2017年のサンパウロのカーニバルについてお届け。今回は後篇です。

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Hino（イーノと発音）とはポルトガル語で讃美歌や国歌を意味する。

どのSamba de escola（サンバチーム）も同じく、これからDesfle（パレード）を始めると言う時にはこのHinoを歌うものだ。今年は心新たにG.R.C.E.S.Mocidade AlegreのHinoが胸に響く、下からダンサー達の声がちょっとずれて聞こえる。そう、私はすでにAlegoria（山車）の上にスタンバイしていて、皆よりは7ｍ位上にいるからだ。

夏時間の終わったサンパウロの夜の風は時に涼しく「この上から落ちたらお仕舞いだな」とネガティブな感情が頭をよぎる。Hinoが終わるとPredidente(サンバチームのトップ)のSolange氏が皆の士気を高める言葉を言い放つ。この人は稀に見る女性のPredidene。採点の時は、いつも誰かの肩にもたれ掛かって泣くくらい繊細な人だけど、この時ばかりは力強い。

言葉を締めくくる際今年のスローガンでもある「A VItoria Vem da Luta. A Luta Vem da Força. E a Força...Da União」(戦えば勝利がやって来る、その源は強さから、強さは団結することから)3000人はいるであろうか、Mocidade Alegreのメンバー全員が声を揃えた。

山車から落ちて死んだらなんて不安も吹き飛んだ、今は踊って生きるしかない！

Bateriaの力強い太鼓の音、口ずさむ何回も歌った今年のEnredo（テーマ曲）、頭に入らないからとポルトガル語学校に持って行って訳してからさらに歌い込んだっけ。笑顔で観客に伝わるようにアピールするそれが私のDestaque（山車に乗った目立つ人）の仕事なのだものどれも無駄になっていない。

そう言えば、観客席には何人か友達が座っていると聞いた。歌いながらサンバステップ踏みながら笑顔で探す「あ、見つけた！」心の中で電気がついたようにさらに明るくわざとらしく大きく振りを踊り口を開けて歌う、ちょっとの合間に手を振ったり。約1kmあるこのAnhembiのサンバドロモで全力を出し切って踊るには声援が必要...本当に有難い、見にきてくれる友達、感謝の一言を踊りで最大限に表現する。

今年のブーツはヒールの傾斜がきつめだったので足に違和感を覚える、パレードも中盤に差し掛かった頃だ。痛い！でも踊りたいステップを踏まなきゃ。

豆は潰れ、ブーツの中は痛みと血でヌルッと滑るが、転んでなんていられない。格好つけろ！自分で自分を奮い立たす、火の鳥Fenixのくちばしが1分に1回動くのだがどうやら、背中の背負い羽根に引っ掛かってずり落とされそうだ。ええぃ、気合いだ踏ん張れ。

自分との葛藤の時間は長くも感じたが、無事にゴールした。載った時と同じように、クレーンが近づいてきて、力強い男達がダンサーを抱き上げ次々と下ろしてくれる。

地面に戻り、隣のMarianeが下りて来るなり「Visinho Parabéns!」(お隣さんおめでとう)とAbraço（抱擁）して来た。そう言えば、彼女とは1月から同じポジション同士What's upでやり取りもしたし、苦楽を共にした。衣装サンプルが上がってきた際に「どうしよう今回の衣装パンツ履かないタイプよ！」と驚きのコメントをくれたのも彼女だ。

衣装部にダンサーが掛け合った結果、ようやく赤いパンツを履いて良しという通達が来たのが1日前だった。そんなことも今となっては良い思い出だ。Carnavlのもう一つの醍醐味、新しい仲間が増えた事に感謝し、また来年も頑張ろうと誓い合いお互いヨタヨタしながら帰り道を歩いた。

今年の結果は6位だった、順位的には中間だがやりきった感があるので悔いなど無い。