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スペインのクリスマスに欠かせない東方の三賢王って?
日本には馴染みがないけれど、スペインのクリスマスには欠かせない存在。それが東方の三賢王(三博士、三賢人、三賢者とも)です。前回の記事で書いたベレンにもたびたび姿を現します。
<キリストの礼拝を捧げに来た三賢王がいる実物大のベレン>
三賢王とされるメルチョール、ガスパール、バルタサールは遠い東の地の占星術師で、12月24日の夜にひときわ輝く星を見つけ、"ユダヤ人の王(救世主)"の生誕を知ったとか。
早速贈り物を持って拝みに行くことを決めたものの、場所がわからなかったためにエルサレムのヘロデ王(在位:紀元前37年~紀元前4年)に「ユダヤ王としてお生まれになった方はどちらにいらっしゃいますか?」と尋ねに行きました。
キリストの誕生に脅威を覚えた王は動揺し、識者たちを集めます。そして、ベツレヘムで救世主の誕生が予言されていたことを知り、三賢王にそう伝えるとともに自分も拝みに行きたいので必ず場所を知らせるようにと念押ししました。
<ジオラマ式ベレンのワンシーン、ベツレヘムを目指して進む三賢王>
キリスト誕生の際に輝いた星が再び現れて3人を導き、1月6日の明け方に、生まれて間もないイエス・キリストのもとへ到着します。
王達は幼子を拝み、メルチョールは王権を象徴する黄金、ガスパールは受難の死を象徴する没薬、バルタサールは神性の象徴である乳香を贈り物として捧げました(象徴の解釈には諸説あり)。
三賢王は「ヘロデ王のもとへ帰るな」という夢のお告げを聞いたので、行きとは異なる道を通り東方へ帰って行ったそうです。それを知ったヘロデ王は怒り、ベツレヘムとその周辺の2歳以下の男児を全員殺すようにとのお触れを出しました。
夢の中で「ヘロデがキリストを殺そうとしている」という天使のお告げを聞いた父ヨセフは、妻マリアと幼子を連れてエジプトへ逃げます。
これでキリストの命が助かったわけです。三賢王の礼拝やエジプト逃避のシーンは、宗教画でもよく描かれていますね。
<幼稚園のクリスマス会で三賢王の役をする園児たち>
<ジオラマ式のベレンにあったエジプト逃避のシーン>
と、まあ、これが三賢王のお話なのです。
キリストに贈り物を捧げたことから、スペインでは子供にクリスマスプレゼントを届けてくれるのはこの三賢王(最近はサンタクロースに押され気味ですが....)。
子供たちは公現祭(※三賢王のキリスト礼拝を、異邦人に対する主の顕現として祝うカトリック教会の日で、スペイン全国的に祝日)前夜の1月5日までに三賢王に「いい子にしていたので○○をください」という手紙を書きます。
商業施設などには特設ポストが出、王たちの使者が手紙を回収に幼稚園や小学校へ行くことも。そして1月6日の朝起きるとプレゼントが届いているというわけです。
<子供たちが三賢王の使者に手紙を渡す大掛かりなイベント>
ラクダに乗った三賢王は1月5日の夜に到着する設定なので、この夜はスペイン各地で到着を歓迎するパレードが開かれます。
パレードではお菓子やちょっとしたおもちゃが子供たちに向かって投げられるので、子供たちはこの日が楽しみで仕方ありません。スーパーの袋を持って最前列に陣取る子供の姿には微笑ましいものがあります。
<パレードに参加するためにやって来たガスパール王>
このパレードのある日と翌6日に食べるお菓子がロスコン・デ・レジェス。最近日本では認知度が上がっているフランスのガレット・デ・ロアのスペインバージョンです。
ドーナツ型の甘いパンで、たいていは横半分に切って中に生クリームやカスタードクリーム、カベジョ・デ・アンヘル(カボチャの一種で作るジャム)などを入れていただきます。表面は王冠の宝石を模した砂糖漬けのフルーツが飾られており、紙でできた王冠がのっています。
そして、中にはソラマメと陶器の小さな人形が。ソラマメが当たってしまった人はロスコン代金を負担し、人形が当たった人はその日1日は王冠をかぶって王様になる、というのがスペインの伝統です。ロスコン・デ・レジェスはこの時期にしか食べられないスイーツなので、機会があればぜひお試しくださいね。
東方の三賢王がスペインのクリスマスにとってなくてはならない存在だということが、お分かりいただけましたでしょうか? スペインでは公現祭の1月6日がクリスマスの最終日。
途中に新年を挟み、なんと2週間も続くイベントなのですよ。
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田川敬子(Keiko Tagawa)
- 1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。