当たらない夜の浜辺で見上げた星空の美しさも格別でした。

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<夕闇せまるエーヤワディー川 ©J.-B. ETIENNE>

ちなみに同社の貸し切りクルーズ船には、私たちの利用したエーヤワディー・バタフライのほか、シャワー、トイレ、エアコン完備の2人部屋10室を備えたチンドウィン・バタフライ(Chindwin Butterfly)と、エアコンなしの2部屋を備えたGMBボートがあります。

パッケージ料金の例を挙げると、バモー/マンダレー間4泊5日の旅は、最大20人乗りのチンドウィン・バタフライで7,500USドル(817,000円)、最大5人乗りのエーヤワディー・バタフライは、3,500USドル(381,000円)、最大4人乗りのGMBボートなら1,750USドル(191,000円)といった具合です。

ほかにも、マンダレー/ミングン/インワ/マンダレーの2泊3日コース、マンダレー/バガンを1泊2日あるいは2泊3日で行くコースなどもあり、相談すれば希望によってアレンジしてもらえます。

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<リーズナブルなGMBボート©Golden Myanmar Butterfly>

イルカ・ウォッチングだけ行きたいという方には、マンダレー発1泊2日のドルフィントリップも可能です。船の種類・サイズによって、600~2,500USドル(65,000~272,000円)で提供されています。

いずれの値段も、航行中のすべての食事、アルコール以外の飲み物を含み、人数に関係なく船一艘レンタルの値段となっています。

貸し切りクルーズの良さは、なんといっても自由がきくこと。気に入った場所に長くとどまることもできれば、もしあまり興味の持てない場所があれば、さっさと切り上げることも可能です。それに加えて、同社の船はアットホームでスタッフ同士も仲が良く、6日ともに過ごした旅の終わりは、離れがたい思いがしました。私のイチオシのクルーズ会社、ぜひチェックしてみてください。

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<操縦席のキャプテンとスタッフたち ©Kanmuri Yuki>

ミャンマーでは、いわゆる観光地ももちろん訪れましたが、いまも瞼(まぶた)を閉じて一番に浮かぶのは、名も知らぬ田舎の村の風景です。

こんな風に人々の日常に溶け込むような旅ができたのは、10年の出家経験を持つガイドのアウンさんの人柄によるところも大きかったと思います。アウンさんをはじめ、この旅に関与してくれたすべての人への感謝は、帰国して一ヶ月半経つ今も消えるどこか、ますます強くなっていくようです。

いろんな意味で稀有な旅となった今回のミャンマー旅行。この記事が、ひとりでも多くの方の興味を引くきっかけとなれば、それ以上嬉しいことはありません。

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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