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エクアドルの偉大な芸術家「グアヤサミン」
エクアドルのどこへ行ってもお土産屋で販売されているこの芸術家絵画。
力強くも圧倒的な痛み、悲しみを訴える作品の数々。絵を通し、過ぎ去った社会的・政治的、そして人道的な悲劇が浮かんできます。
それは「誰の」絵画なのか。「どんな人物」だったのか。
今回はエクアドルの偉大な芸術家「グアヤサミン」を紹介致します。
<グアヤサミン美術館内>
目次
- エクアドルの偉大な芸術家「グアヤサミン」
- グアヤサミンのアトリエ「Fundación de Guayasamin」
- グアヤサミン美術館「Capilla del Hombre」
- 考古学博物館「Museo de Sitio」
- 中南米の魅力ある芸術家
- まとめ
エクアドルの偉大な芸術家「グアヤサミン」
<グアヤサミン自身の肖像画>
オスワルド・グアヤサミン(Oswald Guayasamín)は1919年7月6日キト生まれ(1999年3月10日(満79歳)急性心筋梗塞にて没)。南米を代表する有名な芸術家でいながら、日本語のウィキペディア上では紹介文がない程日本で知られていません。
主に絵画・彫刻・デザイナー、そして壁画運動をしており「エクアドルのピカソ」とも呼ばれています。
父親が先住民族であるキチュア族出身、母親がヨーロッパとの混血という家庭に生まれました。小さな頃から絵を書いては観光客に売り、勉強代に充てるという生活をしてました。
彼の作品には「子供達の死(Los Niños Muertos)」という題の画があります。若い頃、最初に遭遇した不当で暴力的な光景は、キトの道端で沢山の死体が転がるという殺人現場でした。銃で殺された1人が友人であると気づき、残酷なその光景は反逆心と怒りを植えつけ、作品を描くきっかけとなりました。
1940年代に南米ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイで抑圧された原住民の社会を訪れて以来、彼の作品には頻繁に痛みや苦しみ、悲しみなどの感情がテーマとしてあげられるようになりました。
<足を失った子供に出会うまで僕は靴がないといって泣いてたんだ・・・。>
その後、半年間アメリカで貯めたお金を手に、メキシコの壁画運動の巨匠であるオロスコに会い、アシスタントとして認めてもらいました。
グアヤサミンは社会主義思想の持主と同様に、インディヘニスモ(土着・先住民文化擁護・復権運動)の思想家であり、作品にも思想が表れています。
グアヤサミンのアトリエ「Fundación de Guayasamin」
グアヤサミンのアトリエでは、彼が生前に住んでいたお宅・仕事場を伺う事が出来ます。ここは、英語とスペイン語でのガイドがあり、人数が集まり次第説明してくれます。
若い頃、運転手の仕事をしていた父が遺跡の出土品を持ち帰りました。以来、彼は興味を持ち始め、お宅には集められた数々のコレクションが展示されております。
<グアヤサミンの家:ダイニング>
生前は、フィデオ・カストロラウル・カストロ(キューバ)、ガルシア・マルケス(コロンビア)、リゴベルタ・メンチュウ(グアテマラ)、フアン・カルロス国王(スペイン)等、世界中の名高い人々と個人的な交流を持っていました。この居間には数々の有名人が訪れています。見学は居間だけではなく、寝室なども可能です。
<グアヤサミンのアトリエ>
アトリエでは、生前使用していたカンヴァスや筆・絵具がそのままの状態で置かれています。
グアヤサミンの作品は主に、
- 【文化】をテーマにした「ウアカイニャン」
- 【革命や独裁政権など実際の歴史】をテーマにした「怒りの時代」
- 【思い出や母親】をテーマにした「優しさ」
に分ける事が出来ます。
<アトリの地下:展示場所 怒りの時代の作品>
アトリエの地下では、作品を「怒りの時代」「優しさ」に分けて展示しています。
「怒りの時代」の作品は、黒や灰色、赤など色や表現が強いタッチで描かれています。
<アトリエの地下:展示場所 優しさの作品>
グアヤサミン美術館「Capilla del Hombre」
<グアヤサミン美術館(Capilla del Hombre)>
グアヤサミン美術館名「カピージャ・デル・オンブレ」、日本語に訳すと「人々の礼拝堂」。
礼拝堂という名前ですが、宗教的な意味合いを含んでいません。何千年も前から現代までこの地に存在した人々について思いを馳せる場所という思いが込められてつけられました。
美術館の中には壁画も含め、いくつもの大きな作品がゆったりと展示されています。
その中のいくつかを紹介します。
<混血の人(El Mestizaje)>
大陸の何百年もの長い歩みを経て、眠りから目覚めた女性を表しています。顔を2色で描かれており、青色はスペイン人、もう一方の茶色は原住民族(インディヘナ)を表しています。
<アメリカの顔(Rostro de America)>
南北に沿った南米大陸の人々の顔を描くと同時に様々な感情を表現しています。異なる文化や先祖、白人、メスティーソやインディヘナ、悲しみ、痛み、苦しみ、革命、独裁者、そしてシンボルである希望の顔も描かれています。「9つの顔」という作品を仕上げる為のスケッチの数々です。
<ニカラグアへの敬意(Homenaje a Nicaragua)>
ニカラグアの1930-1970年代、独裁体制であったソモサ王朝とニカラグア革命について描かれた作品。ニカラグア人の痛み、悲しみ、苦しみを描いた作品。
<瞑想(Meditacion)>
希望の象徴である母親を題材に、黄色やオレンジで仕上げた「優しさ」を表す作品。しかし、左側の胸は黒色で描かれています。これは「怒りの時代」から「優しさの時代」へ移行する時期を表現しています。
考古学博物館「Museo de Sitio」
美術館の入り口を右手に、階段を下るとオベリスク、トーテムポール、発掘跡を伺う事が出来ます。800~1535年の遺跡が発掘され、居住地・墓地に使われていた事が判明しました。美術館の屋外で、小規模ながら歴史を感じる事が出来ます。
<800~1535年時代の白骨が発見された墓地>
中南米の魅力ある芸術家
中南米の歴史上、多くの国が植民地時代を経て現代に至っています。独立や革命の最中、芸術家達は作品を通し、痛みや苦しみ訴え続けました。
歴史の背景もあり、非常に個性的でパワフルな表現が多い中南米の芸術家。魅力的な芸術家を少しだけ紹介します。
ホセ・クレメンテ・オロスコ(Jose Clemente Orozco)メキシコ人
<イダルゴ/オロスコ作>
※By Paint: José Clemente Orozco,picture´Salvador alc -,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10123244
ディエゴ・リベラ、シケイロスと共に、メキシコの壁画運動を主導した三大巨匠の1人。自身はメキシコ革命に反対でしたが、革命の意義やメキシコ人のアイデンティティーを民衆に伝える為の一環である壁画運動に参加しました。
主に古代メキシコの神話やメキシコの生活に題材をとって壁画を描いていました。
ディエゴ・リベラ(Diego Rivera)メキシコ人、フリーダ・カーロ(Frida Kahlo)メキシコ人
<革命のバラード(中央女性:フリーダ・カーロ)/ディエゴ・リベラ作>
彼女の人生と作品の多くは「痛みと苦悩」そのものを表しています。
幼い頃、ポリオに冒され、18歳の時は大事故に遭い、17か所の骨折とパイプ貫通という大ケガを負います。成人し結婚しますが、相手は壁画家大巨匠のディエゴ・リベラ。
彼の浮気に終始苦しめられます。その後、右足の壊死や肺炎などにかかり47歳で人生の幕を閉じました。
2017年にピクサーから製作された「リメンバー・ミー」。映画では、コンサートの演出家としてフリーダ・カーロが登場します。
フェルナンド・ボテロ(Fernando Botero)コロンビア人
<モナリザ/フェルナンド・ボテロ作>
人物や動物を誇張し、まる丸とふくよかな体現で表現する作風。根本的な感性を直感的な美的思考に求める抽象芸術家。コロンビア社会・風土が作品に影響しています。
日本では、大阪の御堂筋彫刻ストリートで「踊り子」という彼の作品を見る事が出来ます。
まとめ
エクアドルの巨匠グアヤサミン。
素晴らしい作品の数々は、人類の歩んだ道がバックボーンとなっています。彼の作品は、物語を知らずとも十分肌で感じる事が出来ます。
しかし、今回の芸術をきっかけに歴史を知るのも面白いかもしれません。南米を更に魅力的にみせる事になるでしょう。
グアヤサミン博物館&アトリエ(Fundacion de Guayasamin)
- 住所:Mariano Calvache E18-94 y Lorenzo Chávez. Bellavista.Quito - Ecuador.
- 電話番号:2446 455 - 2452 938 - 2465 266
- HP(スペイン語):https://www.capilladelhombre.com/index.php/oswaldo-guayasamin/biografia
- 開園:毎日10:00~17:00(ただし、祝日は除く。HPにて要確認)
- 入場料:大人:$8、障害をお持ちの方・シニア:$4、12歳以下:無料
日曜日のみ:大人$4、(学生・シニア・障害をお持ちの方$2) - 行き方:
【バスの場合】
バス会社vencedoresにて経路8番、ルートBellavistaが通っています。
【徒歩+路面電車】
エコビアに乗り、ベジャビスタ(Bellavista)で下車。降りてすぐ脇にある上り坂をひたすら上がる途中、緩い右折もあるがおよそ徒歩20分強。坂道はキツイです。
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KITAMUCHO
- 南米 エクアドルのアマゾン地域に在住。元旅行会社スタッフ。昔バックパッカーで中南米やアジアを旅した経験をもつ30代女性です。