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スペインの避暑地 海と山のアストゥリアス
地方色豊かなスペイン。
首都マドリードや、南部に位置するアンダルシア地方・バルセロナのあるカタルーニャ地方を旅した方は多いと思いますが、今回は日本人にとってはあまりなじみのない北部のアストゥリアス州についてレポートしたいと思います。
マドリードやアンダルシアが40度近い灼熱の夏も、アストゥリアスは30度以下。緑が多く、首都や南部に住むスペイン人にとっては避暑地となるアストゥリアスは、海と山に恵まれ、家畜が多くスペイン有数のチーズの生産地でもあります。
目次
マドリードからのアクセスと気候
マドリードから、アストゥリアス州の州都オビエドまでは、北に500km弱、飛行機で1時間ちょっと、バスだと6時間ほどで到着します。今回は、空港にバス停があり、スペイン全土をカバーしている長距離バスALSAのバスに乗ってオビエドに向かいました。
マドリードを出発して3時間半、雲一つない青空・乾燥した台地が続く代り映えしない景色の中で、少しずつ、空に雲が浮き始めます。カンタブリア山脈の峠を越えると緑がぐっと増え、景色ががらっと変わります。まるで川端康成の「雪国」の冒頭、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」を思い出させる景色の変わりよう。アストゥリアスは「雪国」ならぬ山と緑の大地。その険しい山々のために、長い間他の勢力からの侵略を避けてきたという歴史があり、他のスペイン全土がイスラムによって支配された8~9世紀もアストゥリアスはその独立を守り抜きました。
夕方、オビエドに着くと、小雨、気温は19度。
マドリードは連日38度の暑さですから、アストゥリアス県がいかに涼しいかがわかります。天気が良い日も、朝晩は涼しいので長袖の羽織るものをお忘れなく。
海と山が近い場所
アストゥリアス州の特徴は、トップの写真にあるように、山と海の距離がすごく近いこと。避暑地としてだけでなく、自然が好きなスペイン人に人気なのもうなづけます。山といえば、カンタブリア山脈に属するピコス・デ・ヨーロッパ国立公園。
入口となる街は、古い石橋で有名なカンガ・デ・オニス。
ここにはたくさんのホテルがあり、いつも観光客でにぎわっています。
もう少し静かな村が好みな方へのおすすめは、アレーナ・デ・カブラレス。このエリアではたくさんの牛・羊・ヤギが飼われていて、山の洞窟で熟成させる伝統的なチーズ作りが今も行われています。(後述)
アストゥリアス州の海岸線は基本的に崖が多く、海岸に洞窟があるところもありますが、白浜のビーチも少しあります。地元民にも観光客にも人気が高いトリンビアのビーチは、海水の透明度が高く気持ちが良い砂浜です。
「わーい!海水浴!」と思って海に入るも、その水の冷たさにはご用心。8月の暑い時期も海水温は20度程度。(昨日の私の海水浴は5秒で終わってしまいました。)人々はきれいな砂浜での散歩や日光浴・おしゃべりや読書を楽しんでいました。
また、ここは少し珍しいヌーディストビーチ(素っ裸でいることが認められているビーチ)なので、洋服や水着を脱ぎ捨てて開放的に過ごしてみたい人は、ぜひ行ってみてください。
ほかにも、ぶらぶら歩きが楽しいllanes(ジャネス)や、「スペインの最も美しい村」に選ばれたlastres(ラストレス)など小さなビーチがあって海の幸を食べられる村がたくさんあります。
<llanes(ジャネス)>
<lastres(ラストレス)>
<lastres(ラストレス)>
アストゥリアスのグルメ
まずはチーズ。前述のピコス・デ・ヨーロッパ国立公園周辺を中心に、チーズの生産が多く行われており、アストゥリアス県で生産されるチーズの種類はなんと326種類ともいわれ、その大部分が小規模の家族経営、昔ながらの手作りチーズです。
ミルクの種類(牛乳・やぎ乳・羊乳・そのミックス)や菌の種類・ミルクを殺菌するかしないか、熟成方法や期間によって、さまざまなチーズができます。それらのチーズはもちろんスーパーにも売っていますが、お土産屋さんや、州のいろいろな村で夏の間行われるフェリアでは試食ができるので楽しいし、自分の好みのチーズを選ぶことができます。アストゥリアス特産のチーズはCabrares(カブラレス)、Gamonedo(ガモネド)といったブルーチーズで、その癖のあるおいしさが好きな人にはたまりません。
次に加工肉。スペインといえば生ハムが有名ですが、この国にはおいしい加工肉がたくさんあります。中でもアストゥリアスは伝統的に豚を加工する食文化があり、ソーセージやサラミ、ハムの種類が豊富で、フェリアなどでは生産者から直接、無添加でおいしい加工肉を買うことができるのはうれしい限り。
アストゥリアスのおふくろの味「fabadaファバダ」は、特産の豆を燻製肉・ソーセージ・血のソーセージとともに煮込んだ料理。タンパク質が多く腹持ちが良いこの料理は、アストゥリアスで農業や鉱業の肉体労働をする人たちを支えてきました。お昼時にアストゥリアスのレストランや食堂に行けば、ランチメニューの一品として選ぶことができるでしょう。
最後にリンゴのお酒シードル。
バーやレストランで、地元の人が注文するのは、ビールやワインではなく、りんごのお酒シードルです。このシードルには独特な注ぎ方があり、「注ぎ方コンクール」が開かれるほど。
シードルの瓶はなるべく頭の高い位置にかかげ、もう片方の手を腰の位置にしてグラスを持ちます。上からグラスの側面にたたきつけるような形で注ぎ入れ、なるべく空気を含ませ、シードルを泡立たせます。注ぐ量は1cm~2cmほどで、グラスを受け取った人は、泡が消えないうちにすぐに飲み干すのが礼儀とされています。
最後に
あちこち観光地を訪ねるのもいいけれど、アストゥリアス州には、牛の首輪のカランコロンという鐘の音を聞き、涼しい風に吹かれてのんびりする、という過ごし方もあります。
田舎の民宿に泊まってみるのもおすすめですよ。
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IZUKAWAUSO
- 日本青年海外協力隊員。チリ南部の田舎暮らしも8年半になります。趣味は旅行(特に屋台めぐりと温泉)と料理。地元の週末フリーマーケットでおにぎりと味噌汁売ってます。