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世界最長の歩行者用吊り橋ランダ(Randa)

記事投稿日:2017/10/09最終更新日:2017/10/09

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今年の7月末、スイス南西部のヴァリス州(Wallis)にあるランダ(Randa)という場所に、世界最長の歩行者用吊り橋が開通した。夏期ハイキングシーズン終盤に当たる先日の9月11日に好天を狙って訪問してきたので、その様子をご紹介したい。

ランダ村とカラマツの森

今回ご紹介するランダという場所は、ヴァリス州のフィスプ(Visp)からマッターホルン観光で有名なツェルマット(Zermatt)まで南北方向に延びるマッター谷(Mattertal)にある小村。谷沿いには鉄道が通っていて、ランダはこの鉄道路線の終点・ツェルマットの2駅手前にある。公共交通機関でのアクセスが良く、ツェルマットからはもちろん、早起きをすればベルンやチューリッヒからの日帰り訪問も簡単だ。

目当ての吊り橋までは、鉄道駅ランダの駅前から徒歩で片道約2時間の道のり。ケーブルカーなどはないので急な山道を自力で登らなければならないが、ちょっと頑張って登る価値は十分にある。お勧めは、鉄道駅から橋へ向かって山を登り、橋を渡ってまた鉄道駅まで戻ってくる約9キロメートルの周遊ハイキングコース「ルンドウェグ・ヘンゲブリュッケ・ランダ(Rundweg Hängebrücke Randa)」だ。ハイキングコースの名前にあるヘンゲブリュッケ(Hängebrücke)とはドイツ語で吊り橋の意で、随所に立っているワンダーウェグの道しるべにある「Hängebrücke」の方向に進めば迷う心配はない。

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駅前から道しるべに従って、まずはランダ村の中を少々通過。村では、石葺きの屋根や「ねずみ返し」構造などを持つ、この地域の特徴的な木造家屋を見ることもできる。

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村の外れからは山道に入り、カラマツの森の中を通る急な山道を登る。

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カラマツはヴァリス州やグラウビュンデン州の高地(標高1500メートル以上)でよく見られるが、スイスでは比較的稀な樹木。針葉樹だが落葉樹なので晩秋には黄色く紅葉し、スイス山岳地域の「黄金の秋」と呼ばれる美しい風景の重要な役割を担っている。谷の反対側にはワイスホルン山(Weisshorn)があり、道中ではカラマツの間からその雄大な姿を何度も見ることができる。

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<ワイスホルン山の右手(方角で言うと山の東側)には、迫力満点のビス氷河(Bisgletscher)も見える>

1時間50分ほど登ると、ハウシュピル(Hauspil)―地元の方言ではホイシュビール(Höüschbiel)―と呼ばれる所に到着。カラマツの森が少々開けた台地で、大きな岩が所々にある印象的な風景だ。

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世界最長の歩行者用吊り橋

吊り橋は、ハウシュピルから徒歩5分ほどの所にある。

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この鋼鉄製の吊り橋は、最大の個人出資者である人の名前を冠して「シャルル・クオーネン吊り橋(Charles Kuonen Hängebrücke)」という名前が付いている。全長は494メートルで、巾は65センチメートル、高さは最高85メートルある。渡りきるのにはおよそ10分かかり、想像以上に揺れるのに加えて足元もスケスケで、正に迫力満点だ。

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吊り橋は、マッター谷のグレヒェン(Grächen)からツェルマットまでの約31キロメートルを2日間かけて歩くハイキング&トレッキングルートであるオイロッパ(ヨーロッパ)ウェグ(Europaweg)の一部にあたる。実はここ(正確にはここから約200メートル東側)には2010年の7月にオイロッパ橋(Europabrücke)という吊り橋が建設されていたのだが、その開通から2か月後に発生した山崩れによって橋が崩壊。以降最近までは、ずっと迂回を余儀なくされていたのだ。

山崩れは、凍結した瓦礫や岩で形成される氷河の一種・ブロックグレッチャー(Blockgletscher)が原因。マッター谷周辺の山々にはブロックグレッチャーがいくつも存在し、大小さまざまな規模の山崩れが頻繁に発生している。マッター谷での一番最近の大規模な山崩れは、1991年にランダ村の西側で発生したもの。25年以上経った現在でも、山崩れの跡は生々しく残っている。

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この荒々しくも生き生きとした自然はマッター谷の大きな魅力のひとつで、今年の7月末からは迂回することなくオイロッパウェグを歩けるようになったことに加え、世界最長の歩行者用吊り橋という新しいアトラクションも加わり、世界中から多くのハイキング客が訪れる人気スポットになっている。

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前出の「ルンドウェグ」ハイキングコースは、この吊り橋を渡った反対側からランダ村に向けて下る設定だが、時間や体力に余裕のある方にはこの橋からまた少し山を登り、山小屋・オイロッパヒュッテ(Europahütte)を経て瓦礫の沢を下る長めのコース(約11キロメートル)もお勧めしたい。

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<橋から先の道のりは少々険しい>

山小屋・オイロッパヒュッテの営業は夏期(6月下旬~9月中旬頃まで)のみだが、飲食はもちろん宿泊も可能。標高2200メートルという高所にある山小屋レストランでありながら、飲み物や食事の料金は大変良心的。フレンドリーな接客も嬉しい。

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オイロッパヒュッテの周辺は、荒々しく足場があまりよくない瓦礫の道が続く。

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道中の標高最高地点近く(標高2320メートル前後)には木製のテーブルとベンチが備えられた素晴らしい見晴らしポイントがあり、ちょっとした休憩にピッタリだ。

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下りの沢には、山の上にあるホベルグ氷河(Hobärggletscher)からの融けた水が流れる。

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(足場があまりよくないので、慎重に下る)


森林限界を過ぎて再びカラマツの森を通り、眼下にランダ村が見えてきたら、ハイキングはそろそろおしまい。

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今年の夏期ハイキングシーズンは終了しているが、来年以降のスイスハイキングのプラン例として、参考にして頂きたい。道中では、運が良ければ野生のアイベックス(独語ではシュタインボックSteinbock)にも出会えます!

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参考ハイキングルート:ルンドウェグ・ヘンゲブリュッケ・ランダ(Rundweg Hängebrücke Randa)

ランダ駅(Bahnhof Randa) - ハウシュピール(Hauspil)/ホイシュビール(Höüschbiel) - シャルル・クオーネン吊り橋(Charles Kuonen Hängebrücke) - オイロッパヒュッテ(Europahütte)(オプション) - ゲレ(Gere) -ランダ駅(Bahnhof Randa)、全長8.7キロメートル(オイロッパヒュッテ訪問を含む)、所要時間約4時間。

今回記者が歩いたのはオイロッパヒュッテを経てビルヒバッハ川Birchbach伏流の沢沿いを下る約11キロメートルの周遊コースで、所要時間約5時間半。ウェブリンクは地方自治体ランダ(Gemeinde Randa)の公式ウェブサイト内。独語と英語の選択可。

吊り橋の詳細情報:シャルル・クオーネン吊り橋(Charles Kuonen Hängebrücke)

ウェブリンクは地方自治体ランダ(Gemeinde Randa)の公式ウェブサイト内。独語と英語の選択可。

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Asami AMMANN-HONDA
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