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フィレンツェには芸術だらけ!偉大な芸術家たちのドラマが眠る街を散策
※編集部註:2020年1月、加筆修正をいたしました。写真は初出時(2015年6月)のものです。
フィレンツェ観光の見どころといえば、美術館をはじめとした数々の芸術作品を鑑賞できること。美の古都フィレンツェでは、優れた建築や芸術作品などをあちこちで見かけることができます。
現在も街のシンボルとなっているオブジェや、観光地として人気の建築も、歴史を紐解けば驚くようなお話が聞こえてくるはず。フィレンツェへ旅行したときは、美術館を訪ねるように街並みも散策してみませんか?
※一部写真はイメージです。クリテイティブ・コモンズ・ライセンスに基づいて掲載しています。
参考:クリエイティブ・コモンズ公式サイト(外部サイトに遷移します)
目次
- フィレンツェへ来たら見ておくべき、芸術的な名所をご案内!
- 名所その1. サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラ
- 名所その2. ポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋)
- 名所その3. シニョーリア広場の彫像群
- 名所その4. ウフィツィ美術館
- 名所その5. アカデミア美術館
フィレンツェへ来たら見ておくべき、芸術的な名所をご案内!
<写真はイメージです。Photo by Bhavishya Goel[Piazzale Michelangelo] CC BY 2.0>
フィレンツェは「花の都」や「屋根の無い美術館」など数々の呼び名を持つ、いわずと知れた美の古都です。こぢんまりとした規模でありながら、優れた建築物、芸術作品の密度は他に類を見ません。今回は輝かしい芸術の歴史に彩られた都フィレンツェを、興味深いエピソードと共に歩いてみることにしましょう。
そもそも、ルネサンスとは?
フィレンツェを語るとき、ルネサンスという言葉は避けて通れませんが、そもそもルネサンスとは一体何のことなのでしょう? ルネサンスとはフランス語で「再生」を意味しますが、これは中世の教会中心の文化であったゴシックに代わり、人間性を重視するギリシア・ローマ文化の「復興」を意識した、14世紀から16世紀にかけて流行した様式のことを示します。
ルネサンス建築はそれ以前に流行していた装飾的なゴシック様式に反発するように、より合理的な構造や、明快さが特徴的。当時のイタリア人にはルネサンスのすっきりとした様式が受け、瞬く間にイタリア全土、そしてヨーロッパ中に大流行しました。
名所その1. サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラ
<写真はイメージです。Photo by Gianni Crestani on Pixabay[CC 0]>
世界で初めて建築におけるこのルネサンス様式を確立したのが、フィレンツェを代表する建築家フィリッポ・ブルネレスキです。彼の初仕事が、今やフィレンツェを訪れる者が必ず立ち寄るサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のドーム建築。まさに、この一つのドーム建築が引き金となり、ルネサンスの花は開きヨーロッパ中を風靡していったのです。
1296年に始まった大聖堂建築の一番の山場は、この丸いドーム(クーポラ)の建築でした。当時、石でドームを造るのはとても難しく、足場を取り払った途端にドームが崩壊し作業員が死亡するという事件が多発していたのです。特にこの大聖堂の巨大クーポラの設計は直径42メートル、高さ100メートルという途方も無い大きさ。大工組合はこれを支える土台でさえ造るのは不可能だとして、着工を拒否してしまいました。
困り果てた政府は建築案を公募することに。そこに彗星のごとく現れたのがブルネレスキでした。古代ギリシャやローマの建築を研究していた彼は、それにヒントを得た画期的な案を出し、木造の模型まで作って組合を納得させたそうです。
引用:Wikimediaより。
クーポラの天井には、ジョルジュ・ヴァザーリとフェデリコ・ツッカリによる[最後の審判]が描かれています。
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基本情報
- 名前:サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオーモ) / Cathedral of Santa Maria dei Fiore(Duomo)
- 住所:Via della Canonica, 1 Piazza del Duomo, 50122 Florence, Italy
- 公式サイト:http://www.ilgrandemuseodelduomo.it/#_=_
※ガイド付きツアー料金、閉館時間などの詳細は、公式サイトをご確認ください。
名所その2. ポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋)
<にぎやかな夕暮れどきも、静かな早朝もおすすめです。撮影:藤井麻未>
アルノ川にかかるのは、フィレンツェの一大名所、ポンテ・ヴェッキオ。橋の上には隙間なくお店がひしめいています。今では金細工店や宝飾品店が軒を連ねていますが、当時は革のなめし屋や肉屋が並び異臭を放っていたのだとか。
ナポリからフィレンツェの名門メディチ家にお輿入れしてきたエネオノーラ妃は、この橋の上を通るウフィツィ宮殿を繋ぐ回廊に異臭が充満するのを嫌い、貴金属店だけに出店を許可したといいます。
当時の庶民たちはこのエネオノーラ妃の行為を皮肉って、貴金属をジャラジャラと身につけている女性のことを「ポンテ・ヴェッキオみたい!」と表現したという説も。フィレンツェ最古の"奇跡の橋"には、歴史の中の日常を表すエピソードも詰まっています。
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基本情報
- 名前:ポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋、Ponte Vecchio)
- 住所:Ponte Vecchio, 50125 Firenze FI,
名所その3. シニョーリア広場の彫像群
<ジャンボローニャ作「サビーネ(サビニの女たち)の略奪」。撮影:藤井麻未>
シニョーリア広場には今にも動き出しそうな躍動感溢れる彫像がいくつもあり、まるで野外博物館のよう。こちらの彫像は、なかなかに恐ろしいエピソードをモチーフにしています。
ローマ建国当時、寄せ集めの独身男たちだけだったローマは、女性がおらず少子化に悩んでいました。そこで、ローマは近郊のサビーニ人を祭りへ招待するという名目で誘き寄せ、女性たちを強奪してしまったのです。
屈強なローマの男に今まさに略奪されんとするサビーネ女性の絶望的な表情、慌てふためくその父親の様子、そして躍動感のある筋肉の動きは、冷たい大理石で出来ているとはとても思えない迫力に満ちています。彫刻には必ず正面があるという原則を見事に打ち破った、360度鑑賞に耐えうる名作です。
<チェッリーニ作「メデューサの首を持つペルセウス」。撮影:藤井麻未>
直接目を見ると石にされてしまうというメデューサを討つために、後ろ向きで近づき盾に写ったメデューサの姿を狙って、見事首を落としたというペルセウス。まさに首を切り落とした直後であり、その顔はメデューサの首を直視していません。
驚くべき臨場感をもったこの作品は、さすが金工の天才と言われたチェッリーニによるもの。複雑極まりないこのブロンズ像を、彼は一気に鋳造して人々を驚愕させたといいます。
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名所その4. ウフィツィ美術館
<写真はイメージです。Photo by Pietro Zanarini[Botticelli: "Nascita di Venere"] CC BY 2.0>
ルネサンス、そしてフィレンツェを語るには街の大パトロン、メディチ家の存在を欠かすことはできません。幼いミケランジェロを見出し、ラファエロやブルネレスキの後ろ盾となり、ルネサンスを支えるあらゆる芸術家の援助をしたのが、薬屋出身のメディチ家なのです。
そんな彼らの一大コレクションが収蔵されているのが、ウフィツィ美術館。目も眩むような名作の数々を生で見ることができます。
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基本情報
- 名前:ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)
- 住所:Piazzale degli Uffizi, 6, 50122 Firenze
- 公式サイト:https://www.uffizi.it/
名所その5. アカデミア美術館
<ミケランジェロ作「ダビデ像」。撮影:藤井麻未>
あまりに有名なこの像は、ミケランジェロが26歳の時の作品。パンフレットや写真で目にする機会が多くありますが、やはり実物は圧巻です。溢れる生気が作品から感じられ、見る者を圧倒します。
<ミケランジェロ作「パレストリーナのピエタ像」。撮影:藤井麻未>
生涯に4体のピエタ像を彫ったミケランジェロの、晩年の作品がこちら。亡きキリストを抱き、哀しみに暮れる聖母の姿を描いたものです。
ダビデ像が生気漲る躍動感に満ちているのに対し、こちらは未完成な印象を感じてしまいます。しかし、どことなく頼りなく見えるからこそ、聖母の哀しみが余すところなく表現されているようにも感じられるのが、この作品の魅力ともいえます。
青年期のミケランジェロと老齢のミケランジェロ、両時期の作品を見比べてみると、新鮮な鑑賞体験ができることでしょう。
フィレンツェを歩くと、その古い町並みに息づく芸術家たちの魂を感じずにはいられません。感性にまかせてフィレンツェを巡れば、生涯を芸術に捧げた彼らの様々なドラマが、この街に沁みついていることが分かるはずです。
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