【オランダ】アムステルダム国立美術館の庭園で鑑賞する野外彫刻展

アムステルダム国立美術館には美しい庭園があり、チケットを購入せずに無料で散策できます。美術館を鑑賞した後に、花壇の花を眺めながら一息ついたり、毎年夏には、彫刻の野外展覧会も楽しめます。2023年は『リチャード・ロング』展が開催されました。

目次

自由に楽しめる美術館の庭園

アムステルダム国立美術館

アムステルダム国立美術館は、アムステルダム中心地のミュージアム広場にある、1798年設立の歴史ある美術館です。レンブラントの『夜警』や、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』など17世紀オランダ絵画をはじめ、13世紀から21世紀までの美術品や工芸品など、およそ100万点を収蔵しています。

美術館の周りには美しい庭園があり、美術館のチケットを購入しなくても無料で散策できます。花壇には四季折々の花が咲き、ベンチで一息ついたり、読書をしたり、子どもたちは遊具や噴水で遊んだりと、皆思い思いの時間を過ごしています。

アムステルダム国立美術館の庭園

夏に開催されている絵画のワークショップに参加して、庭園で絵を描くのも良い思い出になります(上写真)。

彫刻の野外展覧会も入場無料!

アムステルダム国立美術館の庭園では毎年、初夏から秋にかけて、彫刻の野外展覧会が開催されています。10回目の開催を記念する2023年は、ランド・アーティストとして世界的に有名な、イギリス人彫刻家リチャード・ロングの作品が展示されました。

イギリス人彫刻家リチャード・ロング
<1983年、ネパール滞在中のリチャード・ロング Photo: Richard Long>

リチャード・ロングは、土や石などを用いて風景の中に彫刻を出現させたり、草を踏んだり刈ったりして風景を変化させ、その制作の過程を記録したものを作品として発表してきました。

粘土や石膏などの伝統的な素材や、ギャラリーや美術館といった場所から解き放たれ、さらには制作の過程までをも作品にしたことで、彫刻の概念はランド・アートやパフォーマンスアート、コンセプチュアル・アートへと広がりました。

アムステルダム国立美術館の野外展覧会では、6点の新作を含む8点の作品が展示されました。

『命の線 (Life Line)』
<『命の線 (Life Line)』2023年>

『夢の海 (Sea of Dreams)』
<『夢の海 (Sea of Dreams)』2023年 Photo: Rijksmuseum, Jannes Linders>

草を刈って幾何学模様を浮かび上がらせる『命の線 (Life Line)』や『夢の海 (Sea of Dreams)』は、ともすれば見逃してしまいそうなほど風景に溶け込んでいます(上写真)。草の成長とともに彫刻はその姿を変え、訪問するたびに異なる表情を楽しめます。

『何度でも (Time after Time)』
<『何度でも (Time after Time)』2023年 Photo: Rijksmuseum, Jannes Linders>

『宇宙から地球へ (From Space to Earth)』
<『宇宙から地球へ (From Space to Earth)』2023年>

草の彫刻は、時間が経つにつれて周囲の環境に吸収され、やがては消えてなくなります。自然への干渉を最小限に抑えて作品を作る、リチャード・ロングならではの作風です。

水の中のヘビ (Snake in the Water)

日本庭園の飛び石のような、池の中の作品『水の中のヘビ (Snake in the Water)』には遊び心が感じられました(上写真)。

マース川の石のサークル (Maas Riverstones Circle)

美術館の西側には、石を円形に並べた作品『マース川の石のサークル (Maas Riverstones Circle)』がありました(上写真)。まるで昔からそこにあったかのように、周囲の建造物や植物とよく調和しています。

リチャード・ロングはこれまでも、世界各地で石を採集し、幾何学的な形に並べる作品を数多く制作してきました。今回の展覧会では4点の石の彫刻が展示されましたが、その石のひとつひとつを自らが配置しており、78歳とは思えないバイタリティに驚かされました。

『マース川の石のサークル』を制作中のリチャード・ロング Photo: Rijksmuseum, Kelly Schenk
<『マース川の石のサークル』を制作中のリチャード・ロング Photo: Rijksmuseum, Kelly Schenk>

異彩を放つ石の彫刻

2023年の展覧会は美術館内にも作品が展示され、庭園とひとつづきの風景が演出されていました。さわやかな陽射しの降りそそぐアトリウムと、ステンドグラスの美しい大広間で、再びリチャード・ロングの世界に出会えます。

リチャード・ロングの世界
<『黒、白、青、紫のサークル (Black White Blue Purple Circle)』2023年>

庭園では周囲の建造物や緑と調和していた石のサークルは、アトリウムでは独特な存在感を放ち、異空間を演出していました(上写真)。

スイス各地から採集されたという石の、ひとつひとつの色や形、表情が際立ち、三日月のような模様にも想像力をかきたてられます。リチャード・ロングによれば石の彫刻は、その石を採集した国の肖像でもあるそうです。

『石の川 (River of Stones)』2018/2023年 Photo: Rijksmuseum, Jannes Linders
<『石の川 (River of Stones)』2018/2023年 Photo: Rijksmuseum, Jannes Linders>

大広間には、波打つ曲線の作品『石の川 (River of Stones)』がありました(上写真)。床のモザイク装飾と戯れつつ流れゆく川は、庭園で鑑賞した『命の線』や『水の中のヘビ』の曲線を思い起こさせます。

赤色の石は、フランスとベルギーを流れ、オランダで北海へと注ぐマース川によって運ばれたものです。西欧の古の記憶が静かに流れだすような、厳かな雰囲気がありました。

『石の川 (River of Stones)』2018/2023年 Photo: Rijksmuseum, Jannes Linders

庭園ですごす特別なひと時

歴史的な建造物を間近に眺めたり

アムステルダム国立美術館の庭園では、美しい自然を愛でるのはもちろんのこと、歴史的な建造物を間近に眺めたり(上写真)、絵画のワークショップに参加したり、子どもを遊具で遊ばせてみたり、現地の人たちと一緒に穏やかな時間を過ごせます。美術館にいらっしゃる方は、ぜひ庭園も散策してみてください。

美術館内では、2019年7月より公開作業で進められている、レンブラントの『夜警』の修復作業を見るのも楽しみです。アムステルダム国立美術館は、訪れるたびに新しい魅力に出会えます。

2023年8月の『夜警』の修復作業の様子。特別なガラスの部屋の中で修復作業が進められています
<2023年8月の『夜警』の修復作業の様子。特別なガラスの部屋の中で修復作業が進められています>

リチャード・ロング展 インフォメーション

  • 会場:アムステルダム国立美術館
  • 所在地:Museumstraat 1, 1071 XX Amsterdam
  • アクセス:アムステルダム中央駅よりトラム2,12番で14分Museumplein下車徒歩4分
  • 会期:2023年5月26日~10月29日
  • 会館時間:9:00~17:00/庭園 9:00~18:00
  • 入館料:22.5ユーロ, 庭園は無料
  • 公式サイト:リチャード・ロング展

※施設の詳細やアクセス方法など掲載内容は2023年10月時点のものです。

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Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

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