たびこふれ

"映画で旅する自然派ワイン" 映画「ジョージア、ワインが生まれたところ」を観た感想

記事投稿日:2019/10/09最終更新日:2019/10/10

Views:

Georgia_main_b_2-thumb-700xauto-136486_1.jpg
© Emily Railsback c/o Music

"映画で旅する自然派ワイン"というイベントで南フランスとジョージアの2本のドキュメンタリー映画が2019年11月1日(金)から公開されます。その試写会に行ってきました。

その2作品とは「ジョージア、ワインが生まれたところ」と「ワイン・コーリング」。

ebd9d8c70e051656d15080931ff716c6-thumb-autox991-136493.jpg

今回はその映画の中のひとつ、「ジョージア、ワインが生まれたところ」を観た感想をお伝えします。

ひとことで言うと「凄い映画だ。。。」

試写会の帰り道、私はがまんできずにワインバーに駆け込んでしまいました。

この映画は、確かに「ワイン」をテーマにしているのですが、ワイン造りへのこだわりとかいった視点を越えて 「生きるとは?」「しあわせとは?」といった人間の本質的な部分への問いを投げかけられる作品でした。映画を観終った後しばらくは座席を立つことができないほど、感慨深く、気持ちが揺さぶられました。

目次

映画「ジョージア、ワインが生まれたところ」あらすじ

紀元前6000年に遡る世界最古のワイン醸造の起源を持つ国ジョージア。2013年にユネスコ世界無形文化遺産に登録された"クヴェヴリ製法"は、素焼きの壺を土の中に埋め、ジョージア固有のブドウ品種と野生酵母により発酵・熟成するワインの醸造法であり、その新しい味わいに今、世界から注目が集まっている。

かつてはどの家庭でも作られていたこの伝統製法のワインは、ソ連の占領とソ連式大量生産による品種削減や禁酒法などの影響により、現在は極めて少量しか作られていない。本作は、逆境に立ち向かいながら「究極の自然派」と呼ばれるクヴェヴリ製法を守ってきた人々のドキュメンタリーである。

カスピ海と黒海に挟まれた南コーカサスの地ジョージアは、ヨーロッパとアジアの交差点と称され多様な気候と風土、文化を誇る。ジョージアは、他民族の侵攻や支配に幾度も苦しめられながらもその都度蘇った。「私たちの葡萄畑には、人々の血と涙と祈りが染みわたっている」ジョージア人にとって、ワインは生命と信仰の象徴であり、アイデンティティーそのものなのだ。
クヴェヴリワイン生産者を訊ねる旅は、ジョージアの変化に富んだ景色の中で、慎ましく暮らし、精魂込めてワインを育て、スプラ(宴会)を開き、美しいポリフォニー(多声合唱)を奏でる彼らの生活に触れることでもあった。(映画宣伝用チラシより引用)

ジョージアってどんな国

かつてはグルジアと呼ばれていた国ジョージアは、旧ソ連邦、コーカサスの麓の小国。日本の国土の約1/5の広さを持ち、日本とのつながりで言えば大相撲力士の栃ノ心関でしょうか。2018年1月の初場所で初優勝を果たし、この国の名前を知った方もいらっしゃることでしょう。

このジョージアという国はワイン発祥の地なんだそうです。世界で最初にワインを造ったのがジョージアだということです。ワイン造りにはなんと8,000年の歴史を持っています(こう言われてもピンとこないほど昔ですね(笑))

ジョージアは四方を他国に囲まれた土地で過去、モンゴル、イラン、オスマン帝国、ロシアなど強国の侵略と支配に翻弄されてきた辛い歴史を持つ国ですが、ワイン造りに適した肥沃な土地と気候に恵まれ、太古の昔から伝統的なワイン造りを行っていました。その伝統的なワイン製法がクヴェヴリというものです。

関連記事:
ジョージアってどんな国?実際に見た観光情報をたっぷりご紹介します!かつてグルジアと呼ばれていた国ですよ!

クヴェヴリ製法とは?

クヴェヴリとはジョージアの土で作られた素焼きの"壺"のことです。写真の茶色い大きな壺、これがクヴェヴリです。

Georgia_sub02_2-thumb-700xauto-136485.jpg
© Emily Railsback c/o Music

このクヴェヴリに葡萄を入れ、土の中に埋めて約6か月間、発酵、熟成させて造られたワインがクヴェヴリワインです。土の中で一定の温度で発酵し、タンクや樽ではできない果実感豊富な、体に優しいワインが出来上がります。皮ごと発酵熟成させるのでタンニンも豊富です。極力添加物を入れず、葡萄の力、自然の力で熟成させる。ジョージアの人々は「ワインを造る」ではなく「ワインを育てる」といいます。

自然に逆らわず寄り添いながらシンプルに造っていたジョージアのワイン造りが大きく変わったのがロシア(旧ソ連)の支配を受けていた頃です。ソ連は作業の効率化と大量生産を最優先させ、良質であっても手間のかかる少量品種の葡萄を切り捨て、それによってジョージアのワイン造りは大きく衰退してしまいました。

それでもジョージアの人々は、自分たちが飲む分だけは細々とクヴェヴリ製法で造り続けていました。彼らは支配国に翻弄されながらも、密かに自分たちのやり方(アイデンティティ)を守り、しなやかに時代を繋いでいったのです。

映画「ジョージア、ワインが生まれたところ」を観た感想

ジョージアは強国に支配され、大量生産化を強いられながらも伝統のクヴェヴリ製法でワインを造り続けていくことができました。どうしてそんなことが出来たのでしょうか。

私たち日本人でも同じことが出来ただろうか?と自問しました。こうすればワインを「もっと早く造ることができる」「もっと楽ができる」「もっとたくさん作れる」ということを言われたら簡単に従っていたかもしれません。手間や時間がかかり、少ししかできない、そんな非効率で大して儲からないワイン造りを続けていこうと果たして思えたでしょうか。

なぜジョージアの人たちはクヴェヴリという伝統的製法を続けることができたのでしょうか?
その答えは次の2つだと映画は語ります。

①キリスト教信仰
②根づいた宴会文化(歌い、踊り、乾杯する)

この二つがジョージアの人々の誇り、生きていく拠りどころでした。キリスト教でも宴会でも欠かすことのできないもの、生活と切っても切れないほど身近で大切な存在、それがワインだったのです。

Georgia_main_b_2-thumb-700xauto-136486.jpg
© Emily Railsback c/o Music

ドキュメンタリーが持つ"凄み"

この作品はドキュメンタリーです。私は正直ドキュメンタリー映画は苦手でした。というかこれまであまり面白いとは思いませんでした。明確なストーリーがあり、メリハリある展開やドラマチックなシナリオや演出がある映画の方が面白いと思っていたのです。

しかしこの作品を見て感じました。「これはドキュメンタリーでなければ撮れなかった世界だ。。。」

ドキュメンタリーはただカメラを回していればよいのではありません。実は作るのがとても難しいのです。出演者は俳優ではなく素人です。彼らの活きた表情や"心の中の思い"を引き出すのは容易ではありません。まずはお互いに信頼関係を作らないと"本当のもの"は撮れません。エミリー・レイルズバック監督は「大型機材の撮影カメラを使っていては本当の彼らを撮ることはできない」と思い、撮影は"iPhone 6"ひとつで行いました。撮影期間は5か月にも及び、総録画時間はなんと170時間を超えたそうです。

撮影にあたって脚本はなく、こういう方向に持っていこうという意図も決めずに撮影していきました。実際撮影しながら「どういう映画になるのか」は監督にもわからなかった。ただ目の前のワイン生産者やクヴェヴリ職人たちを"伝える"ことだけに集中した。逆に制作者として「このように撮りたい」といったシナリオありきの姿勢で撮影していたらうまくいかなかっただろうと思います。ジョージアの人たちにも「よそ者が事情を知りもしないで引っ掻き回そうとしているんじゃないか」と心を開いてもらえなかったのではないかと思います。

頭で想像した作り物ではなく、"彼らの生きざま"そのものを映し出す。
そうしてできあがったドキュメンタリーが持つ"説得力"と"力"の前にはどんなフィクションも太刀打ちできないでしょう。

8e42a90000c8dd9a9a7a6656c24eba7b_1-thumb-700xauto-136483.jpg
© Emily Railsback c/o Music

Georgia_sub01_2-thumb-700xauto-136487.jpg
© Emily Railsback c/o Music

編集には1年半かかったそうです。当初6か月の契約で編集者を雇っていましたが、期限内に半分も終えることができず、残りは監督自身が編集をしてようやく完成させました。

スクリーンからは出演者の熱い思いとか、私たちのあるべき姿はこうだ、といった説教くさい押しつけはありません。特にジョージアに住む、昔からのワイン生産者、クヴェヴリ職人たちは、自分たちはあたりまえのことをあたりまえにやり続けるだけなんだ、といった印象を受けました。
ワイン造りは、彼らにとって"生きることそのもの"なのです。

そんな彼らのワイン造り、宴会で語り、飲み、食べ、歌う彼らの情景を見ていると、私たちにとって「生きるとはどういうことなのか?」「しあわせとはいったいどのようなものなのか?」を問いかけられます。

そして"人間にとって一番大切なこと"とは「大切な人と繋がり、同じ時間を一緒に過ごすこと」なのだと教えられるのです。

クヴェヴリワインを実際に飲んでみた

正直言って私は自然派ワインとかいうものは、コンセプトや厳格なルール決めやこだわり、社会的メッセージはすごいと思いますが、そもそもあんまり美味しくないのでは?というイメージを持っていました。

今回2本のクヴェヴリワインを飲んでみました。結論から言うと2本とも全く別の味でした。ひと括りに「クヴェヴリワインってこんな味」なんて言うこと自体がおこがましいのだと分かりました。

IMG_7960.JPG

IMG_7961.JPG

先ず1本め。「ベシーニ クヴェヴリスペシャルリザーブ」洗練されたボトルとデザイン。薄いオレンジ~ピンク色で、見た目のイメージ通り、味はすっきりした辛口です。度数も12%と軽めで飲みやすい。壺の中で育ったワインという想像よりも都会的な透明感のある味でした(あくまでワイン素人の個人の感想です。)

IMG_7971.JPG

IMG_7972.JPG

IMG_7974.JPG 

2本め「STORI MARANI」(で合ってるかな?)。こちらのワインの方がなんとなくイメージしたクヴェヴリワインに近いものでした。ひとことでいえば「葡萄の地酒(う~なんという貧しい表現・・・)」白(緑)葡萄を皮、種、茎ごと一緒に発酵、熟成させた滋味溢れるコクのあるワインです。でもけっして雑味があるという意味ではなく、果実感豊かで、初めて飲んだのにどこか懐かしく感じる好きな味です。そして1本目のスペシャルリザーブもそうですが、一口飲んで「んんん!!!こりゃ旨い!」というようなインパクトがある、というよりは、何杯も飲んでいく内に体の隅々に染みわたっていくような、いくらでも何時間でも飲んでいられるような、まさにジョージアの人々のスプラ(宴会)の中に溶け込んでいるような優しく飲み飽きない味なんです(地酒という意味がお分かりでしょうか)。ワインのお伴はパンとチーズに決まりでしょう。

こちらのワイン「STORI MARANI」は楽天で買えました。よかったら試してみてください。

>>>ジョージア クヴェヴリワイン「STORI MARANI」を楽天で見てみる

2013年ユネスコ無形文化遺産に登録されたこの世界最古のワイン製造法は数千年の時を超えて、今世界中で注目され始めたそうです。日本でも北海道で自然派ワインが作られ始めているそうですよ。楽しみですね。

皆さんもぜひ映画「ジョージア、ワインが生まれたところ」を観てください。心にざわめきを感じるでしょう。そして帰り道、がまんできずにワインバーに駆け込むことでしょう(笑)

映画で旅する自然派ワイン

2019年11月1日(金)より、シネスイッチ銀座、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

『ジョージア、ワインが生まれたところ』

監督・撮影・編集:エミリー・レイルズバック
出演:ジェレミー・クイン、他
(2018年/アメリカ/78分/英語、ジョージア語/DCP/1:2.35/原題:Our Blood Is Wine)
字幕翻訳:額賀深雪/翻訳協力:ニノ・ゴツァゼ/字幕監修:前田弘毅
配給・宣伝:アップリンク © Emily Railsback c/o Music

ジョージアってどうやったら行けるの?と思った方は、

>>>ジョージア(旧グルジア)への航空券、ホテルを調べてみる

関連記事:
ジョージア国の映画「葡萄畑に帰ろう」を観た感想

プロフィール画像
この記事を書いた人
シンジーノ
  • Facebook シェア
  • twitter シェア
  • はてなブックマーク  シェア
  • LINE シェア

記事投稿日:2019/10/09最終更新日:2019/10/10

Views:

ジョージアのアクセスランキング

    © 2017 TabiCoffret Co.,Ltd.