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【チリ】のソウルフード「コンプレート 」
おなかがすいたとき、お酒を飲んだあと、ふと食べたくなる食べ物はなんですか?
日本だったら「ラーメン」を挙げる人が多いかと思いますが、チリの場合、「コンプレート」」というチリ版のホットドッグです。たいていのチリ人はコンプレートが大好き。この国に住んで足掛け14年になる私ですが、今まで「どうしてチリ人はこんなものが大好きなのだろうか」と思ってきました。
中に入っているソーセージは日本の魚肉ソーセージのようにチープな味で、コッペパンにそれを挟んでケチャップなどをかけて食べるこの食べ物のどこが魅力的なのか、正直わかりませんでした。「ピザの方がよっぽど美味しいのに」などと思ってきました。
でも、前回の記事「1日散歩が楽しい「ビーニャ・デル・マル」」で書いたコンプレート屋さんに行って意見が変わりました。「コンプレートは美味しい(ものもある)」。興味を持ち周囲の友達や同僚にコンプレートについて聞いて回りました。その結果、「奥が深いなー。」と思ったので、今回はこの食べ物について紹介します。
目次
コンプレートの種類
スペイン語で「コンプレート」とは完全な、とか全部そろった、などの意味です。
一般的なアメリカのホットドッグはシンプルにパンにソーセージが挟まっているものですが、チリのホットドッグは独特な種類があります。
- 「コンプレート」・・・ソーセージの上に小さく賽の目切りにしたトマトと、アボカドペースト、ザワークラフト
- 「イタリアーノ」・・・ソーセージの上にトマトとアボカドペースト、マヨネーズで、赤・緑・白のイタリア国旗と同じ色合いである
- 「チャカレロ」・・・ソーセージの上にインゲン豆と、黄唐辛子、マヨネーズがのったもの
- 「グリンガ」・・・ソーセージの上にトマトと、キュウリのピクルス、レタス、玉ねぎ、マヨネーズがのったもの
- 「アス」・・・ソーセージの代わりに牛肉が使われているもの
<見かけはコンプレートと変わりません>
- 「ブラジレーニョ」・・・ソーセージ、溶けたチーズ、アボカド
地方によって、バラエティに富んでいるものもあり、その種類は何十にもわたるようですが、一番人気はやはり普通の「コンプレート」 チリはアボカドの産地なので、贅沢に使われたアボカドペーストが必要不可欠なのでしょう。
いつ食べるの?
どんなに小さい町にも必ずあるコンプレート屋。二畳ほどの小さい店や、屋台の形態が多いです。
ファーストフードとして、小腹がすいたとき、急いでいるときも食べますが、よく聞くのはお酒を飲んだ後。
日本人は「〆のラーメン」というようにチリでは〆のコンプレート。Barやディスコの近くにある屋台は酔っ払いを待つように、深夜から明け方も営業中です。大学の構内にもコンプレート屋があり、学生の胃袋を満たしています。
また、家でもコンプレートを作って食べます。誕生日会などでも食べるので、子どもにとってはごちそう感があるコンプレート。楽しかった子ども時代の記憶によく登場するのもコンプレートと言って過言ではないでしょう。
「コンプレタダ」とは
南米の経済優等生と呼ばれるチリですが、貧富の差が大きく、一般的な市民の懐はそんなに温かくありません。病気やケガの治療、火事、アーチスト支援など、お金を集める必要があるときにチリでよくやられるのが、「ビンゴ大会」「くじびき」そして、「コンプレタダ」。「コンプレタダ」はコンプレートを売ってお金を集めるイベントで、私も大学構内で何度か目にしたことがあります。また、町内会などでも催されるそうです。
なぜコンプレートを売るのでしょう?
原材料が安く、ほとんど火を使わず、調理が簡単で誰にでもできるから。食べるのも簡単で、お皿やフォークは必要ないので洗い物の手間や心配もありません。なんて合理的な食べ物なのでしょうか。作るのが手間で、燃料費などもかかったら、それだけ高い価格で売らなければ利益は出ませんが、コンプレートだったら、安く売っても簡単に利益が出る。みんなで美味しく食べて、その売り上げで困っている人が助かれば一挙両得ですよね。
コンプレートを作ってみよう
友達とコンプレートを作ってみました。
材料は、
- ソーセージ(ボイルする)
- アボカド(レモン汁、塩をかけてペースト状にする)
- トマト(賽の目切り)
- ピクルスミックス(既製品)
- マヨネーズ(今回は手作り)
- マスタード(今回は手作り)
などです。
1. コッペパンをオーブンで温める(オプション)
2. コッペパンは上ではなく、横に切り込みを入れ、ソーセージなどの具がしっかり入るようにパンのふわふわした部分を少し取る(重要)
3. ボイルしたソーセージを入れる
4. そのその上にトマトをのせる
5. その上にアボカドペーストをのせる
6. マヨネーズをのせ、お好みで、ケチャップ、マスタードも加える
7. 具が落ちないように気を付けながら大口でほおばる
みんなで食べたコンプレートはとてもおいしかったです。
ちなみに動画はこちら。
>>YouTube:Completo Chileno. Un bocadillo delicioso. Receta tradicional
もともとは1920年代に、アメリカ帰りのチリ人がレストランを開き、ホットドッグをチリ人の好みに改良して売ったところ大ヒットしたことから始まったコンプレートですが、その定着には、貧しかった社会・安くて身の回りにあるものを詰め込んだという庶民の知恵も垣間見える気がします。
ちなみに、チリにはコンプレートにいれる、魚介ソーセージみたいなフニャフニャしたソーセージ(サルチーチャまたはビエネッサ)とはべつに、肉がじっしりつまったロンガニサというソーセージもあり、こちらはとても美味しいですが、ロンガニサは絶対にコンプレートには入れません。コンプレートはあくまでも、チープなのが美味しいのです。
チリの長細い国土の北から南まで、どこの街角でも食べられるB級グルメ。チリにおいでの際にはぜひ試してみてください。
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IZUKAWAUSO
- 日本青年海外協力隊員。チリ南部の田舎暮らしも8年半になります。趣味は旅行(特に屋台めぐりと温泉)と料理。地元の週末フリーマーケットでおにぎりと味噌汁売ってます。