ビキニ姿の女性も!?モザイク大好きローマ皇帝の別荘から古代ローマを知る

カサーレ荘は、古代ローマ時代の習慣がうかがえる細かなモザイク装飾が施された遺跡。世界遺産にも登録されている貴重なスポットです。

※写真はクリエイティブコモンズライセンスに基づき掲載しています。

参考:クリエイティブコモンズ公式サイト(外部サイトに遷移します)

古代ローマの暮らしが分かるモザイク装飾

古代ローマ人は、大のモザイク好きだったということをご存知でしょうか。古代ローマ遺跡を巡ると、至るところにモザイクの装飾があることに気づくはずです。そして、このモザイクで描かれたモチーフは、実に多くのことを私たちに語りかけてくれます。

今回は、古代ローマ時代の建物「カサーレ荘」に飾られたモザイクについてご案内しましょう。

「カサーレ荘」とは

カサーレ荘は、シチリア島中部の小さな街「ピアッツァ・アルメリーナ」からほど近い長閑な集落にあります。ここはかつて、ローマの"西の正帝"マクシミアヌスが建てた(諸説あり)別荘だと言われています。古代ローマ時代には、このように皇帝や富裕層が郊外に巨大な別荘を建てることが流行っていました。

世界遺産に登録されたカサーレ荘の特質すべき点は、約40室、3500平方メートルもの床面積が全面見事なモザイクで覆われていたということ。活き活きとした人物や動物、多岐に渡るテーマは目を見張るばかりです。

現在は剥げたり色がくすんだりしていますが、当時すべてを人力で造り上げたことを考えると畏敬の念さえ抱きます。

客人を歓迎する、「玄関」のモザイク

まず、カサーレ荘の玄関では、毎朝2回、自由民が訪れ主人に敬意を示して口づけをし、それに対して金銭による心づけを与えるという儀式が行われていました。これは、権力者が小市民たちに授けた小さな楽しみだったと言われています。

玄関の床には、身分の高い者が着る上着をまとった主人が、客人を迎える様子が描かれています。モザイクで描かれたオリーブと月桂樹の葉は、客人を歓迎する、という意味を表しています。

「私用更衣室」の装飾は当時の厳しい身支度事情が......

浴場に向かう手前の更衣室には、5人の人物が描かれています。中央には女主人、両側に子と奴隷が並んでいます。奴隷は衣装箱を持ち、身づくろいの準備をしているのでしょう。

実は、当時の身支度は、奴隷たちにとっては恐怖の時間でした。特に女主人の髪結いは難題で、少しの失敗でも主人への冒涜とみなされ、鏡がムチに変わったと言います。

完璧を求める女主人は、長針で奴隷たちを突きながら髪を結わせたのだとか。当時の身分制度の厳しさを垣間見るモザイク画です。

「体育室」には、当時の人気競技のモザイク画が


この大広間は体育室として使われており、床面には当時、ローマのチルコ・マッシモ(大競技場)で人気を博していた戦車レースの様子が描かれています。

レースの優勝者は、当時の弁護士の給料100人分の賞金を約束され、人気選手ともなればファンクラブもあったのだというのですから、その熱狂ぶりがうかがえます。

カサーレ荘を利用していた主人も、このレースに夢中だったのかもしれません。

当時の凄惨な格闘を描いた「大狩猟の廊下」

ここには、ローマのコロッセオで見世物に使われる、アフリカの動物たちを狩る様子が描かれています。これらの動物たちは、格闘用に売買されていました。コロッセオの見世物では、1日あたり約100頭の猛獣が殺され、100日間続いたこけら落としの際には5,000頭もの猛獣が殺されたとされています。

「食事の間」には、なぜか不気味なモチーフが

当時の富裕層は、恐ろしく長い時間をかけて大量の御馳走を食べていたとされています。常に奴隷が付いて世話をし、当人たちは寝そべった体勢で食事をとっていました。古代ローマの貴族たちは、とにかく長時間で、たくさんの食事を食べるのが良いとされ、満腹になれば羽で喉を刺激したり催吐剤を飲んだりし、胃を空にしてまで食べていたのだとか。

現在の感覚では異様に感じられるかもしれませんが、これも当時の富や贅沢を示す考え方なのかもしれません。さて、この「食事の間」に描かれるのは、巨人たちが矢を突き刺されて血を流し、蛇と格闘している様子です。

なんとも不気味で血生臭いモチーフを食堂に描くとは、いかにも軍人皇帝の趣味といったところでしょう。

「主人の寝室」は当時価値が高いとされた女性像が

「主人の寝室」には、愛を囁く若い男女が描かれ、どこかエロティックなイメージのモザイク画があります。

当時、女性の価値は衣服ではなく身に着けた腕輪や貴金属、そして体重で測られたのだそう。このモザイク画のように、豊満な体系の女性ほど、価値が高いとされていました。

現代風のデザイン?「ビキニ女性の間」

ビキニを着た若い女性たちが、5種競技に出るための練習をしている様子を描いたモザイクです。このビキニのように見える衣服は、正確には当時の下着で、古代ローマでは女性は運動をする際下着で行うのが決まりだったと言います。今では考えられないですね。

ところで、ここに描かれるのは結婚が考えられる20歳以下の女性ばかり。当時は短命だったからか、30代後半ともなれば「生きた化石」と呼ばれ、巫女さえも抜け殻とみなされ還俗できるとされていました。

現代と照らし合わせると、筆者はそろそろ「生きた化石」に近付きつつあるということになります......。

「キューピッドたちの釣りの間」にも、富を示すモザイク画

ここには、キューピッドたちが釣りをしている様子が描かれています。当時、魚は市民にとって贅沢な食べ物の一つでした。

魚を食すということは経済力と権力の証とされ、これを描くことで己の富を客人に認識させるという意図があったと考えられます。

「カサーレ荘」の本当の凄さは、モザイクの"色"にある!

さて、夥しい数のモザイクで飾り立てられたカサーレ荘。ここのモザイクが他と一線を画すのは、その「色石の豊富さ」です。当時、色石は非常に高価であったため、一般的なモザイクはガラスか白黒の石で変化を付けるのが普通でした。

ところがカサーレ荘ではお金に糸目をつけず、貴石に相当する高価な色石を床全面に惜しみなく使い、しかも絶妙な濃淡の色石を使ってぼかし効果までつけているのです。現代で例えるならば、ダイヤモンドやサファイアを床に敷き詰めているような感覚です。

そのおかげで表現はよりリアルに、そして圧倒的かつ豪壮に仕上がったのです。この壮大なモザイクの饗宴を目の当たりにすると、圧倒的な富と権力を見せつけられたような感覚に陥ります。加えて、当時の暮らしぶりや風俗も知ることのできるモザイクの館、カサーレ荘。

シチリアを旅した時は、一度訪問してみる価値のある施設です。

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