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源泉かけ流しの定義とは~源泉かけ流しが多い温泉地はある?~
火山が集中する日本は世界屈指の温泉大国。環境省の「温泉利用状況」によれば、2021年時点で全国に2,894もの温泉地があることが確認されています(宿泊施設のある場所をカウント)。
温泉地が多い分、どんな温泉に入るかで迷ってしまうこともありますが、ついそそられてしまうワードのひとつが「源泉かけ流し」。
ところが、「源泉かけ流し」の詳しい定義はそこまで知られていないもの。そこで、「源泉かけ流し」について、その定義や魅力、源泉かけ流しが多い温泉地などをご紹介します。
目次
1. 源泉かけ流しの定義とは
温泉宿の情報などを見ていると、しばしば目にする「源泉かけ流し」というワード。「なんとなくわかるけど、詳しくは知らない」という人も多いのではないでしょうか。
そもそも「源泉かけ流し」の定義とは何なのでしょう。
日本温泉協会によると「浴槽に常時新湯を注入して溢流(オーバーフロー)させ、溢流した温泉を再び浴槽に戻して再利用しない『かけ流し』の状態で、注入する新湯については温泉を利用しなければなりません。また、単に『かけ流し』と謳うよりも自然の状態に近い印象を与える強調表示であるため、温泉へ加水することは出来ないことになっています。(日本温泉協会の温泉用語解説より引用)」と定義されています。
<出典:写真AC>
また、加温は可能ですが、実施している場合はその状況と理由を表示することが義務づけられています。
この定義によれば、「源泉かけ流し」は「循環ろ過することなく、絶えず湯船に新しい温泉を注入することで湯船をあふれさせていて、かつ加水が行われていない状態である」といえます。
ただし、「温泉」の定義は「温泉法」で決まっているものの、「源泉かけ流し」については法律による定めはありません。そのため、一部の温泉地や宿泊施設では、上記の日本温泉協会の定義とは異なる独自の解釈をしているケースもあります。
2. 温泉かけ流しという言葉もあります
「源泉かけ流し」と似た言葉に「温泉かけ流し」という言葉もあります。これらはいったいどう違うのでしょうか。
日本温泉協会では、「温泉かけ流し」は次のように定義されています。
「浴槽に常時新湯を注入して溢流(オーバーフロー)させ、溢流した湯を再び浴槽に戻して再利用しない『かけ流し』の状態で、注入する新湯については温泉を利用しなければなりません。温泉への加水および加温は可能ですが、実施している場合はその状況とその理由を明示することが義務付けられています(日本温泉協会の温泉用語解説より引用)」
つまり、「温泉かけ流し」も、「循環ろ過することなく、絶えず湯船に新しい温泉を注入することで湯船をあふれさせている」という点では「源泉かけ流し」と同じなのです。
「源泉かけ流し」との違いは、「温泉かけ流し」の場合は「加水」が認められているという点。加水されていない温泉に入りたい場合は、「温泉かけ流し」ではなく「源泉かけ流し」を選ぶべきだということですね。
加水・加温をしていない「源泉かけ流し」の状態を、「源泉100%かけ流し」と呼ぶこともあります。
3. 源泉かけ流しの温泉かどうか、どうすればわかる?
「せっかくなら源泉かけ流しのお湯に入りたい」と思ったら、どのようにしてその温泉が源泉かけ流しかどうかを確認すればいいのでしょうか。
<出典:写真AC>
「源泉かけ流し」は、温泉施設にとって強力なアピールポイントになるため、源泉かけ流しの温泉はたいていWebサイトなどに「源泉かけ流し」と記載されています。
ただ、「源泉かけ流し」と大々的にうたっていなくても源泉かけ流しである場合もあるため、「源泉かけ流しとうたっていなければ源泉かけ流しではない」とは限りません。
また、「鮮度の高い高品質」の温泉を提供することを約束する「日本源泉かけ流し温泉協会」という団体もあります。確実に「源泉かけ流し」の宿に泊まりたいのであれば、日本源泉かけ流し温泉協会のサイトで加盟施設をチェックしてみるのもいいでしょう。
昔は「源泉かけ流し」の状態が当たり前でしたが、現在では「源泉かけ流し」はやや珍しい存在になっており、「源泉かけ流し」をしている施設は全体の10%、あるいは20%程度ともいわれています。
4. 源泉かけ流しの温泉の良さやメリットとは
温泉ファンが愛好する「源泉かけ流し」。なんとなく良いイメージがある人も多いと思いますが、具体的にはどのような魅力やメリットがあるのでしょうか。
ひと口に「温泉」といっても実態はさまざまで、「源泉が熱すぎる」あるいは「湧出量(ゆうしゅつりょう)」が足りないといった理由で加水をしているケースも多々あります。
また、温泉水をろ過器に通して循環させ、再利用している温泉施設も少なくありません。温泉の循環ろ過は、いわば「お湯のリサイクル」。湯船に貯まったお湯を循環させて、ゴミなどを取り除いたうえで加温、ろ過、消毒を行っているのです。
加水をすると当然温泉の成分は薄まってしまいますし、循環ろ過をした場合も本来の温泉成分が損なわれてしまう可能性があります。
そのため、本来の温泉の成分が損なわれることなく、新鮮な温泉を楽しめる「源泉かけ流し」は温泉の中でも特別な存在なのです。
「源泉かけ流し」の具体的なメリットとしては、温泉の成分が薄まったり損なわれたりしていないため、本来の泉質による入浴効果が得られることです。また、泉質が「単純温泉」である場合を除き、温泉にはそれぞれ独特の色やにおい、質感があります。こうした泉質本来の特徴にふれられるのも「源泉かけ流し」のメリットといえるでしょう。
<出典:写真AC>
加えて、循環ろ過が行われている温泉では塩素剤による消毒がされているため、プールのような薬品臭がすることもあります。ところが、「源泉かけ流し」の場合は原則として消毒が行われていないため、薬品のにおいがすることもありません。
5. 源泉かけ流しが多い温泉地
「源泉かけ流しを体験したい」と思ったら、どの温泉地に行けばいいのでしょうか。「この地域に源泉かけ流しが多い」という具体的なデータはありませんが、次のような温泉地に「源泉かけ流し」の温泉がたくさんあります。
全国的にメジャーな温泉地ばかりなので、ぜひ次の旅先の候補に入れてみてはいかがでしょうか。
別府温泉
「おんせん県」大分を代表する温泉地が、別府温泉。湧出量、源泉数ともに日本一の一大温泉地です。
別府市内にある8つの温泉地である「浜脇温泉」「別府温泉」「観海寺温泉(かんかいじおんせん)」「堀田温泉(ほりたおんせん)」「明礬温泉(みょうばんおんせん)」「鉄輪温泉(かんなわおんせん)」「柴石温泉(しばせきおんせん)」「亀川温泉」を総称して「別府八湯温泉(べっぷはっとうおんせん)」といいます。
別府八湯温泉の最大の魅力のひとつが、多彩な泉質を持っていること。刺激の少ない「単純温泉」から身体があたたまる「塩化物泉」、肌がすべすべになる「炭酸水素塩泉」、皮膚病に効果があるとされる「硫黄泉」、傷を治す効果があるという「硫酸塩泉」、殺菌効果抜群の「酸性泉/含鉄泉」までさまざまなタイプの温泉があるので、求める効能や気分に合わせて選ぶことができます。
由布院温泉
九州を代表する温泉地として別府と並び称されるのが、全国2位の源泉数と全国3位の湧出量を誇る大分県の由布院温泉。由布岳を望む美しい景観などロケーションも魅力で、高級宿も多いことから、「いつか行きたい憧れの温泉地」というブランドイメージを確立しています。
由布院温泉の泉質は多くが「単純温泉」または「アルカリ性単純温泉」に分類されます。クセがなく、刺激が少ないお湯が多いことから、老若男女問わず楽しめる「万人受けする温泉」といえるでしょう。
温泉そのものの魅力に加え、ハイレベルな宿が多いことから「宿のクオリティ」を重視する人にとっても人気の温泉地です。
草津温泉
首都圏からも気軽に行ける温泉地のひとつが、「日本トップの名湯」の呼び声も高い、群馬県の草津温泉。温泉街の中心に「湯畑」が広がる光景は、まさに「古き良き日本の温泉地」そのものです。
温泉の自然湧出量は日本一。草津温泉ではなんと、1日にドラム缶約23万本分もの温泉が湧き出しているのです。湯治場(とうじば)として長い歴史を持ち、戦国時代には多くの武将が訪れたほか、江戸時代には文人や歌人も盛んに湯治に訪れました。
草津温泉の特徴は、なんといっても強酸性の泉質。「泉質主義」を掲げ、源泉の効果をそのまま実感できることにこだわっているため、「恋の病以外治せる」ともいわれるほど。殺菌効果が非常に高いため、草津温泉には「源泉かけ流し」の宿が多数あります。
有馬温泉
兵庫県にある有馬温泉は、近畿地方を代表する温泉地のひとつ。「日本三古泉」「日本三名泉」のひとつにも数えられる有馬温泉は、神代にさかのぼる古い歴史を持ち、豊臣秀吉が愛した温泉地としても知られています。
有馬温泉で特徴的なのが、「金泉」と「銀泉」。「金泉」は湧き出たときは無色透明ですが、鉄分と塩分が多いため、すぐに赤褐色に変化するというユニークな温泉で、リウマチや皮膚疾患などに効果があるとされています。
「銀泉」は無色のラジウム泉。高血圧などに効果がある炭酸を含んだものと、自然治癒力を高めるとされているラドン泉を含んだものがあります。
有馬温泉の源泉には、環境省が療養泉に指定している9つの主成分のうち7つの成分(単純性温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、放射能泉)が含まれており、世界的にも珍しいほど多くの成分が混じり合った温泉です。
6. 「温泉」自体は温泉法で条件が定められています
「源泉かけ流し」について、法律による決まりはないことはすでに述べました。一方、「温泉」の定義は「温泉法」によって定められているのをご存じでしょうか。
温泉法では「この法律で『温泉』とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう」と規定されています。
具体的には、以下の「温度」または「物質」いずれかの条件を満たしていれば、法律上は「温泉」に該当します。
- 温泉源から採取されるときの温度が25℃以上であること
- 溶存物質、遊離炭酸(CO2)、リチウムイオン、水素イオン、ラドンなど、温泉法の別表で定められた19の特定物質が一定量以上含まれていること
つまり、地中から湧出する源泉の温度が25℃以上であれば「温泉」を名乗ることができます。また、源泉の温度が25℃未満であっても、物質に関する19の条件のうちひとつでもクリアできれば「温泉」に該当するということです。
「温泉はあたたかくて身体に良い物質がたっぷり含まれている」と思っていた人には少々意外かもしれませんね。
これまでみてきた通り、ひと口に「温泉」といってもその中身や実態はさまざま。「お湯を循環ろ過させている施設が多いなんて知らなかった」という人もいるのではないでしょうか。
日本人なら、やはり「源泉かけ流し」のお湯は1度は体験してみたいもの。全国の「源泉かけ流し」の温泉で、日々の疲れを癒してはいかがでしょうか。
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