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【イタリア】マッジョーレ湖に浮かぶ華麗な宮殿の島、イソラ・ベッラ
<トップ画像:湖上から見たイソラ・ベッラの南側庭園>
目次
<イソラ・ベッラの入り口の船着き場>
1. マッジョーレ湖とヘミングウェイ
<イソラ・ベッラの宮殿部分>
イタリアは、世界遺産の登録数が世界一であり、その数だけ特徴のある建造物が多いと言えます。しかし、湖に浮かぶ3つの島を所有し、その一つの島を丸ごと宮殿とその庭にしてしまった例は、他に見ません。
<湖からスイス側のアルプスを望む>
北イタリアにスイスとの国境をまたがるように、その湖はあります。名前はマッジョーレ湖。
ヘミングウェイの『武器よさらば』をご存知なら、主人公はこの湖に小船を浮かべて、スイスまで逃げるのがこの湖です。ヘミングウェイ自身の物語を小説にしたということですから、ヘミングウェイ自身もここからスイスに戦火を避けたのかも知れません。これは同名の2019年に終了したゲームの「武器よさらば」ではありません。
映画『武器よさらば』
- 1957年製作/アメリカ
- 原題:A Farewell to Arms
- 配給:20世紀フォックス
- 劇場公開日:1958年4月5日
もの凄く古い映画です。私は見た憶えがあるのですが、どうやら再上映専門の映画館で高校生の頃に安価で見たのでしょう。詳しくは以下の映画解説をご覧ください。主人公の相手役の女性、ジェニファー・ジョーンズとは薄幸の女性を演じさせたらピカ一だと思ったことを思い出しました。
>>映画『武器よさらば』の解説はこちら(映画.com)
余談ですが、ヘミングウェイの作品はハッピーエンドではなく、とてつもない虚無感が漂う作品が多いです。
この小説『武器よさらば』のあらすじをウィキペディアから引用すると次の通りです。
『第一次世界大戦中、イタリア兵に志願したアメリカ人フレデリック・ヘンリーだが、イタリア軍は理想とはかけ離れていた。その戦場で看護婦キャサリン・バークレイと出会う。初めは遊びのつもりの恋であったが、しだいに2人は深く愛し合うようになった。やがてキャサリンの妊娠が分かり、2人はスイスへと逃亡する。ところが難産の末、子と共にキャサリンは死んでしまい、最後は雨の中をフレデリックは一人立ち去ってゆく。』
参加したイタリア軍から処刑されそうになって逃亡して、残された唯一の希望である、最愛のキャサリンとその子供を失う。呆然と雨の中をあるいて立ち去るところで終わる。
老人と海も同様に、悪戦苦闘して仕留めたカジキを船の横に縛りつけて港に向かうが、鮫に襲われてカジキは鮫の餌になってしまう。究極の老人の孤独と虚無を描きました。
▼マッジョーレ湖
2. イソラ・ベッラ(美しい島)と優雅な貴族の生活
このマッジョーレ湖には、この一帯を支配した貴族であるボッロメオ家が所有した島々がありますが、その中のイソラ・ベッラ(美しい島という意味)が、島ごとボッロメオ家の宮殿になっています。
ここは17世紀に、ボッロメオ家カルロ3世が妻のためにつくったという宮殿。1800年にナポレオンもイタリア遠征の途中に泊まったという部屋や、凝りに凝ったグロッタ・洞窟風地下室など見どころいっぱいです。
この島は、長さ320m、幅180mの小さな島ですが、1632年、ボロメオ伯爵(Conte Vitaliano Borromeo)により建設された、バロック式宮殿、および荘厳なテラス式イタリア庭園で占められています。なお、シチリアにも同名の島があるので、お間違いのないように。
宮殿内は写真撮影禁止なので、残念ながら写真はありませんが、贅の限りを尽くした家具、彫刻、絵画によって飾られており、訪れた人の目を楽しませます。宮殿だけではなく、そのイタリア式庭園も、花と彫刻で埋め尽くされ、階段式の花壇は見事というしかありません。
1800年にナポレオンがアルプスを越えてイタリアに攻め入ったときに、この宮殿に宿泊した記録が残されています。
暖かな秋の一日、庭の真っ白な孔雀に迎えられ、優雅に散歩していると、イタリア貴族の優雅な生活が偲ばれます。
▼イソラ・ベッラ(ベッラ島)
3. ストレーサの5星L(5星デラックス)ホテル
この島の対岸のストレーサ(Stresa)には、優雅で優美な5星L(5星デラックス)のホテルがあります。
この地域を支配したボッロメオ家の名前を冠にいただくグランドホテル、グランド ホテル デズ ジル ボロメ ストレーザ(Grand Hotel des Iles Borromées & SPA)です。
もちろん、ヘミングウェイも宿泊しており、外観も優雅なら、内部も優美でアートのようで優雅なイタリア・インテリアがあなたを迎えます。
このホテルのBARにはヘミングウェイの名前の付いたカクテルがあります。個人でこのホテルを予約するときには、少しお高いですが、レークビューのお部屋をおすすめします。
部屋からマッジョーレ湖の素晴らしい景色が楽しめます。ロシアの文豪トルストイもこのホテルに宿泊して執筆したようで、作家に好まれる静寂と、歴史が刻んだ従業員の伝統のおもてなしがあるようです。
Grand Hotel des Iles Borromées & SPA(グランド ホテル デズ ジル ボロメ ストレーザ)
- 住所:Corso Umberto I, 67, 28838 Stresa VB, イタリア
- TEL:+39 0323 938938
- 公式サイト:Grand Hotel des Iles Borromées & SPA
4. ヨーロッパ旅行の旅程から消えたストレーサ
その昔、と言っても紀元前ではありませんが、日本からの外国観光旅行が解禁された頃には、日本人はヨーロッパ旅行といえば、20日間ぐらい巡っていました。現在、ヨーロッパの人達が日本に20日間ぐらい滞在して日本を巡っているのに似ていました。
ヨーロッパといえば、その当時は一生に一度の大旅行だったわけで、親戚縁者が餞別を渡してくれ、空港にはのぼりを立てて見送りに来た時代です。
その頃、このストレーサは、スイスの中心部のインターラーケンからイタリアのミラノを抜ける際のランチの場所、または、ストレーサの高級ホテルに一泊して、マッジョーレ湖のイソラ・ベッラ、イソラ・マードレ(母の島)、イソラ・ペスカトーリ(漁師の島)への観光をしました。
その後、ヨーロッパのツアー自体、一か国周遊が主流になるにつれて、ストレーサは忘れ去られた存在になり、この街はリゾートを楽しむ日本人以外の長期滞在の観光地(元あった姿)に逆戻りしました。
<イソラ・ペスカトーリ(漁師の島)>
5. いつもの余談です。
いつもの余談です。記事とは全く関係のない「蝉」の話をしたいと思います。
今の子供は蝉をみて怖がります。家の中でゲームをしている時間が長いせいで、仮想空間の怪物は好きですが、現実の蝉は怖がります。手でつかむなんてことは、あり得ない所業だと思っています。
『八日目の蝉』という映画があります。一般的に蝉の雄の寿命は約七日で短命と言われていますが、実は雌は産卵のため八日以上生きます。つまり八日目の蝉とは、夫がいない妊婦のことです。この映画の題名は、不倫で妊娠した女性を暗示しています。
蝉は雄だけが鳴くのですが、雌はその音を探して飛び回って雄を選ぶわけですので、雄は雌に選んでもらうために懸命に鳴く。多分、種の保存のためにも、雌は鳴き方で強い雄を選んでいるのではないかと勝手に思っています。
雌は木の幹などに卵を産み、卵から生まれた幼虫は土の中に潜ります。幼虫は土の中で長い期間を過ごし、やがて成虫になると地上に出てくるのです。幼虫は卵からかえると、木の幹を伝って地中にもぐります。木の根などから樹液を吸って7年間ぐらいを過ごします。
その間、モグラなどの天敵に襲われることもあり、7年後地表に出て、羽化する蝉はラッキーだと言えます。羽化して成虫になっても、雄に残された時間は7日間しかありません。その間、必死に雌を呼び寄せるために鳴き続けますが、7日間で雌と交尾して子孫を残せたら、蝉の雄なりに満足感はあるかも知れません。
雌と逢えず力が尽きて樹から落下して、地表に仰向けに横たわった雄は、その五つある目で青空を見て、自分の生命の尽きる瞬間に何を思うのでしょうか。
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おまけ、島の庭園で撮影しました。
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ドルチェビータ
- 2003年より2011年までイタリア、2014年から2017年まで英国にいました。