【オランダ】運河の美しい街ライデン 観光スポットおすすめ10選!<後編>

レンブラントゆかりの地や、シーボルトの旧邸、風車などをご紹介した前編に続いて、9世紀に築かれた要塞の丘や、12世紀の教会、オランダ最古の植物園、美しい建築様式のライデン市庁舎など、史跡や文化財にふれながらライデンの歴史を散策します。

目次

歴史や文化にふれる散歩道

OpenStreetMap
<OpenStreetMap (CC BY-SA 2.0)>

ライデンには、世紀を超えて受け継がれてきた多くの文化財があります。後編では旧市街の中心部で、ライデンの人々が守り伝えてきた史跡や建造物をめぐります。

6.ライデン大学植物園

ライデン大学植物園

1575年創立のライデン大学はオランダで最も古い大学で、およそ3万4000人もの学生が在籍し、ライデンの街にはアカデミックな雰囲気が漂います。

オランダ黄金時代には、「国際法の父」と称されるフーゴー・グロティウス (1583-1645) や、合理主義哲学の祖であるルネ・デカルト (1596-1650) 、同じく近世合理主義哲学者のバールーフ・デ・スピノザ (1632-1677) といった学者がライデン大学を研究拠点にしていました。

ライデン大学植物園

『ライデン大学植物園 (Hortus Botanicus Leiden)』は、ライデン大学が1595年に開園した、オランダ初の植物園です。初代園長を務めた植物学者のカロルス・クルシウス (1526-1609) は、植栽を記録して多くの著作を出版し、17世紀から18世紀にかけては、オランダ海上帝国が世界各地で入手した植物も栽培されていました。

クルシウスは、チューリップの原産地トルコで採集された球根を、ヨーロッパで初めて咲かせたことでも有名です。現在はオランダの国花になっていますが、17世紀のオランダ人にとってチューリップは、エキゾチックな魅力をもつ花でした。

ライデン大学植物園

左: クルシウスの時代、まだ35m×45mの広さしかなかった植物園は、『クルシウスの庭 (Clusiustuin)』として再現されています

右:クルシウスの庭が描かれたウィレム=イサークス・ファン・スワーネンブルクによる『ライデン大学植物園』, 1644年。

4ヘクタールの広々とした敷地には、温室や球根園、バラ園、野菜畑、中国の薬草園などがあり、四季折々の多彩な植物を鑑賞できます。シーボルトが日本で採集した植物も栽培され、『フォン・シーボルト記念庭園 (Von Siebold gedenktuin)』と名づけられた日本庭園もあります。

ガイドツアーに参加するのも楽しいですし、晴れの日には水辺の芝生でくつろぐこともでき、憩いの場としても人気があります。『グランカフェ (Grand Café)』では、光あふれるコンサバトリーで食事を満喫してみてください。

ライデン大学植物園Hortus Botanicus Leiden

  • 所在地: Rapenburg 73, 2311 GJ Leiden
  • 入園料:9ユーロ
  • 開園時間: 夏季(3月21日~9月10日)9:00-18:00, 冬季(9月21日~3月20日)10:00-17:00/ 10月3日, 12月25日~1月1日は休園
  • 公式サイト:ライデン大学植物園

7. コールン橋

コールン橋

旧市街の中心にある『コールン橋 (Koornbrug)』は15世紀に起源を持ち、石造アーチ橋に天蓋をつけたユニークな構造です。「コールン」は「トウモロコシ」の意味で、何世紀にも渡って橋の上でトウモロコシが取引されていたことに由来します。

コールン橋

商品を保護するための天蓋が設置されたのは1824年のことで、屋根の下には小麦が貯蔵されていました。天蓋には、トウモロコシの穂に囲まれたライデン市の鍵の紋章が描かれています。

コールン橋

この周辺にはカフェやレストランが多く、ニーウェ・レイン川 (Nieuwe Rijn) に浮かぶボートのテラス席はとても気持ちが良いです。

コールン橋

橋の向かいには、1597年に建造されたライデン市庁舎 (Stadhuis van Leiden) があり、市庁舎広場 (Stadhuisplein) では毎週水曜日と土曜日にマーケットが開催されています(上写真)。市庁舎はブレー通り (Breestraat) 側から眺めると、オランダで最も長いルネサンス様式のファサードが見事です。

建築に興味のある方は、ブレー通りを200mほど北上してみてください。60番地には、優美な装飾のほどこされたネオルネサンス様式の『ライデン音楽堂 (Stadsgehoorzaal Leiden)』があり、向かいの59番地には、1578年から1999年までラインラント水道局として使用されていた『ラインラント・コミュニティハウス (Gemeenlandshuis van Rijnland)』があります。階段状破風の美しい赤レンガの建物です(下写真)。

コールン橋
<Photo: Erik Zachte (CC BY-SA 3.0)>

8. ホーフランセ教会

ホーフランセ教会

コールン橋を渡って路地を東に進むと、『ホーフランセ教会 (Hooglandse Kerk)』が姿を現します。1315年に建てられた木造の礼拝堂が起源で、当初は聖パンクラティウスに献堂されましたが、16世紀の宗教改革を機にプロテスタント教会になりました。

教会堂は縦軸70.7m、横軸が65.7mの大規模なゴシック建築で、小さな広場に面してそびえ立つファサードは迫力があります。堂内の壁は白に統一され、窓から降りそそぐ光が、中世の絵画のような雰囲気を醸し出しています。毎週日曜日には礼拝が行われ、またコンサートや展覧会、イベントなどの会場としても使われています。

ホーフランセ教会

最も古いパイプオルガンは1565年頃に造られたもので、パイプの拡張や修復を重ねて、今日もなお美しい音色を響かせています(上写真)。毎週水曜日に開催されている無料のコンサートに行ってみたところ、ほぼ貸切の状態で演奏を聴けました。天上から降り注ぐ音色が、やわらかな幸せのように堂内に満ちわたります。

ホーフランセ教会

もう一台のパイプオルガンは、ヴィクトリア朝時代のパイプオルガン製作の第一人者として知られる、イギリス人パイプオルガン奏者ヘンリー・ウィリス (1821-1901) の作品です(上写真)。次回はぜひ、こちらのパイプオルガンのコンサートを訪れてみようと思います。

ホーフランセ教会

堂内の片隅では1609年に製作された時計仕掛けが、教会の400年の歴史を物語っています。

ホーフランセ教会 Hooglandse Kerk

  • 所在地:Nieuwstraat 20, 2312 KC Leiden
  • 公式サイト:Hooglandse Kerk

9. ピーテルス教会

ピーテルス教会

『ピーテルス教会 (Pieterskerk Leiden)』は、1121年に聖ペテロのために建造された教会で、900年に渡り街の中心的存在として親しまれてきました。聖ペテロはライデンの守護聖人でもあり、赤い鍵がクロスしたライデン市の紋章は、イエス・キリストが聖ペテロに与えた「天国の鍵」をモチーフにしています。

現在の教会堂の建築は1390年に始まり、およそ180年の歳月をかけて完成しました。後期ゴシック様式の親しみやすい佇まいで、赤く塗られた扉や鎧戸が、愛らしいアクセントになっています。

ホーフランセ教会と同様に、宗教改革の際にプロテスタント教会となり、1975年以降は財団によって管理され、イベント会場として使用されています。イベントのない日は堂内を見学でき、併設のカフェ『Café Pieter』ではランチも楽しめます。

ピーテルス教会
<ルーカス・ファン・レイデン 『最後の審判』1527年, ラーケンハル市立博物館蔵>

堂内には、ライデン出身の画家ヤン・ステーン (1626-1679) や、かつての20ギルダー紙幣に肖像が使用されていた医学者ヘルマン・ブールハーフェ (1668-1738) などの墓石があり、プロテスタントによる聖像破壊の難を逃れた、ルーカス・ファン・レイデン (1494-1533) の三連祭壇画、『最後の審判』の複製も飾られています。

西側に置かれた煌びやかなパイプオルガンは、1639年にファン・ハーへルベーアー親子によって修復されたものです。パイプのうち100本は、1446年頃に製作されたパイプオルガンに使われていたもので、現在でも演奏可能な世界最古のパイプです。南側の回廊には、イギリスのオルガン製作者トーマス・ヒルによって1883年に作られたパイプオルガンが、ほぼオリジナルの状態で残されています。

ピーテルス教会

教会前の広場には木々が生い茂り、木陰のベンチは心地良い休憩スポットです。1980年4月30日の、ベアトリクス女王即位の際に記念植樹されたリンデンの木もあります(上写真の中央の木)。

記念樹の後ろにある建物は13世紀に建てられたもので、一見するとほのぼのとした雰囲気ですが、15世紀半ばからは刑務所として使用されていました。この写真は建物の裏側にあたり、正面側にある広場では1856年まで処刑が実行されていたそうです。現在はライデン大学が建物を所有し、広場も穏やかな場所になっています。

ピーテルス教会 Pieterskerk Leiden 

  • 所在地: Kloksteeg 16, 2311 SL Leiden
  • 営業時間:火-日11:00-18:00, 月曜休/ 12月25日と1月1日は休館
  • 料金: 5ユーロ
  • 公式サイト:Pieterskerk Leiden

10.ライデン要塞

ライデン要塞

旧市街の中心地、ちょうどアウデ・レイン川 (Oude Rijn) とニーウェ・レイン川 (Nieuwe Rijn) が合流するところに、『ライデン要塞 (Burcht van Leiden)』 があります。9世紀に築かれた小高い丘の上にあり、ライデンの街を眺められる人気のスポットです。丘の高さは12mしかありませんが、国土がほぼ真っ平らなオランダでは貴重な高さです。

要塞にはかつて、11世紀に建てられた天守がありましたが、14世紀頃に軍事的機能を失って廃墟となったことから、城壁のみが残っています。1651年よりライデン市が所有者となって修復や整備をすすめ、現在は緑豊かな公園になっています。

ライデン要塞

1. ニーウ通り (Nieuwstraat) にある『ブルク門 (Burgpoort)』が要塞への入口です。

2. 登り口には1653年に建造された後期ゴシック様式の柱と、紋章で飾られた豪華な門があります。

3. 石段を登り、要塞の中に入ります。円形に築かれた城壁の直径はおよそ36m、高さは6mほどで、その上を1周できるようになっています。

ライデン要塞

1. 北側には1649年建造の、八角形のドーム型の教会堂が特徴的な『マーレ教会 (Marekerk)』が見えます。

2. 南側にはホーフランセ教会があります。冬に訪れた時は全体を眺められましたが、木々の葉が茂っている時期は、ホーフランセ教会に限らず、どの方向の景色も眺めづらかったです。

ライデン要塞

東側の斜面にある緑地でピクニックもできます。

ライデン要塞 Burcht van Leiden

  • 所在地: Van der Sterrepad 5, 2312 EK Leiden
  • 入場可能時間:8:00-22:00
  • 入場無料

トランジット時間の小旅行にも最適!

ライデン要塞を後にして、アウデ・レイン川とニーウェ・レイン川との合流点にあるカフェのテラス席

ライデン要塞を後にして、アウデ・レイン川とニーウェ・レイン川との合流点にあるカフェのテラス席で、運河の眺めを楽しみました。

川の北側には『ハルテブルフ教会 (Hartebrugkerk)』が見えます(写真中央の建物)。ライデンの教会は宗教改革の際に、全てがプロテスタント教会になりましたが、1798年になって信教の自由が認められると、1836年にこのハルテブルフ教会がカトリック教徒のために建てられました。

1972年まで使用されていた『計量所 (De Waag)』があります

川の南側には、1972年まで使用されていた『計量所 (De Waag)』があります(上写真)。1657年に建てられた古典主義建築で、正面のレリーフには秤で計量をする様子が描かれています。ライデンには、見つくせないほどの歴史的建造物があります。

ライデンは、アムステルダムから電車で35分、デン・ハーグからは12分

ライデンは、アムステルダムから電車で35分、デン・ハーグからは12分とアクセスが良く、オランダ国内での日帰り旅行に最適な街です。スキポール空港からも電車で16分で、駅のすぐ近くで風車を見学でき、運河沿いの風景も堪能できることから、トランジットの待ち時間を利用した観光も人気です。

中世の面影を残す街並み、レンブラントの生まれ故郷、シーボルトゆかりの地、多くの学生が暮らす穏やかな街、昔ながらのカフェやアンティークショップが並ぶ小路。ライデンには数え切れない魅力があります。

※施設の詳細など掲載内容は2023年12月時点のものです。

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Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

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