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大人の社会見学!イタリア・ムラーノ島のヴェネチアングラス工房を訪問
イタリアの都市、ヴェネチアといえばヴェネチアングラスが有名。これをお土産に購入したいという方も多いのではないでしょうか。今回、ガラス細工で有名なムラーノ島でガラス工房の見学をさせてもらいましたので、その作り方や特徴などをご紹介していきたいと思います。
目次
- ムラーノ島がヴェネチアングラスの本場として有名な理由
- 工房やお店を見学するときは
- ガラス工房「LINEA MURANO ART」での見学
- 美しいヴェネチアングラスの作品たち
- お土産として気軽に購入できるヴェネチアングラスも
ムラーノ島がヴェネチアングラスの本場として有名な理由
まずは、ムラーノ島の歴史から簡単にご説明しましょう。中世の頃、貿易で財を成したヴェネチア共和国。そのメインの輸出品がヴェネチアングラスでした。多くの素晴らしい品々がヴェネチアから世界へ旅立っていきましたが、その技術を国の財産と考えたヴェネチアは職人の流出、技の模倣を避けるために、ひとつの島に職人と工房を集合させました。
それが、ガラス職人の町として栄えはじめたムラーノ島の歴史のはじまりです。1291年には職人だけでなく、その家族、関係者まで強制的に移住させました。一つの島に集められた職人たちは互いに切磋琢磨しあい、独自の技術や技法が磨かれていったわけですね。
島内にはあちこちにヴェネチアングラスの工房やショップが点在しています。お目当てのレストランがあったのでそちらに向かっている途中にも、アーティスティックなデザインの作品が飾られていました。鮮やかな色合い、大胆でありながら細かな部分までこだわって作られた作品です。私が訪れたのは7月だったので、涼やかなブルーが道行く人の目を和ませていました。
工房やお店を見学するときは
ここからは、ヴェネチアングラスを実際に作っている工房の見学レポートです。工房によっては見学NGのところもありますが、今回お邪魔した「LINEA MURANO ART」では細かく丁寧に教えてくださいます。
ヴェネチアのガラス工房に限ったことではありませんが、お店に入る際は一声かけるとスムーズです。日本では黙ってお店に入っても特に変には思われませんし、むしろお店の方が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれますが、イタリアだと入る側から声をかけるのがマナーです。
難しいイタリア語は必要ありません。昼間は「ボンジョルノ(Buon giorno:おはよう、こんにちは)」午後3時以降ぐらいだと「ボナセーラ(Buona sera:こんばんは)」と言って、そこから「ポッソ・ヴェデーレ?(Posso vedere?)」と声をかけてみましょう。これは「見てもいいですか?」というフレーズです。
特に、ガラス工房やガラス工芸品のお店では商品に手を触れてはいけないこともありますので、黙って店内を見て、買いもしないのに商品を触るなんてイタリア人からするとありえないことなのです。
シャイな日本人にはなかなか難しいことかもしれませんが、お店の人の目を見て挨拶をして、あとはジェスチャーでも大丈夫ですので「見てもいいですか」「触ってもいいですか」という気持ちでお店を見せてもらいましょう。
それさえきちんとしていれば、色々教えてくれる人もいますし、奥から色々出してきてくれたり、「遠い日本から来たなら割引してあげるよ!」と言ってくれたり、イタリア人の陽気で優しい部分に触れることができるはずです。
ガラス工房「LINEA MURANO ART」での見学
こちらが、ヴェネチアングラスの製作現場です。「うっ、暑い!」でも私が立っていたのは炉からけっこう離れた場所。聞いてみると、職人さんの座っている場所の周辺気温は57度もあるそうです。ヴェネチアングラスの作り方を解説していただきましたので、ご紹介しましょう。
ヴェネチアングラスの作り方
1. まずカリウム、ソーダクオーツを1500度の高温で溶かします。
2. 1100度になったら成型します。
3. 酸化物で色を付けます。
4. 2分おきに炉に入れます。
5. 冷却するのは500度で24時間。こちらが冷却窯です。
この製法は18世紀に確立されたものだそうです。
柄をつけたいときはこんなビーズのようなものを使って加工するとのことですが、一体どんな風に使われるのでしょうか?
上の写真はビーズの元になっている、色とりどりのガラスバーです。
先ほどの細かいビーズを作品に組み込んだものがこちらの写真です。
右のお皿にビーズが埋め込まれていることは一目瞭然ですが、左のお皿もあのビーズが元になって柄が作られているのです。こうして並べて見ると、あの小さなビーズが元になったと思えないほど、デザインが異なっていますね。
ちなみに、私が訪問した時に工房で作品を作っていた職人さんは現在8年目で、8年目でもアシスタントだそうです。9年~12年でやっと一人前と言われるようになるそうです。もちろん個人差はありますが、長い経験を重ねてオリジナリティのある美しい作品を作っていけるようになるのだとか。
美しいヴェネチアングラスの作品たち
カラーブロッキングされた美しいボウル。細かく筋が入っていることによって、光にあたるとその部分に影ができて立体的に見えます。フルーツを入れたりサラダを入れたりするのでしょうか。そう聞いてみると、この作品は実用品というよりは、観賞用として飾るものだそうです。
実際に飾るときは、このように光が入る窓ぎわに飾ることを推奨されています。
現地では、ヴェネチアングラスを通してヴェネチアの運河を見るという贅沢な使い方をされている方もいるのでしょうね。ヴェネチアの夏は照り返しによって本当に暑く、日差しがきついので涼しげなガラスのオブジェや器が室内に置いてあるだけで涼めるのかもしれません。
<左:ビーズを埋め込んだ作品 右:黒いテーブルシャンデリアと思われる作品>
先ほどの柄のついたビーズが、こちらの作品にも埋め込まれています。つい見入ってしまいますね。あのビーズは職人の手によって、変幻自在になるものだと感じさせられます。
<ブルー系や赤系の配色でまとめられたグラスたち>
<マットな仕上がりの作品>
<ブルーのヴェネチアングラスで作られたシャンデリア>
工房で人気の高い製品はシャンデリアだそうです。この写真のように、デコラティブでエレガントなデザインが多いのが特徴です。
<花の装飾が美しいシャンデリア>
サイズは色々あり、小さめのもの~かなり大掛かりなものまで様々です。直径1メートル以上もある立派なシャンデリアを作るのにはさぞ時間がかかったのでしょう......と思って質問してみたのですが、熟練の職人3人で、およそ3~4週間で完成するとのこと。想像していたよりはスピーディーな作業なようです。ひとつ作るのに半年ぐらいかかるのかと勝手に想像していました。
輸出先はアメリカや中東など様々で、細かく色合いやデザインに指定が入った特注品も多いそうです。
金額はサイズやデザインによりますが、30万円~500万円とのこと。日本の住居のインテリアとしてはハードルが高いサイズ感とデザインではありますが、ショップやレストランなどにはヴェネチアングラスのシャンデリアが採用されているところも多いので、日本でも間近で見られる場所があるかもしれません。
<タカの装飾が付いた作品>
<小鳥をあしらった作品>
ショールームの中でも一際存在感があった鳥のシリーズです。ダイナミックな鷹は中東などに輸出されることが多く、可愛らしい小鳥はテーブルなどにも置きやすいサイズなので人気があるそうです。
しかし、お値段はおよそ80万円!こういった完全に観賞用の作品はお値段も高いのですが、実用品のワイングラスやタンブラーなどは自分へのお土産にできる価格帯なのでご安心を。
<ヴェネチアングラスをお土産にするなら、ワイングラスやタンブラーがおすすめ>
お土産として気軽に購入できるヴェネチアングラスも
さらに、もっと気軽に買えるお土産もあります。それがアクセサリー類。イヤリングやピアス、ブレスレットにネックレス......目移りしてしまいそうな可愛らしい色合いのキャンディのようなデザインが特徴的です。
私も自分用と母や妹用にいくつか購入しました。中には「あのビーズ」をいかしたデザインのものもあるので、宝探し感覚でお気に入りを探してみるのも楽しいと思います。
<こちらはサンプルとして置いてあったものをお店の方が包んでくれましたので、商品ではありません>
<マットな質感のネックレス>
<カラフルなピアスもあります>
<黒とゴールドのビーズで作られた、シックなピアス>
もちろん、こちらの工房だけでなくムラーノ島、本島、あちこちに可愛いデザインのアクセサリーを扱うお店があります。まるでシャンデリアがミニサイズになった、というようなロマンティックなデザインのピアスを本島のリアルト橋の近くで見つけたのですが、あいにく定休日......。 次回、ヴェネチアを訪れた際の「行くところリスト」に入れておきたいと思います。
Linea Murano Art基本情報
- 住所:Fondamenta Manin, 1, 30141 Venezia VE, イタリア
- 公式サイト:Linea Murano Art
(撮影:yukaco)
※情報は取材時(2017年)のものです
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yukaco
- 17歳のときに初めてフィレンツェ、ヴェネチアへ行ってからすっかりイタリア贔屓に。定期的にイタリアへ旅行。
食、ファッション、アートが得意分野。興味があればどこへでも行くフットワークの軽さでハードスケジュールな取材も敢行。
イタリアの中で一番好きな場所はミラノ・スカラ座。好きな食べ物はラヴィオリ。