公開日:
最終更新日:
ウィーンの秋、ぶどう畑とワイン産地のハイキング
日本より少し早く、10月後半が秋真っ盛りのウィーン。ワインの仕込みが佳境に入り、ぶどうジュースからワインに発酵していく途中の飲み物「シュトルム」が美味しい季節になりました。
この時期ウィーンでは、秋のぶどう畑の散策が大人気。少し田舎に行けば、ハイキングコース沿いに広大なぶどう畑が広がっています。
<一面に広がるぶどう畑も色づいています>
今回は、そんなウィーンの秋の醍醐味をご紹介します。
ウィーンのワイン文化と限定ドリンク
オーストリアワインは日本ではあまり知られていませんが、国内ではビールと同じくらいの人気を誇る、国民的飲み物です。ウィーン市にはワイン畑が600ヘクタール以上もあり、美味しいワイン産地に囲まれています。
そんなオーストリアでは、9月後半から10月のワイン仕込みの時期にだけ飲める「シュトルム」という飲み物があります。ワイン造りのために絞ったぶどうジュースを「モスト」と呼び、このモストが発酵してワインになる途中の濁った飲み物が「シュトルム」です。
<シュトルム>
味は、甘く濃い発砲ぶどうジュースのようでとても飲みやすく、特に女性に人気です。発酵が始まっているので、アルコールを含みますが、発酵段階はモノによって異なりますので、味、発泡具合なども少しずつ違います。まさに生きている成長中のワインですね。
ウィーンのレストランでもこの時期には、シュトルムを飲むことができますし、スーパーでボトルで売っている場合もあります。秋のワイン畑を散歩していると、ワイン農家が畑の片隅で飲ませてくれることもありますよ。
秋のワイン産地を歩く
ウィーンにはたくさん素晴らしいワイン畑を楽しむハイキングコースがあります。ワイン祭りで有名なシュタマースドルフもその一つです。とても天気がよく、葉っぱがカラフルな週末に、このあたりを散歩してみました。ぶどうの葉っぱは、赤、黃、緑と様々な表情を見せ、抜けるような青空と合わせてため息の出る美しさ。
<カラフルなぶどうぶどう畑を見られるのはこの時期だけ>
ほとんどのぶどう畑で収穫は終わっていましたが、こんな風にぶどうが一部残っているものもありました。
<収穫後少しだけ残されたぶどう>
また、人出が多い日などは、「ホイリゲエクスプレス」という、ホイリゲ(ワイン居酒屋)を巡る観光列車型のバスも営業していて、気軽にワイン畑やワイン居酒屋巡りを楽しむことができます。
<ホイリゲエクスプレス>
ワインセラーー見学
シュタマースドルフは、オーストリアのワイン造りに特有の「ケラーガッセ」でも有名で、その地方独特の風景は、ワイン造りの歴史と文化を感じさせます。このケラーガッセのケラー(ワインセラー)は、通りに面した半地下に作られていることが多く、低い位置に扉がある小さい建物が並んでいるのが特徴です。
<ケラーの入り口>
この建物の下には、土を掘って作った地下室が続いています。通り沿いの小さい扉を開けると、急な階段状のはしごがあり、半地下に降りることができます。そこから更に下った奥に、土壌がむき出しの広めの地下室があり、ここがワインセラーです。
<典型的なケラーで、できたてシュトルムを販売。テーブルの後ろのケラーに下りていく人の姿が見える>
ワインセラーにはLössという種類の土壌が適していて、この土層がウィーンからチェコ方面に広がっています。地下室を掘ったワインセラーが並ぶ通りは、この地方に特徴的な建築様式となっていて、歴史的建造物として保護されています。
<ケラーが立ち並ぶ通り、ケラーガッセ>
内部はぶどう搾りや仕込みの他、樽やビン詰にされたワインが貯蔵され、ワインセラーとして使用されています。一歩中に入ると、外とは異なる湿気と温度です。地下室の天井には空気穴があり、内部を適切な環境に保っています。
ケラー内部のボトルには、白いカビがびっしり生えていることがありますが、これは内部の温度と湿度が適切に保たれている指標となるため、Kellerkatze(ケラーの猫)と言う愛称で親しまれています。
<ハプスブルク時代後期から使われているケラー内部。ボトルや樽にはカビがびっしりと生えているが、現在でも現役>
こんな風に、オーストリアの歴史あるワイン文化を、美しい秋の自然とともに楽しめてしまう、ぶどう畑の散策。地元の人しか知らない隠れたルートから、ウィーン市がイベントとして開催するワインウォークまで、様々なワインとハイキングを組み合わせた楽しみ方がありますので、ぜひお気に入りを見つけてみてくださいね。
「オーストリア」に興味わいてきた?あなたにおすすめの『オーストリア』旅行はこちら
※外部サイトに遷移しますRelated postこの記事に関連する記事
Rankingオーストリア記事ランキング
-
ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。