たびこふれ

MADE IN USAの逸品ウエア&パックが、個人的に世界一の品揃えと崇敬する町田の古着店「バックストリート」

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記事投稿日:2018/06/13
最終更新日:2018/06/13

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かつてパタゴニアのウエアやグレゴリーのパック(バッグ)など北米アウトドアブランドの虜だった世代には感涙ものの古着店が「バックストリート」。機能的で丈夫で、独特の色合いも魅力的。当時の夢中を思い起こし、宝の山状態の空間で店主の深い知識に感嘆し、自分にとっての逸品を買う至福を満喫しました。

目次

1990年代、パタゴニアに夢中だった

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1990年代のパタゴニア製品カタログ。当時の製品を知ることができる貴重な資料で、「バックストリート」はパタゴニアが創業した1970年代のカタログも所持し、世界トップクラスの情報を蓄積している。

私は90年代はじめから2000年にかけて13年間、スキューバダイビングやシーカヤックの専門誌や書籍を制作するため、編集者として地球上の海をあちこち旅していました。過酷な取材行でまとうウエアや道具類を運ぶバッグには高い機能性を求め、おのずと選ぶのはパタゴニア製品ばかりでした。このメーカーの創始者イヴォン・シュイナードさんの「ウエアはファッションではなく、着る道具である」という言葉に心酔し、実際に使いこむほどに製品の高い品質への信頼を増し、美しい写真と含蓄あるメッセージ、ウイットに富んだ製品説明のテキストが載る新製品のカタログが届くやいなや、片っ端からさまざまなウエアやバッグをオーダーしていたのです。

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掲載された写真にも目が釘付けになった。よく見るとアンバサダー(商品開発にも携わるスペシャリスト)がパタゴニア製品をまとう。そのさりげなさが最高に格好よかった。

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多様な赤や青、紫。深い緑、目が醒めるマンゴー色など独創的な色と大胆な柄。1990年代のパタゴニアの製品はひと目で心をつかまれるインパクトとオリジナリティがあった。左ページの人物はハワイのレジェンド・サーファーにして尊敬を集めたライフガード、故レラ・サン。アンバサダーとして、アロハシャツ『パタロハ』づくりに関わっていた。

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大自然に分け入る旅に役立つ機能的で個性豊かなバッグにも魅せられ、いろいろ購入した。強い意思で環境保護を訴えるメッセージをカタログに掲載する体制は今も不変。

海の取材で重宝したシャツ

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90年代から愛用している『トロピカル・フィッシングシャツ』

海の遊びをめぐる旅を専門とする編集者時代、私にはとくにお気に入りのシャツがありました。フィッシング用に開発された『トロピカル・フィッシングシャツ(のちにトロピカル・フラッツシャツに改名)』という製品で、とびきり涼しく、速乾性に優れ、「服は道具」という考えを象徴する製品でした。水分を発散する肩と腰の部分のメッシュライナー、空気をとりこむ胸と背中の空気孔(ベンチレーションシステム)、そしてポリエステル65%&オーガニックコットン35%の薄手生地。亜熱帯、熱帯の島々をめぐったとき、旅の道具であるこのシャツが熱中症を防いでくれて、結果としてスムーズな取材を完遂できたのです。

製品ラインナップからこのシャツが消えたあと、高い速乾性と風通しのよさを謳う新製品が登場しては試してきましたが、このシャツにかなう性能の製品はいまだ現れていないと思っています。20数年着続けている『トロピカル・フィシングシャツ』の生地がだいぶ薄くなり、裸でいるより着ていた方が涼しい高性能を新たに手に入れられないかと夢みて、なにげなくウエブを検索したら、デッドストック(未使用品)の『トロピカル・フラッツシャツ』を扱う「バックストリート」を発見! 通販で注文して届いた実物を手にして、自分にとっての最高のシャツに再会できた悦びに浸っているうち、このような逸品を扱う店主に会いたくなりました。メールで想いを綴ると、取材の快諾を得ることができました。

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シーカヤッカー内田正洋さんが西表島から東京湾まで漕ぐ外洋航海時に着ていたのが『トロピカル・フィシングシャツ』。『シーカヤッカーズ・ハンドブック』(マリン企画)より

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2004年製『トロピカル・フラッツシャツ』デッドストック。奇跡の再会!

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汗をかいても、ホテルの洗面台で洗ってもすぐに乾くから旅のウエアとして最適で、長い旅も着替えを持たず、これ一着だけで過ごせる。パスポートや筆記用具、大きなサイズのiPhoneも楽々入る、大きな2つの胸ポケットも取材で重宝する。

そして町田の聖地へ

小田急線・町田駅から歩いて数分の場所にある「バックストリート」。なかに入ると壁と天井近くを埋め尽くすウエアとバッグなど膨大な数のアウトドア用アメリカ古着が視界を占めます。とくにパタゴニア製品のアイテムが目立ち、90年代に着ていた懐かしいウエアや破れるまで使いこんで今は手元にないバッグもストック。それらの状態の佳さと、お手頃な値段が付けられていることにテンションが一気に上がりました。

スタッフ自ら2カ月ごとに北米西海岸へ出向く仕入れの旅のほか、日本有数のバイヤーやコレクターの力も借りて集めたパタゴニア旧製品をはじめ、丈夫で機能的なアウトドアウエアやバッグ類は量だけでなく、質の高さにも心をつかまれました。ハードに使われがちなアウトドアウエアなのに、これほどの良品を見つけてくるのは相当な困難だろうと想像しつつ店主の布施さんに尋ねました。「私が入手したようなデッドストック品はまだ発掘できるんですか?」と。

「アウトドアものは遡れても5年、10年が限界といわれているんです。今後、90年代のデッドストックの発掘は100%無理と言いきってもいいくらい。今年の夏に2010年製の新品が欲しいと言われたら可能かもしれないけど、95年のデッドを見つけてと頼まれてもそれは物理的に無理です。限界があります」と布施さん。アウトドアの古着は現地でも安くないうえに着こまれたものが多いから状態も基本はよくない。

「探す手間はすごく大変なわりに、商売的にはおいしくない」と布施さんは苦笑いします。

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店にはウエブに載っていない古着もたくさん。できれば足を運んで買うことをお勧めする

90年代への愛着はノスタルジーなのか

それでも布施さんは心底、パタゴニアが好きだからこの仕事を継続しているのでしょう。パタゴニア・フリークを唸らせる品揃えからは旧製品への愛情と深い見識が伺えます。それで嬉しくなり、本心が口に出てしまいました。「90年代の製品は佳かったですね!」と。

すると布施さんは「それは齢相応の感覚でしょう。僕らが20歳のとき、40歳の人が着ているものを見て意味がわからなかったし、世代的に90年代の服で生きてきたから佳いと思っているだけで、今の物が完全に駄目だとは僕は言わない。佳いものかどうかの価値基準は世代ごとに違うし、正解はない」と諭すように答えました。

自分が慢心を抱いていたことに気づかされショックでしたが、「バックストリート」の商品群に心地よさを覚えるのはまぎれもないこと。郷愁だとしても、自分は90年代のパタゴニア製品が好きでたまらない。そんな絶対的な嗜好が軸にあることは幸運なのではと、自分の心に問いかけたのでした。

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2003年製の『パッカーウェアシャツ』。縮緬のオーガニックコットン生地は天然クーラーのごとく涼しい。この色と柄をボロボロになるまで愛用していた。スリムな現行品と違い、ゆったりした「リラックス・フィット」のフォルムも快適。野暮ったいといわれても楽ちんが一番なのだ。

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1995年製サニーストライプ柄の『ヘビーフランネルシャツ』を入手できた興奮が古着を見て蘇った。人気の柄はカタログが届いたら即購入しないと完売してしまったのだ。

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豊富な経験と知識を頼られて「バックストリート」はマニアックな特集記事に寄稿したり、稀少な旧製品を貸し出すこともたびたびあるそう。

MADE IN USAの価値

90年代、パタゴニア製品を買いあさっていたとき、なるべく北米製を選びたいと、カタログに記載されていた生産地名を気にしていました。労働力が安い国へ生産地が移行されつつある時期でしたが、まだMADE IN USAの製品も一部、選べた時代だったのです。自分がMADE IN USAに執心したのは偏見と先入観があったのかもしれません。はたしてMADE IN USAの優位性は語感のイメージだけだったのか、布施さんに質問しました。

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MADE IN USAのレアなバッグを多様にストック

「20歳の人から『MADE IN USAの何が良いの?』と聞かれても、アメリカでつくっているから良いとか抽象的な答えしかできない。それを言われたらという想いはあるけれど、若い子の言うことももっともだし、おじさんはおじさんで楽しめばいいんじゃないですか? ただ細かい話をするとアメリカでつくるのと、アジア生産のものではカバンにしてもフリースにしても全然違います。色を見れば歴然とした違いがわかる。商品企画をする本社の隣に工場があるのと、遠い工場に色を指定して頼むのとでは仕上がりが違う。中間色の色合いが伝わりにくいから、アジア生産のものはわかりやすい色ばかりになりましたね」。

現地では生地工場もくまなく視察したという布施さんの指摘は事実なのでしょう。北米人の大らかな感覚が生み出す微妙な中間色は、ヨーロッパのシックな色彩とは異質な魅力があります。北米製の生地特有の美点を聞いて、私が90年代から2000年代初頭のパタゴニア製品の虜になっていた理由がよくわかる気がしました。そういえば、2002年ごろから急速に購入意欲が萎えていったのも、生産地の移行にともなう色の変化が影響していたのかもしれません。

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MADE IN USA、2000年製造の「ヒップ・ボルト」

パタゴニアは90年代から2000年代初頭には優れたバッグも販売していました。布施さんによれば、2001年ごろまでのUSA製のクオリティがとても高かったといいます。こうした布施さんの佳いものを見極める見識に触れていると、おのずと布施さん個人のお気に入りを自分も使ってみたくなります。どの製品のどんな点が佳いのか断言する助言に背中を押されての買い物はじつに楽しいものです。

今回の取材で、私は布施さんの認める名品「ヒップ・ボルト」というバッグを購入しました。腰に巻きつける一般的なウエストとちがって、ネーミング通り、お尻のあたりに装着します。ぴったりフィットするよう、お尻に合わせてバッグ背面はカーブを描いたデザインがなされています。ところが、ウエストバッグのように腰に装着し、本来のパフォーマンスを十分に引き出せていないユーザーも多いそうです。そんな話にうなずきながら、深く正しい知識をもつ人から佳い物を買える。そんな店にめぐり合えた感激が湧き上がってきました。

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「ヒップ・ボルト」は内側にパスポートが収まるポケットが付いていて旅行に役立つ

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北米の仕入れ旅にも愛用していた布施さんは体正面の斜めに「ヒップ・ボルト」を位置させていた。さらに上からシャツをかぶせると、スリ対策の効果があるとか。

ついにパック界のロールスロイスを買う

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店に入ってすぐ右手にそびえるグレゴリー製パック群の壁。頂上に行くほど稀少さが増す。

最初の取材訪問では、大好きな90年代のパタゴニア製品について知らない裏話をたくさん聞くことができて、その日は深夜まで興奮。濃密な時間を思い起こしていたとき、「自分はカバン屋ですから・・・。グレゴリーが好きなんで」という布施さんの一言が頭に浮かんでは気になり始めました。自分の「好き」ばかりでなく、店主の本当の「好き」を聞き逃したのではないか。そんな疑念から、その週末に再び「バックストリート」を目指したのでした。

グレゴリー・マウンテン・プロダクツ(以下、グレゴリー)は1977年にサンディエゴで設立された、アウトドアでの使用を主としたパックを製造するメーカー。プレイボーイ誌に「パック界のロールスロイス」と賞賛されたくらい、性能も人気も、値段も高いMADE IN USAの逸品を世に送り出していました。パタゴニア製品を信奉していた1990年代も当然ながら存在は知ってはいましたが、縁がなく、これまで使う機会を逃してきたのです。

そこで、布施さんが確信をもって佳いと認める最上のパックを自分も体験したいと、定番製品のひとつで、旅でも日常でも使える容量の『デイパック』を買おうと決めたのでした。製造年、ロゴ、色、素材、パーツなどの違いで『デイパック』の値段はさまざま。そのバリエーションを雑誌の特集記事で確認してから店に向かいました。

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購入した「青文字タグ」の『デイパック』

まだグレゴリーのパックが北米でつくられていた時代(2014年以降はアジアで生産。香港のサムソナイトが会社を買収)の逸品を前に、どれにするかなかなか決められないでいたとき、私の予算で昔の雰囲気を味わいたいのならと布施さんは「青文字タグ」を選んではどうですか?と声を掛けてくれました。

青い文字のロゴマークが施されたのは1993年から1997年の4年間のみ。この時期の『デイパック』は1998年から現在にいたる「銀文字」タグの製品とくらべて荷物をたくさん入れた時のパック全体のフォルムが佳いのだとか。しかも、色味もMADE IN USAならではのもの。現行品との違いを知って、納得して1996年製の『デイパック』を購入したのです。

店内で背負ったとき、今まで所持してきたどのパックよりも、体に官能的なまでに心地よく、ぴったりとフィットする感覚にうっとりしました。人間工学を徹底的に探究し、「パックは背負うのではなく、着るもの」と唱えた創業者ウェイン・グレゴリーさんの独創が瞬時にして体感できるような気がしました。

私とこの『デイパック』との付き合いは始まったばかりですが、この先10年、20年と愛用していきたいし、長い使用に耐える良品と出合わせてくれた「バックストリート」に感謝したいと思います。この日以来、『デイパック』が日常の移動時間を心躍るものにしてくれています。近々に控えているイタリアの長期滞在で使うのが楽しみでしかたありません。

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MADE IN USAのグレゴリーを使っていることに私は優越感を抱く。しかし、年々その数は減ってきているという。内側の防水コーティングの部分は自然の劣化で剥離するのが避けられないが、物を快適に運ぶ機能は失われることはない。クリーニングと保管方法については購入時に尋ねてみよう

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肩まわりに沿うショルダーハーネスと、肩にかかる負担を分散・軽減するパーツ「スターナム・ストラップ」の仕様と工夫が秀逸で、極上のフィット感をもたらす。

バックストリート BACK STREET

住所:東京都町田市中町1-17-4 町田中町第一ビル2階
電話:
042-720-0355
営業時間:
13:00~20:00
定休日:
無休 ※不定休もあるので、事前に電話で確認がベター
HP :
http://backstreet.jp/

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最終更新日:2018/06/13

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