地中海から20km内陸にあるスペインの秘境グアダレスト

前回は新しく"スペインでもっとも美しい村々"に認定された15の村についてお話しました。先日、以前から認定されていたスペイン東部アリカンテ県にある秘境の村を訪れたので、今回はそのグアダレスト村をご紹介いたします。

▼前回の記事はこちらから:
新しく「スペインでもっとも美しい村々」に認定された15の村

目次

切り立つ岩山のてっぺんにひそむ小さな村

アリカンテといえば美しい海。夏場はヨーロッパ北部から太陽を求める観光客で賑わいますが、内陸部には険しい岩山がいくつもそびえ立ち、独特の景観を醸し出しています。

イギリス人が大好きなリゾート地ベニドルムから20kmほど内陸に足を延ばすと、切り立つような岩山のてっぺんにひっそりと身を隠すようにたたずむグアダレストの村があります。人口はおよそ200人あまりで、"スペインでもっとも美しい村々"の仲間入りをしたこともあり、毎日その何倍もの観光客が訪れます。

正直な話、人々の生活を感じるような村ではなく、観光化されています。それでも立地や景観などここにしかない魅力があり、スペインの村や小さな町が好きなら一度は訪れたいスポットなのです。

DSC_5386.JPG

歴史地区につながる道はたったひとつ

村の歴史を紐解くと、イベリア半島がイスラム教徒に支配されていた時代からここには集落があり、岩山の上にあるお城は11世紀に建てられた要塞だったとのこと。1000年も前の昔に、こんな山間の不便な場所に人が住んでいたことにも驚きますが、要塞を築いたことにも驚かされます。

キリスト教勢力が13世紀末にこの地を取り戻した後も、17世紀初頭に追放令が出るまではモリスコ(カトリックに改宗したイスラム教徒)が主な住民だったそうです。20世紀後半に観光化が推進されたことで、忘れられたかのようにひっそり息をしていた村が活気付きます。

DSC_5318.JPG
<この辺りが散策のスタート地点。観光化されているのがわかります>

グアダレストの歴史地区には車やバイクで入ることはできないので、村の新市街にある駐車場の辺りから散策をスタートすることになります。ここは飲食店や土産物店が並び、観光地度がかなり高いです。

ベニドルムからは、路線バス以外に日帰りツアーの観光バスが日々何台も到着するので、驚くほどリヤドロ(バレンシア生まれの陶磁器ブランド)の品揃えが豊富な土産物店があったりします。ここを抜けると、旧市街に抜けるトンネルが見えてきます。これが歴史地区に出入りする唯一の道なのです。

DSC_5325.JPG
<歴史地区に続く道。この先にトンネルがあります>

DSC_5334.JPG
<後ろを振り返ると、ヤシの木と深い緑で東南アジアを彷彿させる景色>

DSC_5336.JPG
<このトンネルだけが歴史地区の出入り口>

こんな小さな村でも歴史に翻弄された過去が

歴史地区に入ると道は一本だけ。まっすぐ進むとあっという間に小さな村役場のある広場に着きます。ここから見下ろせるダムは20世紀の半ばにつくられたものですが、今はグアダレストの美しい景色の一環を担っています。

DSC_5377.JPG
<城跡から見下ろしたダム。左側の白い建物が村役場>

絶景を拝むためにお城に登るには、トンネルの真ん前にあるCasa Orduña(オルドゥーニャ家のお屋敷)の見学とセットになった共通券の購入が必要です(2020年2月の時点で4ユーロ:約470円)。

1644年の大地震の後に建てられたこのお屋敷には、村を所有する侯爵家(こうしゃくけ)に仕えていたバスク地方出身のオルドゥーニャ家が代々居住していました。寝室や書斎、台所など、調度品とともに当時の生活を垣間見ることができるのですが、お屋敷とはいえど華やかな雰囲気はなく、ちょっと何か出てきそうな暗さを感じます。

順路通りにお屋敷見学が終わると、お城に登る階段があります。お城自体は1644年の大地震で崩壊した後、1708年のスペイン継承戦争で破壊され、1748年にはまた大地震に見舞われたため、ほとんど残っていません。継承戦争時に村は焼き払われ、その後20世紀の市民戦争時にも火災に遭っています。

こんな秘境でわずかな人々がささやかな生活を送っていたというのに、悲しい仕打ちですね。なぜか現在はお城の一部が共同墓地として使われています。

DSC_5395.JPG
<地震や戦争に遭い、あまり昔の面影をとどめていないお城>

DSC_5388.JPG
<お城が現役だったころにはまだなかったダムが見える>

こぢんまりしたミュージアムが8軒もあることで有名

グアダレストはミュージアム村としても知られています。オルドゥーニャ家のお屋敷を含め、小さなミュージアムが8つもあるのです。旧市街の通り沿いにある民族博物館は18世紀の家を利用し、家の中や農業など昔の人々の暮らしがわかるようにうまく作られているのでオススメです。
山間のこんな不便な村での生活は、さぞ厳しいものだったことでしょう。

orduña.jpg
<オルドゥーニャ家のお屋敷には当時の調度品が残っている>

etnologico.jpg
<18世紀から20世紀の村の人の生活がよくわかる民族博物館>

>>グアダレスト 観光サイト(スペイン語、英語)

グアダレストへのアクセスはベニドルムから

グアダレストへのアクセスはやはり車が便利なのですが、ベニドルムから16番のバスが1日1往復しています。これを書いている2020年2月末は平日のみの運行のようですが、オンシーズンには変わるかもしれません。

>>バス会社のサイトはこちら(スペイン語、英語)

このバスで行くと、午前11時頃にグアダレストに到着し、2時間半ほど散策する時間があるそうです。本当に小さな村なので、2時間半あれば観光をしてお茶を飲んでちょうどいいかと思います。

日本のガイドブックには紹介されていないようなスペインの隠れた魅力をお探しの方は、ぜひグアダレストも訪ねてみてくださいね。イギリス人の町と呼ばれるベニドルムの町に1泊して、足を延ばすことをオススメします。ベニドルムはベタなビーチリゾートですがなかなか面白い町ですよ。

スペイン」に興味わいてきた?あなたにおすすめの『スペイン』旅行はこちら

※外部サイトに遷移します

Related postこの記事に関連する記事

Rankingスペイン記事ランキング

ランキングをもっと見る

この記事に関連するエリア

プロフィール画像

田川敬子(Keiko Tagawa)

1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。

Pick upピックアップ特集

全国の動物園&水族館 徹底取材レポート特集!デートや家族のおでかけなど是非参考にしてみてください♪

特集をもっと見る

たびこふれメールマガジン「たびとどけ」
たびこふれサロン

たびこふれ公式アカウント
旬な情報を更新中!