【京都】美意識の結晶「桂離宮」を堪能!~最古の回遊式庭園と風雅な建築群を見学してきました

桂離宮

こんにちは。ライターの朝茶です。

京都の西の郊外、桂川河畔にある「桂離宮」は、17世紀に創建された宮家の別荘。約6万9千平方メートルもの敷地(東京ドームの約1.5倍!)には、研ぎ澄まされた美意識で作られた回遊式庭園が広がり、端正な建築群が配されています。

参観は主に予約制でいつも大人気。念願叶ってこちらの予約を取ることができ、じっくり見学してきました。そのときの様子をご紹介します。

目次

参観はインターネットでの予約が便利

桂離宮の参観方法は「事前申込み」と「当日申込み」があります。より確実に参観するには、事前申し込みが無難。インターネットで申込みができます。

>>桂離宮参観申込について

インターネットでは、参観希望日の3ヶ月前の月の1日午前5時から受付け開始。申込みの早い順に受付け、定員を超える申込みがあった場合には抽選となります。なお、同一の日の申込みであれば、申込み時間の前後で取扱いは同じです。

つまり、参観希望日の3ヶ月前の月の「1日のうち」に申込みをすることが、予約の可能性を高めることになります。あとは抽選に当たるよう祈るのみ!

なお、当日8時40分から先着順に参観を受け受ける「当日申込み」の枠もあります。参観時間を指定した整理券を配布し、満員になりしだい受付は終了します。

桂駅から離宮までは徒歩20分。受付には身分証明書が必要

桂離宮へのアクセスは、阪急京都線「桂駅」で下車し東口より徒歩約20分。あるいは市バス・京阪京都交通「桂離宮前」で下車し徒歩約15分です。「バスを利用しても5分しか変わらないなら...」と、筆者は桂駅から歩きました。参観時間の20分前から受付が始まるので時間に余裕をもっていく必要があります。

入り口
<参観者受付への入口>

受付では、参観者全員本人確認があります。運転免許証・健康保険証・学生証等の持参をお忘れなく。確認後は、販売機で参観券(1,000円)を購入します。

参観開始時間は9:00、10:00...と1時間おきに設定されており、最終回は16:00(10月から2月までは16:00の回はなし)。参観所要時間は約1時間です。10~20人のグループで、宮内庁のガイドさんとともに離宮の中を回ります。

このガイドさんのお話がわかりやすくて面白いんです!とっておきの撮影ポイントなども教えてくれるので近くで聴きながらついていくのがおすすめです。

パンフレット
<受付でもらえるパンフレットの桂離宮略図。広いです!>

御幸道の橋
<御幸道の橋を渡って観覧スタート>

貴人をお迎えする御幸道・御幸門

桂離宮は17世紀のはじめ、後陽成天皇の弟にあたる八条宮(はちじょうのみや)初代智仁(としひと)親王により、宮家の別荘として創建されました。その後、二代智忠(としただ)親王が整備・増築を進め、ほぼ現在の姿の離宮を完成させます。

参観客が、ガイドさんについてまずぞろぞろと歩くのは「御幸道(みゆきみち)」。玉石を手作業で敷き並べて固めた、「あられこぼし」という小路が美しく、足元からも端正な別荘であることを実感します。

それもそのはず、この「御幸道」と、その先にある「御幸門(みゆきもん)」」は、智忠親王が後水尾天皇をお迎えするために造ったもの。ガイドさんの「ここを通れるのは高貴な人だけでした」という言葉に納得です。一市民の自分が、今この道を踏みしめることに喜びを感じましたよ。

御幸門
<御幸門>

なお、参観中は敷石の上を歩き、苔を踏まないようにと、ガイドさんから何度も注意がありました。桂離宮の風情ある景色は、よく手入れされた苔が重要な役割を担っているのです。

御幸道
<「あられこぼし」のなめらかさがすごい御幸道。両脇の苔にも注目>

外腰掛から州浜へ...天の橋立がある池

御幸道の中ほどから左に曲がり離宮の苑内に入ると、外腰掛(そとごしかけ)という茅葺屋根の簡素な建物があります。茶室へ行く前の待合所です。

目の前に大きな自然石と切り石を絶妙に組み合わせた「延段」と呼ばれる小路が延びています。そばには二重枡形の手水鉢も設置されており、風情があります。

外腰掛
<外腰掛>

延段
<巧みに石を組み合わせた延段>

二重枡形の手水鉢
<二重枡形の手水鉢におもてなしの心を感じる>

延段を左折して飛び石の道を進むと、視界が急に開けて大きな池が広がります。

池に突き出た手前の岸辺は、黒く平らな石が敷き詰められた「州浜」。先端に立つ石灯籠を灯台に見立ててあり、この池全体が海を表しているのです!

州浜
<左側が州浜。奥の建物は茶室「松琴亭」>

石灯籠の先の小島である「中島」は石橋で北側の小島とつながっており、天の橋立を見立てたものと言われています。独創的で悠々とした眺めに圧倒されますよ。池の向こうには茶室「松琴亭」が美しい姿を見せています。

石灯篭
<州浜の先には石灯篭が。中島と石橋のつながりは「天の橋立」と呼ばれる>

第一の茶亭「松琴亭」

桂離宮の池の周囲には、四つの茶亭があります。そのうちの1つである「松琴亭(しょうきんてい)」は、最も格の高い茅葺入母屋造りの茶亭。池に架かる石橋を渡ってこちらへと向かいます。

が、その前にガイドさんから「橋の上では写真撮影をしないように」と注意がありました。過去に何人も、撮影に夢中になりすぎて池に落ちた参観客がいたそうですよ!すらりと伸びた石橋には欄干などありませんので、気を引き締めて渡りましょう。

松琴亭
<左の石橋を渡って松琴亭へ>

「松琴」の扁額
<屋根の妻の「松琴」の扁額は後陽成天皇の宸筆>

「琴の音のような松風」という意味の松琴亭は、南は築山、東・北・西は池に面しており、自然と調和した静かなたたずまいに和みます。

一方、屋内は大胆な内装に釘付けになります。

「一の間」の床の間の貼り付け壁と、「二の間」との境のふすまは、大きな青と白の市松模様になっているのです。かっこいい!

ハイセンスな配色がアクセントになっている一の間を見て、これを創案したという智忠親王は、どんな意味を込めてこのデザインにしたのだろう...と思いを馳せてしまいました。

一の間から二の間
<一の間から二の間の方をのぞむ>

一の間の床の間
<一の間の床の間>

にじり口から覗いた茶室は、あちこちに配された窓が印象的。遠州好みの「八窓の囲い」と言われるそうです。正面の中柱は、曲がったところにほんの少し小枝が残されていて、これは茶入れの袋を架けるためのものだそうですよ。

茶室の内部
<にじり口から覗いた茶室の内部>

第ニの茶亭「賞花亭」

松琴亭の次は、池の周囲をめぐりながら第ニの茶亭「賞花亭(しょうかてい)」へ向かいます。

途中、両端を苔で覆われた土橋や飛び石が軽やかに配置された道を歩くのが何とも風流です。小路の灯籠ひとつに至るまで洗練されています。

離宮内は起伏に富んでいるので、歩きやすい靴で訪れるのがおすすめです。

土橋
<両端を苔で彩られた土橋を渡る>

水螢灯篭
<「水螢灯篭」。名前は源氏物語の第十九帖の一場面に由来>

小路
<飛び石が美しい小路>

賞花亭は離宮のなかで最も高い場所にあり、峠の茶屋のような雰囲気。竹の連子窓と下地窓にしみじみとした趣を感じます。

何よりこの高さから見る池と小島がめぐる庭の景色が素敵!深い山の中から別の世界を見るような気持ちになりますよ。

賞花亭
<賞花亭>

賞花亭からの景色
<賞花亭からの景色>

園林堂の灯篭から見る、額縁の絵のような景色

次に訪れたのは園林堂(おんりんどう)。本瓦葺宝造り屋根の持仏堂です。今は内部には何も安置されておらず、唐破風の美しい建物だけが残っています。扁額は後水尾上皇の宸筆です。

園林堂
<園林堂。対岸の紅葉が彩りを添える>

園林堂
<青い地に白文字の扁額は後水尾上皇の宸筆>

この園林堂でもう1つ注目したいのは正面入口の前に立つ石灯篭。ガイドさんが「この石灯籠の灯火が入る部分から外を眺めると、額縁の絵のようになりますよ」と教えてくれました。

覗いてみたら、確かに!池に架かる土橋と対岸の木々がまるで絵のようです。額縁付きの景色を撮影しようと参観客はスマホやカメラを持って大賑わいでした。ここを訪れたらぜひ試してみてください。

石灯籠からの眺め
<石灯籠からの眺め。額縁の絵のように見える>

第三の茶亭「笑意軒」

桂離宮のほぼ南端にある笑意軒(しょういけん)は第三の茶亭。直線的な池の対岸から見る田舎家風の姿が印象的です。笑意軒から池へ出る斜面の下は船着場になっています。

笑意軒の対岸に立つ雪見灯篭は特に姿が良いものとして有名だそうです。筆者が訪れたのは12月でしたが、雪見灯篭のかたわらには紅葉も残っていてどちらも池の向こうの笑意軒を彩る良いアクセントになっていました。

紅葉
<雪見灯篭と紅葉の奥に見える笑意軒>

6つの丸窓
<笑意軒の扁額との6つの丸窓>

建物の前に立つと「笑意軒」の扁額の下に並ぶ6つの丸窓が印象的。屋内の装飾も意匠が凝らしてあり、「口の間」の杉戸の引き手は「矢」の形になっています。

口の間から続く「二の間」の襖の引き手は「櫂」の形。袋棚の小襖には「波」の模様があしらわれています。これらは笑意軒の斜面の下の入り江状の池が船溜まりであったことを象徴しているようです。

この優美な回遊式庭園での舟遊びはどんなに風情があったでしょうね。桂離宮は最古の回遊式庭園として知られています。

杉戸
<「口の間」の杉戸。引き手のモチーフは矢>

小襖
<奥に見える小襖には波の模様が...>

書院は2023年秋まで修復中

笑意軒の後は桂離宮の中枢をなす書院群を見学...のはずだったのですが、現在書院は屋根の葺き替えや漆喰壁の塗り替えのため工事中でした!

筆者が訪れたときは、新御殿の外観のみ眺めることができました。工事期間は2023年秋までとのこと。工事の完了を楽しみに待ちましょう。

新御殿の外観
<新御殿の外観>

工事中の案内板
<書院の前に立つ修復工事中を知らせる看板>

第四の茶亭「月波楼」

月波楼(げっぱろう)は古書院の近く、池に面して建つ茶亭。ここは月を見るための茶亭で、その名は白楽天が西湖への想いを詠った句「月点波心一顆珠」に由来します。中の間から見る池の眺めはとりわけ悠々としており、水面に月が映る夜は素晴らしいだろうなあ...と情景を想像してしまいます。窓の上の「歌月」の扁額は霊元天皇の宸筆と伝えられています。

月波楼
<月波楼>

中の間からの池の眺め
<中の間からの池の眺め。対岸には松琴亭が見える>

まとめ

研ぎ澄まされた美意識で作られた桂離宮は、どこをとっても絵になる雅の空間でした。次の点に注意しながら、ぜひ訪れてみてくださいね。

  • 桂離宮の参観方法は「事前申込み」と「当日申込み」の2種類
  • インターネットによる事前申込みは参観希望日の3ヶ月前の月の、1日午前5時から受付け開始
  • 参観当日、受付で参観者全員についての本人確認があります。身分証明書をお忘れなく
  • 離宮の敷地内は起伏に富んだ地形です。歩きやすい靴がおすすめ
  • 苑内の苔を踏むこと、橋の上で撮影することは禁止
  • 書院は2023年秋まで修復工事中

それでは、洗練された美意識を感じる素敵な旅を!

桂離宮

  • 住所:京都府京都市西京区桂御園
  • 参観開始時間:9:00~16:00まで1時間毎、1日8回
    ※10月~2月まで16:00の回はなし
  • 休日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌火曜日が休日)/年末年始(12月28日~翌年1月4日)
  • 料金:1,000円(クレジットカード可)
  • 公式サイト:桂離宮

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朝茶

ライター/英和・和英翻訳者。出版社に11年勤務後、2009年にシンガポールに転居。東南アジアの文化と料理にハマる。2013年に帰国した後は日本文化に改めて関心を深め、今はとにかく国内各地を旅したいです!

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