鉱泉とは何を指す?温泉との違いや鉱泉と名が付くスポット一覧

あなたは「鉱泉」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「鉱泉」を一言で表すと「鉱物質を含む地下からの湧き水」のことです。

「あれ、温泉と何が違うの?」と思った人もいるかもしれません。言葉の使い方によって変わることもありますが、実は国の指針では「鉱泉」と「温泉」は限りなく近いものなのです。

すると気になってくるのが、「鉱泉と温泉はどう違うのか」ということではないでしょうか。そこで、本記事では鉱泉の定義や鉱泉と温泉の違い、日本国内にある「鉱泉」と名の付くスポットなどについて、たっぷりと解説します。

目次

<1. 鉱泉とは>

<2. 鉱泉分析法指針による定義>

<3. 温泉と鉱泉の違いは?>

<4. 鉱泉はどうやってできる?>

<5. 「~鉱泉」と名の付くスポット一覧>

1. 鉱泉とは

鉱泉
<出典元:写真AC

「鉱泉とは何?」と聞かれても、「わかるような、わからないような......」という人が多いかもしれません。

まずは「鉱泉」の一般的な定義を押さえておきましょう。「鉱泉」とは、鉱物性物質や放射性物質など、医学的見地からの治癒成分を含む地下からの湧き水のことをいいます。

「鉱泉」の定義は環境省の鉱泉分析法指針で定められていますが、ややこしいのは、一般的に使われる「鉱泉」という言葉が必ずしも鉱泉分析法指針の定義と一致するとは限らないことです。「鉱泉」は、広い意味では「温泉」の定義にあてはまる湧き水を指しますが、狭い意味では「冷鉱泉」を指す言葉として使われることもあるのです。

聞けば聞くほど混乱してしまった人も少なくないでしょう。「鉱泉」が意味するところがあいまいなのは、「温泉法」の施行以前は温度で「温泉」と「鉱泉(冷鉱泉)」を区別していたからです。

昔は、鉱物性物質などの治癒成分を含む湧泉(ゆうせん)のうち、俗に体温より高いものを「温泉」、体温より低いものを「鉱泉」と呼んでいました。ところが、1948年に「温泉法」が施行されてからは温度による区別はなくなっています。

ただし、「温泉」というと文字通り「温かい」というイメージがありますよね。そのため、現在も法律上の「温泉」のうち、湧出(ゆうしゅつ)温度が25℃未満のものを「冷鉱泉」と呼んで区別する習慣が残っています。

2. 鉱泉分析法指針による定義

鉱泉
<出典元:写真AC

一般的な意味での「鉱泉」と鉱泉分析法指針が定める「鉱泉」の定義は、必ずしも一致しないことはすでに述べました。

では、環境省の鉱泉分析法指針は「鉱泉」をどのように定義しているのでしょうか。

環境省自然環境局が定める鉱泉分析法指針によると、「鉱泉」は「地中から湧出する泉水で、多量の固形物質またはガス状物質もしくは特殊な物質を含むか、あるいは泉温が泉源周囲の平均気温より常に著しく高温を有するものをいう。鉱泉中、特に治療の目的に供されるものを療養泉とする」と定義されています。

もう少し掘り下げると、以下のいずれかの条件を満たすものが「鉱泉」とされています。

  • 1. 源泉から採取されるときの温度が25℃以上であること
  • 2. 溶存物質、遊離炭酸(CO2)、リチウムイオン、水素イオン、ラドンなど19の特定物質が一定量以上含まれていること

「温泉」と「鉱泉」の違いについてはのちほど改めて解説しますが、鉱泉分析法指針で定義する「鉱泉」は、法律上の「温泉」の一種であるといえます。

一般的には、湧出温度が25℃未満の温泉を「鉱泉(冷鉱泉)」と呼ぶことがありますが、鉱泉分析法指針では、湧出温度が25℃以上のものも「鉱泉」と定義しているため、「温かい鉱泉」も存在するのです。

3. 温泉と鉱泉の違いは?

温泉
<出典元:写真AC

「温度では区別できない」となると、「じゃあ鉱泉と温泉って同じなの?」「温泉と鉱泉って何が違うの?」とさらに混乱してしまうかもしれません。

すでに述べた通り、鉱泉分析法指針で定義する「鉱泉」は法律上の「温泉」の一部です。鉱泉分析法指針が定める「鉱泉」の定義と、温泉法が定める「温泉」の定義を比較すると、実は「温泉」のほうが広い概念であることがわかります。

一般的な呼称は別として、少なくとも、法律上・指針上は「鉱泉」と「温泉」の定義は「ほとんど同じ」といえるのです。

では、「鉱泉」と「温泉」の何が違うかというと、「鉱泉」が「水」であるのに対して、「温泉」は「水」だけでなく「水蒸気」や「ガス」も含んでいるという点です。

温泉法では、「温泉」を次のように定義しています。

「この法律で『温泉』とは、地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表に掲げる温度または物質を有するものをいう」

改めて、先ほど紹介した「鉱泉」の定義と比較してみましょう。

「地中から湧出する泉水で、 多量の固形物質またはガス状物質もしくは特殊な物質を含むか、あるいは泉温が泉源周囲の平均気温より常に著しく高温を有するものをいう」

「温泉」が「地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気その他のガス」であるのに対し、「鉱泉」は「地中から湧出する泉水」のみとなっていて、「温泉」のほうが指す物質の範囲が広いことがわかります。

また、「鉱泉」と同様、以下の2つのうちいずれかの条件を満たしていれば、法律上は「温泉」と認められます。

  • 1. 源泉から採取されるときの温度が25℃以上であること
  • 2. 溶存物質、遊離炭酸(CO2)、リチウムイオン、水素イオン、ラドンなど19の特定物質が一定量以上含まれていること

つまり、一般的には「温泉=温かい」というイメージがありますが、「物質」の条件さえ満たしていれば、湧出温度が25℃未満であっても「温泉」に分類されるということです。

このことから、温泉法が定める「温泉」の定義は、「温泉」と聞いて私たちが一般的にイメージするよりもずっと広い範囲を指しているといえます。

とはいえ、「温泉」というと一般的には「温かい」というイメージがあるのが事実。また、1948年の温泉法施行以前は、温度によって「温泉」と「鉱泉(冷泉)」を区別していた経緯もあります。

そのため、「温泉」の定義にあてはまるもののうち、25℃以上のものを「温泉」、25℃未満のものを俗に「鉱泉(冷鉱泉)」と呼び、区別する習慣が今なお残っているのです。

4. 鉱泉はどうやってできる?

温泉
<出典元:写真AC

自然の恵みである鉱泉(温泉)。日本人にとっては非常に身近な存在ですが、鉱泉はどうやってできるのでしょうか。

鉱泉(温泉)は、大きく分けて「火山性」のものと「非火山性」のものがあります。

日本のような火山地帯では、地下数km~10数kmの比較的浅いところに、地下深部から上昇してきたマグマがたまった「マグマだまり」があります。このマグマだまりの熱によって 温められた地下水に、マグマの成分や地中の岩石に含まれるミネラル分が溶け出したのが火山性の鉱泉(温泉)です。

一方、非火山性の鉱泉(温泉)は、地下深くにたまった水が地熱によって温められたものです。非火山性の鉱泉(温泉)は、さらに「深層地下水型」と「化石海水型」に分けることができます。「化石海水型」は塩分を豊富に含んでいるため、湧出温度が25℃未満でも「鉱泉(温泉)」に該当するのです。

5. 「〇〇鉱泉」と名の付くスポット一覧

日本全国にたくさんの温泉地がありますが、「〇〇鉱泉」と名が付く場所もあります。

前述の通り、国が定義する「鉱泉」は狭義の「温泉」にあたるため、あえて「鉱泉」と呼ばれていても実態は温泉と変わらないこともあります。

ただ、「鉱泉」と呼ばれるスポットは、一般的な知名度はあまり高くなく、通好みの湯治場(とうじば)や1軒宿が多いのが特徴。そのため、有名温泉地とは違った、落ち着いた雰囲気が魅力といえるでしょう。

5.1 赤滝鉱泉(栃木県)

栃木県矢板市にある鉱泉宿のうち、最も山深いところに位置しているのが創業1866年の老舗宿「赤滝鉱泉」。車がないとたどり着けないところにあることから、知る人ぞ知る秘境宿です。

谷底にひっそりとたたずむ赤滝鉱泉は、まさに「昔ながらの湯治宿」といった趣。泉質は単純酸性・鉄冷鉱泉で、鉄分を多く含んだ鉱泉は、空気にふれると赤褐色に変化します。

ぽつんと建つ1軒宿で、周囲にはこれといった観光スポットもありませんが、「何もない贅沢」が楽しめる場所として、マニアのあいだでは根強い人気を誇っています。

  • 住所:栃木県矢板市 平野1628−1
  • 関連サイト: 赤滝鉱泉(とちぎ旅ネット)

5.2 和銅鉱泉(埼玉県)

埼玉県秩父市にある和銅鉱泉は、「秩父七湯」のひとつにも数えられる歴史ある温泉地。武田信玄が和銅金山の採掘を開始した際に、本格的に開湯しました。かつてはこの鉱泉が目薬や切り傷の薬として使われていたという言い伝えから、「薬師の湯」とも呼ばれています。

和銅鉱泉にある1軒宿が「和銅鉱泉旅館 ゆの宿 和どう」。メタほう酸を豊富に含む単純硫黄冷鉱泉で、神経痛やリウマチ、冷え性、皮膚病に効果があるとされています。

このエリアは、日本最古の貨幣として知られる「和同開珎」の銅が採掘された地でもあり、周辺観光では秩父の歴史や自然も堪能できます。

5.3 丸山鉱泉(埼玉県)

丸山鉱泉は、埼玉県秩父郡横瀬町の森の中にひっそりと建つ1軒宿。ドクダミ、ヨモギ、ゲンノショウコなどの薬草を鉱泉で煮出した「元祖薬草風呂」が有名です。

秩父の山で採れた、特に香りが良く身体にやさしい薬草にこだわっており、天然成分たっぷりの薬草風呂は、冷え症や腰痛、関節痛などさまざまな効能があるといわれています。

館内は素朴なしつらえながらも、秩父の森を望むことができ、癒しのひとときが過ごせることでしょう。

5.4 北山鉱泉(富山県)

「子宝の湯」として知られる、富山県の歴史ある湯治場が北山鉱泉。その昔、仁右衛門という村人夫婦が、夢に現れた薬師如来のお告げにより、霊泉を掘り当てて湯治に励んだところ、瀕死だった妻が全快したという言い伝えがあります。

北山鉱泉には「北山鉱泉 元祖仁右衛門家」「お宿 いけがみ」などの宿が存在します。泉質は塩化物泉・単純温泉で、神経痛や冷え性、婦人病などに効果があるとか。今も「子宝の湯」として親しまれており、宿に「子どもを授かりました」という報告が寄せられることもあるそうです。

【北山鉱泉 子宝の湯宿 元祖仁右衛門家】

【お宿 いけがみ】

5.5 塚野鉱泉(大分県)

塚野鉱泉は、大分県大分市にある昔ながらの湯治場の趣を残す鉱泉。泉質は含二酸化炭素・ナトリウム・炭酸水素塩泉で、浴用だけでなく飲用にも利用されています。飲用にすると、炭酸水素イオンと二酸化炭素の成分が胃腸病や慢性便秘に効くのだとか。

塚野鉱泉には庶民的な共同浴場があり、気軽に入浴に訪れたり、飲用の鉱泉を購入したりすることができます。

塚野鉱泉の基本情報

  • 住所:大分県大分市廻栖野366
  • 関連サイト: 塚野鉱泉(大分市公式サイト)

国の定義では、「鉱泉」と「温泉」に大きな違いはないものの、昔の名残から、湧出温度が低い温泉のことを俗に「鉱泉(冷鉱泉)」と呼ぶ習慣が今なお残っています。

「鉱泉」は「温泉」に比べるとなじみの薄い言葉ですが、そのぶん「鉱泉」と名の付くスポットは素朴な湯治場の雰囲気を残しているのが魅力。ぜひ観光とセットで、全国の鉱泉をめぐってみてはいかがでしょうか。

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