【別府・明礬(みょうばん)温泉】ゑびす屋に泊まりました。温泉といえばやっぱり硫黄泉でしょ!

ゑびす屋の露天風呂

「日本一の温泉王国」大分県といえば、浮かぶのはやっぱり別府温泉ではないでしょうか。

街なかに立ちのぼる湯けむりは"これぞ温泉街!"という風情があります。ところで一口に別府温泉と言っても八つの温泉郷があることをご存じですか?「別府八湯」とよばれる浜脇温泉、別府温泉、観海寺温泉、堀田温泉、明礬温泉、鉄輪温泉、柴石温泉、亀川温泉です。

この記事では、別府エリアの一番北にある明礬(みょうばん)温泉をご紹介します。明礬温泉の特徴は「硫黄泉」です。温泉といって真っ先に浮かぶのは硫黄の匂いが漂う白濁の"あのお湯"ですよね。

今回、明礬温泉の「御宿ゑびす屋」に泊まって、「湯の里」で湯の花小屋を見学し、岡本屋の名物「地獄蒸しプリン」を食べてきました。明礬温泉エリアに住む人に長寿が多い理由、硫黄泉ならではの日常生活上でのメリットとご苦労されている点など含めてどどーんとご紹介します。

目次

明礬温泉 「湯の里」で湯の花作りを見学

明礬温泉エリアの高台に建つ「湯の里」では、天然の入浴剤「薬用湯の花」の製造直売をしています。敷地内には湯の花を作る藁葺きの「湯の花小屋」が立ち並んでいてとても趣きがあります。

湯の花小屋
<湯の花小屋>

この地では江戸時代(享保)から幕府直轄地で明礬を作っており、全国シェアはなんと100%。明礬は当時、薬(止血剤など)、火薬、染め物、鍛冶溶接、絵画など多方面に使用されていたそうです。また井戸水をきれいにする効果もあったのだとか。殺菌効果が高いのですね。

他の土地の硫黄泉の湯の花は温泉の沈殿物を集めたり、硫黄の塊を粉末にして作ったりしていますが、明礬温泉では藁葺きの「湯の花小屋」の中で温泉の噴気と青粘土で結晶化し、1日1ミリ育てる技法をとっており、これは世界唯一の製造技術だそうです。粘土層を敷き詰め、その下から天然蒸気(噴気)を導入します。つまり小屋を作る場所はどこでも良いというわけではなく、噴気の強い場所に作る必要があるということです。

なぜこのような小屋の中で作るのかというと、小屋の空気の温度、湿度を一定に保つためと、できた"湯の花"が雨に溶けるのを防ぐためだそうです。この製造技術は平成18年、国の「重要無形民俗文化財」に指定されました。最盛期は400棟あった湯の花小屋も現在では15棟に減っているのだそうです。

湯の花小屋の内部
<湯の花小屋の内部>

敷き詰められた青粘土
<湯の花小屋の土間に敷き詰められた青粘土>

湯の花

湯の花を手にとってみるとこんな感じです。

湯の花は虫刺されやあせも、痒みなどに効くと言われています(湯の花は医薬部外品)。湯の里には年間約100万人のお客さんが訪れていましたが、コロナ禍により五分の一ほどにも減ったそうです。湯の里には大浴場のほかに藁葺き小屋の家族風呂もあります。

家族風呂
<湯の里の家族風呂>

秘湯ムード満点ですね。硫黄の匂いが満ち満ちていました。

「御宿ゑびす屋」に泊まって名物「地獄蒸し」料理を堪能

入り口

今回泊まったのは別府明礬温泉にある「御宿ゑびす屋」。部屋数8部屋ほどの瀟洒(しょうしゃ)で落ち着いた宿です。

御宿ゑびす屋の特徴は、たくさんのお風呂を楽しめる点と名物「地獄蒸し」料理です。一般的には部屋数が少ない小さな宿ではお風呂も小さいことが多いですが、ゑびす屋は、立ち寄り温泉施設「湯屋えびす」と隣接しているため、バリエーションに富んだ浴槽、広々とした露天風呂を楽しむことができます。また家族風呂(別途料金)も充実しており、たっぷり湯あみを楽しむことができます。

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<湯屋えびすの露天風呂>

湯屋えびすで楽しめる泉質は「硫黄泉」と「単純泉」の2種類。

硫黄泉の効能は、神経痛、リュウマチ、皮膚病、殺菌力が強い弱酸性。打撲捻挫。毛細血管を広げ、血圧を下げます。肌の脂と汚れを取り、アンチエイジング効果も。単純泉の効能はひとことで言えばリンス効果です。弱アルカリ性で、神経痛、筋肉痛、疲労回復、肌の角質を取る美肌効果があります。

硫黄泉で刺激を与え、単純泉で和らげる。ゑびす屋ではそんなお湯の楽しみ方もできますね。

えびす屋 露天風呂

露天風呂

露天風呂

1泊だけでは入りきれないほどたくさんの浴槽があります。

樽風呂 ジャグジー
<樽風呂(ジャグジー)>

IMG_0871.JPG

敷地内にも湯けむりが上がっていました。

家族風呂 料金プラン

家族風呂(時間制貸し切り有料)も5種類あり、充実しています。

別棟 家族風呂

別棟に家族風呂が並んでいます。

家族風呂

家族風呂のうち、2つはなんとジャグジー付きの硫黄泉です。珍しい。

今回は本館のロフト付きのお部屋に泊まりました。

えびす屋 部屋
<御宿ゑびす屋 部屋の一例>

天井が高くて空間が広くゆったり感じられました。改装して3年とのことなので、すべてが新しく、きれいでおしゃれでした。

部屋からの眺め

お部屋から別府市街を見下ろします。海も見えます。

さて、お楽しみの夕食は、ゑびす屋名物の「地獄蒸し」です。

地獄蒸し

庭にある蒸し場で、大きなわっぱに入れた食材を硫黄泉の噴気で蒸しあげます。

IMG_0855.JPG

蒸し時間は8分。蒸しあがった姿がこちらです。

地獄蒸し

食材はなんと40種類。鶏肉、豚肉、魚、ちまき、シュウマイ、茄子、椎茸、ズッキーニ、えのき、シメジ、カボチャ、オクラ、人参、パプリカ、ブロッコリー、とうもろこし、れんこん、さつまいも、じゃがいも、アスパラガス、豆腐、などなど(季節により食材は変わります)、ほぼすべての食材が大分産のものだそうです。

硫黄泉の噴気で蒸すということだったので、硫黄の匂いがするのかな、と思いましたが、全然そんなことはありませんでした。逆に硫黄が野菜のアクを取り除くそうです。

食材はふっくらと柔らかくジューシーでほっこりしていました。中でも茄子、えのき、落花生は私がこれまで食べた中で一番!といえるほど瑞々しくて美味しかったです。味つけタレはごまだれ、味噌だれ、ポン酢と塩こしょう。

蒸し料理は、一番素材の旨味を逃がさないので、栄養たっぷり。油も使わないので、体にも優しいですね。量もたっぷりなのでお腹いっぱいになりましたが、翌朝胃にもたれることはありませんでした。

地獄蒸しは「温泉の噴気で蒸す」というとすごく簡単な料理のようなイメージを抱くかもしれませんが、実はとても難しいのだそうです。

例えば蒸し時間。今回は8分でしたが、気候や季節によって蒸し時間を変えているそうです。蒸しすぎると水分でべちゃべちゃになってしまう。また食材によって硬さ、味のしみ込み易さは変わります。そのため、わっぱ内のどこにどの食材を置くか、どのくらいの薄さに切れば均一に火が通るか、など微調整が難しく、何度も失敗した中から絶妙の蒸し具合をみつけていったそうです。

その日は若旦那が蒸しをしていただきましたが「僕が食材を盛り付けると女将がダメだしをして、食材の位置を入れ変えたりするんですよ。厳しいです笑」と仰っていました。

鳥スープ

「地獄蒸し」に付く鳥スープです。透き通っていますが、鳥の脂がつやつやに光輝きながら浮かんでいるのが見えるでしょうか。

鳥スープの鍋

こちらが鳥スープの鍋です。鳥のエキスと栄養が十二分に出ているのがわかりますね。ダシがしっかり出ているので、味付けはごく薄めです。くちびるがぴかぴか光るほど「鶏~」という食べ物を味わえる逸品です。

蒸しりんご

デザートも地獄蒸し。蒸しりんごです。

生のりんご、アップルパイ、焼きりんごなどとは違う、初めて食べた蒸しりんごの食感で、まるで和菓子のようにしっとりとしていました。

ダイニングルーム

御宿ゑびす屋のダイニングルームです。夕食、朝食ともこちらでいただきます。こちらが朝ごはんです。

朝ごはん

大分名物だんご汁、おにぎり、地獄釜で蒸した卵、れんこん、青菜のごま和え。だんご汁はやや甘めの白みそで優しい味です。すべて女将の手づくりです。おにぎりもお米の炊け具合が絶妙で美味しかったです。

朝ごはんのイラスト

朝食はイラストでも描いてあります。野菜不足の男性や健康に気遣う女性にぴったりの、ヘルシーながらたっぷり食べられる野菜中心の朝食。

なんとなく、イメージとしては女性に好まれるおしゃれで温かいお宿という感じですが、意外に男性客も多いそう。ひとりで泊まるお客さんも。また旅館は1泊2食制が基本ですが、朝食のみ、素泊まりでも受けつけてもらえるそうです。

女将さんも若旦那も優しくフレンドリーなのですが、べたべたしておらず、必要以上に世話を焼きません。ひとりで静かにゆっくりしたい人はそっとしておくそう。旅館は布団の上げ下ろし、上げ膳据え膳、部屋食などを売りにしている宿も多いですが、このお宿はとても自由で自然体です。

セルフサービス 飲み物

ダイニングルームにあるお茶、コーヒーもセルフサービスでご自由に。この適度な"放っておかれ感"がとても心地よかったです。

ゑびす様

御宿ゑびす屋の玄関を入るとえびす様の置物とメッセージが。なんかいい感じですね。リピーターが多いのもうなずけます。

別府明礬温泉 えびすの湯 基本情報

「岡本屋」で名物「地獄蒸しプリン」を食べる

明礬温泉で有名な食べ物が地獄蒸しプリンです。1日1,000個以上出ることもあるそう。そのプリンを提供しているのが岡本屋。旅館も経営されています。

岡本屋

こちらの売店の売れ筋ナンバー1が「地獄蒸しプリン」です。

売店 メニュー

先述しましたが、「温泉の噴気で地獄蒸し」といっても簡単ではなく、火の通し加減が難しいそうです。気候により蒸し時間は15~30分で長すぎても短すぎても駄目。プリンにスが入ったりするそうです。

こちらが岡本屋名物の地獄蒸しプリン(330円)です。

地獄蒸しプリン

卵たっぷり。最近流行りのクリーミーなプリンではなく、昔懐かしいやや堅めのプリンで卵の味がしっかりします。カラメルの苦みが絶妙です。防腐剤を入れていないのに冷蔵庫で1週間持つそうです。硫黄のミネラル分が良いのかもしれません。

地獄蒸しプリン ソフトクリーム パフェ

その他に岡本屋で人気の地獄蒸しプリンソフトクリーム(左奥)と地獄蒸しパフェ(右奥)。

看板犬チャーリー

岡本屋の看板犬チャーリーくん。呼びだされた始めは面倒くさそうでしたが(笑)お客さんに愛想を振りまいていました。

看板犬チャーリー

岡本屋売店 基本情報

  • 住所:大分県別府市明礬3組
  • TEL:0977-66-6115(売店直通)
  • 営業時間:8:30~18:30
  • HP:岡本屋売店

別府 明礬温泉 まとめ

別府は海も山も近く、20分くらい圏内で回ることができます。別府八湯のひとつ明礬温泉は一番北にあり、丘の上から別府の街や海を見渡すことができて気持ちよかったです。

硫黄泉は温泉の象徴ともいえる風情のある温泉ですが、そこで生活している人には困ることもあるようです。硫黄泉は酸性で刺激が強いため、電化製品などはすぐダメになるそうです。例えば冷蔵庫などは1年持たないのだとか。

それでもここ明礬温泉に訪れて魅せられ「永住したい」という人も多いそうです。また硫黄が健康に良いのか明礬温泉あたりは長寿の方も多いそうです。別府という街の魅力がさらに広がってわかったような気がしました。

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シンジーノ

3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

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