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ペルーのバスの乗り方教えて!
現地の公共交通機関を使いこなせるようになると、旅の面白さは随分と違ってきます。
幾度か歩いた通りも、電車やバスの中から眺めるとまた新しい発見があるかもしれません。
鉄道網があまり発達していないペルーの場合、公共機関と言えばやはりバス。
日本のそれと遜色のないきれいなバスから、もう何十年走っているのか見当もつかないようなオンボロまで、
新旧さまざまなバスが人口およそ900万人を抱える首都リマを縦横無尽に走り回っています。
今回は、リマでのバスの乗り方についてご説明しましょう。
リマのバスは3種類。45~50人乗りの大型バス「ómnibus(オムニブス)」と、
24~28人乗りの「micro(ミクロ)」もしくは「coaster(コアステル)」。
そして、14人前後が乗れる「combi(コンビ)」と呼ばれる小型バスです。
ただしいずれも定員数など無視されているのが普通です。
ハビエルプラド通りやアンガモス通りなど、市内主要幹線道路にはバス停が設置されています。
バス停のない一般道の場合は、信号や街角で自由に乗り降りできますが、
逆を言えば、乗降する意思をしっかり示さないと素通りされてしまうことも。
バスを止める場合、手を挙げるか身体の前に差し出すかすれば大丈夫。降りる場合は「bajo(降りる)」と言いいます。
合わせて、「paradero(パラデロ/バス停)」、「esquina(エスキーナ/角)」、「semáforo(セマフォロ/信号)」、
「siguiente(シギエンテ/次の)」などの単語を覚えておくといいでしょう。
バスの正面には路線を示すアルファベットと数字が、車体側面には通過する主な道路名が表示されています。
このコアステルの場合、路線名は「NM36」、走行ルートは「C.T/SAN JUAN/ANGAMOS/AREQUIPA/TACNA/ALCAZAR」。
路線名が分かっていれば簡単ですが、初めての場合、目的地に最も近い道路名を確認して乗るしかありません。
バスに乗る前に、客引きをする「cobrador(コブラドール/車掌・もぎり)」に確認してから乗りましょう。
「アレキパ、クアドラ20(ベインテ)」のように、ブロックナンバーまで伝えると確実です。
このクリップボードを持った男性は、「datero(ダテロ)」と呼ばれる一種のタイムキーパー。
競合会社のバスが何分前にそのポイントを通過したかを、運転手やコブラドールに伝えるのが仕事です。
リマのバスは歩合制のため、運転手は一人でも多くの客を拾おうといつも必死。
そのため、ダテロからの報告を参考にスピードを調整するのです。
これが無謀運転や交通違反を引き起こす原因のひとつにもなっているのですが...仕方がありません。
ちなみにダテロの儲けは、1回当たりたったの20センティモス(約7円)。
誰が最初に思いついたのかは不明ですが、こういう隙間商売が成立するところがペルーの面白いところですね。
路線を熟知しているダテロに、目的のバスを尋ねるのも一つの手です。
バスに乗り込むと、コブラドールが運賃の徴収にまわってきます。
基本料金は1ソル。ただし距離によって少しずつ上がります。
明確な料金表はなく、コブラドールも乗客もお互いの「経験」に基づいてやり取りするため、時々揉めることも。
しかし、相手が外国人だからといって騙すような人は滅多にいません。
旅行者の皆さんは、コブラドールの言う通りに払うのが無難でしょうね。
またコブラドールに目的地を伝えておけば、到着を知らせてくれます。
でも中にはうっかりさんもいるので、心配な場合は周囲の人にも声をかけておくといいかもしれません。
ところで、車内で大切にしたいマナー「asiento reservado(優先座席)」について。
ペルーではお年寄りや体の不自由な人、妊婦、小さな子供を連れた人にバスの座席を譲ることが法律で義務付けられています。
こうした人々が乗車してくると、皆が何も言わずにさっと立ち上がるところは、ペルー人の美徳の一つ。
見ていてとても気持ちのいいものです。
赤く塗られた優先座席は運転席のすぐ後ろにあることが多く、窓際には「asiento reservado」と書かれています。
皆さんもお年寄りやお腹の大きな女性が乗ってきたら、どうか席を譲ってあげてくださいね。
ペルーのバスで面白いのは、さまざまな行商人が入れ代わり立ち代わり乗り込んでくること。
飲み物やアイスクリーム、菓子類だけでなく、文房具や歯ブラシ、アクセサリーなど
ありとあらゆる商品を1ソル(約36円)前後で販売しています。
チャランゴやサンポーニャを使った生演奏や、スピーカー持参で歌を披露する人、
自分の不幸な境遇を延々と訴えながら施しを求める人、ただひたすらに神様について語り続ける人など見ていて飽きません。
最後に、車内のスリや泥棒についても触れておきましょう。
残念ながら、ペルーではこうした窃盗犯は後を絶ちません。
日本にいる感覚で車内でスマートフォンなどに夢中になっていると、高い確率で狙われます。
荷物は膝の上に、もしくは身体の前にしっかりと抱え、常に警戒を。
窓際に座った場合は、車外から荷物をひったくられないよう窓を閉めるか、外から見えないように隠しましょう。
バスの後部座席付近も要注意。バスの発車寸前に荷物をひったくって後部のドアから逃げるタイプの泥棒もいます。
ほんの僅かな気のゆるみが、こうした被害の原因を作ってしまうのです。
時間がかかる上に運転が荒く、スリの危険性もあると聞けば、
旅行者がリスクを冒してまでバスを利用する価値はないと思うかもしれません。
しかし、お年寄りに笑顔で座席を譲ったり、「重そうだから」と代わりに荷物を膝の上に置いてくれたり、
ペルー人のいろんな優しさに触れられるのもバスならではの魅力です。
手荷物さえきちんと管理すれば、およその危険は排除できるものばかり。
人間ウォッチングにはもってこい、リマのバスのお話でした。
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原田慶子
- ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。