今まで飲んだことのないコーヒーに出会った。カフェーパウリスタの"ゲイシャ"

こんなコーヒー、飲んだことない!!!

こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。
先日、あるコーヒーに出会いました。私がこれまで飲んだことのない味でした。口の中の、上あごの辺りに軽やかで爽やかな甘さが広がり、スッと切れていく後味の良さ。コーヒー特有のエグみ、雑味がなく、苦みも軽めで上品な貴婦人のような味でした。

そのコーヒーの名前は"ゲイシャ"と言います。ゲイシャ? 実は"ゲイシャ"は日本語の"芸者"ではありません。そのお話は後ほどするとして、
このコーヒーを提供しているのが銀座の老舗カフェ「カフェーパウリスタ」です。

<目次>

コーヒーはどのように生産されてきたのか

コーヒーは木に実っているコーヒーの実を収穫し、その種の部分をコーヒーにするのですが、一番のコーヒー大国はブラジルです。ブラジルのコーヒー農園は奴隷を使ってコーヒーの豆を収穫していました。1863年、アメリカの南北戦争で黒人奴隷の解放が行われ、その25年後の1888年にブラジルも奴隷制度を廃止しました。コーヒー作りに奴隷を使えなくなったコーヒー農園は労働力不足に陥り、諸外国に移民を要請することにより労働力を補おうとしました。

移民としてブラジルにやって来たのはイタリア人やドイツ人が多かったそうですが、あまりの過酷さに農園を逃げ出す人が続出し、イタリア政府がブラジルへの移民を禁止したほど劣悪な労働環境だったようです。困ったブラジル政府はそれまでのヨーロッパだけでなくアジアまで移民要請を広げました。そうして1908年以降、日本からブラジルへの移民が始まりました。あのアントニオ猪木さんも家族でブラジルに渡った日本人のおひとりで、コーヒー農園では大変な苦労をなさったようです。

なぜ日本にコーヒーが広まるようになったのか

ブラジルは世界の50%シェアを占める圧倒的なコーヒー大国だったのですが、当時コーヒーの価格は相場で決められており、投機的な乱高下は日常茶飯事でした。ブラジル人にとって恐怖はコーヒー豆が豊作でダブつき、価格が暴落することでした。そこで農園は豆が大量に穫れた時も、市場に出回らせず、倉庫に眠らせておくといった生産調整を行っていました。ブラジル政府はその豆を世界にコーヒーを広める手段として有効活用できないかと考え、ある日本人に白羽の矢を立てました。それがカフェパウリスタの初代社長の水野 龍(りょう)氏です。

水野氏は日本からブラジルへの移民事業を手掛けた人物で、明治41年(1908年)第一回移民団として793名を載せた笠戸丸を出航させました。ブラジル政府は水野氏にコーヒー豆を年間1,000俵(1俵60kg)を提供し、日本でのコーヒー文化の普及を委ねました。そして銀座にカフェーパウリスタが開業したのは明治44年(1911年)のことでした。"パウリスタ"とはブラジルの都市「サンパウロ生まれの」とか「サンパウロ人」といった意味です。

日本で初めてカフェ文化を広めた銀座カフェーパウリスタ

しかしコーヒーを飲み慣れていない日本人にコーヒーを広めるのには、かなりの苦労があったようです。水野氏はあの早稲田大学を創設した大隈重信氏からアドバイスを受け、カフェの本場であるフランスのパリを視察して「コーヒーを飲む生活(ライフスタイル)」を日本に浸透させようとしました。奇抜な宣伝手段として、銀座の街を1メートル80cmもの大男がシルクハットに燕尾服で歩きながら道ゆく人々に試飲券を配ったりもしました。その試飲券にはこのようなコピーが書かれていたそうです「悪魔のごとく黒く、地獄のごとく熱く、恋のごとく甘い」と。

そういった努力と、銀座という立地も奏功し、コーヒーは知識人、文化人、ジャーナリストや慶応大学の学生たちに支持され、多い時は1日に4,000杯も飲まれるほど人気が出たようです。

「銀ブラ」の名の由来とは?

銀ブラとは「銀座でブラジルコーヒーを飲む」というスタイルをそう呼んだそうです(諸説あり)。その後、カフェーパウリスタは全国に店舗展開し、喫茶店文化の隆盛を誇りました。

戦後のカフェーパウリスタ

第二次大戦中は、社名(パウリスタ)が敵国語に当たるとして当局から日東珈琲株式会社に変更させられるなど苦難の時代でしたが、昭和22年(1947年)焙煎士であった長谷川主計(かずえ)氏が経営を引き継いで社長に就任し、 日本のコーヒー業界再興に尽力します。

現長谷川社長の挑戦

長谷川主計氏の孫である現社長の長谷川勝彦氏は、1999年お台場で開催していた「世界スペシャルティコーヒー会議」である人物と運命的な出会いをしました。その人物とはボリビア人のペトロ・ロドリゲス氏といいます。

ボリビアはコーヒーの生産量では当時ブラジルの241分の1程度しかない小さな市場でしたが、長谷川氏はボリビアの豆のサンプルをもらう時、ペトロ氏が豆を押し戴くように大事に手渡されたことが印象に残っているそうです。その後紆余曲折あって、長谷川氏はペトロ氏といっしょにボリビアコーヒーの発展に関与していくことになります。

スペシャルティコーヒーの定義とは?

コーヒー豆を収穫する時の問題点とは

長谷川氏がペトロ氏と、上質で美味しい珈琲豆を作るために、こだわっていることはいくつかありますが、一番重視していることは「収穫時に"完熟"している豆を使う」ということです。コーヒーの木の習性として熟し具合が一定でないという点があるそうです。同じ木でも熟していたり熟していない実が混在していることがあり、低コストで大量に豆を生産しようとすれば機械で一気に収穫しますが、そうするとどうしても豆の熟度がバラバラで豆の品質が一定でなくなってしまうという問題が発生します。ペトロ氏は手間や経費がかかってもあくまで完熟した豆にこだわり、コーヒー農家を教育支援したり、私財を投げ打って工場を建てるなどしてボリビアコーヒーの発展の為、全精力を傾けています。

ゲイシャという名のコーヒー豆

さて、いよいよ ゲイシャについてのお話です。ゲイシャとは日本語の芸者という意味ではないと言いましたが、ゲイシャとはアフリカのエチオピアのゲイシャ村で発見されたコーヒー豆の品種の名前です。2004年パナマのエスメラルダ農園で発見され、国際オークションで高値のついた最高級品質の豆です。この種をペトロさんはもらい受け、試行錯誤の末にボリビアでの生産に成功しました。

このゲイシャコーヒーを初めて飲んだ時、私は「!!!!!!!」と感じました。「言葉にできない・・・」正直今まで飲んだコーヒーの中で一番美味しく、普段飲んでいるものとは全然別のものでした。

私がこのゲイシャを知ったのは「阪急たびコト塾」という講座で、長谷川社長自らが日本のコーヒー文化の歴史、ご自身とコーヒーとの関わり、ボリビア人ペトロさんとの挑戦について1時間半にわたってお話いただいたのを聴いた時です。

IMG_1175 講座風景.JPG

カフェーパウリスタの長谷川勝彦社長。語りは熱く且つユーモアのセンスがおありで会場に笑いが起こっていました。

IMG_1179 長谷川社長.JPG

講座の最後、実際にゲイシャの試飲をさせてもらいました。試飲といえないくらいたっぷりの量のゲイシャを味わうことが出来ました。

IMG_1178 ゲイシャ試飲.JPG

この講座は好評につき追加設定されたそうです。(次回は6月18日(月)13:00~14:30開催)日本でカフェ文化を開花させたカフェーパウリスタの歴史と未来を長谷川社長ご本人の口から聴いてみてください。

阪急たびコト塾~奥深い珈琲の世界~の詳細と申込み(無料)はこちらから

カフェーパウリスタに興味を持った私は、銀座8丁目にあるお店にも行ってみました。

IMG_1344 外観.JPG

この場所には昭和45年から営業しているそうです。超一等地でありながら敷居は高くなく、お客さんはくつろいでコーヒーを楽しまれていました。お店は1階と2階があり、2階が禁煙席です(写真は2階席)

IMG_1336 内観.JPG

お店の一番人気は「森のコーヒー」(650円)。キレがありコク深く雑味少ない、バランスのよいコーヒーでした。

IMG_1340 カップ.JPG

「森のコーヒー」のこだわり

もちろん、ゲイシャコーヒーもお店で飲むことが出来ます。料金は1,000円と他と比べるとお安くはありませんが、ポットで提供されますので、実際には1.5杯分あり、逆にお買い得かもしれません。

過去~現在~未来と進化し続ける「銀座カフェーパウリスタ」

いかがでしたか?コーヒーの無かった日本に初めてカフェ文化を広めた歴史と物語、そして今も現役でカフェ文化を発信し、過去に縛られることなく未来に向かって常に進化し、新しい挑戦を続けている銀座カフェーパウリスタ。目が離せませんね。

カフェーパウリスタに関する更に詳しい情報はこちらからご覧ください

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シンジーノ

3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

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