【滋賀県 信楽】スカーレット(緋色)に染まる山里

滋賀県甲賀市にある信楽(しがらき)の町をご存じでしょうか?多くの方が「信楽焼き」の名で聞いたことがあるでしょう。

では、信楽と聞いてイメージするものは?

たぬきの置物

はい、「たぬきの置物」ですね。信楽焼きの代名詞でもあるたぬきさん。でもたぬき以外で信楽と言っても何も浮かびません。ということで実際現地に行ってきました。

目次

信楽へのアクセス

JR京都駅から琵琶湖線で草津まで行き、草津線に乗り換えて貴生川(きぶかわ)駅まで行きます。所要時間凡そ1時間です(意外に近い!)。時間によって新快速や草津で乗り換え無しに貴生川まで行ける便もあって思ったより交通の便は良かったです。そしてこちらが貴生川駅のホームです。

貴生川駅

とってものどかで落ち着いた駅です(言い換えれば何もない)。早めに貴生川駅についた私は「駅だから喫茶店くらいあるだろうからそこで一休みしよう」と探しました。確かに駅前に1軒だけ喫茶店があるにはありましたが、定休日でもないのに「CLOSE」の看板がかかったままでした。。。

信楽高原鉄道

貴生川からは第三セクターの信楽高原鉄道にのって終点の信楽駅まで行きます。名前からいかにも観光鉄道という印象です。JRではありませんが、信楽高原鉄道のホームはJR内のホームにあります。

信楽駅

写真左の3番線にはJRの車両が入線し、右の信楽高原鉄道のりばに信楽行きの列車が入ってきます。こちらが信楽高原鉄道の車両です。

車両

2両編成で赤と緑。車両によって座席編成が違います。私は緑の車両に乗り込みました。

緑の車両

こちらが緑の車両の座席です。赤の車両は対面式(山の手線などに見られる)タイプでした。その他にも2つの車両タイプがあるようです。

車内

貴生川駅から信楽駅まで所要時間24分、距離は14.7kmです。沿線の見どころは貴生川駅からひとつめの紫香楽宮跡駅(しがらきぐうしえき)までの区間。関西でも屈指といわれる急勾配をぐいぐいと登っていきます。山間部を走るため、緑が真近に見えて観光気分も満点です。自然を満喫できる車内の様子を動画でどうぞ!

>>>「信楽高原鉄道」について詳しくはこちらから(公式サイト)

信楽駅では巨大なたぬきがお出迎え

ほどなく信楽駅に到着です。駅舎を出たところであっと目を引くのがこちら。

巨大なたぬき

高さ5メートルの巨大たぬき。信楽で一番大きなたぬきだそうです。しかし・・・公衆電話、要るかなぁ(笑)

陶器で作られたきっぷ

駅構内の売店には陶器で作られた切符が売られていました。

たぬきタクシー

駅前タクシーも"たぬきタクシー"。やはり信楽はたぬきがトレードマークのようです。

信楽陶芸村

信楽焼きの作品が展示され、お土産が買えたり、お食事もできたりする「陶芸村」に行きました。

信楽陶芸村

こちらでも大勢のたぬきさんがお出迎えしてくれました。

たくさんのたぬき

たぬきの置物といってもいろいろなタイプがあるんですね。

たぬき

ユーモラスなたぬきは横になって寝転んでいる姿がよく似合います。

たぬき

黄色のたぬきも。

黄色のたぬき

考えるたぬき

草の中でなにを考えこんでいるんでしょう?

ふくろう

たぬき以外にもふくろうや。。。

お地蔵さん

お地蔵さん・・・

豚やうさぎ

ぶたさんやうさぎさん、わんちゃんなど動物がたくさんいました。

電柱にとまるたぬき

建物の外の電柱にも、たぬきがまるで鳥のように止まっていました。

さて信楽駅まで戻ってきました。

信楽駅前

こちらが信楽駅から新宮神社まで伸びる信楽の町一番のメインストリートだそうです。これが一番・・・(笑)

川

緑豊かでのどかな川の流れです。

のどかな川

青い大きな焼き物

こちらには青い大きな焼き物が置いてありました。

歴史を感じるたぬき

んん!このたぬき、今まで見てきたたぬきとはちょっと違うような、長い歴史を感じるような・・・なんか昔見たようなたぬきの置物です。実はたぬきも時代によって形が変わってきているそうです。その大きな違いは昔のたぬきは目に穴が開いていたそうです。そして口もくちばしのようにやや尖がっていました。

ユーモラスな昔のたぬき

最近のものと見比べると今の方がユーモラスでかわいいような気がしますね。でも時代や形が変わってもやや上向きで、首をかしげている姿は共通していますね。

たぬきの置物

ところで信楽といえば、なぜ"たぬき"なのか?

信楽でたぬきの置物が作られたのは明治十年頃からだそうです。昭和天皇の信楽行幸の際にたぬきの置物でお出迎えをしたところ、天皇がいたく気に入られ、歌に詠まれたことがきっかけとなって広がっていったそうです。昭和天皇は幼少の頃、趣味でたぬきの収集をされていたそうですね。

たぬきは信楽焼きの代名詞ですが、現在作られる信楽焼きの内、たぬきの置物の割合はたった4%程度しかないそうです。今回信楽の町でもあちこちでたぬきの置物を見ましたが、「たぬきばかりが目立つのは、茶碗やお皿のような陶器は重ねておくことができるが、たぬきは重ねることができないので必然目立ってしまうから」と陶芸村の方が教えてくれました。なるほど~。

新宮神社

信楽駅から伸びるメインストリートの突きあたりに位置するのが「新宮神社」です(駅から徒歩10分)。新宮神社は奈良時代の霊亀元年(715年)に創建され、土地の氏神として広く人々から尊び崇られたそうです。

新宮神社

新宮神社の狛犬はなんと信楽焼きです。威厳をもって光り輝いていました。前足に力が入っていますね~

信楽焼の狛犬

新宮神社

信楽焼きとはどんな焼き物?

信楽は、日本六古窯(信楽・備前・丹波・越前・瀬戸・常滑)の一つで日本最古の産地です。その始まりは約800年前、平安時代後期に常滑焼の技術を取り入れ中世窯として発展したと考えられています。室町時代の末頃までは壺、甕(かめ)、すり鉢などが盛んに作られていましたが、侘茶(わびちゃ)の流行とともに、素朴で温かみのある信楽焼は茶陶(ちゃとう)として愛され珍重されるようになります。

しかし信楽では依然として壺、甕、すり鉢が生産の中心で、特に火鉢は日本の火鉢の90%以上を信楽で作って いたほど栄えました。しかし金属製品の台頭によって火鉢のニーズが激減し、危機を迎えます。その後植木鉢や花瓶などに注力しましたが、今度はプラスチック製品に押され、現在では工業用タイル(建物の壁などに使われる)が信楽焼き生産のの50%以上を占めています。

信楽焼きの最大の特徴は大きな陶器を作ることができる点です。その理由は耐火度が高くコシ、ねばりの強い土が穫れるため、火鉢や壺など大きな焼き物を作ることができるところです。そして江戸時代中期に始まった「登り窯」によって穴窯よりも量産化することに成功しました(穴窯の100倍以上)。信楽焼きの特徴的な色はスカーレット(黄味がかった赤色。和名は緋色・ひいろ)です。

量産化に成功した登り窯

穴窯の100倍の生産力を持つ登り窯を見せてもらいました。こちらは先ほどの陶芸村の本店の方に残っています。

陶芸村

登り窯

こちらが登り窯です。

登り窯

登り窯とは?

山の斜面を利用し、細長い部屋を数室連ねていき、隣室の余熱を利用しながら焚き上げていく窯です。信楽には登り窯が数多く築窯され、残されていますが、保存が難しく、陶芸村の登り窯は完全な形で残された窯の一つです。

登り窯カフェ

ここ陶芸村では登り窯の中でお茶とお菓子を楽しむことができます。こちらが窯の中の様子です。

登り窯カフェ

陶器を焼くお窯の中でお茶するという経験はなかなかありませんよね。

>>>陶芸村 登り窯の詳しい情報はこちら

信楽がどんな町か、信楽焼きがどんな焼き物か、すこしはおわかりいただけたでしょうか?

信楽の町は自然豊かでゆったりと時間が流れていて、のんびり散策するにも良い町でした。信楽高原鉄道の真近に迫ってくる草木の中を猛然と登っていく雄姿にもワクワクしました。信楽焼きはたぬきだけではありませんが、やはり愛くるしい姿で旅人を迎えてくれるたぬきのおもてなしは思わず笑顔になってカメラを向けてしまう、そんな魅力に満ちていました。あなたも一度信楽に訪れてみませんか?

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シンジーノ

3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

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