海外生活での一番の心配事、不安はなんといっても「健康問題」ではないでしょうか。

普段の買い物や周りとのお付き合いの場面なら、多少言葉が不便でもなんとかなることが多いものの、自分や家族の身体のこととなるとそういうわけにもいきません。英語が話せるお医者さんがいる病院もありますが少数で、ポーランド語で自分の症状を説明し、お医者さんから診断を受けるというのは、普段聞き慣れない単語（しかも重要な！）が出てくるので、なかなかハードルが高いものです。ポーランドに住み始めて６年目に入った筆者も、病院にかかるときはいつも以上に緊張します。

今回はポーランドの医療制度、公立の病院事情を少しご紹介しましょう。

ポーランドには日本と同じような国民健康保険、「国家保険基金（NFZ）」というものがあり、職場や学校で加入することができます。このNFZに加入していれば、公的医療機関の利用は"無料"です。

病院を受診する場合、一般的には国民それぞれが登録してある地元の診療所・家庭医のもとに行き、必要に応じて専門医や公立の入院施設（大病院）への紹介状を書いてもらうことになります。ただ実際のところ、公的医療機関は受診者が多くなかなか診てもらえない、また設備が古くて不十分なところも多いのが現状です。手術をするのに半年待ち、1年待ち、はたまた3年待ち、なんていう信じられないような話も聞きます。そういうわけで、急を要する場合、よりよいサービスを求める場合にはプライベートクリニックを受診することになります。このプライベートクリニックは公的医療機関ではないのでNFZのカバー外　=　医療費全額負担となり、また診察・医療行為は点数制ではないので受診料は医者の「言い値」となります。たとえば筆者が受診経験がある小児科、産婦人科、そして歯科のクリニックで言うと、一般的な診察をしてもらって、一回の支払いが80-120ズォティ（約2500円～400円）程度が相場です。ポーランドの物価が日本の物価の3分の１程度と考えると、この医療費はポーランド人にとってなかなか高額だということがおわかり頂けると思います。実情としてポーランドの人々はプライベートクリニックに行く人も多く、皆「一体何のためにNFZにお金を払っているのか...」という愚痴をこぼしているのをよく耳にします。

公立病院に入院する、となった場合、診療所やプライベートクリニックからの紹介状を持って行き、入院手続きを取ります（救急車で搬送されるなどの緊急の場合を除く）。

部屋は基本的に大部屋、3-6人部屋が多いようです。ポーランドの病室で驚いてしまうのが、患者のベッドとベッドの間に仕切りや目隠しが全くないこと！処置をしてもらう時も、見舞客が来てくれた時も、すべて周りの人に丸見え・筒抜けなのです。これは日本ではなかなか考えられないことではないでしょうか。また、トイレとシャワールームは部屋の中になく、廊下に共同のものがいくつか設置されているといます。

すべて無料だからといって、必ずしも安かろう悪かろうではなく、建物自体は古いながらも改装してあったり、掃除が行きとどいている病院も多く、また肝心のお医者さんや看護師さん達も愛想はあまりないものの、必要最低限のことはしっかりしてくれます。

ただ、ポーランドの公立病院に入院した人が皆、口を揃えていうことがひとつ...それは「食事の酷さ」。それではここで、筆者が公立病院で出産した時の一日の食事の様子を写真で公開しましょう！

①朝食
シンプルな菓子パン半個、パンふた切れにマーガリン、甘いクリームチーズ、砂糖入りの紅茶

②昼食（ポーランドでは一日のメインの食事）
野菜スープ、チキンカツレツ、マッシュポテト、人参とグリンピースの付け合わせ、砂糖入り紅茶

③夕食
パン4切れにハムふた切れ、マーガリン、砂糖入り紅茶

いかがでしょう、お世辞にも美味しそう、栄養たっぷり、とは言えないですよね...。このような食事事情なので、入院中は家族や友人などからの"差し入れ"が欠かせません。

写真③の夕食が、家族からの差し入れのおかげでだいぶバランスよく、豪華になりました↓

この公立病院の食事については「食事の酷さが、早く退院するぞ！っていうモチベーションアップになるんだよ」と言う人もいるくらいですが、今後少しずつ改善していくのかどうなのか...気になるところです。

なにはともあれ、健康が一番！なるべく異国での生活や旅行では病院のお世話にならないようにしたいものです。