ギリシャの潮風に揺れる「聖母マリアのスイセン」

美しい海に恵まれたギリシャ。整備されたオシャレなビーチも素敵なのですが、自然が残るビーチもいいものです。綺麗な石や貝殻を拾ったり、海辺の植物を観察するのも楽しみ。海のそばに生える植物では、この時期目立った花をつけるものはほとんどない中、純白のユリかスイセンのようなエレガントな花を見かけることがあります。

今回は、ギリシャの人々に愛されるこの花についてご紹介します。

目次

さまざまな名を持つ花

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ヒガンバナ科パンクラティウム属のPancratium maritimumは、地中海沿岸地域に分布し、砂浜や海辺に見られます。海スイセン、海ユリ、砂スイセン、砂ユリなど、さまざまな名前で呼ばれるのですが、多数ある呼び名のうちのひとつである「聖母のスイセン」(クリナキ・ティス・パナギアス)は、聖母マリアが天に召された記念日である生神女就寝祭(8月15日)の頃に多く咲くこと、またその白く清らかな花が聖母を連想させることによるのでしょう。

見た目に反し、強さを秘める植物です

Pancratium maritimumは、夏から秋の半ば頃にかけて花を咲かせます。それはまるで夏に海から吹きつける強い風メルテミによって砂浜に飛ばされた海水の雫を受け、目を覚ますかのよう。容赦なく照りつける太陽に焼かれた熱い砂から、花茎が次々に顔を出します。

花の甘い香りは風のない夜に特に強く香ります。受粉を促すため、夜に活動する蛾を目に付きやすい白い色と甘い香りで誘惑するのだそうで、月明かりに照らされ咲いている姿はとても幻想的。

花が終わったあとは、炭のようにも見える黒い種をつけます。この種は軽くて風や波で運ばれやすいのですが、種から育って花を咲かせるまでは4~5年もかかります。

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このような、人の手が入ってないビーチでよく見かけます。

古代ギリシャにおけるPancratium maritimum

地中海原産のこの花は古代ギリシャ時代から愛されてきました。クレタ島のクノッソス遺跡やサントリーニ島の遺跡には、ユリのような花が描かれたフレスコ画が見つかっていますが、これはPancratium maritimumだと考えられています。ミノア文明では神聖な花とされ、宗教的な意味合いもあったようです。

ちなみに海のアスフォデルスという呼び名もあるのですが、Pancratium maritimumは冥界のアスポデロスの野に咲く死者の花とされるアスフォデロスとは全く別の植物です。

絶滅危惧種の植物

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かつてはギリシャの北から南まで、沿岸地帯に多く見られたPancratium maritimumですが、残念ながらビーチの開発など人の手が入ったことにより急激に数が減ってしまいました。現在では絶滅危惧種となり、採集したり傷つけることは禁止されています。もしこの花を見かけたら、触れずに美しさを香りを楽しんで下さいね。

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アナグノストゥ直子

アテネ在住。主婦業の傍ら、ライター、リサーチャー、コーディネーターとしても活動する。ブログ「ギリシャのごはん」にてギリシャ料理レシピやおいしい話題を発信中。

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