【たびこふれ美術館】第8話:光と闇のはざまに散った、天才画家の物語「カラヴァッジョ展」

新年、あけましておめでとうございます~!

たびこふれ美術ライターのやすおです♪

本年も、私の気の向くまま(笑)あらゆる美術について掘り下げていきますので、何卒よろしくお願いいたします☆

いや~それにしてもようやく始まりましたね!!

あべのハルカス美術館2019年3大展示会、「ギュスターヴ・モロー展」「ラファエル前派の軌跡展」に続く、トリを務める「カラバッジョ展」が昨年12月26日を皮切りに始まりました!

なにを隠そう、実は私世界中の画家の中でカラヴァッジョが一番好き!!なのです。

スイーツでも恋愛でも私は「ギャップ」がとても好きなのですが、彼はまさにその地をいくタイプ・・・

絵は天才的だが、性格ヤ〇ザ!!

・・・

ク~~~~~~~~!たまらん!(笑)

こういう人のことを天性の天才と呼ぶのだと思います。

そんなこんなでカラヴァッジョには変に思い入れがあり、今回の展示はとっても楽しみに行ってきました!

今回はそんな「カラヴァッジョ展」についてレポートしてみたいと思います♪

目次

カラヴァッジョ展いよいよ開幕!!

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カラヴァッジョ展は大阪天王寺区、あべのハルカス16階にある「あべのハルカス美術館」にて絶賛開催中です!!

JRの看板も、近鉄の構内にも広告が貼られており、気合がムンムン感じられます。

具体的な展示会データは後述させていただくとして、

今回の展示会ではイタリアからやってきた10点のカラヴァッジョの作品(内2点は真筆か不明)と共に、同じ時代を生きたカラヴァッジョのライバルや、影響を受けた画家の作品まで多岐に渡って展示されています。

館内はすべて撮影禁止のためお写真を楽しんでいただくことはできませんが、カラヴァッジョが作り出した新たな時代を感じるのにはとても良い展覧会です☆

音声ガイドのナビゲーターは田辺誠一さん。イケメンボイスに包まれながらゆっくり展示を楽しんでみませんか?

そもそもカラヴァッジョとは?

カラヴァッジョ13.jpg

オッタヴィオ・レオーニが描いたカラヴァッジョの肖像画(1621年頃)

カラヴァッジョは正式には、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョといいます。

この中で名前は「ミケランジェロ・メリージ」の部分なのですが、西洋では聖書から名前を取ったりして同名がとても多いので、「~村の」という修飾語を付けることがあります。

なので、彼の場合は「カラヴァッジョ村のミケランジェロ」ということになりますね。

当時、作品の中にサインを施すことは一般的ではなかったのですが、彼の晩年の「聖ヨハネの斬首」には、しっかりと「michelangelo」とのサインを見ることができます。

「ヴィンチ村のレオナルド」と同じ発想ですね。

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<聖ヨハネの斬首※部分 流れ出た血でサインってのがね・・・先生さすがです。 ※この作品は今展示会の出品作ではありません>

さて、そんな彼が産まれたのは1571年、イタリアのミラノ。その後ミラノから近郊のカラヴァッジョ村に家族で引越し、彼はそこで13歳ごろから絵を習い始めました。

そこから1592年21歳にローマに赴くのですが(おそらく喧嘩が原因でローマに逃げ込んだ)、この頃のローマは1600年の大聖年を迎えようとしており、世界中から優秀な芸術家が集まる一大芸術センターのようになっていたようです。

※大聖年とはカトリック教会における、いわゆるミレニアムのお祝いで「この年にローマ詣をすると、罪が許される」という特別な年のことです。

大聖年には世界中から信者がローマにやってくる、そのために多くの教会の修復・建設が必要という大建設ラッシュの時期にカラヴァッジョはローマを訪れたことになります。

そして、大聖年の前年、1599年にローマにあるサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会の室内画を依頼され、完成させたこの絵が新しい時代への扉を開いた記念碑のような作品になったのです!!

それがこの絵。

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<聖マタイの召命 ※この作品は今展示会の出品作ではありません>

この作品は「聖マタイの召命」という絵です。

いろいろ語り始めるととても長くなる絵画なので、また別の機会に。

とりあえず、この光と闇の使い方がとても劇的で、まるでスポットライトを浴びた舞台を見ているような気持になりませんか?

光と闇の表現は過去にもありましたが、ここまで心に突き刺さるようなドラマティックな絵画はありませんでした。

そして、テレビもインターネットもない当時、うわさに聞くこの素晴らしい絵画を一目見ようとローマ中の人がこの教会に訪れ・・・

「ズキューーーーーーーン!!Σ(゚Д゚)」

・・・と心打たれたわけです。

もちろん光と闇だけではなくて、描かれている人間も本当にリアルで、まさにこの奇跡の瞬間が目の前で起こっているかのような効果があることも欠かせません。

ちなみにこの絵から幕開けとなった時代のことを、一般的に「バロック」と呼ばれます。

まさに、時代を変えてしまうほどの影響だったわけですね。

・・・

さて、そうしてローマで一躍時の人になったカラヴァッジョですが、仕事は順調だったものの、持ち前のヤ〇ザな性格が災いし、いつも警察のお世話になっていました。

暴行傷害・武器不法所持・警官侮辱・名誉棄損・器物損壊・殺人未遂・・・

これらすべては、当時の警察の記録に残っているカラヴァッジョの犯した罪です。

そして1606年、とうとう対立していたグループの一人を殺害してしまい、死刑宣告が出され、ローマからナポリに逃亡を図りました。

絵を描いては売って逃亡資金にし、また描いては売って逃げ・・・

以降、マルタ、シチリアと流浪を続けながら逃げ回る日々。そしてそんな日々に疲れたのか、恩赦(罪を許してもらうこと)を求めてローマに向かう途中熱病に倒れ、急逝。

1610年、38歳のあっけない最後を遂げたのでした。

・・・

では、好きすぎて長くなっちゃいましたが、

そんな「腕は天才、性格ヤ〇ザ」な彼の今展示会出品作品をいくつかご紹介させていただきますね♪

リュート弾き

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この絵は25歳ごろの作品で、ローマにて才能を見出してくれたデルモンテ枢機卿の館に住んでいた頃の作品のようです。モデルは同じく館に住んでいたスペイン人の歌手で、あどけなさの残る顔の彼が訴えかけるようにこちらを見ています。

この絵は人物の表現も素晴らしいですが、注目は楽器や楽譜、花、花瓶などの静物!

とっても緻密なのがわかりますでしょうか??

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リュートには1本1本細い弦が貼られており、前に置いた楽譜はきれいに音符が並べられ、きちんと演奏できるほどに細かく書かれています。

花瓶に入れられた花は、今入れられたばかりなのか花びらにはまだ水滴がついており、花瓶にはこの部屋の窓らしき光が反射しています・・・。

当時、静物画は人物画に対して格下に見られていました。

しかし、カラヴァッジョは、

優れた花の絵を描くには人物画を描くのと同じほどの手間を要する

と、静物も人物画と同格であるべきという趣旨の発言を残しています。

この、静物画のリアリティーが画面全体を引き締め、迫真性に突き進んでいくカラヴァッジョの後ろ盾になったことは間違いありません!

カラヴァッジョの絵を鑑賞するときには、その細部描写の美しさもお楽しみください♪

ホロフェルネスの首を斬るユディト

実は今回の展示会ではひとつ残念なことが・・・

私の大好きな「ホロフェルネスの首を斬るユディト」がイタリア側の手続き上の問題などにより、展示できなくなったそうです・・・シクシク( ノД`)

ちなみにこれです。

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<ホロフェルネスの首を斬るユディト ※今回の展示はなくなったようです・・・>

ぐえ~~~~~~~~~~!!

と、今にも断末魔が聞こえてきそうな作品ですよね。

これは旧約聖書の中に出てくる、自国を守るために敵将ホロフェルネスの寝室に忍び込み首を斬るユディトのクライマックスのシーンです。

このホロフェルネスの苦しそうな顔に吹きだす血しぶき、怪訝そうに首を斬るユディト、前掛けを握りしめる野次馬のおばちゃん(笑)

この迫真性、私の中では

「これぞカラヴァジョ!!」

という作品だったんですけどね・・・

今展示のこれ以外の作品は比較的静かなものが多いので、1枚くらいこの残虐性を前面にアピールした作品があるとバランスが取れるのになぁと思ったんですが・・・残念!(迫真の残虐性もカラヴァッジョの特徴のひとつです)

まぁ来ないものは仕方がない!

次の作品へGO!!

※なお、同じく予定されていた「瞑想するアッシジの聖フランチェスコ」も展示されていません。

法悦のマグダラのマリア

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「マグダラのマリア」とは新約聖書の中に出てくる人物で、元娼婦でしたがイエスに許しを得て女性信者となり、その後イエスの磔刑や復活などに立ち会ったとても大切な登場人物のうちの一人です。

映画「ダビンチ・コード」ではイエスが実はマグダラのマリアと結婚していた!!という設定が使われていましたね。(覚えてますか~?)

さて、この作品は「法悦のマグダラのマリア」です。

「法悦」とは神の教えに触れ、喜びを受けることをいい、今まさに法悦状態のマリアが天を見上げている場面を描いています。

しかし「喜びを受けている」割には少し悲しそうな・・・。唇は青白く輝き、目は薄く開き、一筋の涙を流す・・・

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「マグダラのマリア」という彼女の法悦には、そんな娼婦であった罪深い彼女を救ってくれるような慈悲深い「法悦」の表情が選ばれたんでしょうね。

ちなみに!

マリアの前に何かがあるの、わかりますでしょうか?

あからさまに描かないところがカラヴァッジョのニクイところですが、マリアの前に「いばらの冠のかかった十字架」が宙に浮いているのです!!

・・・

・・・

わかんないって?

ではちょっと明るさを変えて見てみましょう。

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おわかりいただけますか??

空からの赤い光の下には大きな十字架が、そしてその十字架の前でマリアは法悦に浸っているわけです!

また、マリアのひじの下には骸骨が・・・。

気づかないところにメッセージを込めるのも得意なカラヴァッジョ先生でした。

洗礼者聖ヨハネ

今回最後の作品はこちら。「洗礼者聖ヨハネ」です。

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「洗礼者ヨハネ」とは聖母マリアの親戚関係にあたる女性エリザベトと夫ザカリアの間に、イエスと同じく神様のお告げによって産まれた神様の子供です。

彼の役割はイエスが現れるまでに道を整えておくこと(人々に改心を促すこと)と、現れたイエスに洗礼を与えること。また、イエス亡きあとも布教活動に勤しみ殉教した、キリスト教ではとても重要な登場人物の一人です。

この作品と先ほどの「法悦のマグダラのマリア」は、カラヴァッジョが亡くなるときまで所持していた3枚のうちの2枚といわれており、いずれも晩年の作品です。(といっても38歳なんだけど)

通常ヨハネは幼子の姿で描かれるか、青年としてイエスに洗礼を与えるシーンで描かれるのですが、このヨハネは少し中途半端。

この絵で気になるのはヨハネの表情。

・・・

聖人らしく私たちを導いてくれるような視線でなく、少しくたびれたようにも見える表情な気がしませんか・・・?

この頃のカラヴァッジョは殺人を犯した後、イタリア中を逃げ回り、疲れ果ててローマに恩赦を求めに行こうとしているところです。

そんな自身の疲れ果てた内面がキャンバスに現れてしまったのかもしれませんね・・・。

※この絵の人物は「洗礼者ヨハネ」ではないという説もあります。

カラヴァッジョ展、行くっきゃない!!

さて、いかがでしたでしょうか?

私の熱いカラヴァッジョ愛は伝わりましたでしょうか?(笑)

実際の展示会場には、カラヴァッジョと同じ時代を生きた画家、影響を受けた・与えた画家などの作品も同時に展示されており、彼の生きた時代ごと知ることができるように構成されています!

今から約400年前、バロック時代の先駆けとなった一人の画家・・・

この男、

天才にしてヤ〇ザ・・・!!

ヤ〇ザにして天才・・・!!

展示は2月16日(日)までとなっておりますのでこの機会、どうぞお見逃しなく!!

あべのハルカス美術館 基本情報

  • 住所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
  • 営業時間:火~金:10:00~20:00/月土日祝:10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで
  • 料金:一般:1,600円(1,400円)、大高生:1,200円(1,000円)、小中生:600円(400円)
    ※()内は前売り・団体料金
  • 休館日:一部の月曜日、展示替期間、年末年始
  • 交通アクセス:近鉄「大阪阿部野橋」駅 西改札 JR「天王寺」駅 中央改札 地下鉄御堂筋線「天王寺」駅 西改札 地下鉄谷町線「天王寺」駅 南西/南東改札 阪堺上町線「天王寺駅前」駅 よりすぐ
  • 公式HP:https://www.aham.jp/

  • 山上やすおのホームページはこちら

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山上やすお

国内外の添乗員として1年の半分ほどを現地で過ごすかたわら、日本にいるときには各地で美術のカルチャー講師をしています。博物館学芸員資格保有。「旅に美術は欠かせない!」の信念のもと、美術の見方、楽しみ方を記事にしていきます。

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