未来派の作品や前衛芸術が集う、北イタリアの「トレント・ロヴェレート近現代美術館(MaRT)」

※サムネイルはイメージです。Photo by Pixabay(CC0)

ヴェネチアから北西にあるコムーネ(基礎自治体)、トレント。ここは、数万点にも及ぶ芸術作品が収蔵された「トレント・ロヴェレート近現代美術館(MaRT、以下MaRT)」で知られています。美術館自体の建築も著名建築家が手掛けており、モダンアートがお好きな方にはたまらないスポットです。

この記事では、そんなMaRTの魅力とライターが訪ねたときに鑑賞した作品の解説、そしてMaRTが行っている取り組みについてご紹介しています。

※2018年2月、当記事の加筆修正をいたしました。

※掲載写真はイメージです。クリエイティブ・コモンズ・ライセンス、Facebook規約に基づき掲載・埋め込みをしています。

参考:クリエイティブ・コモンズ公式サイト(外部サイトに遷移します)

目次

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膨大な点数の現代アートが収められた、北部イタリアの美術館「MaRT」とは

ルネサンス発祥の地イタリアは、言わずと知れたアートの国。そんな土地での美術館めぐりは、イタリア観光ならではの醍醐味といえるでしょう。

今回は、イタリア北部にあるコムーネ「トレント」のクールな現代美術館"MaRT(トレント・ロヴェレート近現代美術館、以下MaRT)"をご紹介します。MaRTは絵画だけでも約10,000点、彫刻やデッサンなども合わせると膨大な数の芸術作品を収蔵しており、モダンアートがお好きな方にはたまらない美術館となっています。

また、MaRTはその収蔵数に加えて美術館自体の建築も非常に美しく、近現代美術を展示する施設としてふさわしいモダンな構造となっています。

マリオ・ボッタによる建築デザインは必見

Photo by Esther Westerveld[MART Museo d'arte moderna e contemporanea di Trento e Rovereto - Rovereto](CC-BY 2.0).jpg
Photo by Esther Westerveld[MART: Museo d'arte moderna e contemporanea di Trento e Rovereto - Rovereto](CC-BY 2.0)

天井の青空とクーポラは、そのデザインもあいまって、独特の存在感を醸し出します。クーポラとは、教会建築などにみられる、半球形につくられた天井のこと。これはスイスの建築家、マリオ・ボッタ(※)によって設計されたものです。

Photo by Danilo Paissan[MART2](CC-BY 2.0).jpg
Photo by Danilo Paissan[MART/2](CC-BY 2.0)

※参考:マリオ・ボッタ について

マリオ・ボッタ (Mario Botta)はスイスの建築家。スイス・ティチーノ州メンドリジオ生まれ。1969年ヴェネツィア大学建築学科卒業。代表的な作品に、「サンフランシスコ近代美術館SFMoMA」(1994年)、ミラノの「スカラ座改修」(2004年)がある。日本国内に存在する作品にワタリウム(1990年)など。

引用元:Wikipedia-マリオ・ボッタ(外部サイトに遷移します)

参考:Mario Botta 公式サイト(外部サイトに遷移します)

MaRTでは、どんな作品が鑑賞できる?

筆者が館内へ訪ねたときは、常設展に加えて特別展示も開催されていました。MaRTの特別展示に立ち会えたときは、ユニークな感覚に満ちた作品をめぐってみましょう。

少し歩みを進めれば、そこには前衛的な芸術家によるアート作品、オブジェなどが並びます。 どう創ったのか不思議になるものから、脱力感にあふれるほほ笑ましい作品まで、多彩なラインアップです。

しかし、共通するのは「冴えきった洞察」とでもいうべき鋭さ。なかなか強烈な作品が顔を揃えています。

参考:Photo by Darren and Brad [DSCF1980.jpg](外部サイトに遷移します)

上のリンクから見られるアート作品(※)は、反戦のシンボルとなった「ゲルニカ」風で、どこかピカソを思わせます。 まるで童話の挿絵のように親しみやすいデザインであっても、作品を前に浮かんでくるイメージは、戦争の不気味さ。不思議な感覚をもたらす作品の数々に圧倒されます。

実は、フォルトゥナート・デペーロはロヴェレート出身。MaRTは彼の作品収集をコンセプトとしており、彼の作品はもちろん、未来派(※2)と呼ばれる20世紀初めの前衛芸術運動で活躍した芸術家の収蔵を精力的に行っているそう。

そのため、MaRTには当時の貴重な展示から最新の前衛芸術までが展示されるようになっています。中にはジョルジュ・デ・キリコやアンディ・ウォーホルの作品も収蔵されているとのこと。MaRTは、モダンアートがお好きな方にはたまらない美術館なのです。

※編集部註:リンク先の作品はイタリアのデザイナー・画家・彫刻家フォルトゥナート・デペーロ(Fortunato Depero)の、「Guerrafesta」と言う題名の作品(1925年)です。イタリア発のリキュール「カンパリ」のボトルデザイン(三角形バージョン)を手掛けるなど、広告デザイナーとしても知られています。

参考リンク:Fortunato Depero, Guerrafesta,1925(外部サイトに遷移します)

フォルトゥナート・デペーロの作品例は、こちらもどうぞ。

出典:MaRT公式Facebookページより

※編集部註2:未来派(フトゥリズモ、フューチャリズム)とは、イタリアを中心に発生した芸術運動の一つ。イタリアの詩人フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティが提唱した「未来派宣言」を発端として、当時のイタリアのアーティストたちが絵画や建築、音楽などで、思想の具現化を試みていました。

続いて、もう一つ気になった作品についてご紹介しましょう。まずは下のリンクから、作品をご覧ください。

参考:Photo by Darren and Brad [DSCF1969.jpg](外部サイトに遷移します。こちらの作品はショッキングな要素が含まれます。)

オブジェクトとはいっても、馬たちが倒れている姿に言葉もありません。生命の脆さと破壊の怖さ。動物が好きでなくとも、胸に痛みを覚えるでしょう。これらも芸術作品だそうです(※)。

このアートが訴えかけてくる重たいメッセージに、胃の辺りが揺さぶられるのを感じます。前衛アート作品から感じる世界は、戦争の怖さや個人の情念と世の中、人間社会をめぐる重いテーマなど......。 日常と非日常の狭間で前衛芸術に触れることで、想像力をかきたてられます。

芸術と倫理観のすれすれ境界線をうまく表現している、そんな気がしました。イタリアの現代美術館だからこそ、最後までユーモア感覚に魅せられるのでしょうか。純粋にアートを見るだけで楽しいし、そもそも建物だけでも鑑賞する価値は十分にあります。

それが、MaRTの魅力です。

※編集部註:こちらの作品はベルギー出身の作家Berlinde De Bruyckere氏による「In Flanders Fields(2000年)」という作品です。これらの作品群は2014年の企画展「La guerra che verrà non è la prima」にて展示されていました。

参考:MaRT公式サイト:La guerra che verrà non è la prima(外部サイトに遷移します)

編集部メモ:MaRTでは、家族で楽しめるワークショップも開催

MaRTは大人向けの作品だけではなく、家族で楽しめるワークショップやイベントも開催しています。公式Facebookページでは、これらの舞台裏や特別展のニュースなど、さまざまな情報がアップされています。近代~現代アートに関心のある方は必見ですよ!

出典:MaRT公式Facebookページより

基本的にイタリア語で投稿しているため、読み解くのは少し難しいかもしれませんが、紹介される芸術作品の数々は、言葉が分からなくてもハっと目を引くはずです。

トレントはミラノからであれば日帰りも可能な立地。イタリア北部を周遊するプランを立てるときは、ぜひトレントの街、そしてMaRTもチェックしてみてくださいね。

基本情報

名前:トレント・ロヴェレート近現代美術館(MaRT:Museo d'Arte Moderna e Contemporanea di Trento e Rovereto)

住所:Corso Bettini 43, 38068 Rovereto (TN)

営業時間:[火-木,土日]10:00~18:00 [金]10:00~21:00

定休日:月曜日(祝日などで、臨時開放される場合があります)

公式サイト:http://www.mart.trento.it/

公式Facebookページ:https://www.facebook.com/martrovereto/

※最新情報は公式サイトをご確認ください。

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