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バルカンの秘境、アルバニアの魅力|1. ダークな歴史を学ぶ旅

アドリア海に面するアルバニアという国をご存じでしょうか?
ヨーロッパで唯一、国民の大半がイスラム教徒である国で、ギリシャ、北マケドニア、コソボ、モンテネグロと国境を接し、アドリア海の対岸はイタリアであるため、ギリシャやイタリアに似た雰囲気・環境でありながら、物価が安い、観光の穴場スポットなのです。
東西冷戦時代には、鎖国政策を取り共産主義が続き、「ヨーロッパの北朝鮮」と呼ばれた歴史を持つ非常に特殊な欧州の一国。アルバニアの観光地としての魅力を、数回に分けてご紹介します。
目次
ヨーロッパの北朝鮮?アルバニアとは
日本ではあまり馴染みのないアルバニア。西部ではアドリア海を望む美しいビーチが、内陸部では山々や渓谷などの自然を楽しめ、ヨーロッパ最後の秘境とも呼ばれ近年人気の出ている観光地です。
日本からアルバニアの首都ティラナまでの直行便はないため、経由便を利用します。最も本数が多く便利なのはローマ乗り換え便です。その他、イスタンブールやドバイを経由する方法もあります。
アルバニアはEU加盟候補国ではあるものの、まだ正式加盟をしておらず、シェンゲン域外です。日本のパスポート保有者は90日以内の観光であればVisaは必要ありません。
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<Bunk Art2 公式サイトより>
ユーロではなくレク(Lek)という通貨を使います。1レク=1.8円(2025年10月10日時点)ですが、円での両替レートは悪いため、ユーロを持参し必要に応じて両替するか、市内のATMでレクを引き出すほうが良いでしょう。
ホテルや観光客向けレストランでは、ユーロでの支払いを受け付けてくれるところもあります。沿岸部の夏は非常に暑い一方で、冬も比較的寒くありません。
しかし、内陸部の冬は極寒となるため、ビーチも内陸部も楽しめる5月から9月末までがおすすめです。言語はアルバニア語ですが、都市部や若年層の人々は流ちょうな英語を話します。
今回は、ヨーロッパの北朝鮮とも呼ばれた、共産時代のアルバニアを学ぶことのできる二つの博物館をご紹介します。
壮大な核シェルター跡地|Bunk Art 1
1946年にアルバニア人民共和国を建国した、共産時代のリーダー、エンヴェル・ホッジャ。ホッジャ政権は、イタリアやドイツの支配にあったアルバニアの解放を指導しました。また、農業や教育を重視していた彼は、食糧自給を達成したり、識字率を98%まで伸ばすような政策を実現しました。
その一方で、外部からの核攻撃を異常に恐れ、国内に75万以上の核シェルターを建設しました。Bunkerと呼ばれるこの核シェルターは、セメントで固められた半球の形。
町のいたるところ、国の全土にこのシェルターが存在します。このシェルターの跡地を博物館にしたのがBunk Art1と2。アルバニアの共産主義時代の歴史と文化を理解するための重要な施設となっています。
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<入り口に佇むガスマスクをつけた軍人の人形>
共産政権の崩壊以降、軍事目的に使われていたこのシェルターは、2014年にアルバニアの独立70周年を記念して、初めて一般開放されました。その後、2016年に、博物館として開館しました。
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<ホッジャのプライベートルーム>
Bunk Art 1は地下5階、106の部屋からなる巨大なシェルターで、ホッジャとその右腕であった首相のための寝室なども用意されていました。中には中国製の酸素生成装置もいたるところに設置され、核攻撃をされた時に備えた設備が残っています。
この博物館では、第二次大戦から共産政権終わりまでのアルバニアの歴史を学べます。
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<シェルター建築のために多くの人が犠牲になったそう>
Bunk Art 1 はTirana郊外に位置しており、バスもしくはタクシーでアクセスする必要があります。バスの場合、市内中心部のBibliotekaバス停から11番バスPorcelan行きに乗り20から30分程度で着きます。
料金は40レクです。タクシーの場合は渋滞により15-20分で着きます。また、Bunk art 1はダジュティ山(Dajti)の麓近くに位置しています。近くには山頂へつながるケーブルカーの停留所もあり、頂上からはティラナを一望することができるため、あわせての観光もおすすめです。
Bunk Art1
- 所在地:Rruga Fadil Deliu, Tiranë 1001 Albania
- 開館時間:9:30〜18:00
- 休館日:無し
- 公式サイト:Bunk Art1
市街地に突如現れるBunk Art2
Bunk Art2はBunk Art1に比べ規模は小さいですが、市内中心部に位置するためアクセスが容易で、内部の部屋数も24と規模も小さく短時間で見学が可能です。
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こちらの博物館は、共産時代の秘密警察に焦点を当てた展示がしてあります。建物内部に入ったら、まず目に入るのは天井に貼られた人々の写真。彼らは共産時代のSigurimiと呼ばれる秘密警察の犠牲者たちです。
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Bunk Art 2では、当時の内務省と秘密警察がどのように人々を監視、洗脳、不当に逮捕していたか、展示品とともに学ぶことができます。当時は、電話はもちろん、家の中にも盗聴器が仕掛けられたりと、共産政権批判をする人々にとても厳しい処罰が与えられていました。
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1944年から共産政権が崩壊するまでの間、アルバニアは鎖国政策を取っていましたが、この間国民はアルバニアを出ることさえ許されていませんでした。
国境を無断で渡り亡命しようとする国民は、秘密警察によって捉えられ、死刑などの処罰を受けることも。1989年に共産政権が倒れるまで、アルバニアの人々の自由のない生活が続いたのです。
Bunk Art2
- 所在地:Street Abdi Toptani, Tiranë, Albania
- 開館時間:9:30〜18:00(金~日曜 19:00迄)
- 休館日:無し
- マルチメディアサイト: Bunk Art2
まとめ
今回はアルバニアの歴史における影の部分、エンヴェル・ホッジャによる共産時代を肌で感じ、学ぶことのできるBunk Art 1および2を紹介しました。
核シェルターに一歩足を踏み入れると、当時を直接肌で感じられます。旧共産圏という数少ない国のうち、欧州に位置し観光のしやすいアルバニアでその歴史に触れてみてはいかがでしょうか?
次回はアドリア海のビーチ、内陸部のUNESCO遺産を含む観光地をご紹介します。
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Saori K. Courtois
- 西アフリカ在住の国際公務員。アフリカの日常的観光スポットから~旅行に役立つ情報まで幅広くお届けします。




























