『ジョージア映画祭2022』映画王国ジョージアの歴史的作品を一挙上映!(横浜→大阪→広島)

ジョージア映画祭パンフレット

<トップ画像 出典:ジョージア映画祭公式サイト

2022年1月29日~2022年2月25日(金)、東京・神保町の岩波ホールで『ジョージア映画祭2022』が開催され、ジョージアの歴史的な映画(全34作品)が上映されました。5月以降は、京都、横浜(神奈川)、大阪、広島での開催が予定されています。

この記事では、ジョージア映画祭2022の情報と初めて観たジョージア映画についてレポートします。

目次

ジョージアってどんな国?

ジョージアはコーカサス山脈の南に位置し、ロシア、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコと国境を接している。面積は北海道の約80%、人口は約370万人。ジョージア人を中心に多様な民族が暮らし、主な宗教はジョージア正教である。ジョージア語では国名をサカルトヴェロという。

3000年の歴史があるといわれ、東西交易の要所であるために周辺の国々から度重なる侵略を受けてきたが、今日まで独自の言語、文化を守り通してきた。ロシア帝国の支配から1918年に独立。1921年から70年間、ソ連邦に組み込まれていたが、1991年に独立を回復する。しかし内戦に加え、アブハジア、南オセチアにおける分離独立の紛争が激化し国内は混乱した。

このために映画も傷つき、1,000以上の作品が上映不能になった。現在、状況は改善され、ワイン発祥の地といわれるこの国には世界から多くの観光客が訪れ、映画などの文化芸術も復活を遂げ、世界の人々に新鮮な驚きを与えている。【ジョージア映画祭2022 公式サイトより引用】

ジョージアについて、詳しくはぜひこちらの記事をお読みください。>>ジョージアってどんな国?実際に見た観光情報をたっぷりご紹介します!かつてグルジアと呼ばれていた国ですよ!

ジョージア映画祭2022とは?

パンフレット
<画像出典:ジョージア映画祭公式サイト>

~コーカサスからの風~

映画の王国ジョージア(グルジア)、失われていたソヴィエト連邦時代(1921~91)の名作が修復され、あるいはロシアから戻り、今、蘇ろうとしている。政治体制の抑圧にもかかわらず、人間味にあふれ、独創的であり、映画への愛がこめられた黄金期のジョージア映画―その魅惑にみちた歴史的作品の数々を一堂に集めて一挙上映!【ジョージア映画祭2022 公式サイトより引用】

ジョージアの歴史的な映画が、短編から長編まで、白黒からカラーまで、そして無声映画も含めた全34作品が上映されます。

2022年1月29日、東京・神保町の岩波ホールでの映画祭を皮切りに、高崎(群馬)、京都、横浜(神奈川)、大阪で順次開催されます。

【ジョージア映画祭 巡回情報】

東京:岩波ホール ※開催終了

  • 期間:2022年1月29日(土)~2022年2月25日(金) ※2月6日(日)は休館
  • 会場:岩波ホール(東京)
  • 入場料(当日料金):一般 1,800円、学生・シニア 1,500円、小中高校生 1,200円
  • 最終回学割チケット:最終回に限り、大学・大学院生、専門学校生は1,200円

群馬:高崎映画祭 ※開催終了

■京都:京都みなみ会館 ※開催終了

  • 期間:2022年4月15日(金)~5月5日(木)
  • 会場:京都みなみ会館
  • 住所:京都市南区西九条川原城町110
  • 入場料:一般1,800円、シニア1,200円、学生・会員1,000円 ※招待券・ポイント鑑賞不可

>>上映スケジュールはこちら(京都みなみ会館)

■神奈川:横浜シネマリン ※開催終了

  • 期間:2022年5月7日(土)~27日(金)
  • 会場:横浜シネマリン
  • 住所:横浜市中区長者町6-95
  • 入場料:一般1,500円、会員1,200円、シニア1,100円、学生応援プライス500円(横浜シネマリンSNSフォロー&要学生証提示)

>>上映スケジュールはこちら(横浜シネマリン)

■大阪:大阪シネ・ヌーヴォ

>>上映スケジュールはこちら(大阪シネ・ヌーヴォ)

■広島:広島市映像文化ライブラリー

>>上映スケジュールはこちら(広島市映像文化ライブラリー)

ジョージア映画祭2022 上映作品

今回の映画祭では、A~Iまで9つのプログラムが用意され、それぞれのプログラムで3~5本の映画が上映されています。

※日本語字幕入り(一部、英語字幕入り)※プログラム・作品名は公式HPより引用

Aプログラム:シェンゲラヤ家の栄光

「ジョージア映画の父」ニコロズ・シェンゲラヤ監督と大女優ナト・ヴァチナゼとの間に誕生したエルダルとギオルギのシェンゲラヤ兄弟。彼ら一家はジョージア映画を草創期から今日まで牽引し、守り、発展させてきた。シェンゲラヤ一家の作品にスポットをあてる。

【上映作品|日本語名(英語名/ジョージア語名)】

  • エリソ(Eliso/ელისო)
  • アラヴェルディの祭(Alaverdoba/ალავერდობა)
  • 白いキャラバン(Tetri karavani/თეთრი ქარავანი)
  • 青い山――本当らしくない本当の話(Tsisperi mtebi anu daujerebeli ambavi/ცისფერი მთები ანუ დაუჯერებელი ამბავი)

Bプログラム:放浪の画家ニコ・ピロスマニ特集

ジョージアの国民的画家ピロスマニ(1862?~1918)。彼の生涯と芸術を天賦の才に恵まれた二人の監督が見事に描く。目眩く映像美と清澄な世界。対照的な2作品を最上の上映素材で同時公開する。ギオルギ・シェンゲラヤ監督追悼上映。

  • ピロスマニのアラベスク(Arabeskebi Pirosmanis temaze/არაბესკები ფიროსმანის თემაზე)
  • ピロスマニ(Pirosmani/ფიროსმანი)
  • ピロスマニ・ドキュメンタリー(Pirosmani/ფიროსმანი)

ピロスマニのポスター
<『ピロスマニ』のポスター>

Cプログラム:よみがえった歴史的名作

1920年代にロシア・アヴァンギャルドの影響を受けた後、社会主義リアリズムが提唱され、スターリン時代の粛清の恐怖、第二次世界大戦を経て、雪解けの時代を迎える。そして80年代のペレストロイカ。激動する時代、その時々の知られざる名作を紹介する。

  • ハバルダ(Khabarda/ხაბარდა)
  • 失楽園(Dakarguli samotkhe/დაკარგული სამოთხე)
  • マグダナのロバ(Magdanas Lurja/მაგდანას ლურჯა)
  • ナイロンのクリスマスツリー(Neilonis nadzvis khe/ნეილონის ნაძვის ხე)

Dプログラム:ミヘイル・コバヒゼ監督特集

コバヒゼ監督のユーモアとエスプリ、洒脱した感性は世界的に評価されるが、「音楽家たち」を当局に批判され、彼は抗議をこめて映画界を離れた。1996年ヴェネチア国際映画祭では回顧上映が行われた。2019年に多くの映画人に惜しまれて亡くなる。
ミヘイル・コバヒゼ監督の遺した作品は多くはない。しかし彼の詩的で斬新、自由な表現は、60年代のみならず、その後のジョージア映画の発展に多大な影響を与えたといわれる。

  • 結婚式(Kortsili/ქორწილი)
  • 傘(Kolga/ქოლგა)
  • 音楽家たち(Musikosebi/მუსიკოსები)
  • 井戸(Cha/ჭა)

Eプログラム:テンギズ・アブラゼ監督「祈り 三部作」

巨匠テンギズ・アブラゼ監督が20年の歳月をかけて完成させた三部作。「人の美しい本性が滅びることはない」という信念のもと、人間の迷妄や欲望がもたらす社会的暴力を、詩的、寓話的に描き、三作品とも人間性を虐げるものを鋭く告発する。

  • 祈り(Vedreba/ვედრება)
  • 希望の樹(Natvris khe/ნატვრის ხე)
  • 懺悔(Monanieba/მონანიება)

Fプログラム:第1回ジョージア映画祭アンコール

2018年秋に開催されて好評を博した第1回ジョージア映画祭の上映作品から、ソヴィエト時代に製作された4作品をまとめて再上映する。サイレント時代の2作品と戦後の2作品、いずれの作品もジョージア映画を語るうえでは見逃せない名作である。

  • 私のお祖母さん(Chemi bebia/ჩემი ბებია)
  • スヴァネティの塩(Jim shvante/ჯიმ შვანთე)
  • 大いなる緑の谷(Didi mtsvane veli/დიდი მწვანე ველი)
  • 少女デドゥナ(Deduna/დედუნა)

Gプログラム:オタル・イオセリアニ監督特集

1979年にフランスに渡ったが、今日もジョージア映画界の中心的存在でありつづける世界的名匠。哲学的思索と詩的感性、独特のリズムで描かれる映像世界。祖国と人間への思い。ソ連時代に上映禁止の憂き目にあった名作の数々を紹介。

  • 落葉(Giorgobistve/გიორგობისთვე)
  • 歌うつぐみがおりました(Iqo shashvi mgalobeli/იყო შაშვი მგალობელი)
  • 四月(Aprili/აპრილი)
  • 鋳鉄(Tuji/თუჯი)
  • ジョージアの古い歌(Dzveli kartuli simghera/ძველი ქართული სიმღერა)

ポスター
<映画祭と『落葉』のポスター>

Hプログラム:国民的映画「ケトとコテ」を究める

スターリンの指示で作られた娯楽大作「ケトとコテ」。しかし完成後、長く上映禁止となる。そして現代、同作の舞台を製作する人々、さらにその背景を取材した2本のドキュメンタリーを通して、作品の秘密や映画の歓びに加えて歴史の闇に光を当てる。

  • ケトとコテ(Keto da Kote/ქეთო და კოტე)
  • 喜びの家(Sakhli sikharulisa/სახლი სიხარულისა)
  • 「ケトとコテ」を求めて("Keto da Kotes" dziebashi/„ქეთო და კოტეს" ძიებაში)

Iプログラム:ゴゴベリゼ家・女性監督の系譜 -ラナ・ゴゴベリゼ監督「金の糸」公開記念-

ヌツァ・ゴゴベリゼはジョージア最初の女性監督。1937年の大粛清で夫は処刑され、彼女は長く流刑された。その娘ラナは戦後ジョージア映画を代表する監督。そしてラナの娘サロメ・アレクシを加え、一家は三世代にわたり映画をとおして女性と社会を捉え続ける。

  • ブバ(Buba/ბუბა)
  • ウジュムリ(Uzhmuri/უჟმური)
  • インタビュアー(Ramdenime interviu pirad sakitkhebze/რამდენიმე ინტერვიუ პირად საკითხებზე)
  • 幸福(Bedniereba/ბედნიერება)

今回観た作品の感想

ジョージア映画祭を知った時、私が一番気になったのは、画家ニコ・ピロスマニに関する作品です。ジョージアを訪れたことはありませんが、なぜか「ピロスマニの絵を見たことがある!この絵が気になる!」と思ったのです。

どれだけ考えても全然思い出せなかったのですが・・・この記事を書き始め、たびこふれの記事を色々と見返しているうちに思い出しました。

たびこふれの記事を編集した時に見た記憶が残っていたんです。その記事というのは、こちら『【名曲「百万本のバラ」のモデルを、ジョージアの美術館に見に行く』です。(やっと判ってスッキリしました~笑)

そんな私が観たジョージア映画は、Bプログラム:放浪の画家ニコ・ピロスマニ特集の『ピロスマニ・ドキュメンタリー』と『ピロスマニのアラベスク』(2本併映)です。

『ピロスマニ・ドキュメンタリー』ギオルギ・シェンゲラヤ監督/1990年/カラー/49分

ジョージアの国民的画家ピロスマニの人生と作品を、当時の写真と証言を交えて紹介した映画です。ピロスマニは、生活のために店の看板や壁に飾る絵を描き続け、数多くの作品を残し、貧しく孤独のうちに亡くなりました。

ピロスマニの絵は、優しい表情の人物や目力のある動物たち、ジョージアの風景など、素朴なタッチで描かれています。プライドが高く、誰からの支援も受けず、貧しさと孤独と闘いながら作品を生み出していたとは、想像もしていませんでした。映画を観たことで、全く知らなかったピロスマニの人と成りを(ほんの)少しだけ垣間見ることができました。

『ピロスマニのアラベスク』セルゲイ・パラジャーノフ監督/1985年/カラー/22分

ピロスマニとピロスマニの絵を色々な角度からコラージュした映画です。

今まで観たことのないタイプの映画で、何とも説明が難しいのですが、絵の登場人物や動物たちが語りかけてくるような、面白い感覚を味わいました。特に、Giraffe(麒麟)の目が忘れられません。ピロスマニの絵をじっくり鑑賞したくなるような作品でした。

この日は、この2作品だけでお腹いっぱいになってしまいました。日を改めて、他のプログラムも観に行く予定です。

一度にこれほどたくさんのジョージア映画を観るチャンスはないと思いますので、ぜひお近くの会場に足を運んでみてください!!

ジョージア映画祭2022 概要

※岩波ホール、高崎(群馬)、京都での開催は終了しました。5月以降、横浜(神奈川)、大阪、広島で順次開催が予定されています。

  • 期間:2022年1月29日(土)~2022年2月25日(金) ※2月6日(日)は休館
  • 場所:岩波ホール(東京)
  • 当日料金:一般 1,800円、学生・シニア 1,500円、小中高校生 1,200円
  • 最終回学割チケット:最終回に限り、大学・大学院生、専門学校生は1,200円
  • 公式サイト:ジョージア映画祭

【岩波ホール 基本情報】

  • 住所:東京都千代田区神田神保町2-1 岩波神保町ビル10F
  • TEL:03-3262-5252(10:00~18:00)
  • アクセス:東京メトロ 神保町駅 A6出口直結
  • 公式サイト:岩波ホール

おまけ(岩波ホール)&まとめ

映画チラシ

岩波ホールには、たくさんの映画チラシが貼ってありました。懐かしいものから今回の映画祭のチラシまで、ドドーーンと貼ってあって壮観です!後から写真を見て、時系列に並んでいることがわかりました。次回は、ぜひ端からじっくり見たいです。

映画チラシ

第1回チラシ

第1回ジョージア映画祭のチラシもありました。

ジョージア展示品

今回上映する作品に関するものや、ジョージアの地図などが展示されていました。

ジョージア展示品
<ジョージアの地図と観光地>

上映開始時間より早めに行って、ジョージアの展示品や映画チラシをじっくり見るのがおすすめですよ。

ぜひこの機会に、ジョージア映画を通して、ジョージアに触れてみてください。

※岩波ホール、高崎(群馬)、京都、横浜(神奈川)での開催は終了しました。今後は、大阪、広島で順次開催が予定されています。

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よしだようこ

たびこふれ編集員兼ライター。ライターとしては発展途上中ですが、編集はお任せあれ♪
東京生まれの東京育ち。旅好きの原点は両親の実家(長野&岐阜)への帰省。美味しい食事とワインがあれば幸せです。

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