オーストリアの「女帝」マリア・テレジアが愛した離宮「シュロス・ホーフ宮殿」

ハプスブルク家の離宮といえば、シェーンブルン宮殿やバート・イシュルのカイザーヴィラなどが有名ですが、英雄オイゲン公と「女帝」マリア・テレジアが愛した離宮が、ウィーンから1時間の距離にあります。

この「シュロス・ホーフ宮殿」は、広々とした敷地と素晴らしい庭園の中に建ち、ウィーンからの人気の日帰り旅行先です。

今回は、そんな見どころたくさんの「シュロス・ホーフ宮殿」の数奇な歴史をご紹介します。

シュロス・ホーフの歴史

17世紀にはこの場所にあった1階建ての建築物を、オーストリアの英雄で、数々の武勲を立てたオイゲン公が買い取ったのが、この宮殿の栄華の始まりです。オイゲン公は1725年当時62歳になっており、戦いに明け暮れた人生の余生を、狩り三昧で過ごすための夏の離宮として、大きな改修工事を行いました。

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<シュロス・ホーフ宮殿入り口>

既にオイゲン公のためにベルヴェデーレ宮殿を完成させていた、ヨハン・ルーカス・フォン・ヒルデブラント(Johann Lucas von Hildebrandt)とそのチームが、設計や美術的な内装を担当しました。

宮殿は大きく改築され、左右両翼が増築された他、内装も豪華なバロック様式に改められました。オイゲン公の居室の他、狩りに訪れた賓客を泊めるための寝室が13室あり、広間や礼拝堂、広大で美しい庭園も作られました。また敷地内には農園もあり、自給自足の生活ができるようになっていました。


<シュロス・ホーフの庭園>

オイゲン公が亡くなると、1755年にハプスブルク家の「女帝」マリア・テレジアが買い取り、ハプスブルク家の離宮となります。

マリア・テレジアとその家族はこの離宮を愛し、毎年数週間をここで過ごした他、最愛の娘マリー・クリスティーヌは、この宮殿の礼拝堂で結婚式を挙げました。この時代には再び大改修が行われ、2階建てだった建物は3階建てとなり、家具も新しく運び込まれました。

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<シュロス・ホーフ宮殿の現在の姿>

しかし残念ながら、マリア・テレジアの時代以降100年間、この宮殿は使用されることはありませんでした。1898年になって皇帝フランツ・ヨーゼフがこの場所を軍隊の乗馬・運転学校として使用するようになってからは、家具は運び出され、継続的に軍隊の訓練場として使われるようになりました。

ハプスブルク家の崩壊と共に、この宮殿はオーストリア軍の所有として引き続き使用されました。その後オーストリアを併合したナチス・ドイツ、続いて分割占領したソビエト赤軍も駐屯しています。

その後荒廃の一途を辿っていたシュロス・ホーフ宮殿ですが、2002年から巨額の資金を投じた大規模な改修工事が始まります。運び出された家具類が運び込まれ、現在では、250年前の美しく豪華絢爛な姿を取り戻しています。

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<バロックの調和が美しい、庭園と宮殿>

シュロス・ホーフの見どころ

シェーンブルン宮殿に匹敵する規模とも言われるシュロス・ホーフの敷地には、様々な見どころがあります。メインの建物である宮殿の他に、美しい庭園や農園、乗馬学校時代に作られた厩舎などの歴史的建造物に囲まれています。

メインの建物である宮殿は、内部がオイゲン公とマリア・テレジアの博物館になっています。当時の内装や調度品、生活空間、狩猟の獲物を食す晩餐会の様子などが展示してあります。一年に建った数週間過ごすだけの離宮ということを考えると、豪華さに驚かされます。

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<マリア・テレジア時代の居室空間>

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<当時の食卓の様子と衣装>

特に印象的なのが、マリア・テレジアの娘が結婚式を挙げた礼拝堂と、そのそばにある大広間です。ここでは現在でも結婚式会場として貸し出されていて、マリア・テレジアの時代さながらに式を執り行うことができます。

また、1階部分には見事なバロック様式の部屋Sala Terrenaがあり、庭園へとつながっています。修復予算の関係で、当時金箔が貼ってあった部分はグレーで塗られていますが、その美しさにはため息が出ます。

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<シュロス・ホーフ宮殿のSala Terrena>

このバロック庭園は、オイゲン公がベルヴェデーレ宮殿を作ったチームに作らせた、非常に緻密で込み入ったデザインです。テラスからははるか遠くまで見通すことができ、目と鼻の先の国境の向こうにあるスロバキアの町並みも臨むことができます。

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<美しい庭園は、このテラスの下のまだ6種類も広がっています>

また、敷地内の農園があった場所には、現在はレストランと広大な動物ふれあいエリアが作られています。ウサギや山羊などの小動物と触れ合える他、羊や牛、アルパカなどに餌をやることもでき、家族連れに大人気です。

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<ヤギやウサギと触れ合える農園エリア>

●まとめ

欧州最高峰の職人たちの手で豪華に仕上げられた後、主を失って見捨てられたり、軍人に荒い扱いを受けたり、鉄のカーテン間近という立地から、冷戦の時代には再び見捨てられたりと、権力に奔走されてきたシュロス・ホーフ宮殿。

近年改修も終わり、シュロス・ホーフは再び、オーストリア人に愛される週末の気軽な外出先になりました。

敷地内には美味しいレストランもあり、一日ゆっくり楽しめるようになっていますので、ぜひウィーンからの日帰り旅行に、訪れてみてくださいね。

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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