【イギリス】エジンバラから日帰り旅行可能な美しい街(西部編1):スコットランド独立戦争の舞台&美しいお城のある街、スターリング

エジンバラ近郊の知られざる美しい街と村の北部と南部に続く西部編です。

エジンバラの西部には、スコットランド王家のお城と宮殿のある美しい街、スターリング(Stirling) とリンリスゴー(Linlithgow) があります。

スターリングは、美しいスターリング城のあるスコットランドの古都です。リンリスゴーにはリンリスゴー宮殿があります。どちらもスコットランドの歴史を語る時には必ず出てくる歴史的に大切な街、そして中世の街並みの残る美しい街です。エジンバラから電車で簡単に日帰りできる距離の街ですので、少し時間がある時に訪れてくださいね。

今回はスコットランドの独立戦争の舞台、そしてスコットランド王室の美しい居城のある街、スターリングをご紹介します。

目次

スターリング(Stirling)の街ってどんな街

スターリング城
<スターリング城>

スターリング(Stirling) は、エジンバラの北西60kmにあります。エジンバラから電車で1時間弱です。

かつてはスコットランド王国の首都で、スターリング城の周りの旧市街には石畳の中世の街並みが残っています。

スターリングは古くから「スコットランドへの鍵」と呼ばれるハイランド(高地地方)とローランド(低地地方)を繋ぐ戦略上の要地でした。

「スターリングを制するものはスコットランドを制する」と言われ、この地を巡ってスコットランドとイングランドの戦いが何度も繰り広げられました。

トールブース(元評議会のビル)とメルカトクロス(マーケットクロス)
<トールブース(元評議会のビル)とメルカトクロス(マーケットクロス)>

スターリングは、スコットランドの歴史の中心の街です。 お城のある旧市街にはトールブース、メルカト・クロス、ホリルード教会、マーズ・ウォークなどの古い建物があります。

スターリングのメルカト・クロスは、ブロードストリートにあります。メルカトはスコットランド語でマーケットのことで、メルカト・クロスは、市場を開催することのできる広場のマークです。

スターリングのメルカト・クロスには、スコットランドの象徴のユニコーンがついています。胸の前にはスコットランド王家の紋章が刻まれた盾があり、その周囲にはアザミ騎士団の襟章があしらわれているいかにも王室に縁の深い街の記念碑です。

<ホリールード教会とマーズ・ウォーク(マール伯邸の廃墟)>
<ホリールード教会とマーズ・ウォーク(マール伯邸の廃墟)>

スターリング城

<城門内から見えるスターリング城>
<城門内から見えるスターリング城>

スターリング城の歴史

スターリング城は、キャッスルヒルと呼ばれる火山岩の岩山の頂上に建っています。同じ火山岩に聳え立つエジンバラ城と似ている印象を受けます。

スターリング城は、三方を険しい断崖に囲まれた天然の要塞で、あらゆる方向に素晴らしい景色を望むことができます。

古代ローマ時代から戦略的に重要な場所だったと信じられていますが、中世後期以前までの歴史には多くの謎が残されています。

スターリング城の最初の記録は、スコットランド国王アレグザンダー1世(1078-1124)が1124年にこの地で没したというものです。

13世紀から14世紀にかけて起きたスコットランドとイングランドの戦争の間に、スターリン城の所有は、スコットランドとイングランドの間で行ったり来たりしました。

このスコットランド独立戦争の歴史は、メル・ギブソン主演のハリウッド映画「ブレーブハート」で描かれているので、聞いたことのある方も多いと思います。

スターリング城
<スターリング城からのバノックバーンの戦いの戦場の眺め>

スターリング城からは、スコットランドとイングランドの戦いの繰り広げられた戦場であるスターリング橋の戦い(1297年)、そしてスコットランドの独立を勝ち取ったバノックバーンの戦い(1314年)の戦場を望むことができます。

城前広場にあるロバート・ザ・ブルースの銅像
<城前広場にあるロバート・ザ・ブルースの銅像>

スコットランド城の城門前には、バノックバーンの戦いの勝利によりスコットランドの独立を勝ち取った、スコットランド王・ロバート・ザ・ブルース(1274-1329)の像が雄々しく立っています。

スターリング城は、このバノックバーンの戦いの後に、二度とイングランドに要塞として利用されないようにと、当時の城は破壊されたという驚きの歴史があります。

そのため、今見ることのできるスターリング城の大部分は15世紀から16世紀にかけて、スコットランド王家の居城として再建されたものです。

スターリング城は、スコットランド女王メアリー・ステュアート(1542-1587)の戴冠式が行われ、またほとんどのスコットランド君主が住んだことのある、スコットランド王室の歴史上大切な城です。

アン女王の庭(Queen Anne Gardens)

<アン女王の庭>
<アン女王の庭>

アン女王 (1665-1714)は、スコットランドのステュアート朝最後の君主で、同時にグレートブリテン王国の初代国王です。15世紀に作られた沢山の花が咲く庭園が、城門をくぐると左側にあります。

王宮 (Royal Palace)

<アン女王の庭からみる王宮>
<アン女王の庭からみる王宮>

ジェームズ5世(1512-1542)が、メアリー・オブ・ギーズ (1515-1560) をフランスから妃として迎えるにあたって建てた華やかなルネッサンス様式のロイヤルパレス(王宮)は、1542年に完成しました。ブリテン島の最初のルネッサンスの宮殿です。

イングランドのエリザベス1世 (1533-1602) に処刑された悲劇のスコットランド女王・メアリー・ステュアート(1542- 1587) が幼少期を過ごしました。またその息子で、イングランドとスコットランド両国の王位を継いだ「平和王」ジェームズ6世(イングランドではジェームズ1世:1567-1625)が教育を受けたのもこの王宮です。

<王宮の入り口>
<王宮の入り口>

王宮の中庭にある入り口の木造の階段です。いかにもイギリスの中世の歴史ドラマや映画によく出てくる入り口で、王宮内に入る前に気分がもり上がるセッティングです。

中世のコスチュームを着たガイドさん
<中世のコスチュームを着たガイドさん>

<中世のコスチュームを着たガイドさん>
<中世のコスチュームを着たガイドさん>

王宮内は1540年代の状態に復元、保存されています。

エジンバラ城などに比べてあまりにも復元されすぎているような気が最初はしたのですが、当時の衣装をきたガイドさんが部屋毎にいて、歴史を丁寧に教えてくれるので、当時の様子がよくわかり楽しく見学できました。

スターリング・ヘッズ (Stirling Heads)

<スターリング・ヘッズ>
<スターリング・ヘッズ>

王の接見室の天井には、スターリング・ヘッズ(Stirling Heads)と呼ばれる巨大なメダリオン(円形の木材彫刻)があります。16世紀に作られたオーク材の彫刻には、王、女王、貴族、ローマ皇帝、ギリシャ神話、聖人などが描かれています。

<ギャラリーにあるオリジナルのスターリング・ヘッズ>
<ギャラリーにあるオリジナルのスターリング・ヘッズ>

現在天井に飾っているスターリング・ヘッズは、カラフルなレプリカです。 56の本物のうち、38が残っていて、王宮内のギャラリーに展示されています。

ユニコーンのタぺストリー

<「ユニコーン狩り」のタぺストリー> 
<「ユニコーン狩り」のタぺストリー>

<「ユニコーン狩り」のタぺストリーの中で一番有名な「庭園で休んでいるユニコーン」>
<「ユニコーン狩り」のタぺストリーの中で一番有名な「庭園で休んでいるユニコーン」>

女王の接見室には、「ユニコーン狩り」シリーズのタぺストリーが壁面を鮮やかに飾っています。ユニコーン(一角獣)は、スコットランドの象徴で、スコットランド王室の紋章となっています。

部屋の壁を飾るタペストリーは最近復元されたものです。「ユニコーンの歴史」という一連のタぺストリーをジェームス5世が所有していたとの記録があり、タペストリーが城内に飾られていたと考えられていましたが、なぜ消失したかの記録はありません。

現在展示されているタペストリーは、2002年から14年の歳月をかけて7枚のタペストリーを、アメリカのメトロポリタン美術館収蔵する同時期のオリジナルタぺストリー「ユニコーンの狩り」を参考にして復元したものです。

外壁の彫刻

<外壁の彫刻>
<外壁の彫刻>

王宮の外壁には、動物、ビーナス、悪魔、音楽家など多くの彫刻が施されています。フランスから呼ばれた石工が彫ったそうです。

グレートホール

グレートホールのハンマービーム
< グレートホールのハンマービーム>

王宮の東には、ジェームズ4世(1473-1513)が手がけ、1503年に完成したグレートホールがあります。

天井のハンマービーム屋根と呼ばれる、柱のない広い空間を作るための英国ゴシック建築の木造骨組)が見事です。これもまた最近再現されたもので、オリジナルは1800年に取り除かれ、長い間グレートホールは兵舎として使用されていたということです。

グレートキッチン

グレートキッチンに飾られたモデル
<グレートキッチンに飾られたモデル>

実物大のモデルを使って、中世の城の厨房がどのようなものであったか再現されています。

スターリング城 (Stirling Castle)

住所:Castle Wynd, Stirling, FK8 1EJ
公式サイトスターリング城

キングス・ノット(King's Knot)

スターリング城から見える芝生の幾何学模様がキングス・ノット
<スターリング城から見える芝生の幾何学模様がキングス・ノット>

キングズ・ノットは、スターリング城の下にある庭園にあります。地元ではその形からカップ・アンド・ソーサーと呼ばれているそうです。

12世紀にはすでに、スターリン城の王室公園の敷地の一部で、スコットランドの王族が馬上槍試合、鷹狩り、狩猟に参加していたと伝わっています。

キングズ ・ノットと呼ばれる土塁は、スターリング城の正式な庭園の一部として、城から眺められるだけでなく、スコットランドの宮廷の人々が散策できるように設計されました。現在は芝生で覆われていますが、元々はフランスのロマンチックな城の敷地内にあるような装飾庭園だったそうです。

キングス・ノットとスターリング城
<キングス・ノットとスターリング城>

今は犬の散歩などで地元の人が散策している広い芝生の公園ですが、キングス・ノットはスターリン城が美しく撮影できるインスタスポットです。

ホリールード教会 (Church of the Holy Rude)

ホリールード教会と墓地
<ホリールード教会と墓地>

デイヴィッド1世 (1084-1153) の治世中の1129年に建てられた中世のゴシック建築の教会です。

スターリングではスターリング城に次いで 2番目に古い建物で、城の横にあります。

ジェームズ6世(のちのイングランド王ジェームズ1世)が戴冠式を行った教会で、イギリス国内において現存する教会としては、ロンドンのウェストミンスター・アビーの他に戴冠式を行った歴史のある唯一の場所です。

<ホリールード教会のステンドグラス>
<ホリールード教会のステンドグラス>

ステンドグラスの窓がある美しい教会で、周りには広い墓地が広がっています。

ホリールード教会( Church of The Holy Rude)

住所:St John Street, Stirling, FK8 1ED
公式サイト:ホリールード教会

ナショナル・ウォレス・モニュメント ( The National Wallace Monument)

ナショナル・ウォレス・モニュメント
<スターリング城から見えるナショナル・ウォレス・モニュメント>

スコットランドの英雄、ウィリアム・ウォレス(1270-1305)を記念して1869年に建てられた記念碑です。

映画「ブレイブハート」で描かれたウィリアム・ウォレスはイングランドから自由を勝ち取るため最期まで戦い続けたスコットランドの英雄です。

1297年にスターリング・ブリッジの戦いでイングランド軍に勝利を納め、その後も独立運動を続けましたが、1305年にイングランド軍に捕えられ、処刑されました。

死に至る最後までスコットランドの独立を唱えたウィリアム・ウォレスに、スコットランド人の国民感情は鼓舞され、ついに1314年にバノックバーンの戦いで、イングランドに勝利し独立に導いたとされる、真にスコットランドの英雄です。

記念碑は、スターリングの中心街からバスで約10分の距離にある「アビー・クレイグ」と呼ばれる小高い丘の上に立っています。

中には、ウィリアム・ウォレスの所持していたと伝わる剣が展示されています。
スコットランドの歴史が好きな人にとっては、訪れたい場所ではないでしょうか。

ナショナル・ウォレス・モニュメント(The National Wallace Monument)

住所:Abbey Craig, Hillfoots Rd, Stirling FK9 5LF
公式サイト:ナショナル・ウォレス・モニュメント

最後に

スターリングはスコットランドの歴史の中心であった街ですが、その割にはあまり知られていない街ではないでしょうか? 

スターリングには、独立戦争の古戦場、バノックバーンの戦いの戦場跡、またスターリング橋の戦いの舞台となった石橋も残っていますので、歴史好きの方は是非訪れてください。

スターリング城は、エジンバラ城と似ています。両方のお城とも火山岩の上に聳え立ち街のどこからでも見えます。いくつかの石造りの建物が城壁の中にある作りも同じです。

そして、どちらのお城からも、素晴らしいパノラマの景色が楽しめます。エジンバラ城から見える景色は、エジンバラの市街地、スターリング城からは美しい田園風景が見渡せます。

スターリングは、スコットランドの歴史を味わうことのできる美しい街です。

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Sachiko

名古屋市出身、海外滞在歴30年、38カ国490以上の都市を訪れました。多趣味で、アート系のクラッシック鑑賞、バレエ・ダンス鑑賞、美術鑑賞、アンティーク収集から、スポーツ系のテニス・ダイビング、グルメまで色々なことが好きですので、様々な視点で皆様に旅の楽しさがお伝えできればと思っています。捨て猫2匹をインドネシアで拾い、日本まで連れてきました。

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