

夏が訪れるたびに呼び起こされる平和への思い。
ここ、ワルシャワでも戦争の記憶は人々の心に深く刻まれている。
日本から多くの人が訪れるアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所。しかし、その前に彼らがどのような扱いを受けたのかは、あまり関心を持たれていない。
今回は絶滅収容所に送られる前にユダヤ人が強制隔離されたワルシャワ・ゲットーの遺構を紹介し、犠牲者を追悼しながら平和への祈りをささげる。
目次
ポーランドのユダヤ人の歴史
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<通りに記されたかつてのゲットーとの境界>
ユダヤ人がポーランドに来たのは1,000年以上前、当時の王の寵愛を受けてその保護のもとに移住したとされ、他の地で迫害を受けてきた彼らは、この地を安住の地とし、その後数世紀にわたって社会的権利を享受したのだった。
やがて、ポーランド各地には多くのユダヤ人が移住し、それぞれのコミュニティーが形成されたが、一方では独特の文化や宗教に固執する彼らと現地社会との間に摩擦が生じ始めたのである。
悲劇の足音
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<3.4平方キロメートルに45万人近くが隔離されたゲットーの立体地図が各所にある>
中世になると裕福になる者も現れ、また医師や教職など社会的地位の高い職業の多くを占めるようになったユダヤ人だったが、混沌とした中世ヨーロッパの変化と反ユダヤ主義の台頭の中で、いつしか彼らは妬みの対象となり、疫病や戦争などの社会不安の中で迫害の対象ともなっていった。そして、同時にポグロムと呼ばれるユダヤ人の殺戮も各地で行われるようになった。
ゲットー建設から大虐殺へ
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<ナチスによるユダヤ人迫害を表現した記念碑>
ドイツでナチスが政権を握ると反ユダヤ主義は国策となり、1939年秋にドイツ軍がポーランドに侵攻して第二次世界大戦が勃発すると各地のユダヤ人居住地で隔離収容が始まった。
開戦から1年余りの間にワルシャワに欧州最大のゲットーが建設され、他の地域のゲットーからもユダヤ人が送り込まれたため、人口は4倍に、1人当たりの面積は4畳半ほどとなり、不衛生と飢餓が蔓延することとなった。そして、ほどなくして毎日数千人が貨車に乗せられ、80km離れたトレブリンカ絶滅収容所へ送られていくこととなった。
ワルシャワ・ゲットーの遺構を歩く
1. ポーランド・ユダヤ歴史博物館
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<博物館ではユダヤ人のポーランド移住1000年の歴史を見学することができる>
遺構を訪ねる前に予備知識として見学をしておきたい、ポーランドにおけるユダヤ人の歴史を網羅した博物館。
10世紀の移住から現代まで、それぞれの時代と社会に翻弄されてきた彼らの文化・宗教・生活・歴史を10の分野に分けて展示している。アウシュビッツを含めた大虐殺に関する展示は7つ目の分野から。
日本語オーディオ案内付。見学所要時間2~3時間(参考)。簡単なユダヤ料理を食べることができるカフェもある。
ポーランド・ユダヤ歴史博物館
- 所在地:Mordechaja Anielewicza 6, 00-157 Warszawa
- 開館時間:10:00~18:00、土曜 10:00~20:00
- 閉館日:火曜
- 入館料:45ズウォティ(木曜無料)
- 公式サイト:POLIN Museum of the History of Polish Jews
2. ミワ通り18番地の記念碑と発掘調査現場
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<住宅街に囲まれて佇む記念碑>
1943年4月から5月にかけてワルシャワ・ゲットーでユダヤ人がナチスに対して行った武装蜂起に関する遺構。歴史博物館から徒歩5分。
武装蜂起末期、既に鎮圧されて窮状にあったユダヤ人レジスタンスはこの地下壕に立てこもったが、女性や子供を含むメンバーは投げ込まれた爆薬などで殺され、生き残った者は自害した。
隣の緑地帯では当時のゲットー住居の発掘が行われており、地下壕とのつながりの有無や当時の状況などの調査が行われていて見学ができる。
ミワ通り18番地発掘調査現場
- 所在地:Miła 18付近, 00-001 Warszawa
- 開場時間:12:00~17:00
- 定休日:月曜
- 料金:無料
- 公式サイト:Warsaw Ghetto Museum
ミワ通り18番地の記念碑
- 所在地:Miła 2, 00-001 Warszawa
- 料金:無料
3. 集荷場跡(ユダヤ人移送場跡)
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<かつてはここから毎日数千人のユダヤ人が絶滅収容所に送られた>
ナチス・ドイツがユダヤ人を人間として扱わなかったため、地図上の表記は「集荷場」となっているが、実際はワルシャワ・ゲットーのユダヤ人を貨車に詰め込んで移送したプラットフォームの跡。
ここから約30万人のユダヤ人がトレブリンカ絶滅収容所に送られて殺害されたといわれる。ミワ通り18番地の記念碑から徒歩5分。
集荷場跡(ユダヤ人移送場跡)
- 所在地:Stawki 8, 01-040 Warszawa
- 開場時間:24時間
- 料金:無料
4. ホードナ通りの橋
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<かつてあった木造の橋のもとに立つモニュメント>
映画「戦場のピアニスト」のシーンにも登場する木造の橋の跡。かつて南の「小ゲットー」と北の「大ゲットー」を往来するため、非ユダヤ人の生活区域である「アーリア人区域」の通りをまたいで建設された。
ゲットーの住人は壁の外の自由な生活を眼下に見ながら渡ったが、立ち止まることは許されなかった。
集荷場跡近くのバス停・Dzika 02から157番のバスと徒歩で15分。
ホードナ通りの橋
- 所在地:Chłodna, 00-867 Warszawa
5. ワルシャワ・ゲットーの壁
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<かつてゲットーを囲んだレンガの壁>
総延長約18kmもあった壁のうち、残っている数少ない部分。大戦前に建てられた高さ6mのレンガ壁は現在は私有地となっており柵で囲われているが、時間帯によっては入場可能。ホードナ通りの橋近くのバス停・Chłodna 01から157番のバスと徒歩で15分。
ワルシャワ・ゲットーの壁
- 所在地:Złota 62, 00-823 Warszawa
- 開場時間:16:00~20:30、土曜 9:00~13:00、日曜 24時間(※予告なしに閉場する場合あり)
- 料金:無料
まとめ
ユダヤ人が強制収容所で虐殺される前には一体何が起こっていたのか。
アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れる前に、その経緯を少しでも学び、犠牲者に追悼を捧げ、平和を祈ろう。
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タカシ
- 昭和生まれのフリーランスカメラマン兼観光ガイド。かつては旅行雑誌の取材等で各地に赴き、気が付けば海外居住歴が30年近くになっていた。経験を生かしてガイドをしながら旅のフォトスーリーを発信中。妻は外国人、家族4人で2015年からワルシャワに住む。趣味は家庭料理、写真撮り、地元の歴史や文化探訪、野山歩き。
































