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【ペルー】青いオタリアは美味しさの証。リマの日系セビチェリア「ロボ・デ・マル」
ペルーの無形文化遺産にも登録されている、魚介類のレモンマリネ「Cebiche(セビーチェ)」。ラテンアメリカ随一の美食の国と謳われるペルーの食文化の豊かさを体現する料理であり、ペルー人の誇りでもあります。
6月28日は「Día Nacional del Cebiche(全国セビーチェの日)」に制定されていて、リマ市内のレストランでは毎年さまざまなプロモーションを行うのが通例。そうした機会を利用して、いろんなセビチェリア(セビーチェを始めとするシーフード専門店)を比べてみるのも一興ですね。
今回は私のお気に入りのお店である「Cevichería Lobo de Mar Miraflores(セビチェリア ロボ・デ・マル ミラフローレス)」をご紹介しましょう。日系ペルー人のオクタビオ・オオタニさんが腕を振るう老舗セビチェリアで、味、量、価格、サービスともに高得点のお店。伝統的なメニューはもとより、ニッケイ風に仕上げたシーフード料理もおすすめです。
※スペイン王立アカデミーによると、cebiche、ceviche、sebiche、sevicheのすべての綴りは有効とのことなので、政府広報やお店側の表記に従いました。
目次
閑静な住宅街に佇む人気のセビチェリア
ロボ・デ・マルの一号店はミラフローレス区の目抜き通り、ホセ・ラルコ通りから1本西にあるコロン通りにあります。店から3ブロック南下するとマレコン(海岸通り)にぶつかるので、周辺の散歩がてら立ち寄るにもぴったりの好立地です。
店内にはお店のアイコンである青いオタリア(ロボ・デ・マル)の姿が描かれた看板と、日系紙が特集したオクタビオ・オオタニさんの記事をコラージュしたパネルが掲げられていました。
その特集にはオクタビオさんの個人史のほか、彼の料理がいかに多くの人々を魅了してきたかについて書かれていました。
たとえば、ラテンアメリカのベストレストラン50にも選ばれたことのある「フィエスタ」のオーナーシェフ、ヘクトル・ソリスは「私にとっての最高のセビーチェは母が作ってくれるもの、2番目はジプシー魂をもつ日本人、オクタビオ・オオタニのものだ」と語ったそう。どんな時も"ママの手料理が一番!"なペルー人にとって、この言葉は最大の賛辞に値します。また、ペルーの著名なグラフィックデザイナーのチェルマンもある取材に対し、「もし君がペルーに行ったら、ドン・オオタニのセビーチェを注文して」とコメントしていました。
ロボ・デ・マルの料理に期待が高まりますね。
人気店だけあってすぐ満席になってしまうので、ランチを楽しむなら午後1時前までに到着しましょう。
ペルーを代表するシェフ、ガストン・アクリオも、過去に自身のFacebookでオクタビオさんについて紹介しています。「彼は75歳で子供が16人、60年間厨房に立ち続けてきました。マスコミが苦手なので、インターネットやFacebookで彼の料理の写真を見つけることはできませんが、おしゃべり好きで料理をこよなく愛し、一日の終わりをビールで締めくくります・・・」
ガストンが語るオクタビオさんの人柄に多くの人が共感し、ロボ・デ・マルの名は一躍有名になりました。この投稿は2014年のものなので、オクタビオさんは現在82~83歳ということになります。
有名シェフが絶賛するロボ・デ・マルの料理たち
早速メニューを紹介しましょう。こちらは定番中の定番である「Ceviche Mixto(セビーチェ・ミクスト)」。ご覧のとおり、見た目はなんら変わったところがなく、ごくごく普通のセビーチェです。でもひと口ふた口と食べ進むうちにきっと「おっ?これは美味しい!」と思うはず。鮮度の良さは当然、レモン汁での素材の締め具合いや塩加減が絶妙なんですね。シンプルイズベスト、飽きのこない美味しさというのは、こういう料理のためにある言葉だなと思わせてくれる一品です。
またロボ・デ・マルのいいところは、ほとんどのメニューに"personal(一人用サイズ)"、"familiar(家族用サイズ)"があること。一人用といってもボリュームはしっかりあるので、一皿でお腹いっぱいになります。
お次は「Picante de Mariscos(ピカンテ・デ・マリスコス)」の一人用サイズ。オレンジ色が鮮やかなアヒ・アマリージョをベースにしたソースの下には、魚のフライが隠れています。ピカンテとはスペイン語で"辛い"という意味ですが、ロボ・デ・マルのそれはまったく辛くありません。なので辛いのが苦手な人も安心ですし、逆に辛いのが好きな人は、上に飾られている激辛トウガラシ「ロコト」の輪切りと一緒に頂くといいでしょう。それでも足りないという人は、「dame más rocoto, por favor(もっとロコトをください)」とお願いすれば、すり下ろしたロコトを追加で持ってきてくれますよ。
「Encuentro de Mar(エンクエントロ・デ・マル)」はロボ・デ・マルを代表する一品。しょうゆやオイスターソースを使ったニッケイ料理でもあります。オクタビオさんは取材のなかで「どの料理も好きだが、強いて言えば多くの人が注文してくれるエンクエントロ(デ・マル)を作るのが好きかな」と答えています。カリッと揚がった魚介類とシャキシャキの野菜が最高で、私も大好きな一品です。
リマの各地に「Otani」の名が...
ガストン・アクリオのFacebookの投稿で「子供が16人」(パネルの紹介記事には「18人」とありました)と書かれている通り、たくさんの子供に恵まれたオクタビオさん。そのうちの何人かは父と同じ道を歩んでいます。
オクタビオさん自身が采配を振るうのは、今回ご紹介したコロン通りの店と、約2年前にオープンしたアルカンフォレス通りの店ですが、ミラフローレス区のアルメンダリス通りやスルコ区、チョリージョス区にも"Otani"の名を冠したセビチェリアがあります。これらはいずれもオクタビオさんの息子たちが活躍する店で、父譲りの腕前と若い世代ならではの感性を武器に、新しい料理にもチャレンジしているようです。
リマのグルメ界において、青いオタリアとOtaniの名は美味しさの証。初めてならまずは本店へ、それから好みの"Otani"の味を探せばさらに楽しみが増すことでしょう。
Cevichería Lobo de Mar Miraflores/セビチェリア ロボ・デ・マル ミラフローレス
【コロン通り店】
- 住所:Calle Colón 587, Miraflores - LIMA
【アルカンフォレス通り店】
- 住所:Calle Alcanfores 592, Miraflores - LIMA
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原田慶子
- ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。