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ここが伊勢神宮のルーツ!?京都にある「元伊勢三社」をめぐろう
京都府福知山市、古くは丹波の国と呼ばれた山中に元伊勢と呼ばれる3つの神社があります。全国的にはその存在は決してメジャーとはいえませんが、荘厳な雰囲気に満ちた神域は元伊勢の名に恥じないパワースポット。伊勢神宮のルーツのひとつとされる、元伊勢三宮を訪ねてみましょう。
目次
伊勢神宮は移動を繰り返した?
三重県伊勢市にある伊勢神宮は、天照大御神を祀る内宮、豊受大御神を祀る外宮がある日本国民の総氏神様。日本人の心のふるさとともいえる伊勢神宮ですが、実はもともと現在の位置にあったわけではないのです。そもそもは皇居内に祀られていた天照大御神が、今の伊勢神宮に鎮座するまで、新たな鎮座地を探して日本各地20ヶ所以上を転々としていたという経緯があるのです。
約90年もの間、新たな鎮座地を求めて移動を繰り返した伊勢神宮。その際に一時的にでも天照大御神を祀った地は元伊勢と呼ばれていて、京都にもいくつか元伊勢と呼ばれる地があるのです。今回はそのうちのひとつをご紹介しましょう。
鬼伝説・大江山の麓にある元伊勢三宮
『遠い昔の一条天皇の時代、京の都では神隠しが多発していました。それは大江山に住むという鬼、酒呑童子の仕業であったため、源頼光が退治した』
この酒呑童子の伝説は有名ですが、今回ご紹介する京都の元伊勢はそんな鬼伝説の残る地にあります。酒呑童子がいたとされる大江山は京都府福知山市に実在する山で、京都の元伊勢三社はその麓にあったのです。
ちなみに京都府の北部を縦横に走る京都丹後鉄道、通称「丹鉄」の大江駅は鬼瓦公園となっており、全国の鬼師と呼ばれる鬼瓦製作者の力作が野外に展示されているのです。街灯やマンホールの蓋に至るまで、とにかくそこらじゅうが鬼だらけ!鬼の里での鬼アートを楽しんでみましょう。
さて本家の伊勢神宮では、外宮の後に内宮へと参拝するのが正式な順序とされています。まずは福知山にある元伊勢三社の外宮、豊受大神社を訪ねてみましょう。衣食住の守り神、天照大御神の食事を担当する豊受大御神はもともと丹後地方の神。そんなこともあり、この周辺には豊受大御神を祀る神社が点在しています。
そしてここ福知山の豊受大神社、外宮は静かな林の中に鎮座しています。印象的な階段の参道を頑張ってのぼりましょう。少しずつ、まわりを取り巻く空気が変わったいくようにも感じます。親切に参拝順路が書かれていますので、せっかくですのでそれに従って参拝してみては?
境内へ続く参道で待つのはちょっと珍しい鳥居。数多くの神社がある京都でも数えるほどしかない、樹皮がそのままになった黒木の鳥居で、日本最古の鳥居形式とされているのです。
鳥居をくぐって少し歩けば、本殿が見えてきます。神明造りになっており、元伊勢の名に恥じない威容です。そしてとにかくたくさん末社があり、その数は30以上もありますので、ひとつひとつ参拝すると結構大変です。
そして見逃せないのが堂々たる木々。境内には立派な木が多いのですが、ひときわ目立つのが本殿わきにある圧倒的な存在感を放つご神木。その名も龍登の桧と龍燈の杉と呼ばれるご神木です。
龍登の桧は龍神が螺旋を描きながら天へと駆け上るようにそそり立つことからその名が付けられています。確かに木肌はうねる様に巻きながら天へと伸びています。
そしてもう一本は龍燈の杉。樹齢1500年ともされていて、節分の深夜に龍神が燈火を献ずると言われているご神木なのです。こちらも真下から見上げればその圧倒的な存在感に感嘆の言葉が漏れること間違いなし。こんなパワーを秘めたご神木を有する外宮に「元伊勢」の片鱗を感じるのではないでしょうか。
豊受大神社
- 住所:京都府福知山市大江町天田内60
- TEL:0773-56-1560
- 参拝:自由
- 駐車場:あり
- アクセス:京都丹後鉄道宮福線「大江高校前」下車、徒歩約15分、市営バス「外宮」下車すぐ、京都縦貫道「舞鶴大江」ICから約15分
内宮・皇大神社へ
外宮から車で10分もかからない位置に内宮、皇大神社があります。かつては門前が賑わっていたのかと思えるような雰囲気も残されています。そして一の鳥居脇には誇らしげに「元伊勢・皇大神社」と記された石柱も。
ここからの表参道は約10分ほど、距離にして約300m、200段を超える石段の道は静かな原生林の中を抜けていきます。その参道にはまたしても見上げるほどの高さを誇る杉の木が。
これは樹齢1000年を超える麻呂子杉と呼ばれる古木。元々は3本杉だったといわれていますが、落雷などの影響で1本になってしまったのです。しかし残された麻呂子杉の堂々たる姿は素通りすることはできません。ちなみその名の由来は聖徳太子の弟である麻呂子親王から。麻呂子親王が皇大神社を参拝した際に御手植えされたものと言われているのです。
そんな銘木からさらに進めばやがて本殿が。荘厳でいて清浄な空気に満ち、その場に立つものに畏敬の念を抱かせる、過去にここが鎮座地として選ばれたのにも納得できるような雰囲気が境内には満ちています。
本殿へ至る鳥居はこちらも黒木の鳥居。内宮の鳥居には珍しく杉の木が使われています。本殿は茅葺の神明造。屋根の上の千木や鰹魚木などの装飾をはじめ、各部が伊勢神宮と同じしきたりに則られています。
そして本殿脇にひときわ存在感を放つご神木があることも見逃せません。樹齢は2000年とも4000年とも伝えられているご神木、龍灯の杉です。こちらも外宮同様の伝説が残り、節分の夜の丑三つ時、龍王が龍宮から天照皇大神に神灯を捧げるというのです。灯は枝の下の方からどんどん上の枝へと昇っていき、やがて天に至るとされているのです。
そんな龍灯の杉も、昭和37年の火災と平成3年の台風被害により枯死寸前に。のちの平成6年に樹勢回復施術を行うだけでなく、小枝を採取して接ぎ木で若木を誕生させるなど、ご神木を未来に引き継いでいく計画も行われているのです。
こうした圧倒的なご神木の存在が、ここが元伊勢として選ばれたひとつの理由になっているのかもしれませんね。
皇大神社の基本情報
- 住所:京都府福知山市大江町内宮217
- TEL:0773-56-1011
- 参拝:自由
- 駐車場:あり
- 公式サイト:皇大神社
- アクセス:京都丹後鉄道宮福線「大江山内宮」下車、徒歩約20分、市営バス「内宮駅前」下車約20分、京都縦貫道「舞鶴大江」ICから約20分
天岩戸神社も忘れず立ち寄ろう
内宮・皇大神社の本殿前からは天岩戸神社へと続く道がありますので行ってみましょう。ピラミッド型の山、日室ヶ嶽遥拝所を経て、川沿いの道へと辿り着けばもうすぐです。
天岩戸神社へと続く道は看板がありますからそれを目印に。やや急な石段を数十段下ると社務所がある小さな広場に着きます。足に自信がない方は、ここに天岩戸神社の遥拝所がありますから無理をせず高台から本殿を拝みましょう。
この先へと進む方は更に石段を下り、渓流の谷底へと進みましょう。別名は五十鈴川と呼ばれる宮川の渓谷は神々が天下ったという伝説に相応しい雰囲気。そしてなんと天岩戸神社の本殿はそびえたつ大きな岩壁の上に建てられているのです。
本殿を参拝するためには岩を上らなくては辿り着けませんが、岩には鎖が繋がれており、これを辿れば本殿と正対することができます。しかし足元は滑りやすいので雨上がりなどは特に要注意で、無理せず参拝しましょう。
本殿の奥側には神々が座したという御座石が鎮座しています。また、本殿から下流側には神々が湯あみをしたという産釜、産たらいという大きな甌穴(おうけつ)があり、日照りの年でも水が湧き出てくると言い伝えられています。この天岩戸神社も近年パワースポットとして注目を浴びています。
天岩戸神社の基本情報
- 住所:京都府福知山市大江町佛性寺字日浦ヶ嶽206
- TEL:0773-56-0324
- 参拝:自由
- アクセス:京都丹後鉄道宮福線「大江山内宮」下車、徒歩約30分、市営バス「内宮駅前」下車約30分、京都縦貫道「舞鶴大江」ICから約20分
元伊勢まいりとレイライン!?
徳川の世だった江戸時代、元伊勢が参勤交代のルートにあたるようになります。そんなことから宮津藩主の崇敬をうけた元伊勢の存在は広く世間に知れ渡り、元伊勢まいりがさかんになったそうです。明治時代までは年間に8万人もの参拝者が訪れたと記録があり、麓には宿場町もあり、茶屋や土産物店が軒を並べる門前町が隆盛を誇っていたそうです。
しかし、元伊勢まいりの重要な足となっていた由良川の船便が途絶えると参拝者も激減してしまい、元伊勢は人々から忘れられていったのです。しかしまた自動車をはじめとする交通網の発達によって再び元伊勢まいりが脚光を浴びることになり、昭和40年代から熱心な崇敬者や宗教団体のお参りが増えたのだとか。そして近年のパワースポットブームも追い風となり、現在に至っています。
そして少し不思議な話ではあるのですが、元伊勢内宮と伊勢神宮は冬至の日に太陽が登るラインが一致するのだとか。また元伊勢外宮は西の出雲大社、東の伊夫伎神社、さらには富士山と同緯度にあるとされています。そして外宮、伊夫伎神社、淡路島の伊弉諾神宮、熊野本宮大社、そして伊勢神宮を結べば近畿地方を覆う大きな五芒星が出来上がるのです。こうした神秘性もまた、元伊勢三社の魅力のひとつなのかもしれませんね。
なにはともあれ「元伊勢」の名は伊達ではない、京都府福知山市の元伊勢三社。アクセスはいいとは言い難い場所にはありますが、苦労して訪ねるだけの価値はある神社です。ぜひ足を運んでみてください。
※記載の情報は2023年6月現在のものです。最新情報は公式サイトをご覧ください。
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