関門海峡を渡って下関と門司港をめぐる!源平合戦の面影とレトロ建築を満喫

関門海峡

本州と九州を隔てている関門海峡は、山口県の下関と福岡県の門司港が向かい合うエリア。優美な吊り橋の関門橋が、二つの人気の観光地を繋いでいます。この地域は「関門"ノスタルジック海峡"~時の停車場・近代化の記憶~」として日本遺産にも認定されており、歴史と文化が色濃く残る魅力あふれる場所です。
旅行者が両方の街を行き来するには、連絡船と関門トンネル人道の利用が便利。こちらを使って、下関では平家ゆかりの観光スポットを、門司港ではレトロ建築の街並みを楽しんできました。グルメも充実しています!

目次

重要文化財!風格のある門司港駅に到着

今回の旅は北九州から出発しました。門司港のシンボルである門司港駅へは、小倉駅からJR鹿児島本線に乗り、14分ほどで到着します。

1914年に創建されたネオ・ルネッサンス様式の駅舎は、「門司港レトロ」と称される明治・大正時代の建築群の中でも、別格の存在感。実は木造建築で、外壁は石貼り風のモルタル塗装、屋根は天然の石盤葺きです。

優美な駅構内には、切符売り場の窓口が再現されており、当時の雰囲気が漂います。旧一・二等待合室は、現在はみどりの窓口と観光案内所になっており、到着時に立ち寄ることをおすすめ。

門司港観光の相談をしたり、周辺マップなどをもらったり、旅の情報集めに使えます。

門司港駅の堂々たる駅舎
<門司港駅の堂々たる駅舎>

再現されたダークブラウンの切符売り場が目を引く駅構内
<再現されたダークブラウンの切符売り場が目を引く駅構内>

門司港駅

  • 住所:福岡県北九州市門司区西海岸1-5-31
  • 休日:無休
  • みどりの窓口の営業時間:7:30~19:00
  • 公式サイト:JR九州

関門連絡船で5分、下関へ

この日はまず連絡船で下関へ行き、帰りは関門トンネル人道で、歩いて門司港へ戻ることにしました。門司港駅から西へ3分ほど歩くと、下関へ渡る連絡船「関門汽船」の乗船口である門司港桟橋(マリンゲートもじ)があります。

門司港桟橋から、下関の唐戸1号桟橋までの乗船時間はわずか5分。関門海峡の東側に架かる雄大な関門橋を眺めながら、あっという間に九州と本州の間を行き来できます。

西側には宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘の地として知られる巌流島も見えるので要チェック。連絡船は毎時20分間隔で運航されています。

下関への連絡船の乗船口
<下関への連絡船の乗船口>

連絡船から眺めた関門橋は雄大
<連絡船から眺めた関門橋は雄大>

門司港桟橋(マリンゲートもじ)

  • 住所:福岡県北九州市門司区西海岸1-4
  • 運行時間:6:15~21:50 ※時刻表は公式サイトをご確認ください
  • 運賃:片道 大人400円/小人200円
  • 公式サイト: 門司港桟橋

下関の台所、唐戸市場へ。ふぐで腹ごしらえ!

下関へ上陸し、唐戸1号桟橋から海沿いのボードウォークを東へ歩くと、巨大な唐戸市場が見えてきます。魚介類があふれる卸市場へは、観光客も入ることができ、食材の購入や新鮮な魚介で作られたお料理を楽しめます。

筆者はお昼過ぎに訪れて、2階の「海転からと市場寿司」で、ふぐやマグロなどのお寿司を食べました。新鮮な寿司ネタがたまらない美味しさ!しかもお手頃価格です。唐戸市場は15時に閉場するので、早めの時間に行くことをおすすめします。

唐戸市場
<唐戸市場>

2階の「海転からと市場寿司」でふぐのお寿司などを満喫7.jpg
<2階の「海転からと市場寿司」でふぐのお寿司などを満喫>

唐戸市場

  • 住所: 山口県下関市唐戸町5-50
  • 電話:083-231-0001
  • 開場時間:5:00~15:00、日曜・祝日 8:00~15:00
  • 休場日:不定休 ※公式サイトをご確認ください
  • 公式サイト: 唐戸市場 

安徳天皇を祀る赤間神宮...平家一門の墓や耳なし芳一像も!

唐戸市場を出て国道9号線を北東方面へ歩いていくと、朱塗りの門が美しい赤間神宮にたどり着きます。ここは1185年の壇ノ浦の戦いで、幼くして崩御した安徳天皇を祀る神社。平家一門の墓もあります。

前身は阿弥陀寺というお寺で、明治時代の廃仏毀釈により、現在の神社になりました。関門海峡を見守るように立つ水天門は、龍宮造りと言われる建築様式。

昔話の竜宮城を思い起こさせる門を見ると、「波の下にも都あり...」と海に身を投じた、安徳天皇と平家一門を慰霊する場所であることがひしひしと伝わってきます。水を張った水庭を持つ、壮麗な拝殿にも注目です。

赤間神宮の水天門
<赤間神宮の水天門>

水を張った水庭が輝く拝殿-9.jpg
<水を張った水庭が輝く拝殿>

安徳天皇の御陵があるのは水天門の西側。数え年八歳で亡くなった幼い天皇を、静かに護るようなたたずまいが印象的です。菊の御紋を戴いた門と白い土塀が、厳かな空気を湛えています。

安徳天皇の御陵
<安徳天皇の御陵>

境内に入って宝物殿の西の奥へ進むと、平家の人々を祀る「七盛塚」と、「耳なし芳一堂」が隣り合って立っています。そう、赤間神宮の前身の阿弥陀寺は、あの有名な琵琶の名人、芳一の物語の舞台なのです!

お堂には耳のない芳一が琵琶を弾く木像が安置されており、「ここに平家一族の霊が集って、琵琶の調べを聴いたのかな...!」などとつい考えてしまいます。架空の物語ですが、隣に立つ七盛塚の静かな迫力と相まって、いろいろと想像を掻き立てられる場所です。

平家一門を祀る七盛塚
<平家一門を祀る七盛塚>

耳なし芳一堂の木像
<耳なし芳一堂の木像>

赤間神宮

  • 住所:山口県下関市阿弥陀寺4-1
  • 電話:083-231-4138
  • 参拝時間:6:00~18:00
  • 休日:無休
  • 入場料:無料(宝物殿は入館料100円)
  • 公式サイト:赤間神宮

壇之浦古戦場跡で源平合戦に思いを馳せる

赤間神宮を後にして、国道9号線をさらに歩くと、巨大な関門橋を越えたところに「みもすそ川公園」があります。公園の前に広がる海は、関門海峡の一番狭まったところ。ここが源平合戦の最終決戦となった、あの壇ノ浦なのです。

海を見渡す公園の一角には、源義経が八艘飛びをする様子と、平知盛が碇を担いで入水する様子が、ブロンズ像で再現されています。

ふたりの武者像の隣には、安徳天皇を抱いて入水した二位尼(平時子)の辞世の句「今ぞ知る みもすそ川の 御ながれ 波の下にもみやこありとは」の歌碑もあります。

この海で日本の歴史を変えた苛烈な戦があったんだ...!と、深い感慨を覚えずにはいられません。

みもすそ川公園の源義経(左)と平知盛の像。背後には関門橋が見える
<みもすそ川公園の源義経(左)と平知盛の像。背後には関門橋が見える>

安徳帝の入水と二位尼の辞世の句を記した石碑
<安徳帝の入水と二位尼の辞世の句を記した石碑>

また、ここは幕末の下関戦争で、長州藩の砲台が設置された場所。現在は列強四国を砲撃した大砲のレプリカが並び、関門海峡に砲身を向けています。

そのうちの一つは、100円を入れると砲撃の音とともに、煙が出てくるという凝った仕掛けが!ここはぜひ歴史の追体験をするべし...と筆者も100円を入れてみました。

潮流の速い海峡に向かって砲撃音が3回響き、砲身から煙がボフッと出る様子は結構な迫力。こちらを試す際には、写真よりも動画で噴射の瞬間を撮影するのがおすすめです。

砲身から煙を噴射した大砲のレプリカ
<砲身から煙を噴射した大砲のレプリカ>

みもすそ川公園壇(壇之浦古戦場跡)

  • 住所:山口県下関市みもすそ川町
  • 営業時間:常時開園
  • 休日:無休
  • 入場料:無料
  • 公式サイト:山口県観光サイト

関門トンネル人道を歩いて九州へ再上陸

みもすそ川公園から国道9号線を渡った向かいには「関門トンネル人道」の入り口があります。 頭上にそびえる関門橋は自動車でしか渡れませんが、海底にのびるこのトンネルは、徒歩あるいは自転車で渡ることができるのです。

自分の足で本州と九州の間を渡れることに、冒険心をそそられますよ。

関門トンネル人道の入口-16.jpg
<関門トンネル人道の入口>

このトンネルの歩行者の通行料金は無料。まず入口でエレベーターに乗り、下関市側は地下約55メートル、門司区側は約60メートルの地点まで降ります。

エレベーターから出たホールには、関門トンネルのマップや構造の解説が充実。ひととおり読み込んでから、通行を開始します。全長約780mのトンネルの中は右側通行です。

下関側からトンネルを通って門司へ出発
<下関側からトンネルを通って門司へ出発>

トンネル内の壁には、門司と下関までの各距離を示す標識とともに、魚の絵が至るところに描かれていて海底であることを実感。トンネルの中間あたりには、山口県と福岡県との県境の標識があり、気合を入れて飛び越えてしまいます。

海底の県境をまたぐなんて、貴重な体験ですよね。下関・門司間の徒歩での所要時間は、約15分です。

トンネルを彩る魚の絵が可愛い
<トンネルを彩る魚の絵が可愛い>

山口県と福岡県との県境。ここは海底!
<山口県と福岡県との県境。ここは海底!>

関門トンネル人道

  • 住所:山口県下関市みもすそ川町(下関側入口)
  • 営業時間:6:00~22:00
  • 休日:無休
  • 入場料:歩行者 無料/自転車・原付 片道20円
  • 公式サイト:山口県観光サイト

ノーフォーク広場からの関門橋が絶景

関門トンネル人道の門司側の入口から外へ出ると、海沿いの散策路「めかり観潮遊歩道」から、「ノーフォーク広場」へと続くエリアがあります。

このあたりから眺める関門橋はとりわけ雄大。海上に屹立する巨大な橋脚が、潮流の速い海に映えています。広場の海沿いには、関門橋をゆっくり見られるよう、ベンチがずらりと並んでいますよ。

九州と本州を繋ぐ橋の大きさを改めて実感します。トンネルを渡った後のひと休みにおすすめです。

橋の右が九州、左が本州。圧倒的な迫力の関門橋
<橋の右が九州、左が本州。圧倒的な迫力の関門橋>

ノーフォーク広場

門司港の瀟洒(しょうしゃ)な建築群をめぐる

ノーフォーク広場から遊歩道を南へ歩くと、門司港観光の中心部「門司港レトロ」のエリアに戻ってきます。かつて国際貿易港として活躍したこのエリアには、明治・大正時代の優美な洋館が勢ぞろい。

前述のJR門司港駅をはじめ、八角のガラス張りの塔屋が目立つ旧大阪商船、赤レンガの外壁が風格のある旧門司税関、端正なハーフティンバー様式の旧門司三井倶楽部、とんがり帽子のような屋根が可愛い大連友好記念館などが、多くの観光客を惹きつけています。ノスタルジックな建物は、SNS映えすること間違いなし。たくさん写真を撮りたくなりますよ。

旧大阪商船
<旧大阪商船>

旧門司税関
<旧門司税関>

門司港レトロ

壮麗な旧門司三井倶楽部で、門司港名物の焼きカレーを堪能

門司港レトロの華やかな建築物の中で、筆者が特に心惹かれたのは、旧門司三井倶楽部です。三井物産の社交倶楽部として1921年に門司区谷町に建てられたこの館は、1998年にこのエリアに移築されました。

典雅な外観にふさわしい屋内は、各部屋にマントルピースが配置され、木製の階段の手すりやドア枠などにアールデコ調の優美な装飾が施されています。

この館には、アインシュタイン博士夫妻が1922年に来日した時に滞在したそう。夫妻が宿泊した部屋は、「アインシュタインメモリアルルーム」として一般公開されています。華やかで温かみのある内装に見入ります。

旧門司三井倶楽部
<旧門司三井倶楽部>

優美な内装のアインシュタインメモリアルルーム
<優美な内装のアインシュタインメモリアルルーム>

旧門司三井倶楽部でのもう一つのお楽しみは、1階のレストランで食べる「焼きカレー」。門司港の名物メニューです。貿易港として栄えていた門司港では、古くから洋食文化が発達しており、昭和30年代にとある喫茶店がカレーをドリア風にして焼いた料理が、地域の名物として広まったそうです。

こちらのレストランでは、天井の高い豪奢な部屋で、海鮮焼きカレーを食べられます。ふぐやエビが入ったオリジナルソースのカレーは、極上の美味しさで食べ応えたっぷり。クラシックな内装を眺めながら、贅沢な気分を味わえます。港町の豊かさがぎゅっと詰まったお食事です。

1階にある「和洋レストラン 三井倶楽部
<1階にある「和洋レストラン 三井倶楽部」>

海鮮焼きカレー
<海鮮焼きカレー>

旧門司三井倶楽部

  • 住所:福岡県北九州市門司港町7-1
  • 電話:093-332-1000
  • 営業時間:9:00~17:00
  • 「和洋レストラン 三井倶楽部」営業時間:ランチ 11:00~14:00/カフェ 14:00~17:00/ディナー 17:00~21:00 ※ディナーは予約のみ
  • 休日:無休(レストランは不定休)
  • 入場料:無料(アインシュタインメモリアルルーム、林芙美子記念室は大人150円/小中学生70円)
  • 公式サイト:旧門司三井倶楽部

門司港レトロ展望室から宝石のような夜景を一望

門司港は夜景の美しさでも有名です。大連友好記念館のすぐ近くにある門司港レトロ展望室は、103メートルの高さから関門海峡を一望できるビューポイント。

黒川紀章氏設計の高層マンション『レトロハイマート』の31階が、カフェテリアを備えた展望室になっているのです。こちらは22時まで営業しており、関門海峡の両岸に広がる宝石のような夜景を見ることができます。

門司港レトロ展望室から眺めた関門海峡の夜景
<門司港レトロ展望室から眺めた関門海峡の夜景>

直通エレベーターで31階まで上がると、展望室のガラス越しに、ライトアップで輝く関門橋や門司港レトロの華麗な洋館、対岸の下関の街まで眺めることができます。

九州と本州が闇夜に浮かび上がる様子を、高みから望めるのはお得な気分。門司港駅や旧大阪商船、旧門司三井倶楽部などのクラシックな建物がライトに照らされる光景は、昼間よりさらにタイムスリップしたような気分になりますよ。

ライトアップされた洋館が浮かび上がる光景28.jpg
<ライトアップされた洋館が浮かび上がる光景>

門司港レトロ展望室

  • 住所:福岡県北九州市門司区東港町1-32
  • 電話:093-3210-4151
  • 営業時間:10:00~22:00
  • 定休日:無休(メンテナンスの為休館日あり)
  • 入場料:大人300円・小中学生150円
  • 公式サイト:門司港レトロ展望室

まとめ

関門海峡を挟んで向かい合う下関と門司港は、壮大なスケールの史跡と自然美に恵まれたエリアです。以下の点を心に留めながら、散策を楽しんでくださいね。

  • 門司港駅へは、小倉駅からJR鹿児島本線で14分ほどです
  • 旅行者が下関と門司港とを行き来するには、連絡船と関門トンネル人道の利用が便利です
  • 下関←→門司港へ渡る連絡船(関門汽船)の乗船時間は約5分です
  • 下関の唐戸市場では、一般客も買い物や食事を楽しめます
  • 赤間神宮は壇ノ浦で崩御した安徳天皇を祀る神社です。平家一族の塚や耳なし芳一堂もあります
  • 壇之浦古戦場跡のみもすそ川公園には、平知盛と源義経のブロンズ像や、長州藩の大砲のレプリカがあります
  • 関門トンネル人道は徒歩での通行無料。下関←→門司を徒歩約15分で渡れます
  • 関門トンネル人道の門司側の入口に近い「ノーフォーク広場」周辺から見る関門橋が見事です
  • 門司港レトロ地区には明治・大正時代の優美な洋館が立ち並んでいます
  • 旧門司三井倶楽部では、アインシュタイン博士夫妻が滞在した優美な部屋などを見学でき、1階のレストランでは名物の焼きカレーを楽しめます

それでは、歴史と建築物、グルメを楽しむ素敵な旅を!

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朝茶

ライター/英和・和英翻訳者。出版社に11年勤務後、2009年にシンガポールに転居。東南アジアの文化と料理にハマる。2013年に帰国した後は日本文化に改めて関心を深め、今はとにかく国内各地を旅したいです!

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