観光前に必読!面白いほど分かる4つのイタリア建築様式案内

※2018年2月、加筆修正をいたしました。

イタリア観光の目玉と言えば、世界遺産に登録されるエリアもあるほど美しい建築の街並み。さまざまな建築様式の建物が今も残されていますが、専門用語が使われるため分かりにくいと感じる方もいるのでは。

この記事では、中世~近世に流行したロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックの建築様式について、それぞれの特徴をご紹介します。

※掲載写真はイメージです。一部写真はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づき掲載しています。

参考:クリエイティブコモンズ公式サイト(外部サイトに遷移します)

イタリア観光で知っておきたい、4つの建築様式を分かりやすくご紹介!

イタリアをはじめヨーロッパを観光するとき、ほぼ必ず訪れると思われるのが、観光名所となっている数々の教会。ガイドブック片手に、また現地ガイドさんの説明を聞きながら観光しても、建築様式の特徴を理解するのは難しい! そう思っていませんか?

とりわけ「バロック」や「ルネッサンス」など、必ずと言って良いほど出てくる建築様式は、いくつかの教会を回っているうちに何が何だか分からなくなってきてしまうのが本音、という方もいることでしょう。

しかし、これらは特徴さえ理解してしまえば、面白いほど分かりやすく簡単に見分けることができます。今回は、イタリアを訪れた際によく遭遇する4つの建築様式の特徴を、分かりやすくまとめてみました。

観光の前に知っておくと、「なるほど、だからこんな形をしているのか!」とうなずけるかもしれませんよ!

目次

クリックで各見出しに移動します。

1. 11世紀~12世紀のロマネスク様式...ピサ大聖堂(ピサ)

2. 12世紀~15世紀のゴシック様式:ミラノ大聖堂/ドゥオモ(ミラノ)

3. 15~16世紀のルネサンス様式:サンジョルジョ・マッジョーレ教会(ヴェネチア)

4. 17~18世紀のバロック様式:サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会(ローマ)

1. 11世紀~12世紀のロマネスク様式...ピサ大聖堂(ピサ)

ロマネスクは11世紀~12世紀、古代以降西ヨーロッパ全域で最初に流行した様式です。教会建築としては最も古いため、ロマネスク様式の教会は他と比べると簡素で高さも無く、武骨な印象です。

イタリアで見られるロマネスクの代表例は、斜塔で有名なピサの大聖堂。ロマネスクのキーワードは、ズバリ次の3つ。

  • アーチの列
  • 重く分厚い壁
  • 少ない窓

これを踏まえて、ピサの大聖堂の外観を見てみましょう。

出典:Flickrより
Photo by storem[Duomo di Pisa-Campo dei Miracoli](CC-BY-SA2.0) Duomo di Pisa

参考写真のように、壁にずらりとならんだ装飾目的の"アーチの列"があります。そして、この後に紹介する他の建築様式による教会と比べれば一目瞭然ですが、全体的に箱型で"壁が分厚い"ことが分かるでしょう。

"少ない窓"のキーワードは、内部に入るとよく分かります。数が少ないだけではなく窓自体が小さいため、内部は仄暗い雰囲気となり、シンプルで簡素な印象を受けます。

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Photo by HarshLight[Pisa's Duomo Interior of the Duomo in Pisa.](CC-BY2.0)

2. 12世紀~15世紀のゴシック様式:ミラノ大聖堂/ドゥオモ(ミラノ)

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写真:Italyii(イタリィ)編集部

ゴシックは、12世紀~15世紀にフランスで生まれ、流行した様式です。ゴシック様式の特徴を表すキーワードは、次の3つとなります。

  • 高さ
  • 尖塔
  • 大きなステンドグラス

ロマネスクの次に発展した様式と言うことで、ロマネスク様式では意識されていなかった"高さ"を、限界まで天に向かって伸ばしたような形をしています。フランスのノートルダム大聖堂や、ドイツのケルン大聖堂などが代表的な建物で、いずれも世界遺産(区分は文化遺産)に登録されています。

しかし、フランス発祥のゴシックはイタリアでは嫌われ、"(蛮族と呼ばれた)ゴート族のやり口のようだ"という皮肉から、「ゴシック」と呼ばれるようになったとされており、ゴシック様式があまり流行しませんでした。

数少ないイタリアでの代表例は、ミラノの大聖堂/ドゥオモ(※)が挙げられます。ミラノの大聖堂も先の大聖堂に同じく、壁の外側には天を突き刺すかのような鋭い"尖塔"が並び、全体的に天に向かってそびえるような印象。典型的なゴシックの特徴を表しています。

※註:ミラノ大聖堂は、ドイツやフランスを含む中欧の人々が当時の建築プロジェクトに参加したとされています。

参考:ミラノ大聖堂公式サイト(外部サイトに遷移します)

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写真:Italyii(イタリィ)編集部

ゴシック様式の教会内部は、ロマネスク様式とは違って無数の細い飾り柱が天井まで伸びて交差し、ここでも視覚的な"高さ"を演出します。また、大きな"ステンドグラスの窓"がたくさん見られるのも特徴です。

これらが合わさり、ゴシック様式の教会内部はロマネスク様式のそれよりも、明るく感じられる一方で強いコントラストが生じるため、荘厳な印象を受ける建築となっています。

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写真:Italyii(イタリィ)編集部

出典:Flickrより
Photo by Yousuke[P6041496](CC-BY-SA2.0) P6041496

3. 15~16世紀のルネサンス様式:サンジョルジョ・マッジョーレ教会(ヴェネチア)

15~16世紀、フランス発祥のゴシックに対抗しイタリアで生まれたのがルネサンス(※)。ルネサンス発祥の地としては、フィレンツェがとても有名です。

ルネサンス様式の理念は、かつて栄えた古代ローマや古代ギリシャなどの古典的な様式を復活させようということ。学校の世界史や美術史で概要を学んだ、という方も多いのではないでしょうか。

※註:ルネサンスはフランス語(Renaissance)で、イタリア語ではリナシメント(Rinascimento)となります。

さて、そんなルネサンス様式のキーワードは次の3つ。

  • 古代神殿風
  • クーポラ(ドーム型の天井)
  • シンプルなデザイン

初期の代表例はもちろんフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂ですが、分かりやすい例はヴェネチア、サンジョルジョ・マッジョーレ教会です。

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ヴェネチアの海に浮かぶ、際立つ建築のサンジョルジョ・マッジョーレ教会。写真:Italyii(イタリィ)編集部

サンジョルジョ・マッジョーレ教会を眺めると、古代ローマやギリシャの神殿のように列柱が三角屋根を支えています。そして、凝りすぎずシンプルで合理的な造り。また、ルネサンスに欠かせない丸いクーポラ、背後にちゃんと見ることができます。

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Photo by HarshLight[Inside San Giorgio Maggiore A look inside the church of San Giorgio Maggiore.](CC-BY2.0)

それでは、初期ルネサンス様式の代表であるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の外観も見てみましょう。

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こちらはサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の外観。写真:Italyii(イタリィ)編集部

サンジョルジョ・マッジョーレ教会とはずいぶん外観が異なりますが、これは、後期ゴシック様式の時代から大聖堂部分の建築が始まり、初期ルネサンス様式の時代にクーポラが建てられたという歴史から、ゴシック様式の特徴が色濃く出ているのではないかと考えられます。

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写真:Pixabay(CC0)

こちらはサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂を横から見た写真です。建物の右側に建つクーポラが、初期ルネサンス様式で建てられていることが分かります。

4. 17~18世紀のバロック様式:サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会(ローマ)

17~18世紀、ルネサンスのシンプルさに飽きてきたイタリアで新たに生み出された様式です。こちらはルネサンスから一転して、これでもかとコッテリした装飾が彩ります。

代表例は、ローマのサンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会。キーワードは次の3つです。

  • 曲線
  • 装飾
  • 金や色大理石

バロック様式は、今回ご紹介した様式の中で最も分かりやすいと言えるでしょう。入った瞬間に、「あ、これはバロックだ」と分かるはず。まず、全体的にうねうねと熱に浮かされたような曲線が目立ち、彫像たちも動きがあります。

そしてよく言えば絢爛豪華。悪く言えばどぎつく装飾過多。金色や色大理石を使いとにかく豪華に彩られているのが特徴です。イタリアの人々はゴシック様式を蔑称として使っていましたが、今度は、フランス側に俗悪趣味だと皮肉られ、"歪んだ真珠"という意味の「バロック」と呼ばれたのです。

出典:Flickrより
Photo by dave ungar[Chiesa di Santa Maria della Vittoria](CC-BY-SA2.0)

Chiesa di Santa Maria della Vittoria

以上、イタリアでよく出会う4つの建築様式をご紹介しました。

こうして整理してみると、どれも同じに思えていた教会にも、それぞれ明らかな特徴を持つことが分かります。教会を見学するときには、ぜひこのキーワードに当てはめながら外観や内部を見てみて下さい。

するとガイドさんの言葉にもうなずけて、これまでよりずっと教会見学を楽しむことができるでしょう。

【イタリアひとくちメモ】

イタリア建築をざっくり知識に入れておくと観光をもっと楽しむことができるでしょう。イタリアという魅力に溢れた国。「すべての道はローマに通ず」と言われる悠久の都ローマ、ルネサンス文化が開花し京都の姉妹都市でもある花の都フィレンツェ、ファッションの発信地、芸術の都ミラノ、世界にここだけしかないオンリーワンの水上都市ヴェネツィア、「ナポリを見て死ね」と言われるほど美しいナポリの街並み、「世界一美しい海岸」と言われるアマルフィ、おとぎの国のようなアルベロベッロ、イスラム文化が融合したシチリア島など、とても一度では味わいつくせないほど素敵な街がそろっています。イタリアへのツアーもたくさんありますので、あなたに合ったオリジナルな旅を探してみてください。

<時間と費用>(目安)
•旅行日数:5~12日間
•飛行時間:約12時間(羽田/成田~ローマ)
•ツアー費用:約69,800円~約490,000円

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