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収穫シーズンスタート。 エキストラバージンオリーブオイルってどうやってできるの?
スペインではオリーブの収穫が始まりました。スペインは世界のオリーブオイル生産量の約半分を占めるオリーブ大国。健康に良いと言われるエキストラバージンオリーブオイルは化学的な工程は一切なく、オリーブの果実を搾っただけの、いわばオリーブジュースです。今回はエキストラバージンオリーブオイルの製造方法に迫ってみます。
目次
- 早摘みのオリーブでおいしいオイルができる
- 搾油には近代的な機械が大活躍
- ノンフィルターなら早く使い切ることがポイント
- エキストラバージンとピュアの違い
- スペインに来たら楽しみたいオリーブオイルツーリズム
早摘みのオリーブでおいしいオイルができる
黒く熟す前のオリーブ果実を搾ると風味が豊かで、かつ健康に良い成分がより多く含まれていることがわかった近年では、早摘みが盛んになってきました。収穫時期は品種や立地、その年の天候によって異なりますが、早い年では8月末に収穫が始まることも。高品質なプレミアムオリーブオイル用の収穫は、たいてい11月の初旬までには終わります。
<山のオリーブ畑での収穫風景>
果実は木から離れた時点から劣化が始まるので、収穫から搾油までの時間は短ければ短いほど良いとされます。果実を積んで放置しておくなんてもってのほか。
搾油所ではまず果実のクリーニングがあります。ベルトコンベアで運ばれる果実に風を当て葉やほこりを飛ばしたり、果実より小さな隙間から小石を落としたり。水でしっかり洗浄することもあります。
<搾油所に到着した収穫されたばかりの青い果実>
搾油には近代的な機械が大活躍
きれいになった果実は計量の後に、粉砕機で細かく砕かれます。昔は石うすで挽いていましたが、今では石うすを使う搾油所はほとんどありません。
粉砕されてペースト状になったオリーブは、練り込み機で攪拌されます。攪拌することで小さな油の粒子がくっついて油分が浮いてくるのです。ここで時間をかけ過ぎたり、温度が上がり過ぎたりするとオリーブオイルの品質に影響を及ぼしてしまいます。
練り込み機の後は横型遠心分離機にかけて、比重の異なる液体と固体に分けます。あまり使われていませんが、油分、水分、固体の3つに分類する遠心分離機もあります。マットとマットの間にペーストを挟んで積み、上から圧力をかけて油分を抽出する圧搾方法は今や旧式となり、ほとんど見られなくなりました。
<近代的な設備の搾油所>
<今では珍しい旧式の搾油所>
ノンフィルターなら早く使い切ることがポイント
抽出された液体は、縦型遠心分離機で水分と油分に分けられます。機械は使わずにしばらく寝かせておくと比重の関係で油と水は分かれるので、その原理を使って油分だけ取り出す方法もあります。
<できたてのオリーブオイル>
こうして油分だけになったら、たいていはフィルターをかけて不純物を除去します。ノンフィルターのエキストラバージンオリーブオイルも売っていますが、不純物が混じっているため、フィルターをかけたものよりも品質低下の速度がどうしても早くなってしまいます。ノンフィルターのものを買ったりいただいたりした際は、なるべく早く開封し、一度開けたら2~3週間以内に使い切ることがおすすめです。
<フィルターをかけたオイルとかけていないオイルのテイスティング>
フィルターの有無に関わらず最終的にタンクに貯蔵されるわけですが、酸化を防ぐためにステンレス製のものが使われます。タンク内での空気との接触を避けるために窒素を充填することもあるんですよ。なんといっても空気と光、高温は天敵ですから。そして、オーダーが入ったらボトルや缶に充填されて出荷されていきます。
エキストラバージンとピュアの違い
どうでしょう? いくつもの工程を得てはいるものの、基本的にはオリーブの果実を搾っただけということがわかりますね。化学的な工程はひとつもありません。近代的な手法を使っていても、やっていることは数千年から同じなのです。
果実が傷んでいたり搾油方法が正しくないと食用には適さない低品質の油になってしまうので、できあがった油はラボラトリーでの理化学検査分析と訓練された専門家グループによる官能検査分析(テイスティングして欠陥を見つけます)によって等級分けされます。理化学検査結果の数字にもテイスティング結果にもまったく非のないものだけがエキストラバージンを名乗れるのです。
ちなみに多少風味に欠陥があるものはバージン、欠陥がひどく食用には使えないものはランパンテといいます。このランパンテを精製工場に運んで化学的につくられるのがピュアオリーブオイル。精製過程で溶剤の使用や高温にすることで健康に良いとされる成分の多くが消え、無色無味無臭の油になってしまいます。そこにエキストラバージンオリーブオイルやバージンオリーブオイルを少しだけ加えるのです。おいしさや健康を意識するならば、エキストラバージンオリーブオイルを使いたいですね。
スペインに来たら楽しみたいオリーブオイルツーリズム
なお、オリーブオイルは鮮度が命。ワインとは違い、寝かせると風味は落ちてしまいます。おいしくいただくには、買ったりもらったりしたらすぐ使うこと。それも開封から3か月以内に使い切りましょう。現在市場に出回っているものでしたら、2020年の秋に搾油されたものを買うこともポイントです。
最近のスペインではオリーブオイルツーリズム(スペイン語ではoleoturismo)といって農園や搾油所を訪問する観光形態も増えています。オリーブオイルがお好きな方はスペインにお越しの際にぜひお楽しみくださいね。
<オリーブオイルツーリズムではオリーブオイルのテイスティングも楽しみのひとつ>
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田川敬子(Keiko Tagawa)
- 1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。