【スペイン】名門アルバ公爵家のお屋敷見学

<TOP画像/提供:Javier Peñas © Madrid Destino>

スペインには今も貴族階級が存在し、約2,200人が爵位を有しているそうです。その中でも名門中の名門が500年以上続くアルバ公爵家。スペイン各地に城やお屋敷、農園があるほか、膨大な美術品コレクションも所有しています。アルバ公爵家では、世界でもっとも爵位を有するとギネスブックで認定されていた先代女性当主が2014年に亡くなった後、3軒のお屋敷の一般公開を始めました。今回はそのうち2軒、リリア宮とラス・ドゥエニャス宮をご紹介します。

目次

内戦中は避難させていた美術品の数々

現当主の第19代アルバ公爵こと、カルロス・フィツ=ハメス・ストゥアルト・イ・マルティネス・デ・イルホ氏が居住する公爵家の本邸リリア宮は18世紀後半に建てられたネオクラシック様式の建物で、マドリードのスペイン広場から歩いて5分少々、ちょうど地下鉄ベントゥラ・ロドリゲス駅前に位置します。

スペイン内戦中に爆撃を受け炎上し、屋内は焼けてしまったものの、それを見越してか美術品の数々はスペイン銀行やプラド美術館、イギリス大使館に持ち出していたため焼失を免れました。その後、第17代と第18代が修復した屋敷には200以上の部屋がありますが、そのうち14室だけが公開されています。

本邸リリア宮
<写真提供:La Fundación Casa de Alba>

その14室だけでも絵画やタペストリー、彫刻、家具などの調度品、また文書や書籍など美術館級のコレクションであふれています。たとえばベラスケスの描いたマルガリータ王女や、ゴヤが描いた第13代女侯爵の肖像画『白衣のアルバ女侯爵』、そのほかスルバランやエル・グレコ、リベラ、ムリーリョ、ルーベンスなどの巨匠の絵がズラリ。

第13代女侯爵はゴヤのパトロンでしたが、実は深い仲で有名な『着衣のマハ』と『裸のマハ』のモデルだったという説もあります(どちらもプラド美術館所蔵)。

ゴヤ作『白衣のアルバ女侯爵』
ほぼ中央にあるのがゴヤ作の『白衣のアルバ女侯爵』/写真提供:La Fundación Casa de Alba>

『ドン・キホーテ』初版本やフェルナンド2世王の遺言書も

今も公爵家はこのダイニングルームで食事をすることがある
今も公爵家はこのダイニングルームで食事をすることがあるのだとか/写真提供:Álvaro López del Cerro © Madrid Destino>

とある部屋には、交流があった日本の皇室の上皇陛下のスナップショットがまるで家族の写真かのようにさりげなく家具に置かれていました。図書室には『ドン・キホーテ』の初版本(1605年)やカトリック王フェルナンド2世が亡くなる前日に書いた遺言書(1516年)といったお宝も。国宝級のコレクションのすばらしさに思わずため息が出ます。今もこの屋敷で暮らす公爵家のプライベートスペースは、いったいどんな様子なのでしょう。気になります。

見学は音声ガイド付きですが自由にまわることはできず、時間ごとに案内の人の引率で館内をめぐります。所要時間は65分。

リリア宮 Palacio de Liria

  • 住所:Calle Princesa 20 Madrid
  • 入場料:16ユーロ(音声ガイド付き)
  • 休館日:1月1日、5日午後、6日、5月1日午後、12月24日、 25日、31日
  • 公式サイト:リリア宮殿(スペイン語、英語、フランス語)

スペインきってのセレブリティだった先代の女公爵

ところで、現当主の母親にあたる先代女当主のマリア・デル・ロサリオ・カイェターナ・フィツ=ハメス・ストゥアルト・イ・シルバは生前スペインでもっとも有名、かつ人気のあるセレブでした。闘牛やフラメンコといったアンダルシア文化を愛し、若い頃には闘牛士と恋をしたりフラメンコも習っていたのだとか。晩年は真っ白なカーリーヘアとカラフルなファッションがトレードマークで、女性週刊誌の常連でした。

6児をもうけた最初の夫と死別した後、11歳年下の元聖職者と再婚し物議を醸し出したものの別居中にまたもや死別。そして3回めの結婚はなんと85歳の時で、相手は24歳年下の公務員だったため家族の大反対にあい、世間をかなり賑わせました。その結婚式の時に報道陣の前で靴を脱いでセビリャーナス(フラメンコに似たアンダルシアの民謡)を踊りだした姿が純真でかわいらしく、深窓の令嬢とはいくつになっても無邪気なのだろうと思ったものです。

セビーリャにあるラス・ドゥエニャス宮
セビーリャにあるラス・ドゥエニャス宮/写真提供:La Fundación Casa de Alba>

88歳で亡くなると遺言により火葬され、遺灰はマドリード郊外の修道院にあるアルバ公爵家の霊廟ではなく、愛するセビーリャの教会に収められました。とても気さくな方だったそうで、私がたまに行くカフェのオーナーはイビサ島のビーチで80代にしてビキニ姿のこの女公爵に出会い、一緒に撮った写真を見せてくれたことがあります。

先代女公爵お気に入りのエキゾチックなお屋敷

イスラム様式アーチの廻廊で囲まれたパティオ
イスラム様式アーチの廻廊で囲まれたパティオ/写真提供:La Fundación Casa de Alba>

この先代が特に好んで住んだのが、セビーリャにあるラス・ドゥエニャス宮です。最初の夫と3番目の夫と結婚したのも、家族に囲まれて息を引き取ったのもこのお屋敷でした。

ヨーロッパの正統派なお屋敷のリリア宮とは異なり、このラス・ドゥエニャス宮はエキゾチックな佇まいで、馬蹄形のアーチや陶器タイルなどアンダルシアらしいイスラムの香りも漂っています。もともとは15世紀に建てられ、15世紀末から16世紀はじめにかけての改修でゴシック・ムデハル様式とルネッサンス様式が混じった個性的な邸宅になったそうです。

17世紀のはじめに所有者の女性が第4代アルバ公爵と結婚したことにより、アルバ公爵家のものとなった次第です。

セビーリャ市街地にある楽園のような一画

ヒターノス(スペイン語でロマ族の意味)の間
ヒターノス(スペイン語でロマ族の意味)の間/写真提供:La Fundación Casa de Alba>

パティオ(中庭)がいくつかあるつくりで、椰子の木も生えているほか、私が行ったのは春だったので鮮やかなブーゲンビリアやバラの花が咲き乱れ、まるで楽園のようなイメージでした。リリア宮ほどではないものの、ここにもすばらしい絵画や彫刻、タペストリー、家具、調度品が飾られています。また先代女公爵が集めたであろうセビーリャの春祭りなどの古いポスターや闘牛服、フラメンコの人形などがいい味を出していました。

ラス・ドゥエニャス宮 Palacio de las Dueñas

  • 住所:Calle Dueñas 5, Sevilla
  • 入場料:13ユーロ(音声ガイド込み)
  • 休館日:年中無休(不定期に休館することもあるので公式サイトで確認)
  • 公式サイト:ラス・ドゥエーニャス宮殿(スペイン語、英語、フランス語、中国語、韓国語、アラビア語)

別世界をのぞく貴重な経験に

この世の中にはこんなお屋敷を家として使っている人がいるんですね。まさに別世界。リリア宮やラス・ドゥエニャス宮の見学は、由緒ある大富豪の生活の一部をのぞき見するとても貴重な経験になるはず。マドリードにもセビーリャにも数々の見どころがありますが、ぜひとも足を運んでいただきたいです。

なお、この2軒のほか、サラマンカにあるモンテレイ宮もアルバ公爵家のお屋敷で一般公開されています。ここにはまだ行ったことがないので、いつか行くことを楽しみにしています。

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田川敬子(Keiko Tagawa)

1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。

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