【新型コロナウイルス】ペルー・コロナ事情 合言葉は#YoMeQuedoEnCasa(私は家にいます)

全世界を混乱に陥れ、今もなお多くの命を奪い続けている新型コロナウイルスCOVID-19。ペルーでは2020年4月12日(日)現在、感染者数7519人で死者は193人、1798人が回復しています。新型コロナウイルスに果敢に立ち向かうペルーの今をお知らせします。

目次

初期対応の速さは実に見事!

3月6日(金)に国内初の感染者が確認されて以来、ペルーでは次々と新しいコロナ対策が打ち出されています。同月11日(水)にはイタリア、スペイン、フランス、中国からの入国者に対する14日間の在宅隔離が指示され、全国の公立私立校が休校となりました(その後、専門学校や大学も休校になりました)。

13日(金)には、週明けの16日(月)以降ヨーロッパおよびアジアからの全ての航空機の入出国を禁止すると発表。突然の決定でチケット手配が間に合わず、多くの外国人旅行者がペルー国内に取り残されてしまいました。日本でも「日本人旅行者がペルーに足止め」というニュースが流れたので、ご存知の方もいるでしょう。

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15日(日)の午前中にモンテネグロ農業灌漑相が外出制限の可能性を示唆し、すかさずスーパーへと駆け込む人々が続出。またペルーを代表するシェフ、ガストン・アクリオがSNSで「お客様と従業員の安全を確保するため、私の店をすべて閉めることにしました。またいつかお会いしましょう」とのメッセージを流すと、いくつかの有名レストランもそれにすぐ続いたのです。前世紀終盤にテロという最悪の時代を経験している彼らの危機感は、私の想像以上だったのでしょう。ペルー人のこの瞬発力には心底驚きました

果たしてその夜、ビスカラ大統領が国家緊急事態の発令を表明しました。翌日の3月16日(月)から15日間、ペルーの陸・海・空すべての国境が閉鎖され、食品調達など一部の行為を除く国民の憲法上の権利が停止されることになったのです。15日時点での国内感染者数は71人、死者はゼロ。初発症例確認からわずか9日後のことでした。

午後の"玉音放送"が大人気!国民の信頼を集めるビスカラ大統領

ペルーのコロナ対策を陣頭で指揮するのは、57歳のマルティン・アルベルト・ビスカラ・コルネホ第67代大統領。ペドロ・パブロ・クチンスキ大統領の第一副大統領として2016年7月28日に就任。2018年3月23日、クチンスキの辞任にともない大統領に繰上げ就任しました。

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沈着冷静で現実主義、問題をひとつひとつ丁寧に解決していくそのスタイルは、コロナという未知のウイルスとの戦いには最適といえるでしょう。3月15日のメッセージ以降ほぼ毎日続けている自身の定例記者会見では、最新の感染者数や死者数、医療体制の現状などを全国民に向け細かく報告。ペルーが今いったいどういう状況なのか、それに対し政府はどんな政策を打ち出していくのかなどを分かりやすく説明してくれます。こうした真摯な姿勢が国民に響き、大統領の支持率は急上昇。今では皆が正午の会見を心待ちにしており、一部在留邦人の間では「玉音放送」の名で親しまれています。

ペルーで感染した場合の基本的な流れ

咳や発熱など何らかの症状が現れた場合、ペルーではまず保健省の緊急電話窓口「113番」に連絡。同省は状況確認後、専門家を自宅に派遣し感染検査を行います。入院が必要とされない軽症者は、そのまま自宅隔離になります。

他にも同省は、コロナ感染者位置情報確認官製アプリ「PERÚ EN TUS MANOS」をリリース。Play Storeからダウンロード後、携帯番号と身分証明書番号を入力し位置情報の確認方法を選ぶだけで、オレンジ色の丸印が地図上で感染者の出現場所を示してくれます。

厳しい外出制限と夜間外出禁止令

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現在ペルーでは食糧などの生活必需品や医薬品の購入、銀行など金融機関へのアクセス、高齢者や障害者介のケア、医療機関の受診に関連する外出が認められていますが、言い換えればそれ以外はすべて禁止。レストランや美容院は閉鎖され、ファストフードのデリバリーもできません。

リマ市内の公共交通機関は、医療機関のほかスーパーマーケットやコンビニを含めたライフライン関連セクターで働く人たちのために、限られたルートで時間を制限しつつ運行されています。

許可のない車両の通行は禁じられているため、人々の行動範囲も極端に制限され、ほぼ徒歩圏内のみ。タクシーは運輸通信省の許可を得た公式車両のみ、私的営業車を扱うタクシーアプリはすべて利用できなくなりました。

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外出制限開始当初、犬の散歩と称して長々と出歩く人が多数出現。ペット愛好者同士の井戸畑会議も問題になり、逮捕者まで出てしまいました。「外出制限中のペットの飼い方」という新聞記事では、犬のトイレのための外出は自宅周辺のみ、路上のウイルスを持ち帰らないようペットの舐めまわしに注意し、帰宅時には足を良く洗うことなどが指示されていました。外出制限2週目までは犬を散歩させる人がたくさんいましたが、今ではほとんど見かけなくなりました。状況が理解できないペットたちのストレスは、人間以上かもしれません。

外出制限はその後2回延長、現時点では4月26日(日)までとなっています。夜間外出禁止令も改定され、午後6時から翌朝4時まで一切の外出が禁止になりました。外出制限違反者が多いペルー北部の5州(トゥンベス、ピウラ、ラ・リベルタ、ランバイエケ、ロレト)は更に厳しく、午後4時以降の外出が禁止されています。

外出の頻度を抑えるため男女別の買い物日も設定されましたが、わずか一週間で廃止になりました。週のうち月水金は男性だけ、火木土は女性だけが外出できる(日曜は男女共に終日外出禁止)という画期的な措置でしたが、ペルー人は「明日は買い物に行けない!」いう状況になるととりあえず買い物に出かけるようで、施行前よりも人出が増えてしまったのです(現在は日曜日のみ終日外出禁止に変更されています)。効果のない対策や失敗はすぐに改めるという謙虚で前向きな姿勢も、コロナ禍におけるリーダーには必要な資質といえるのではないでしょうか。

ペルーの課題は脆弱な医療体制と格差、そして利己的な人々

コロナが世界を席巻する以前から、ペルーには「脆弱な医療システム」と「圧倒的な格差社会」という2つの弱点がありました。3000万人を超すペルーの人口に対し、感染者用のICUはたった504床しかありません。政府は1000床を目標に増床を急いでいますが、一方で専門医の不足も取りざたされています。

ペルー人社会は地域・経済・教育を始めとする格差が顕著で、日銭暮らしの人々ほどなかなか家にいようとはしません。公衆衛生の意識も低いため、こうした地域ではいわゆる"社会的距離"をまったく確保できていないのが実情であり、平気で他人と接触し知らず知らずのうちに感染を広げてしまう可能性も危惧されます。大勢の家族と一緒に狭い家屋に暮らす世帯も多く、家族内から感染者がでても自宅隔離には不向きといえるでしょう。

また、貧富の差に関わらずどこにでもいるのが利己的な人たちです。「世帯に一人」という買い物のルールに背き、家族連れで出かける人が後を絶たず、自宅でパーティーを開く人や、誰もいない海でこっそりサーフィンを楽しんでいた親子もいました。

ペルーの医療システムが盤石でないことを一番理解しているのは、ペルー人自身。オーバーシュート(爆発的感染拡大)を阻止するための対策なら、たとえそれが強権的であっても今は受け入れるしかない。ペルー政府も国民も、結局はそれが感染の早期収束と経済復興への最良の方法だと考えているようです。

外出制限中のちょっといい話

ペルー政府はコロナ戦争の最前線で戦う医療従事者に対し、特別ボーナス制度を導入。衛生非常事態宣言の発令中は毎月、解除後も30日間は支給されます。国内大手ファストフード4社共同で、リマ市内勤務の医療従事者にハンバーガーやフライドチキン、ピザを無料で提供したという話題もありました。毎晩午後8時には、医療従事者のほか治安維持にあたる軍や警察に向け、感謝の気持ちを込めた市民の拍手が夜空に鳴り響いています。

リマ市自治体は、国の文化遺産であるリマック区のアテ闘牛場内に避難施設を設置。「La Casa de Todos(みんなの家)」と命名し、リマ市内の路上生活者およそ150人を保護しました。社会から見放された人々に救いの手を差しのべたリマ市長を、市民は高く評価しています。

外出制限の有無にかかわらず毎日必ず出てくるもの、それはゴミ。毎晩黙々とゴミを回収してくれる収集員に差し入れをする市民もいます。段ボール箱にパンやジュース、果物などを入れ、感謝のメッセージを添えて街頭に置いておくと、ゴミとは別に作業員が回収するという仕組み。夜間外出禁止令のため直接手渡すことはできませんが、窓から「ありがとう!」と声をかけたり、拍手を送ったりしています。

まとめ

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ペルーのコロナ陽性判定率は全検査数の約10%、死亡率は2.6%から2.8%で維持されています。4月の2週目から一気に検査数を増やしたため、新規感染者数は破竹の勢いで上昇していますが、対策チームは感染拡大のコントロールと流行曲線のピーク接近を強調し、ウイルス封じ込めに自信を見せています。ビスカラ大統領の下、「#YoMeQuedoEnCasa(私は家にいます)」を合言葉に引きこもりを続けるペルー人たち。買い物などの不便はありますが、それでも比較的落ち着いた気持ちで日々を過ごせるのは、新型コロナウイルスという見えない敵に挙国一致で立ち向かっている彼らのおかげだと思っています。

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原田慶子

ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。

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