Bluetoothロゴを生んだデンマーク・ヴァイキング遺跡はここ!

ワイヤレス通信技術Bluetooth(ブルートゥース)が確立されて、早いものですでに20年あまり。スマホにイヤホン、はたまたマウスと、日常的に利用することも多く、名前もロゴもすっかり馴染み深いものになりました。

でも考えてみれば、あれ?Bluetoothって「青い歯」!?それに青地に白のロゴはいったい何の形?と、知らないことだらけ。

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<Bluetoothロゴ>

実は、その疑問への答えを、私はデンマークのイェリング村で見つけました。

目次

世界遺産の石碑と墳墓と教会

ユトランド半島中ほどに位置するイェリングは、今でこそ、人口3,500人に満たない小さな村ですが、その昔1000年以上前、いわゆるヴァイキング時代には、デンマーク王国の中心でした。

10世紀前半から半ばにかけデンマークを治めたのはゴーム老王。イェリング王権の開祖で、今のデンマーク西部一帯を支配した人物です。ゴーム老王を継いだのが、息子のハーラル青歯王で、デンマークとノルウェーの無血統合に成功したほか、この地域にキリスト教を初めて受け入れたことで知られています。

現在イェリングには、両王がそれぞれ建立した石碑(950~970)と、同じく10世紀ごろ作られたとみられる墳墓二つ、また、デンマーク最初の教会も残っており、これらすべてが世界遺産の指定を受けています。

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<イェリングの石碑、左がハーラル王の石碑、右がゴーム王の石碑、写真© Roberto Fortuna (クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示-継承2.0一般) https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0/

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<ハーラルの石碑に刻まれたキリスト像、写真© Roberto Fortuna (クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示-継承2.0一般) https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0/

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<ゴーム王の子孫たちの集会2018年、後ろに見えるのが墳墓、写真© Kongernes Jelling>

最近の発掘調査では、この遺跡群を大きく囲む柵の跡がみつかり、2013年にはその跡に白い杭が打たれました。柵の全長は1,440メートルもあり、柵内はサッカー場が20も入る広さです。

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<柵跡に立てられた杭、写真© Frame & Work>

ヴァイキング王の拠点

小高い丘となっている墳墓の上や、隣接するヴィジターセンター「ヴァイキング王の拠点(Kongernes Jelling)」のテラスから見ると、白い杭の描くラインや、石造りの船型の跡などが、よく見えます。

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<空からみたイェリング2017年、白い杭に囲まれた地域の真ん中にあるのが教会。その手前と向こう側に墳墓。教会の左に見える白い建物がヴィジターセンター、写真© Finn Byrum>

この「ヴァイキング王の拠点」センターには、無料のミュージアムが入っていますが、その充実度はなかなかのものです。イェリング遺跡を中心に据え、デンマークの歴史やヴァイキングの民俗を、実に分かりやすく、インタラクティブに提示しています。すべて英語で鑑賞できるのも観光客にはうれしいところです。

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<光と影と音で語る神話の展示、写真© ART+COM>

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<展示室の様子、写真© ART+COM>

ルーン文字と謎解き

ゴーム老王とハーラル青歯王が建てた石碑は、上述の教会の入り口近くに置かれています。ゴームの石碑にはルーン文字が刻まれていて、そこに見られる「デンマーク」という名は最古のものです。ゴームの石碑より大きなハーラルの石碑は、三角錐の形をしており、3面のうち1面にルーン文字の文、あとの2面には図が描かれています。図のひとつはスカンジナヴィア最古のキリスト像です。

おそらくここまで読めば、最初に提起したBluetooth名の起源が想像できる方も多いのではないでしょうか。

そう、Bluetoothの起源は、このハーラル青歯王のあだ名の英語訳から取られたものなのです。命名者はインテルの技術者ジム・カーダック(Jim Kardach)氏。北欧統合を成し遂げたハーラル王にあやかって、インテル、ノキア、エリクソン三社が協力し、近距離無線技術の統一規格を作ろうとするプロジェクトをBluetooth(青歯)と名付けたのが始まりです。

ではBluetoothのロゴはいかにして生まれたのか?

実はこれは、ハーラル(Harald)のHにあたるルーン文字「ᚼ」とブルートゥース(Bluetooth)のBにあたるルーン文字「ᛒ」を組み合わせたものなのです。

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イェリングのヴィジターセンターでこの事実を知ったときは、思わず我が目を疑い、2度3度と読み直してしまいました。最先端ともいえる技術名とそのロゴが、ヴァイキング時代の遺産から生まれたなんて、誰が想像できたでしょう?もし他の人の口から聞いていたら、冗談だと思ったに違いありません。

イェリングまでは、首都コペンハーゲンから列車で3時間半。駅から遺跡までは徒歩わずか5分の距離です。遺跡は屋外にあり、常時オープンしていますし、見学はすべて無料です。暗くなっても石碑はライトアップされるので、模様もしっかり見えるはずです。

静かな村の静かな緑地帯に広がるヴァイキングの夢の跡、ぜひ訪れてみてください。


ヴィジターセンター「ヴァイキング王の拠点」

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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