2024年10月開館!GEM(大エジプト博物館)の魅力に迫る

ピラミッド真横という好立地にそびえ立つ近代的な建物こそがGEM、日本名「大エジプト博物館」。日本政府が全面的な資金協力、技術支援を施していることもあり、壁画風に作られた巨大な博物館タイトルには日本語も記されています。

10万点以上の遺物が展示されており、エジプト史上最も広大で革新的なスポットの1つとなりました。近郊のピラミッド、スフィンクスと併せて回ることでより深くエジプトを知れることでしょう。

2024年10月16日にいよいよグランドオープン(※1)したGEM(Grand Egyptian Museum)の見どころを現地ライターがご紹介します。

※1:ツタンカーメンの黄金マスクが移送される予定ですが、こちらはまだ(2024年11月時点)タハリールのエジプト考古学博物館に収蔵されています。2024年10月16日からツタンカーメンの財宝エリアを除く全てのエリアが一般公開されています。

目次

GEMとは

GEM
<館内エントランス。左上付近、タイルが1枚剥がれていますが、これは損壊ではありません!館内のラムセス像の顔に年に2度、太陽光が当たるようにするためです。>

GEM(Grand Egyptian Museum /以下GEM)建設の始まりは20年前に遡ります。エジプト政府は、エジプトが保管する世界最大数の財宝や遺物を展示、収蔵するための新しい博物館の建設を発表しました。

2005年に建設が始まりましたが、財政、政治上の問題で難航し、その後2011年にアラブの春が勃発。この影響で工事は完全にストップし、またデモの影響で観光客も激減したため計画は頓挫していました。

日本は2006年の時点でエジプトへの円借款(総工費630億円、日本はうち350億円資金協力)を約束していますが、度重なる外的要因により諦めざるを得なくなっていたようです。しかし、2014年、国際融資の助けもあり建設が再開されます。当初は2018年オープンの予定でしたが、2019年、2020年...2023年...オープン目標は毎年打ち砕かれ、ようやく迎えた2024年10月16日、待望の一般公開が開始されました。

設計計画が開始されてから今日まで、技術協力を行なった『国際協力機構(JICA)』、設計監修や工事管理を担った『山下設計』、遺物の運搬に携わった『日本通運』、遺物の修復作業を手伝った専門家の方など延べ数万人の日本人が建設に携わりました。

その恩義から、『大エジプト博物館』というタイトルの他、至る所に日本語の表記が見られます。日本人としてなんだか嬉しいですね。ですがエジプト現地では、邦人を含む外国人、エジプト人からも通称GEMの呼び名で親しまれています。エジプトで人に尋ねる時などはGEMと呼ぶ方が良いかもしれません。

展示物は、先史時代からファラオ文明、古代ギリシャ・ローマ時代まで幅広く収蔵されています。ツタンカーメン王の黄金マスクを含む財宝コレクションも現在収蔵されているエジプト考古学博物館より移送される予定ですが、現状の中東情勢を踏まえて現段階では時期未定となっています。

GEMのチケット購入方法

オベリスク
<入場ゲートを入ると圧倒的な存在のオベリスクがお出迎え。>

こちらは「The Hanging Obelisk」。オベリスクの下に立って下からオベリスクを見上げることができます。また、床がガラス張りになっており、見下ろすとオベリスクが宙に浮いたように見えるそうです。それでもってHangingなのですが、現在(2024年11月時点)はオベリスクの下には入れませんでした。

チケット購入

チケットは、現地チケットオフィスでも購入可能ですが、来館したい日時が決まっている場合など事前オンライン予約も可能です。

【チケット料金】

  • 大人:1,700 Egyptian pound(英語ガイド付き)
  • 大人:1,400 Egyptian pound(ガイド無し)
  • 子ども:850 Egyptian pound(4歳以上/3歳以下無料)

※オンラインサイトではガイド付きのチケットのみの販売となっております。ガイドなしをご希望の場合は現地チケットオフィスにてお求めください。

【開館時間】

  • 8:30〜18:00(来館時間は9:00~ 最終入場は16:00時迄)

※オフィシャルツアーは朝9時から1時間毎に開催されています。チケット記載の入館時刻ちょうどに入館するとツアーに間に合いません。

ツアー付きチケットの場合は記載時間の少し前には入館しておくことをお勧めします。ツアー所要時間は約1時間。ツアーにご参加の場合、ガイドの声が離れていても聞こえるようにトランシーバを装着します。トランシーバの受け取り場所は入館して左の窓口です。

トランシーバを装着すると、ご自身のガイドの音声が一定距離内であれば聞こえる仕組みとなっています。

GEM 塔
<奥に見える窓口がトランシーバ受取・返却窓口です。ガイドの姿が見えない時はどこに向かえば良いかもあわせて聞いておきましょう>

GEMの魅力!ここを見て

いよいよ館内へ!10万点の展示物の中からピックアップしてご紹介いたします。

ラムセス2世像

ラムセス2世像
<館内に入って1番最初の見どころです。この像の前で記念撮影をする人が多いので、シャッターチャンスはほんの数秒!>

83t、高さ14mのこの巨大なラムセス2世像は、紀元前1213年に建造されました。1820年、イタリア人の学者によって6つに割れた状態で発見されてからは時間をかけて修復作業が行われ、現在の姿となりました。

エジプトに来ると、至る所でこのラムセス2世像を見かけますが、このように現状の保存状態がよく、独立(背中が壁にくっついていたりせず背後からも人の形として認識できる)しているラムセス2世像はここでしか見られないのではないでしょうか。

前面ばかりに目が行きますが、背中部分には綺麗にカルトゥーシュが残っていてとても綺麗です。このラムセス2世像は、ラムセス駅前広場(現カイロ駅前)に設置されていたことで有名ですが、2006年にGEMへの設置が決まってからは、良好な保存状態を保つためにギザの保管庫で保管されていました。

なにかと移動の多いラムセス2世像ですが、昨年2023年に4度目の引越しを経て無事GEMへと設置されました。

「博物館」の文字

博物館の文字
<また日本語を発見。館内のゲートを通り、一番手前の階段の壁>

この場所はあまり人がおらず、かつ遺物の近くに寄れるので写真撮影にも最適です。この先にもいくつか日本語が彫られた壁があります。いくつ見つけられるか遊び心を持ちながら巡っていきましょう。

日本語タイトルの付けられた展示品

日本語タイトルの付けられた展示品
<「階段は立派な展示エリアです」とも言わんばかりの展示数>

3階の展示室へと続く一番奥の階段エリアにも重要な遺物が置かれています。こちらは全て複数の言語でのタイトル表記があり、日本語タイトルが一番上に来ています。

展示室


展示室
<サフラー王の石柱とまぐさ石 ヒエログリフもしっかり残っています>

展示室内へ!洗練された展示方法

2万平方メートルを超える展示室内は先史時代から始まり、奥に行くほど新時代になるように展示されています。同じ時代の中でも「Society(社会)」「Kingship(王権)」「Beliefs(信仰)」に分かれているので、初心者でも理解しやすいのではないでしょうか。

展示室
<雰囲気のある展示室内>

壁画
<先史時代エリアに展示されている壁画>

日本人の専門家が修復に携わっているそう。修復時の塗り直しはしておらず、描かれた当時のままの色彩です。

ハトシェプスト女王
<ひざまずくハトシェプスト女王>

ひざまずく王家の像は比較的ポピュラーだが、等身大以上の像を作ったのはハトシェプスト女王の彫刻家たちが初めてだといわれています。ハトシェプスト女王といえば、有名な神殿(葬祭殿)がルクソールにありますね。

メンホテプ3世のセド祭
<アメンホテプ3世のセド祭(王位更新祭)の儀式の一部始終が描かれている石>

アメンホテプ3世は、2020年に彼の時代の古代都市「アテンの日の出」が発見されたことにより注目を集めています。非常に発展していた栄華な都市で、彼が統治した時代は38年と長かったことからも繁栄していたことが窺い知れます。

「最期は歯槽膿漏で亡くなった」という逸話を聞いたことがある方もいるのではなでしょうか。この巨大な壁画をGEMまで運搬したのが、日本を代表する運送会社、日本通運さんです。

棺の変化に注目しよう

エジプトに観光に訪れると、たくさんのミイラや棺を目の当たりにするかと思います。時代ごとに素材や棺に記される内容が変化しており、面白いです。

ミイラ型の石棺
<保存状態の良いミイラ型の石棺。前面にのみ絵とヒエログリフによる碑文が刻まれています。左のヘケヌトの石棺の胸部に彫られた絵は、墓のベッドに横たわる女性がオリシス神と同一視されている様子が描かれています。>

碑文
<腕の形まで綺麗に彫られています。こちらは全体に隈なく絵と碑文が彫られていますね。どうやらワンシーンの描写ではなさそう>

木館
<長方形の木館。素材は木材が主流になってきたのでしょうか>

木館
<紀元前10世紀から8世紀にかけての木館 掘るだけでなく、漆喰や顔料で色付けされている点が文明の進化を感じさせてくれます>

いかがでしょう。10万点に及ぶ展示品のごく一部をご紹介させていただきました。博物館内は個人での見学の他、外部ツアーに参加して訪れることも可能です。

エジプトでも着々と旅行会社の準備が進んでいるので、そのうち日本語ガイドさんも出てくるのではと勝手ながらに思っております。オフィシャルツアーに参加した感想ですが、比較的日本人には聞き取りやすい英語だったかと思います。

やはりガイドさんの説明を聞きながら見ると、興味深い発見が多くありました。お時間がある方は是非ガイドをつけて回ることをお勧めします。

お子様連れ、高齢者にも優しいGEM

弱者に優しい国と言われるエジプト。館内ユニバーサルデザイン設計となっており、どなたも快適に利用することができます。お手洗いも車椅子やベビーカーでも広々使える個室トイレがあり、清掃も行き届いていました。

地上階から展示室まで運んでくれるスロープ式エスカレーター/エレベーター

スロープ式エスカレーター/エレベーター
<階段を登る必要はありません。車椅子やベビーカーの方も安心>

Children Museum

Children Museum
<地上階からワンフロア上がったところにあります。>

興味があったのですが、筆者が訪れたのが金曜日であったため閉まっていました。金曜以外は毎日空いているそうです。金曜日の正午に1週間で一番大事なお祈りがあるので、空いているだろうという目論見が裏目に出てしましました。。。(ローカルな場所など、金曜日は閉店のお店も多いです)

「Children Museum」にご興味のある方は金曜以外に行かれることをおすすめします。内部は子どもが楽しみながら古代エジプトを学べる空間となっているそうです。

Children Museum
<公式サイトより引用>

エジプトは非常に親日国です。GEMでなくても言えることなのですが、日本人(特に女性と子ども)はことあるごとにエジプト人から写真撮影をお願いされます。

気が向いた時に一緒に撮ってあげるのもよし、嫌な時ははっきり断っても大丈夫です。一度撮ってあげると次から次へと寄ってくるので注意が必要です。

GEM内のおすすめレストラン・ショップ

レストラン・ショップ
GEMオフィシャルショップ内一角。モダンで可愛いアイテムがたくさん>

イートインできるレストラン・カフェテリアなど飲食店が計6店舗の他、GEM Official Shopを含む商業施設が複数入店しています。(2024年11月時点)

数ある中から筆者のおすすめをかいつまんでご紹介します。

レストラン

ZööBa
<ZööBa>

エジプト人の若者を中心に人気が広まった「ZööBa」 。カイロ近郊でチェーン展開しているので旅行中に目にすることが多いかもしれません。カジュアル志向のエジプト料理レストランです。

味はとても美味しいです。コスパが良く、1皿を大人数で分けたくなる量です。エジプトピザ、ファティーラは子どもでも食べやすくおすすめです。

NORTH
<30 NORTH>

こちらも今エジプトで店舗展開しているオシャレカフェ、「30 NORTH」。大型のショッピングセンターによく入っており、イケてるビジネスマンが仕事をしているイメージです。

一応コーヒーショップなのでメニューはバーガーやサンドイッチ、シャワルマをアレンジしたものなど、コーヒー片手に食べられるようなものが多いです。エジプトではお高めの部類ですが、味はとても良いです。

雑貨

カフェ
<スタバやLADURÉEなどお馴染みのカフェもあります>

ショッピングエリア

GEM Official Shop
<GEM Official Shop>

エジプト在住邦人の間でもおしゃれだと話題になっているGEM公式のお土産屋さん。大切な人へのお土産やエジプトへ来た記念にいかがでしょうか。生活用品がメインのお店ですが、筆者個人的には日本でも普通に使えるな、と思うものばかりです。

雑貨

雑貨
<クッションケースその他。エジプトモチーフのおしゃれ雑貨はここでしか手に入りません>

マグネット
<ご当地マグネット、集められている方も多いのでは?エジプト歴2年の筆者も初めて見るものばかりです>

カルトゥーシュにしてパピルスに印字してくれる機械
<ご自身のお名前をカルトゥーシュにしてパピルスに印字してくれる機械>

今回は並んでいたのでやめましたが、次回はやってみたいと思います。エジプトに来たら、ご自身の名前がカルトゥーシュでどう書くのか、調べてみてください。

このようなパピルス印字は初めて見ましたが、カルトゥーシュのアクセサリー作成ができる場所は多いです。オンリーワンを作ってみてはいかがでしょう。

コンビニ的なお店
<PREMIUM MART>

オシャレコンビニ的なお店。スーパーには売っていないようなお菓子もありました。

宝石屋
<AZZA FAHMY>

エジプトを代表する宝石屋さん。古典的なものから最近の流行りを取り入れたデザインまで幅広く取り扱っているのが特徴。購入すると、ライト付きの紙箱がもれなくついてきます。

GEMへのアクセス

アクセス方法

エジプト北部にある、エジプト人の憧れの地アレクサンドリア。名の通り、カイロとアレクサンドリアを結ぶ「Cairo-Alexandria Desert Rd」のカイロ側の終点にGEMは位置します。

アクセス方法はツアーに参加してバスで行くかUberを手配するか、いずれも車が良さそうです。大通りからの入り口に門番がいて"車は中に入れない"と大通りで降ろされそうになるかもしれませんが、ドライバーとの交渉次第で車で中まで入れます。エジプトでは何事も交渉が大事です。

ちなみにアラビア語で「(車で)中まで入れますか?」は"モンケン ネドホル ゴウワ"(Can we go inside?)で通じることが多いです。旅行中に遠くで降ろされそうになった際には使ってみてください!

GEM(大エジプト博物館)

  • 住所:X4VF+V38, Cairo - Alexandria Desert Rd, Kafr Nassar, Al Haram, Giza Governorate 3513203 エジプト
  • 電話番号:+20235317344
  • 開館時間:8:30~18:00(来館時間は9:00から 最終入場は16:00時迄)
  • 定休日:無し
  • 公式サイト:GEM
ka1

<この地点から車で敷地内へ入れます>

まとめ

今回は、エジプトからオープンしたばかりの「大エジプト博物館」をご紹介しました。日本との関わりも深く、訪れた方を必ずHappyにするパワースポットとなることでしょう。

エジプト旅行をお考えの方は遺跡を巡る前に訪れると、"時代の流れ"や"遺物の発見された場所"などを深く理解できるので、その後も充実した旅となるのではないでしょうか。

それでは、インシャーアッラー良い旅を!

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エジプト在住。子育てに奮闘しつつ、日々面白いものを探し歩いています。

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