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農業支援ツアー第三弾「庄内柿」収穫体験編 取材レポート/山形県鶴岡市
こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。山形県鶴岡市主催で農業体験プログラムを活用した「庄内柿」農業支援ツアーが実施されました。日本で唯一"ユネスコ食文化創造都市"に認定された鶴岡市ではどのような農業が営まれているのか、ツアー同行取材の様子をレポートします。
目次
- 鶴岡市で農業支援ツアーが行われた背景
- 農業支援ツアーの内容
- ツアー中滞在するホテルは
- 農業体験前の説明会
- 農園までの送迎は?
- 庄内柿の収穫はこのようにして行われます
- 庄内柿のもぎ方
- お昼ごはんは?
- 吊るし柿はこうして作られる
- 「産直あぐり」でお土産も買える
- 農業体験ツアーに参加したお客さんの声
- 農業体験ツアーの成果(取材後の感想)
鶴岡市で農業支援ツアーが行われた背景
山形県鶴岡市の農家では、日本の他の地方都市とたがわず、高齢化や農業就労者減少により人手不足が続いており、特に収穫のシーズンには多くの労働力を必要としています。一方、旅行はユーザーニーズの多様化により"コト消費の旅"の人気が高まっており、今回は農業と旅行双方のニーズを結びつけるという趣旨で企画されました。
2019年7月には鶴岡市と阪急交通社が「農業観光連携事業」に関する協定を締結しました。今回のツアーはその中の取組みのひとつで、阪急交通社にとっては2018年に山形県天童市で実施された「さくらんぼ」「ラ・フランス」に続く農業体験ツアー第3弾となります。ツアーは6日間で、庄内柿の収穫や葉摘み、選別、運搬、梱包作業などの手伝いをしながら農業を支援します。ツアーの参加者は東京を始めとるす首都圏からの60歳代を中心としたアクティブシニア層の方々でした。
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農業支援ツアーの内容
こちらがツアーの募集チラシです。募集開始後、あっと言う間に完売したそうです。
農業体験ツアー参加者は首都圏からJR(新幹線&特急)で新潟を経由して山形県鶴岡市まで移動します。
ツアー中滞在するホテルは
今回のツアー中に滞在するホテルはホテルルートイン鶴岡駅前。鶴岡駅から80m(徒歩1分)の近さです。ホテル周辺にはコンビニ、スーパー、飲食店等が徒歩5分圏内にあって便利でした。
ホテルルートインは清掃が行き届いており、清潔で明るく居心地が良さそうです。
シングルルームのお部屋がこちらです。今回の参加者の内、半数以上がおひとり様参加でした。相部屋よりも一人部屋の方がくつろげますね。
ホテルルートインはビジネスホテルとしては部屋もベッドもゆったりしていたように感じました。
こちらがホテル内のサービス案内です。
コインランドリー(1回200円)もあり、今回のツアーのように5連泊し農業で汗をかく人にとってはありがたいです。そして1階には大浴場も完備!連泊して毎日ユニットバスでの入浴では味気ないですからね。テレビもwowwowが無料で観られました。朝食も豪華とまではいいませんが、バイキング方式で充分な量が提供されていました。ホテルルートイン鶴岡駅前。とても快適なホテルでした。
ロビーには1杯立ての本格コーヒー無料サービス(時間制限あり)。至れり尽くせりです。
農業体験前の説明会
ツアー一日目14:21に鶴岡駅に到着したお客さま。ホテルチェックインは15時~の為、駅周辺のお土産物屋さんなどを散策した後、チェックイン。お風呂に入ったり、休憩したりそれぞれの時間を過ごされた後、17時から明日からの農作業体験についてのブリーフィング(説明会)がホテル1階のレストランで開催されました。
お世話になる農家の方々もホテルまで来られ、ツアー参加者と初顔合わせです。初対面でやや緊張気味か・・・という心配をよそに皆さん打ちとけて終始和やかなムードでした。笑いも沸き起こっていました。今回のツアーの参加者は20名で数名づつに分かれて6軒の農家が受け入れました。(農園により2名~8名に分かれて農作業)
農園までの送迎は?
ツアー2日目。いよいよ農作業開始です。参加者は準備を整えて朝8時にロビーに集合します。みなさんやる気マンマンです。
ホテルから農園までは庄交ハイヤーのワンボックス車3台に分乗して向かいます。
庄交ハイヤーの運転手さん、帽子が昭和レトロで風情があっていい感じでした。
この日は快晴で、朝の気温15度位、絶好の農作業日和でした。庄内平野を快走すると鮮やかな山並みが青い空に映えます。
6か所の農園はそれぞれに特色があります。たとえばこんなところや・・・
こんなところも・・・
さすが、農業の土地、鶴岡。自然が豊かです。気持ちよく農作業ができそうです。
ホテルから農園まで車で約30分で到着します。さっそく農作業の準備にかかります。
庄内柿の収穫はこのようにして行われます
農園のご主人が、農作業初めての人にでもわかりやすく説明していました。が!説明は丁寧で親切なのですが、首都圏の方々には庄内弁がなかなか聞き取れないというハプニングも(笑)
木になっている柿の実をすべて収穫すればよいというわけではないようです。この農園ではまず、傷がついていたり、形がいびつだったり商品にならない柿の実をもぐことから始まりました。そういう実を除去しないままにしておくと、他の実(商品になる)への栄養が行きわたらなくなる為、早めに排除した方が良いのだそうです。いわゆる間引きですね。収穫する実とそうでない実の見極め方などレクチャーを受けます。
柿の実の選別基準は厳格に定められているのだそうです。
木の上の方になっている実は脚立を使って収穫します。
柿は次々に収穫されていきます。
柿というのは、実はとてもデリケートな果物だそうで収穫した実はひとつづつ優しくカゴの中に置かれていきます。収穫した袋から運搬カゴへごろごろと流し入れたりしてはだめなんだそうです。柿の実を指で強く押したりするのもだめ。その時はどうということもなくても翌日変色したり、傷んだりしてしまうそうです。柿の実についている白い果粉もとらずにそのままにしておくのだそうです。「生玉子を触るように優しく扱ってくださいね」と農家のご主人佐藤さん。果物は優しく繊細な取扱いが大切なんですね。
庄内柿のもぎ方
柿の実はどのように収穫するのでしょうか。
絶対にやってはいけないのは、柿の実の軸(枝と実が繋がっている部分)をグルグルとねじって取ること。これは枝を痛めてしまうそうです。ではどうするかというと、ハサミで切り取るか、柿の実の重みで曲がっている軸を逆方向に曲げるとクキッと取れるようです。何度かやっていると簡単に出来るようになるそうです。ツアー参加者の皆さん、作業初日からコツをつかんでサクサクと順調に収穫していました。
そしてなんと午後には機械を操縦して高いところの実を収穫する方も出てきました。左右の足だけで操作する機械で、実際にやってみればすぐ慣れるのだそうです。農業体験というより本格的な農作業ですね。
農園によっては、柿以外の果物の作業をする所もありました。
こちらはワイン製造の過程で、ぶどうの実を足でつぶしたり、大鍋でかき混ぜたりする作業です。
お昼ごはんは?
農作業の間に、1時間の昼休憩を取ります。(それ以外にもトイレや小休憩はその都度取られます。)さてお楽しみのお昼のお弁当はどんなのかというと・・・
阪急交通社が以前天童で実施したツアーの時、アンケートでお弁当に「揚げ物が多くて胃がもたれる」という声をいただいたそうで、その声に耳を傾け、お弁当もレベルアップしているそうです。実際にお弁当を食べたお客さんの話ではとっても美味しかったそうですよ。(お弁当の副菜は日によって変わるそうです。)
お弁当を食べている風景です。
午後の休憩では柿を食べながら団欒のひととき。
吊るし柿はこうして作られる
こどもの頃、田舎のおばあちゃんの家に行くと軒先に吊るし柿がぶら下がっていました。個人の家で吊るし柿を作る時はそれで良いのでしょうが、農家が作る場合、大量の柿を吊るさなけばいけません。今回の農作業体験とは直接関係ありませんが、農家の方のご厚意で吊るし柿を作る様子を見せていただきました。それがこちらです。
ん?ビニールハウス。いちご?ハウスの中に入ってみると・・・
じゃじゃーん。すごい!きれいに均一にぶら下げて干されている。まるで芸術品のようですね。横から大きな扇風機で風を当てて乾燥させていました。
「産直あぐり」でお土産も買える
ツアーの最終日、農作業の帰りに「道の駅 あぐりの里」に寄って産直の農作物を買うことも出来るそうです。こちらがその「産直あぐり」です。やはりツアーですからお土産を買う時間を取れるのは嬉しいですね。
「産直あぐり」の内部の様子です。訪れた時は15時過ぎでしたので、売り切れてしまった農産物もあり、品揃えも少なくなっていたのが残念でした。
農業体験ツアーに参加したお客さんの声
取材は1~2日めでしたが、ツアー終了後にとったアンケートには次のような参加者の声がありました。
「柿がこれほど手間ひまかけて収穫されていることを知り、農家の方々の苦労に思いを寄せました。」「作業でわからないことはその都度親切丁寧に教えてもらえてうれしかった」「これまで柿は産地を気にせず買っていましたが、これからは庄内柿を見つけて買いたいと思った」「農作業だけだと単調だったかもしれないがツアーの中日に自由行動日があり、観光もできたのでよかった」「お昼のお弁当も日替わりで飽きることなく食べられた」「また農業支援ツアーがあれば参加したい」「だだちゃ豆の季節にはまた手伝いに来たい」
地元テレビ局、新聞社も合計6社取材に来ており、地元鶴岡での注目度も大きかったようです。
農業体験ツアーの成果(取材後の感想)
阪急交通社企画の農業体験ツアーは2018年春の「さくらんぼ」、秋の「ラ・フランス」に続いて3度めです。これまで累計200名を超える方が参加されたそうです。
そしてその後もリピーターとなって農業体験ツアーに参加するお客さまもいらっしゃるそうですが、ツアーは限られた期間しか催行されません。過去の参加者の中には、直接農園に連絡をとる方もいらっしゃるそうです。そして人手が足りない時期を確認し、自身の足(車や列車)を使って農業の手伝いを来られる方も多くいらっしゃるようです。その方々は農家の宿舎に寝泊まりし、農作業に精を出されるそうです。農業体験ツアーではなく、本当の意味での農作業ですね。さらに自分のお友だちに声をかけて連れだってくる方も出ているそうです。これはすごいことですよね。
農業体験をされた方の中には、農業を手伝うことによって得られるやりがい、自分が人の役にたっているという喜び、自己実現といった感情が生まれているのではないでしょうか。そういった人たちが増えることで日本の農業を救う一翼を担うことが出来ているとしたら、この農作業体験ツアーという企画はとても意義深いものだと言えると思います。農業体験ツアーがきっかけとなり、農業に興味を持つ人が増え、農業の大変さを知り、農作物のありがたさを知り、その文化を未来へ継承していく人や応援する人が増える。それはとても素晴らしいことですね。
ツアー中の参加者の方々の雰囲気はとても良いものでした。旅行会社としても単なる物見遊山型ではなく、コト消費として旅行を提案する新しいカタチです。企画者、受け入れ者、参加者にとってそれぞれ価値のある試みだと思います。農業体験ツアーに参加された方が仰っていました「次の企画はいつ?何を収穫するの?」と。
今回の試みは鶴岡市役所も力を入れており、企画、調整、設営、トイレ場所の確保、フォローすべてにおいてバックアップされていました。日本の農業の未来を一所懸命に考えておられる姿が見られ、農作業の場にも市役所から多くの職員さんが来られていました。この取組みが日本全国に広がっていけば良いですね。
最後に農家の佐藤さんの笑顔をお届けしましょう。今回はこういう農家の方々が迎え入れてくださいました。
鶴岡市の観光の見どころはこちらの記事をご覧ください。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。