公開日:
最終更新日:
ドイツの西端:アイフェル国立公園
<TOP画像:アイフェル国立公園 ©Kanmuri Yuki>
今日はドイツの西の端、ベルギーとの国境近くにあるアイフェル国立公園とその周辺の魅力をご紹介します。
目次
ブナとオークが茂る自然林を目指す
<アイフェル国立公園内ウルフト川沿いの遊歩道 ©Kanmuri Yuki>
現在ドイツに16ある国立公園のうち、アイフェル国立公園は2004年に指定された比較的新しいものです。11,000haという広さには、10,960種を超える動植物が生息・生育しています。しかも、そのうち約2,500種は稀少な種です。
例えば、19世紀に絶滅したと思われていたヤマネコは約1,000頭生息していますし、国内最大の野生の黄水仙の群生地があるのもここです。国立公園内を流れるルール川とウルフト川には、ビーバーが住み、野鳥の種類も豊富です。
<ブナの森の遊歩道には、森林浴にぴったりな寝椅子も©Kanmuri Yuki>
アイフェル国立公園には、ブナやオークの木が数多く茂りますが、これは珍しいことです。本来ドイツの土地にはブナの木が多く生えているはずなのですが、実際には、現在ドイツの森林にブナの木が占める面積はたった15%しかないからです。
その理由は、一言で言えばヒトの手の介入。ドイツでは、木材生産を目的とする針葉樹の植林が全国的に盛大に推奨された時代があったのです。
<見上げれば緑の空 ©Kanmuri Yuki>
ここアイフェル国立公園では「自然の手に任せる」を合言葉に、最終的にブナの多い自然林に戻すことを目指しています。今はまだ自然林の再生に若干手を貸していますが、2034年からはヒトの手を一切入れないということがすでに決まっています。
ナチスの養成機関フォーゲルザング校
アイフェル国立公園には、もうひとつヒトの手が大きく入った過去があります。それは、今の国立公園のほぼ真ん中あたりに、1934年からナチスドイツの訓練機関であるオルデンスブルク政治指導者学校フォーゲルザング校が建設された事実です。
湖を見降ろす場所に要塞のように腰を下ろす施設群は7年かけても未完成で終わりましたが、約100ha規模という巨大なものでした。
<元フォーゲルザング校からは湖も見える ©Kanmuri Yuki>
第二次世界大戦後、この場所は、戦勝国である英国やベルギーの軍隊の訓練場として用いられましたが、2005年にその役目を終え、2006年からは歴史を語るフォーゲルザングIP(国際センター)として公開されています。敷地内の建物は自由見学できます。
ガイド付きのツアーも毎日行われていますが、こちらは有料でドイツ語のみです。
<資料館入り口の壁。ドイツ語の次にあるのはポーランド語とヘブライ語 ©Kanmuri Yuki>
2016年にオープンしたメイン資料館の中には、ナチスドイツが築いたフォーゲルザングとその時代背景を詳しく解説する展示と、アイフェル国立公園の自然と野生の動植物についての展示があります。フォーゲルザングとナチスについての展示見学は、12歳未満は見学できません。
フォーゲルザングIP
- 開館時間:10:00~17:00(12/24,12/31は、10:00~14:00)
- 展示の見学料:大人8ユーロ(家族、子供、誕生日割引あり)※展示以外の資料館入場は無料
- 公式サイト:Rotkreuz-Museum vogelsang ip
本格的なハイキングコースから、バリアフリーな散策路まで
<バリアフリーな散策路 ©Kanmuri Yuki>
アイフェル国立公園内には、短い散歩コースから、数日がかりのハイキングまで、さまざまな散策路が整備されています。合計すると240kmに及ぶこれらのコースのうち、サイクリングも可能なルートは140km、乗馬可能なルートも65kmあります。
青く輝く湖を見下ろすポイント、木々を通る風の音を聞きながら歩く川沿いの道、可愛い村や古い修道院など、途中には見どころも点在しています。
<元マリアヴァルト修道院 ©Kanmuri Yuki>
アイフェル国立公園の外郭にあたる町々には、国立公園のインフォメンションセンターが建っています。場所は、北のニデッゲン(Nideggen)から、公園を中心に時計回りでハイムバッハ(Heimbach)、ゲミュント(Gemünd)、ヘーフェン(Höfen)、ルルベルク(Rurberg)の5か所です。
<見晴らしの良いバーレストランがあるハイムバッハのお城 ©Kanmuri Yuki>
また、公園の真ん中にある上述フォーゲルザングIP駐車場からも5~15kmのハイキングコース数本にアクセス可能です。
特筆すべきは、バリアフリーに整備された『ワイルド・カーメーター(Wilder Kermeter)』トレイルです。車いすでも通れ、目が見えにくい人でも手で触れるなどして森を感じるよう工夫がされています。ウルフト湖北側にあります。駐車場からも近く、ベビーカーで散策する家族の姿も見られました。
<触って学べるきのこたちも ©Kanmuri Yuki>
アイフェル国立公園
周りには点々と古城が
アイフェル国立公園近くには、古城も多く建っています。ハイキングの途中で立ち寄れる場所も少なくありません。時間と体力に余裕がある方には、寄り道をお勧めします。ハイムバッハのお城もニデッゲンのお城もレストランなどに使われていて一般の公園同様、入場は無料です。
<ニデッゲン、町の入り口 ©Kanmuri Yuki>
ハイムバッハのお城
ニデッゲンのお城
その他にも、立ち寄って損はない可愛らしい町が近隣にはたくさんあります。ハイキングの中休みには、ぜひドイツの可愛い村々もお楽しみください。
関連記事
Rankingドイツ記事ランキング
-
冠ゆき
- 山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。