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道路上のフォートリットVortritt(優先)あれこれ

記事投稿日:2017/05/23最終更新日:2018/02/22

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私の経験では、スイスの自動車運転者は道路上で常に「自分(もしくは相手)が優先か非優先か」を強く意識していて、その程度は日本人が想像する以上のものだ。スイスの交通安全は、譲り合いの精神というよりは、交通ルールで定められた優先・非優先の規則を車両運転者(と歩行者)が厳守することで保たれていると言っても過言ではない。そこで今回は、スイスで車や自転車を運転する際に重要なキーポイントとなる、様々な「優先」のルールについて書いてみたい。

SW_20170502_01.jpg(「優先道路との交差点では目視確認を」と呼びかける広告ポスター)

まずは大前提。警察車両・消防車・救急車は、あらゆる場合においてその通行が最優先される。その次が、公共交通機関に属する車両(バス、路面電車など)と、信号なしの横断歩道を渡っている(もしくは渡ろうとしている)歩行者。信号がある交差点では信号に従って進行するが、何等かの事情で警察官などが手信号で誘導している場合は、信号機の表示ではなく手信号の誘導が優先。これらは日本でも同じ事情なので、迷うことはないだろう。

SW_20170502_02.jpg(手信号で通行を規制している自警団の方。自転車ロードレースの大会にて)

その次に重要なのが、日本は左側通行なので左方優先だが、スイスを含む右側通行の国では「右方優先」ということ。つまり、特別な標識・表示や信号がない交差点では、自分から見て右側から来る車両に優先権がある。

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「車両」には、普通の自家用車やバイクはもちろん、自転車、トラクター、馬車、馬に乗った人、大型の動物(例えば牛)を連れて道路上を通行する人、そして非原動機付きの車両(例えば荷車)を押して歩く人も含まれる。つまり、自分が自転車に乗っていて交差点に差し掛かり、牛を連れた農夫が右側から同時に交差点に進入しようとしている場合は、牛と農夫が優先だ。

これはスイスの独語圏ではレヒツフォートリットRechtsvortritt(Rechts=右側、Vortritt=優先)と呼ばれる交通ルール。スイスではこの右方優先の原則が徹底していて、「どっちが優先かということは法的にはあるかもしれないけど、お互いに徐行して譲り合うのがいいんじゃない」という様な日本的な考え方は基本的には存在しない。

上のルールは特別な標識・表示や信号がない道路の交差点での場合で、優先道路と非優先道路が交差する場合はもちろん事情が異なる。

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交差点の手前に上の写真のような赤枠逆三角形の標識があったら、これは交差する前方の道路が優先道路であることを意味する。この写真の場合だと、自分は非優先道路から優先道路に入ろうとしているので、自分には前出の「右方優先」は適用されない。道路上の表示がこの写真のような白い逆三角形が並んだラインの場合は左右の安全確認をするだけでよく、必要がない限り徐行や一時停止はしなくてよい。これが下の写真にあるような赤字に「STOP」標識&路上に白線と「STOP」表示の場合は、前方に車両の交通があるかないかに関わらず、白線の手前で必ず一時停止をしなければならない。

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どの道路が優先道路か、もしくは自分が優先道路を走っているのかどうかは、各所に見られる標識や表示で確認できる。例えば、いわゆるハウプトシュトラーセHauptstrasse(「主道路」とでも訳そうか)と呼ばれる大きな道路には随所に下の写真に見られる標識があり、この標識がある道路はイコールで優先道路だ。

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主道路の適用が何らかの理由で終了する場合は、このような標識で表示がある。

SW_20170502_07.jpg(「75メートル先で終了」の但し書き付き)

クライセルKreisel(環状交差点)は、すべての場合においてクライセル内が優先道路。進入口にはクライセルの標識と一緒に赤枠逆三角形の標識(前方の道路が優先道路である意)と道路上の表示が必ずある。

SW_20170502_08.jpg

道路上の表示は白い逆三角形が並んだラインなので、左側からの車両(クライセル内は一方通行)の安全確認をするだけでよく、必要がない限り徐行や一時停止はしなくてよい。

では、これを踏まえて、交差点通行における優先権の順番について少し練習。

ケース1:下の写真でA(自動車)もB(自転車)もそれぞれ直進したい場合、交差点進入の優先順位は?

SW_20170502_09.jpg

答え:特別な標識・表示・信号のない交差点での典型的なケース。AはBの右側からやって来るので、右方優先のルールに則り、優先順位はA→B。Aが直進ではなく右左折したい場合も同様。

ケース2:下の写真の場合、通行の優先順位は?

SW_20170502_10.jpg

答え:信号のない横断歩道を渡ろうとしている歩行者(D)がいるので、まずDが最優先。Dの通過を待って自動車Cが右折。自動車Bは自転車(A)から見て右側から交差点に入ろうとしているが、Bには一時停止義務がある(前方が優先道路)ので、ここでは右方優先は適用されない。BはAが左折した後に左右の安全確認をして初めて交差点に進入できる。故に、順位はD→C→A→B。

ケース3:下の図の場合、通行の優先順位は?

SW_20170502_11.jpg

答え:自動車白と自動車青は優先道路を走っていて、自転車と自動車赤はどちらも非優先道路から優先道路に進入するので、まず自動車白と自動車青に優先権がある。自動車白と自動車青の間には右方優先ルールが適用されるので、白が直進した後に青が左折。自転車と自動車赤の間にも右方優先ルールが適用されるので、自動車赤は自転車の通過を待って交差点に入る。故に、順位は自動車白→自動車青→自転車→自動車赤。

...うーん、難しい!

最後に、日本では見られない「対面通行における優先表示」の標識をご紹介。

SW_20170502_12.jpg

この標識は、道路の幅員が特に狭い部分の両側に設けられている。この標識がある場所に2台の車両が双方から同時に進入しようとした場合、四角い青地の標識がある方から来る車両に優先権がある(既に対向車が幅員の狭い部分に進入している場合は、もちろんその通過を待たなければならないが)。丸い赤枠白地の標識は、「前方から来る車両に優先権有り」という意味だ。こちらは実例。

SW_20170502_13.jpg

SW_20170502_14.jpg

実は私、スイスに10年以上住んでいるのにもかかわらず、比較的最近までこの標識が正確に何を意味するのかをはっきりとは知らなかった(対面通行の際にどちらかが優先だということを指す標識だということは知っていたけれど!)ので、この記事をお読みの方にはそのようなことがないよう、ここでご紹介させていただきます。

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Asami AMMANN-HONDA
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