路地裏散策好きな人向け!「最も昔の上海らしい場所」かつての中国人街の中心地・老城廂

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<浦東の高層ビル群を背景に>

みなさんご存知・上海随一の観光地である豫園。美しい庭園を見たり、ストローをさして中のスープを味わう大きなショウロンポーを食べたり(正確には湯包といいますが)...土産物屋が軒を連ねる、そぞろ歩きが楽しいエリアです。

その豫園から少し離れた周辺エリア「老城廂(中国語で老城厢:ラオチェンシャン)」には、古い街並みが広がっています。この場所はかつての上海の中心地。外国人が住む旧租界地に対し、ここは古くは華界(中国人街)と呼ばれ、各種政府機関が所在し、中国人の主な商業や生活の場でした。過去には倭寇の侵入を防ぐための城壁(現在は取り壊し済)に囲まれていたのです。通常観光客が足を踏み入れることがない場所ですが、上海の味のある風景を求める筆者は時間があればこの場所を散策しています。

というのも、このエリアの建物は古く、現在の住居の基準に見合わないことから、のきなみ再開発計画が決定しており、今後二度と見られなくなる風景になるからです。

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<再開発が進む「老城廂」>

歴史的な建物は保存される方向ですが、どの建物がどれだけ残るかは未知数。なので、見られる今のうちに!と足を運んでいるわけです。

そんな筆者の豫園周辺の散策スポットを今回ご紹介します。

目次

「老城廂」をめぐるキーワード

まずは上海の「老城廂」をキーワードでご紹介。これを知っておくと「老城廂」散策にお役立ち!

上海人の心のふるさと「老城廂」

豫園周辺に位置するかつての中国人居住エリア。

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この辺り一帯を上海人は「老城廂(中国語で老城厢:ラオチェンシャン)」と呼びます。そもそも「老城廂」とは「城内の市街と城外の城門に連接した街」を意味し、上海ではかつて城壁に囲まれていた華界を指しています(※他の地域でも「老城廂」と呼ぶエリアがあります。)

現在も残る城壁と各所門の名前

上海地下鉄駅の「老西門」駅、「小南門」駅...これはかつて城壁に設けられていた門の名称。城壁の撤去とともに門は消滅したものの、現在の地名として残っています。地下鉄の駅名、バス停の名称、その辺り一帯を指す場合に「○○門」が使われます。特に「老西門」を起点とする11番バスは楕円形の城壁跡地をぐるっと走っており、北から「老北門」、「新北門」、「小東門」、「大東門」...そして終点「老西門」と、乗るだけで旧城壁が一周できるコースになっています。

城壁のほぼ全ては撤去されたものの、ごく一部は残存しています。最も有名なものは道教寺院「大境閣」の一部として保護され、この中では補修を経た清の時代のレンガの刻印も見られます。

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付近のマンションの一角にも城壁がひっそりと残されています。

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現在、城壁があった道路は人民路、中華路という名称になっています。

大境閣 基本情報

  • 中国語表記:大境阁
  • 住所:上海市黄浦区大境路259-269号
  • アクセス:地下鉄10号線「老西门」駅徒歩10分

方向感覚がなくなるほどの細い路地

「老城廂」に何度も足を運んでいる筆者ですが、いく度か迷子状態になったことも。これまで区画整理されずに昔の道路の形が今に残っているため、道は細く曲がりくねり、なかなかメイン通りに辿り着けず、ここどこ?となることもしばしば。

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<細い道の両側に住宅がせまる。こんな道路も「老城廂」では珍しくないです>

タクシーの運転手さんや宅配業者さんも迷うほどで、散策している時々「○○行きたいんだけれど、どこかな?」と聞かれることも。散策時には地図アプリや地図を携行することをおすすめします。わからなくなったら周囲の方に聞いてみるのもいいですよ。

道の名称に歴史あり!

上海の道は一本一本に名前が付けられています。旧租界地のエリアは租界があった時代、欧米由来の名称だったのですが、1940年代に中国の地名由来の名称に変更されました。その他の上海の市内エリアでも中国の地名を道路名に使用しています。ただ、「老城廂」の中ではかつての道路名称が今も使われており、そのエリアの有力者の名前やその地でかつて盛んだった商業の名前が道の名前になっており、道の名前を見れば過去が偲ばれます。

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<溪は小川の意味。支弄は細道の意味。かつてここを流れていた梅溪という小川が由来>

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<かつてこの辺りにあった鴛鴦庁という庵(いおり)から由来>

「老城廂」の中のみどころ

まず、散策の前に大事なことをお伝えしておきます。近年上海人の中でも、古建築や街並みのちょっとした流行があること、更に再開発計画があることから希少性が高まり、散策をする人が増えている「老城廂」ですが、第一にそのエリアはそこで住む人々の生活の場に他ならないです。くねくね狭い路地を迷って歩いていたら人のお宅の軒先だった...ということもあり得ます。騒いだり、生活エリアに踏み込み過ぎず、住人の方への配慮を忘れずに散策することをくれぐれもお願い致します。

ここまで読んで「老城廂」に興味を感じた方、気を付ける点は気をつけつつ「老城廂」へ足を踏み入れてみましょう。「老城廂」にはいくつかのみどころがあります。

アインシュタインが訪問した洋館「梓園」

こちらは「梓園(中国語で梓园:ズーユアン)と呼ばれる邸宅の門。門構えからして普通のたたずまいではありません。

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1922年にはここにアインシュタインが訪れ会食をしたとの記録があります。門を抜けると西洋風と中華風が混ざったような様式の洋館があります。一説によると、この邸宅のかつての主である、王一亭氏が関東大震災の復興にあたり多額の寄付を募ったり、救援支援を行った事への感謝として日本の皇族から材料提供と施工の申し入れがあったと言われています。

筆者はまだ訪れたことがないのですが、東京都墨田区にある震災公園には王氏寄贈の「復興の鐘」が保存されているという事です。

梓園 基本情報

  • 中国語表記:梓园
  • 住所:上海市黄浦区乔家路113号
  • アクセス:地下鉄10号線「小南门」駅徒歩5分

明の時代の武道演習場跡

梓園のほど近くにある、中華風屋敷の門前にあるこちら。

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これは石碑?...明らかに人の手で作られてここに設置されたものです。側面には三本の鉾、縁起がいいとされる雲の模様が刻まれています。こちらは明の時代にこの地にあった武道練習場に置かれた旗を置く石台といわれています。上部に円形の模様が見えますが、これは後年、コンクリートを流し込んだためです。

武道練習場跡 基本情報

  • 中国語表記:乔一琦宅院
  • 住所:上海市黄浦区喬家路143号
  • アクセス:地下鉄10号線「小南門」駅徒歩5分

完全非公開。清時代の蔵書楼「書隠楼」

こちらは私有地の為に公開されていないのですが、細工が見事なので画像を数点ご紹介させてください。上海市内エリアでもここだけ!という完全な形で残る清時代の建築「書隠楼」です。

保管された書を守るため、華界(中国人街)を囲んでいた城壁よりも更に高い壁で囲まれた、外界と隔絶された空間です。

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邸宅内に残る彫刻は非常に精密です。全て手彫りなことが信じられないほどです。どの彫刻にもそれぞれストーリーや込められた願いがあります。

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目下管理をしている主とのつてがある人のみが予約の上、見学することができます。

書隠楼 基本情報

  • 中国語表記:书隐楼
  • 住所:上海市黄浦区天灯弄77号
  • アクセス:地下鉄10号線「小南門」駅徒歩10分

上海市内でここだけ!完全な姿で残る火の見やぐら

地下鉄「小南門」駅の近くには旧上海時代の火の見やぐらがあります。かつてはこの火の見やぐらが一帯随一の高層施設であり、ここから状況を視認して附近一帯に火事を知らせました。現在は使用されていません。

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火の見やぐら 基本情報

  • 中国語表記:小南门警钟楼
  • 住所:上海市黄浦区中華路581号
  • アクセス:地下鉄10号線「小南門」駅徒歩すぐ

人々の生活が息づく石庫門

「老城廂」のあちこちには旧上海時代に建てられた集合住宅である「石庫門(中国語で石库门:シークーメン)」が見られます。「石庫門」の特徴は黒塗りの扉とその上に凝らされた意匠。家の門はその家の表の顔。かつての主が家に込めた思いを感じます。

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こうした古い建物のそばには土地の私有が認められていた時代において有効だった、土地の所有範囲を示す「界石(中国語ではジエシー)」を見つけることができます。家の外壁や道端にひょっこりあるので散策中も気が抜けません。

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こちらの石庫門「龍門邨(中国語では龙门邨:ロンメンツン)」は上海市優秀歴史建築にも指定されており、見学者が絶えません。旅行者も入りやすいので中を見てみるといいですよ。

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「龍門邨」の内部の様子です。所々で、石庫門の暮らしがありふれていた時代の様子が銅像で表現されています。

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龍門邨 基本情報

  • 中国語表記:龙门邨
  • 住所:上海市黄浦区河南南路790弄1-5号
  • アクセス:地下鉄9号線「陆家浜路」駅徒歩12分

お腹がすいたらここへ!

「老城廂」散策でお腹がすいたらこちらのお店での食事がおすすめです。場所柄B級グルメ的なお店が多いですが、昔からの名店が多いのが特徴。

①上海旅行の達人をして「飲めるご飯」と言わしめる菜飯

上海の家庭料理や庶民的なメニューに挙げられるのが「菜飯」。これは刻んだ豚の塩漬け肉と青菜、ラードを炊き込んだご飯です。昨今のヘルシーブームに逆行するかのような料理なのです。

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私がこのお店に足を運ぶことになったきっかけは、熱烈な上海旅行好きの人と上海で街歩きを楽しんだ際にリクエストされたため。このお店の評判はかねがね噂には聞いていたものの、「ラードに塩漬け肉の菜飯...ううむ...。」と思いつつ、食べたらびっくり。「これは飲める...!!」と、もしゃもしゃ平らげてしまったのはいい思い出です。

腐乳(中国語でフールー、紅こうじで発酵させた豆腐)で煮た赤い豚バラ肉と、これまた素朴なお揚げが入ったスープ双檔(中国語で双档、シュアンダン)を合わせていただきましょう!通な食べ方は、菜飯を半分いただいたところで赤い肉の煮汁を菜飯にたらし、かきこんで食べます。

筆者はコロナ禍が落ち着いた辺りで「老城廂」散策をした際も、このお店に寄って食べました。人がはけた時間帯だったので店主の方ともお話ししましたが明るい方でした。

菜飯骨頭湯 基本情報

  • 中国語表記:菜饭骨头汤
  • 住所:上海市黄浦区文庙路2825号
  • アクセス:地下鉄10号線「老西門」駅徒歩9分

②上海料理老舗店で食べるモツ麺

小南門駅近くには徳興館(中国語で德兴馆、ドゥーシングアン)という上海老舗料理店があります。上海老舗料理で筆者が好きなメニューが大腸麺(中国語で大肠面、ダーチャンミエン)と呼ばれる豚のモツ麺。甘辛く似たモツを麺にのせていただきます。ボリュームたっぷり。お腹も大満足なメニューです。

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菜飯骨頭湯 基本情報

  • 中国語表記:菜饭骨头汤
  • 住所:上海市黄浦区文庙路282号
  • アクセス:地下鉄10号線「老西門」駅徒歩9分

※特に看板はなく、小さな入り口を入ると食堂になっています。住所表記の看板を頼りにお店を探してください。

筆者はいつ行ってもあまりの行列ぶりに圧倒されてまだ食べたことはないのですが、老西門駅付近にはモツ麺の超人気店でその名も「大腸麺」があります。上海一人気なモツ麺のお店です。

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大腸麺 基本情報

  • 中国語表記:大肠面
  • 住所:上海市黄浦区復興中路59号
  • アクセス:地下鉄10号線「老西門」駅徒歩4分

他にも「大富貴酒楼」、「小紹興」といった上海料理の老舗店、古い雰囲気が楽しめ日本語が通じる「孔乙己酒家」など、この一帯にはおいしいお店が数多くあります!どれも人気が高い行列店ですので、予約を取るか、予約ができない店の場合は食事のピーク時をずらしていくことをおすすめします。

「老城廂」は上海人の原点であるだけでなく、筆者の上海街歩きの原点

筆者が上海街歩きを本格的に始めるきっかけになったのは、まさに豫園観光の後で「老城廂」を歩いた後からでした。まるで数十年時をさかのぼったのかと思わせるほどの街並みと活気に圧倒されたことを覚えています。その後気になるも広州に住み、長期間上海を離れることになったのですが、再度上海に戻って来た時に真っ先に行ったのは「老城廂」でした。

当時から一角で再開発が徐々に始まっている印象でしたが、近年再開発の進捗速度が速くなっており、古い街並みの住民退去が進み、すっかり人気がなくなってしまった場所も出てきました。ごみごみとした街並みは歴史的価値もなしとみなされ、多くの建物は壊される運命にあります。もう見られなくなる景色を見たい方は今!行動を起こしてください。

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上海在住9年目に突入、奥深い上海の路地を隅々まで探検する「上海ほじくり」にハマった阿信が上海の観光情報をお届けします。どうぞお楽しみに!

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