【岩手】広大な湿原に咲く高山植物を気軽に見に行ける!八幡平で涼しい空気に包まれながらトレッキング

八幡平(はちまんたい)は、岩手県と秋田県の県境に位置する標高1,613mの山。名前に「平」の字があるとおり、一帯はなだらかな高原台地になっています。山頂付近にある登山口まで車でアクセスできるうえに頂上までの標高差は、わずか70mほど。周辺には広大な沼や湿原が点在し、6~9月には高山植物が咲き乱れます。

「日本一登りやすい百名山」という異名を持つ八幡平で、涼しい空気に包まれながら、トレッキングを楽しんできました。気軽に絶景を見られるのが魅力です!

目次

アクセス:車で八幡平山頂のすぐ近くへ!アスピーテラインで快適ドライブ

トレッキングの起点となる八幡平山頂近くの登山口があるのは、標高約1,540mの地点。すぐ近くには「八幡平山頂レストハウス」と「八幡平パークサービスセンター」が並んで建っています。その前には広い有料駐車場があり、普通車の駐車料金は1日500円です。

こちらの駐車場へは、無料のドライブウェイ「八幡平アスピーテライン」(4月中旬~11月上旬に開通)を通ると、一気にアクセスできます。盛岡市中心部からは、東北縦貫自動車道/東北自動車道車とアスピーテラインを経由し、1時間20分ほどで到着。アクセスのしやすさが嬉しいポイントです。

駐車場で料金を払う際にもらった、八幡平の「花めぐりマップ」が、トレッキングの際に大変役に立ちました。

八幡平レストハウスには、うどんやカレーが食べられる軽食コーナーや、トレッキングの情報収集ができる自然環境情報コーナーがあります。季節の高山植物の情報も満載です。登山口に行く前に立ち寄るのをおすすめします。

八幡平パークサービスセンターと八幡平頂上レストハウス
<手前は八幡平パークサービスセンター、奥が八幡平山頂レストハウス>

県境登山口から、約2時間のトレッキングコースへ

八幡平山頂レストハウスのすぐ北に、山頂へ向かう登山口があります。手前には岩手県と秋田県の県境であることを示す道標が立っており、足を左右に動かしながら「秋田!岩手!」とついジャンプしたくなります。

県境道標
<登山口の手前に立つ県境の道標>

筆者がこちらを訪れた日は高山植物が花盛りの7月下旬。青空が見える絶好のハイキング日和で、気温も24度と快適でした。そこで、

県境登山口→鏡沼→八幡平頂上→八幡沼→源太森の手前→八幡沼キスゲ通り→見返り峠→県境登山口

をひとめぐりする、約2時間のトレッキングコースを歩くことにしました。八幡平の頂上を経て、広大な湿原を歩く、いいとこどりのコースです。

このコースはほぼ岩手県内を歩きますが、出だしは秋田県内です。なんだか壮大な気分!

登山口にあるトレッキングコースの案内
<登山口にあるトレッキングコースの案内>

高山植物がいっぱい!歩きやすい遊歩道

登山口からのびる遊歩道はよく整備された石畳で、傾斜もゆるやか。普通の運動靴でも、無理なく歩けます。家族連れも多く、小学生のハイカーも元気に歩いています。

遊歩道に入るとすぐ、両脇には早くも高山植物の花々がいっぱい。光沢のある明るい黄色の花、ミヤマキンポウゲがとりわけ目につきます。

ミヤマキンポウゲ
<遊歩道で出迎えてくれるミヤマキンポウゲ>

鏡沼への分岐を左に進むと、亜高山帯の針葉樹であるオオシラビソの林が目の前に迫り、「いま山を歩いてる...」という気分が高まります。風格のある樹形が印象的です。
つい目線が上に向きがちになりますが、遊歩道の左側の下草に目を向けると、日本固有の高山植物であるキヌガサソウや「ユウレイタケ」の異名を持つギンリョウソウが生えています。

笠のような大きな葉と花を持つキヌガサソウは、通りかかるハイカーに大人気。盛んにカメラを向けられていました。足元の花々もどうぞお見逃しなく。

歩きやすい遊歩道とオオシラビソの林
<歩きやすい遊歩道とオオシラビソの林>

キヌガサソウ
<日傘を思わせる形のキヌガサソウ>

ギンリョウソウ
<下草の影にひっそりと咲いていたギンリョウソウ>

鏡沼とメガネ沼

樹林帯をしばらく歩くと、右側に「鏡沼」と「メガネ沼」が続けて現れます。多くの火山群によって形成された八幡平の頂上付近には、噴火で生じた火口に水が溜まってできた火口湖がたくさん存在します。

鏡沼は、周囲の風景を鏡のように映すことからこの名前が付けられました。春の雪解けの時期には「ドラゴンアイ」と呼ばれる、龍が目を開けたような円状の模様が見えることでも有名です。

針葉樹のシルエットと青空を映し出す夏の水面も充分に素敵でしたよ。

鏡沼
<周囲の景色を映す鏡沼>

メガネ沼は2つの火口に水が溜まってできたもの。まるでメガネのように、2つの丸い水面が並ぶ様子が目を引きます。

メガネ沼
<2つの水面が見えるメガネ沼>

あっという間に八幡平頂上に到着

登山口から歩くこと25分ほどであっという間に八幡平頂上に到着しました。なだらかな道を歩いているうちに、短時間で山頂に着いたことにビックリ。ささやかな達成感を味わえます。

八幡平頂上の展望台
<八幡平頂上の展望台>

山頂には木造の展望台があり、雄大なオオシラビソの樹海や、周囲の山々の眺めを楽しむことができます。

展望台のかたわらには標高1,613mであることを示す木柱が立ち、展望台に登ると「300」という円形の標識が見えます。この数字はスキーツアー用の指導標識番号で、1番は麓の起点、300番が八幡平山頂を表すそうですよ。

展望台横に立つ八幡平山頂の木柱(左)と「300」の標識
<展望台横に立つ八幡平山頂の木柱(左)と「300」の標識>

展望台から見えるオオシラビソの樹海と山影
<展望台から見えるオオシラビソの樹海と山影>

展望台から南東側を眺めていると、雲の間から岩手山も見えてきました。針葉樹の彼方に見える、悠々とした山容に目を奪われます。

展望台から見えた岩手山
<展望台から見えた岩手山>

花々を見ながら最大の火口湖「八幡沼」へ。雄大な景色に釘付け

山頂の展望台を降りたら、「ガマ沼」と「八幡沼」の展望テラスへ向かいます。周囲1.5kmの八幡沼は、八幡平湖沼群の中でも最大の火口湖です。

沼へ降りていくなだらかな遊歩道の脇には、大輪のニッコウキスゲや白いウメバチソウ、赤紫色が目立つハクサンチドリ、星形のイワイチョウなどが美しい花々を見せています。ひとつひとつの花が印象的で、つい立ち止まっては見入ってしまいます。癒されるー。

遊歩道のあちこちで咲くニッコウキスゲ
<遊歩道のあちこちで咲くニッコウキスゲ>

白い花びらが可憐なウメバチソウ
<白い花びらが可憐なウメバチソウ>

鮮やかな赤紫色のハクサンチドリ
<鮮やかな赤紫色のハクサンチドリ>

池塘に生えていたイワイチョウ
<池塘に生えていたイワイチョウ>

ガマ沼と八幡沼が広がる光景は、胸のすくようなすがすがしさ。ガマ沼には硫黄コロイドが溶け込んでおり、太陽光の反射で澄んだ青に見える美しい水をたたえています。

最大水深は22.4mもの深さがある八幡沼の色はダークブルー。北側には八幡沼湿原が広がり、展望テラスからの眺めは雄大そのものです。

ガマ沼
<ガマ沼>

八幡沼
<八幡沼>

八幡沼の向こうに岩手山が見える
<八幡沼の向こうに岩手山が見える>

湖畔には避難小屋の「陵雲荘」があり、八幡沼と陵雲荘を眺められる場所は、木の椅子が並ぶ休憩広場になっています。沼の向こうには岩手山も見えますよ。ここで水分補給などをしながら、一休みするのがおすすめです。

休憩広場から遊歩道をはさんで反対側の、なだらかな斜面にはイワカガミが群生しています。フリンジのように細かく裂けたピンク色の花が愛らしく、特に女性ハイカーの人気を集めていました。

イワカガミ
<イワカガミ>

ニッコウキスゲやワタスゲが咲き乱れる八幡沼湿原

陵雲荘の横を過ぎると、広大な八幡沼湿原を横切るコースへ入ります。緑が鮮やかな湿原には木道がのびており、あちこちに鮮やかな黄色のニッコウキスゲが咲いています。ワタスゲも群生しており、白い綿毛がまるで小さな雲のよう。

湿原に点在する池塘が青空を映して輝き、彼方にオオシラビソの森が広がる様子を見ると、「ここは楽園か...!」という気がしてきます。

木道が張り巡らされた八幡沼湿原
<木道が張り巡らされた八幡沼湿原>

湿原のあちこちに咲くニッコウキスゲや、白いハクサンボウフウ
<湿原のあちこちに咲くニッコウキスゲや、白いハクサンボウフウ>

雲のかけらのようなワタスゲ
<雲のかけらのようなワタスゲ>

このエリアの木道には横に細かい線が入っており、すべりにくい構造になっています。涼しい空気の中で、快適に湿原歩きを楽しめました。

二本の木道が平行してのびているため、対向者とすれ違うときもスムーズ。湿原に降りるのは禁止されています。自然を守るため、木道の上だけを歩きましょう。

湿原に点在する池塘に青空が映る
<湿原に点在する池塘に青空が映る>

源太分れから八幡沼キスゲ通りを通って見返峠へ

湿原を流れる小川を渡ってしばらく歩くと、源太森へ進む道と見返峠へ進む道の分岐、「源太分れ」にたどり着きます。源太森への道を少し歩き、オオシラビソの一群を眺めてから、分岐に戻って見返峠への木道に足を進めました。

左へ進むと源太森、右に曲がると見返峠へ
<左へ進むと源太森、右に曲がると見返峠へ>

小さな沼を南へ周回し、「八幡沼キスゲ通り」と呼ばれる木道に入ると、その名のとおり道の両脇には大輪のニッコウキスゲがずらりと並んでいます。木道を照らす灯りのよう。

ニッコウキスゲに導かれながら歩いていくと、数年に一度しか咲かないことで知られるコバイケイソウの花も見かけました。一輪だけでしたが、大きな白い花が存在感抜群でしたよ。

沼の岸辺をニッコウキスゲが彩る
<沼の岸辺をニッコウキスゲが彩る>

黄色い花がどこまでも続く八幡沼キスゲ通り
<黄色い花がどこまでも続く八幡沼キスゲ通り>

コバイケイソウ
<コバイケイソウ>

見返峠へ向かう木道の最後に、少し急な斜面があります。足元を確認しながらゆっくり登り、しばらく進むと、木道から石畳の道に変わります。

トレッキングが終わることに少し寂しさを感じながら、見返峠へ歩みを進めると、目の前には壮大な山並みが。岩手山へ連なる裏岩手連峰のパノラマが迫ってきます。圧巻!

散策の最後に、こんな素晴らしい景色を見られたことに感激しました。晴天に感謝。

終盤に現れる上り坂の木道
<終盤に現れる上り坂の木道>

見返峠から見る壮大な眺め。左には岩手山がくっきり
<見返峠から見る壮大な眺め。左には岩手山がくっきり>

ここからしばらく歩くと鏡沼の分岐へ戻り、出発点の県境登山口へと帰ってきます。遊歩道を歩いた時間は、ゆったりしたペースで2時間ほど。たいへん充実したトレッキングでした。

まとめ

八幡平山頂周辺のトレッキングコースは、壮大な自然を無理なく楽しめるところです。以下の点に注意をしながら、足を運んでみてくださいね。

  • トレッキングの起点となる県境登山口の近くへは、車で「八幡平アスピーテライン」(4月中旬~11月上旬に開通)を通り、一気にアクセスすることができます
  • 「八幡平山頂レストハウス」の前に有料駐車場があります。普通車の駐車料金は1日500円です
  • 八幡平山頂レストハウスには軽食コーナーや、トレッキングの情報収集ができる自然環境情報コーナーがあります。トレッキングの前後に立ち寄ると便利です
  • トレッキングコースの遊歩道はよく整備されており、普通の運動靴でも歩けます。道の勾配はゆるやかですが、少し急な上りや下りもあるので、すべりにくい靴で行くことをおすすめします
  • 八幡平頂上へは、県境登山口から歩いて25分ほどで到着します
  • 6~9月は遊歩道沿いに高山植物が次々に咲きます。足元もお見逃しなく
  • 八幡沼湿原には歩きやすい木道が設置されています。湿原に降りるのは禁止されています
  • 県境登山口→鏡沼→八幡平頂上→八幡沼→八幡沼キスゲ通り→見返り峠→県境登山口を歩くのにかかった時間は約2時間でした。山の天気は変わりやすいため、ゆとりを持ったスケジュールで行くことをおすすめします

それでは、涼しい高原で高山植物を楽しむ素敵な旅を!

八幡平山頂レストハウス

  • 住所:岩手県八幡平市八幡平山頂
  • 営業期間:4月中旬から11月上旬(八幡平アスピーテライン・八幡平樹海ライン開通期間)
  • 営業時間:9:00~17:00
  • 駐車場料金:500円
  • 駐車可能台数:107台
  • 公式サイト:八幡平山頂レストハウス

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朝茶

ライター/英和・和英翻訳者。出版社に11年勤務後、2009年にシンガポールに転居。東南アジアの文化と料理にハマる。2013年に帰国した後は日本文化に改めて関心を深め、今はとにかく国内各地を旅したいです!

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