たびこふれ

寅さんの人情に触れ、昭和レトロな喫茶店「セピア」で憩う、 とっておきの柴又散歩

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記事投稿日:2018/07/30
最終更新日:2018/07/31

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わたくし、この旅ブログ「たびこふれ」の縁(えにし)で生まれて初めて柴又の地を踏んで以来、毎月、この街を歩きまわるほど惚れこんでいます。

初取材にて、たまたま駅前で出会えたボランティアガイドの狩野さんに、寅さんそのものの芸人、野口寅次郎さんと引き合わせてもらったのも、わたくしにも何かの役割があるからと思いこんでいます。

そんなわけで三度目のご案内となりますが、寅さんのお節介なほどの優しさを体現している二人に、心安らぐ、とっておきの楽園「セピア」へと導いてもらいました。

<目次>

野口寅次郎さんプロフィール

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物真似タレントの野口寅次郎さん。68歳、柴又在住。1996年8月4日に寅さんが亡くなった日より22年間、毎月10日の「寅さんの日」と第2・第4土曜日の11時くらいから京成柴又駅前、帝釈天参道、帝釈天、山本亭、寅さん記念館などを練り歩き、寅さんになりきって観光客と触れ合う。山田洋次監督から「公認」のお墨付きを頂いている。「浅草フランス座演劇場東洋館」で奇数月に出演。街じゅうにいる「さくら」も心配しているから「そろそろおいらもお嫁さんをもらおうかな」と婚活中。

駅前の寅さんと再会

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京成柴又駅前で毎月10日と毎週金曜の10時30分くらいから正午にかけてマニアックな寅さん情報を無償提供しながら、寅さんファンの観光客をおもてなししている狩野壽初郎さん、73歳。体調によりお休みすることもある。Facebookは「狩野壽初郎」で検索を。

「フーテン」の寅さんにちなんだ毎月10日の「寅さんの日」に柴又を初訪問したのは昨秋のこと(「寅さんの日に、寅さんに再会。柴又を歩いて心温まる」/2017年11月配信記事を参照)。土地勘の無い私に、寅さんゆかりの場所をていねいに教えてくれたのが、京成柴又駅前で案内をしている狩野壽初郎さん。

取材の趣旨を伝えると、柴又でおこなわれた映画『男はつらいよ』の撮影情報や逸話が詳細にびっしりと書きこまれた私家版の冊子『みんなの寅さんin柴又』を譲ってくれたうえに、寅さん芸人の野口寅次郎さんに連絡を取り、参道で引き合わせてくれたのです。初対面の私にこんなにも親切にしてくれる人がいる。お節介な寅さんを彷彿とさせる男性との出会いに感動し、その後、SNSを通じて親交を深めていったのでした。

葛飾区高砂に生まれ育った狩野さんは義理堅く、寅さんと柴又との関連情報を継続して教えてくれたのですが、しばしば話題になる柴又の昭和レトロ喫茶「セピア」の存在が気になり、店を営むママさんを紹介してもらいました。

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狩野さんは希望者には『みんなの寅さんin柴又』を無償で差し上げている。制作費は自分の持ち出し。「御代はお客様の笑顔です」。見ず知らずの人に声を掛けられても、観光客はすぐに心を開いて応じる。これぞ寅さんとのえにしが深い柴又の魔法。

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記念写真に応じるおもてなし。女性には「よっ、さくら、元気かい?」と話しかける野口さん。掛け声はもちろん「ハイ、バター!」(寅さんの決めセリフ)

少女漫画の喫茶店を再現した喫茶店「セピア」

寅さんが憑依したような二人がご案内、おもてなしのお役目を終えたあと、かなりの頻度で身体を休めに向かう場所が、帝釈天近くの昭和レトロ喫茶「セピア」。開店して5年目の店ですが、内外観とも昭和カラー一色で彩られています。

ママは長谷沢貴世子さんで、陸奥(むつ)A子さんの『ミルキー・セピア物語』(昭和52年/1977年に集英社の「りぼん」に掲載)に登場した身も心も温まる魔法の飲み物「ミルキー・セピア」が店名の由来だそうです。子供のときに見ていた漫画が大好きで、女の子どうしでかわいい喫茶店でおしゃべりしたり、デートをしたり、漫画で憧れた世界を再現したかったと長谷沢さん。いつかはこういう喫茶店を開きたいと願い続け、やっと夢がかなったと話します。

店内には陸奥さんの少女漫画はもちろん、『キャンディ・キャンディ』(1975~1979年に講談社の「なかよし」に掲載)のグッズなど、1960~1970 年代に乙女心をときめかしたものが所狭しと飾られています。

訪ねる前、少女漫画に関心のない私は、果たしてこのブログ記事のテーマである「主観をもって佳さをレポート」することができるか一抹の不安がありました。ところが、オレンジ色を主にした、ほんわりと懐かしい昭和のムードのなかで憩い、長谷沢さんとお話ししているうちに、なんともいえない心地よさに包まれていったのです。長谷沢さんはハンパない「昭和愛好家」とお見受けしますが、自身の夢中、熱中を押し付けることは決してありません。求められるまでは自分から出しゃばらない長谷沢さんの柔和な人柄、ディスプレイのセンスに感心しました。

野口さんはこの喫茶店を「柴又のなかのさくらの家」と表現します。なるほど、控えめで穏やかな、さくらの人物像が長谷沢さんとぴたりと重なるように思え、心から合点がいったのでした。

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帝釈天参道から脇にそれた街道沿いの店舗。観光地の賑わいから少し距離を置いている。

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おもてなしを終えて「セピア」店内でくつろぐ野口さん。心安らぐたいせつな場所なのだ

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葛飾区出身のセピアのママ、長谷沢貴世子さん。寅さん映画は家族で観に行ったし、帝釈天には一家でお参りしてきたという。『男はつらいよ』には第38作と第39作にエキストラで出演した。

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自身のコレクションに加え、リサイクルショップなどで地道に収集した昭和グッズを壁や棚にディスプレイ。きれいに、たいせつに保存しながらの飾りかたに長谷沢さんの性格が表れている。ひとつひとつのものへの愛情の深さが伝わり心打たれる。

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昭和40年代に人気を博した人形「チャ―ミーちゃん」。葛飾区立石の児玉産業TOY株式会社が現在も製造。葛飾つながりで「セピア」でも販売している

昭和にタイムトリップ

「セピア」は昭和の木造家屋を店舗に活用。私は昭和40年(1965年)生まれですが、子供のころはこんな感じの友だちの家によく遊びに行ったなぁと懐かしくなります。その感慨が深まったのは喫茶コーナーの奥や2階の部屋に通されたとき。昭和の生活ぶりを再現した部屋には古い家電や照明、家具、調度品が配置され、これあったなぁと、いちいち目が留まります。そうしたものにリアルタイムで日常的に触れていた私は瞬時に小学生時代にタイムトリップ。淡い思い出が蘇り、嬉しい気持ちになりました。乙女ちっくな少女漫画のかわいい世界、上昇機運に乗っていた70年代のカラフルな世界。ここには楽しい昭和が満載です。

「若い人に昭和のよい雰囲気を見て欲しい、興味を持ってもらいたい。そして、楽しかった!と笑顔になってもらいたいです」と長谷沢さん。野口さんと狩野さんとはおもてなしのスタイルは違えども、昭和をキーワードにして、若い人にも柴又に来てもらいたいと願う「さくらさん」はやはり寅さんのごとく、柴又を愛してやまない方なのでした。

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洋間風の部屋。写真展などのギャラリースペースとして利用可。

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昭和の家電コーナー。

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シックな応接間は時間貸しのスペース。子供どうしの侵入を許されなかった家の聖域に、大人になった友だちどうして集まって、当時の憧れを共感し合うなんて体験ができる。

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小学・中学生のときの子供部屋をイメージ。

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子供部屋に置かれたブラウン管テレビ。液晶テレビしか知らない若い子がこれを見て「電子レンジですか?」と尋ねてきたそう。

昭和のおいしさを満喫できるメニュー

「セピア」が供するのは、昭和の楽しい空気感だけではありません。軽食も飲み物も昭和レトロなときめきに心浮かれるメニューが用意されています。軽食で人気なのは「ナポリタン」と「オムライス」。それぞれに懐かしの「タコさんウインナー」が載っているのは感激ものです。亡き母親がつくってくれたお弁当を思い出して、ちょっとしんみりもしてしまいました。料理の腕も確かなのでしょう。昔ながらの洋食をきちんとなぞった味わいは、まさに昭和のおいしさでした。

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「ナポリタン」850円。喫茶店の洋食といえば銀皿。やっぱり、これでなくちゃ!

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クレープ状の卵に包まれた昭和チックな正統派「オムライス」950円

クリームソーダの名店

クリームソーダの専門書籍が出版されたり、昭和の純喫茶をフォーカスするテレビ番組でクリームソーダが取り上げられたり、この昭和レトロな飲み物が今、脚光を浴びつつあると、長谷沢さんに教わりました。純喫茶定番のメニューですから、当然のように「セピア」でも用意してあります。しかも、一般的なメロンソーダ以外にも、いちご、ブルーハワイ、グレープ、レモン、ピーチ、オレンジとなんと7種から色を選べるというから驚きです。物集めのみならず、すべてにおいて徹底して昭和を追究されているのです。全国のクリームソーダ愛好家の皆さん、これを飲むだけでも「セピア」に足を運ぶ価値はありますよ!

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自家製の「昭和の固めプリン」とクリームソーダのセットが人気。1,000円。「セピア」の懐かしい軽食&ドリンクは、NHK BSの「cool japan 昭和レトロ(2018年8月5日放映)」で紹介。喫茶店研究家/エッセイストである難波里奈さんの近著「クリームソーダ純喫茶めぐり」(グラフィック社刊)では「セピア」のクリームソーダ全種を掲載。

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長谷沢さんが子供のころに憧れていた「チェリーボンボン」を添えた「ミルキー・セピア」700円。温かいミルクに少々のウイスキーを入れる、癒しの一杯。

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こちらは通常のクリームソーダに比して約1.5倍の容量がある、アルコール入りの「大人のクリームソーダ」900円。7色から選べて、これはブルーハワイ色。若いときは南国風のものに惹かれ、1960年代のハワイ物を集めていた長谷沢さん。その名残が伺える

昭和レトロ喫茶 セピア

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