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【夏〜初秋編】ヴェネチアのグルメが集うリアルト市場に並ぶ食材
ヴェネチアのグルメを知るなら「ヴェネチアの台所」ことリアルト市場を覗いてみましょう。夏から秋にかけての季節の変わり目に美味しい食材を探せますよ!!ヴェネチア人好みな食材が、ここに集約されています。
ヴェネチアの市場を訪れよう。リアルト魚市場
リアルトの市場の主役はやはり魚市場。新鮮な魚介を扱う店先はいつも多くの人で賑わっています。
ヴェネチアの食を知るには、まずはリアルトの市場へ行ってみましょう。ヴェネチア本島で最も古い歴史を持つ地区が、ここリアルト橋周辺です。
リアルト市場がこの地に誕生したのは12世紀のこと。ヴェネチア唯一で最古の市場として知られており、地元の人々やレストラン関係者もここで買い物をします。観光客にとっては、朝の活気ある場所であり、ヴェネチアの台所としてヴェネチア人の食生活の一端を垣間見ることのできる、人気スポットでもあります。
リアルト橋周辺には、ヴェネチアで初の商店、銀行、金融業などが生まれた場所ですので、歴史的な観点から見ても、最も商業的地区として栄えてきた場所といえます。現在、このカナル・グランデの中心に建つ、美しくヴェネチアを象徴する橋のたもと付近では、朝7時頃からメルカート(市場)が開かれます。
ヴェネチアのラグーナ(潟)で獲れる近海魚をはじめ、多種に及ぶ魚介類の魚市場、季節の野菜や果物を提供する野菜市場が。さらにそれらを囲むようにした常設店の肉、乾物、バールなどの店舗が並び、メルカート全体に活気を与えています。
夏から初秋にかけて市場に並ぶ、色鮮やかな野菜たち
非常に色鮮やかで力強さのあるイタリア野菜たちは、見ているだけでも楽しいものです。年間を通じて手に入る一般野菜も多く並ぶ昨今の事情はありつつも、そこに並ぶ野菜・果物の顔ぶれは季節ごとに変わります。
夏季には、トマトやナス、ズッキーニ、ピーマンなどの野菜が、色合いを濃くし、その種類も非常にバラエティ豊かになる頃。だんだんと秋の気配を感じ始める頃になると出始めるのが、各種キノコです。
イタリアのキノコとして代表的なポルチーニ。実はイタリア国内でも種類が様々にあり、その好みも土地ごとに変わってくるのだとか。ヴェネチアを含む北部イタリアでは、比較的小ぶりでカサがしまり、肉質の密もある種類が好まれており、一般的に目にする機会も多いです。
ポルチーニのほか、この季節にはさまざまなキノコが豊富に揃います。黄色いフィンフェルリや、釘(=キオーディ)に形が似ていることからくるキオディーニなどが代表的です。これらは、卵入りの平打ちパスタやリゾットの具材に、または炒め煮にして肉や野菜の付け合わせ、あるいはソースとして...など、皿の上に美味しい季節の演出をするのに非常に重宝されます。
ヴェネト州の太いサラミであるソプレッサ、ポレンタ(トウモロコシの粉)、そしてキオディーニを盛り合わせた秋の一皿。
ヴェネチアならでは。ラグーナ(潟)で獲れる新鮮な近海魚
では、リアルト魚市場の方へ足を運んでみましょう。種類も豊富にいろいろな魚類が並ぶなか、ヴェネチアならではのものといえば、近海の魚介類です。
魚介類も野菜と同様、近年では季節感が薄れ始めているとはいえ、ヴェネチアらしいものとしては、小型の甲イカ。「セッピア (Seppia)」と呼ばれます。夏前は小さく、丸ごと煮込んでも良いくらいなものが、夏の終わりともなると成長し始め、肉質もしっかりしてきます。柔らかさがありながら、煮込んでも食べ応えのあるいい状態です。
これらはヴェネチア料理としてはずせない、イカのスミ煮に使われることが多く、煮込みにポレンタ(トウモロコシの粉を練り上げたもの)を添えてセコンド・ピアット(主菜)として扱われます。また、煮込んだソースはスパゲティやリゾットに使われますが、特にスパゲティは、ヴェネチアに来たら必食料理のひとつとして有名な一皿。新鮮なイカスミを使ったスパゲティは、本当に真っ黒!日本のものとは黒さの度合いが違います。ヴェネチアを訪れた際にはぜひお試しください。
さらには、「カラマーリ (Calamari)」と呼ばれるヤリイカもあります。美味しい食べ方は、ずばりフリット。新鮮なうちに一口大に切り、粉をまぶして油でカラリと揚げます。塩を軽くふり、レモンを絞れば最高の一皿に。
小さなタコ、モスカルディーノです。フォルペッティとも呼ばれます。
そしてこちらは「モスカルディーノ (Moscardino)」と呼ばれるタコです。
小さめでこれも肉質が柔らかいので、このまま丸ごと茹でていただきます。茹で上がったら一口大に切り、オリーヴオイルをかけ、レモンをキュッとしぼります。またはオイルにたっぷりのパセリと少々にんにくを効かせた緑色をしたサルサ・ヴェルデと和えていただくのも大変美味です。セロリと相性が良いので、一緒にサラダ風に、というメニューも定番としてよく知られています。
ヴェネチアの珍味1.モエーケ(脱皮ガニ)
ヴェネチアには、季節限定の食材もあります。「モエーケ (Moeche)」という脱皮したばかりの小さなカニです。春と秋の各2週間くらいがその限定時期。夜から明け方に脱皮するカニを漁獲し、生きたまま市場に運ばれてきます。珍しいので非常に高価に扱われていますよ。
モエーケがある時期には、この珍品のフリットをぜひ一度味わってみてください。柔らかく丸ごと食べられますよ。非常に濃厚なカニの味わい、潮の風味が口いっぱいに広がります。このモエーケの美味しいフリットは、生きたままのカニを卵液に浸してお腹いっぱいに卵を吸わせたところで粉をまぶして油で揚げます。
なんだか少々気の毒な感じもしますが、こうすることで甲羅の内部がふっくら、表面がカリッと揚がる季節の珍味ができあがるのです。
レストランでこれを食べたい!と思っても、季節限定品のためにメニュー表には載っていないこともしばしば。モエーケの出回る時期にヴェネチアを旅するときは、カメリエーレ(給仕人)に直接たずねてみると良いでしょう。
ヴェネチアの珍味2.マザネーティ(脱皮後のカニ)
メルカートで売られているマザネーティ。生きたまま売られています。
上述のモエーケは高級食材ですが、こちらは庶民の味。「マザネーティ (Masaneti)」といいます。モエーケは脱皮後すぐに捕獲されますが、マザネーティは脱皮から時間が経って殻が固くなったもの。
さすがに殻はもう硬いので、丸ごと食べることはできません。こちらは殻ごと茹で、脚や甲羅の硬い部分などをとって掃除し、オイル、パセリ、ニンニクを合わせたソースで和えます。
手も口のまわりも油だらけにしながら、ゴリゴリと音をたてて食べるのが美味しい!あまりお上品なものではありませんが、こんなのが楽しいですよね。
ヴェネチアの珍味3.ボヴォレッティ(カタツムリ)
市場で売られているボヴォレッティ(カタツムリ)。これも季節の定番品です。
これも正真正銘な庶民の味で「ボヴォレッティ (Bovoletti)」と呼ばれる小さなカタツムリです。ヴェネチア弁では、「ボヴォエティ」や「ボゴエティ」などと発音されたりもします。晩夏というよりは、夏の初めからよく出回ります。
調理した後のボヴォレッティ。これを囲んでひとつひとつを皆が楊枝を手にして食べます。
市場では、まだ生きているカタツムリが大きなタライなどに置かれています。持ち帰ったら殻ごとお湯で茹で、オイルとたっぷりのパセリのみじん切り、にんにく、レモンを加えて全体を混ぜ合わせます。味が馴染んだところでいただくのがオススメ。ひとつひとつを楊枝で中をほじくり出しながらいただきます。
ヴェネチアでアペリティーヴォ(食前酒)のお供には最高の一品。夕暮れ時の食事の前、家族や友人とこれをつまみながら時を過ごすなんて、最高ですよね。
バーカロ(立ち飲み屋)で旬のグルメを気軽に楽しむ方法
ヴェネチアならではの旬の美味しさを手軽に、そしてヴェネチアらしい空間で楽しむのに最適な場所がバーカロです。バーカロとは、一般的には大衆食堂であるオステリアを指しますが、店の入り口付近にカウンターがあり、そこでグラスのワインを注文、基本的には立ち飲みのスタイルをとっているお店です。
グラスワインはハウスワインであれば1ユーロほど(店によって値段のばらつきあり)で、このグラスワインは特に「オンブラ (Ombra)」と呼ばれます。そして、カウンターに並ぶフード類が「チケティ(Cichèti)」。いわゆる、酒の肴となるお惣菜たちです。
夕刻ともなると、家路につく前にいつもの店で一杯!という人たちで店先はいっぱいに。チケティの美味しい店は常に人気があります。
ヴェネチアならではのスタイル、バーカロでも季節の定番の味が気軽にいただけます。
こんな店で、ヴェネチアならではの味を楽しみます。先述のボヴォレッティやマザエーティ、ヤリイカのフリット、タコのサラダ、イカのスミ煮などはバーカロでも楽しめます。
地元のワインと地元の料理をつまみながら......というのも、ヴェネチア滞在の素敵な思い出となるはずですよ。
写真・執筆:Aki Shirahama
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