スイスの高速道路料金の払い方

スイス国内の高速道路は、基本的にイコールで有料道路だ。しかしスイスの高速道路には料金所やゲートがない、と言うと、ちょっとびっくりされるかもしれない。ヨーロッパでもイタリアやフランスは日本と同じ「走行区間ごとの都度課金」システムをとっているが、スイスをはじめオーストリアやチェコなどでは、走行区間や距離に関係ない「一括前払い」方式を採用しているからだ。

SW_20150102_01.jpg(スイス東部を国境沿いに走るA13高速道路にて。正面に見える雪山は、「五湖巡りハイキング」の記事でご紹介したピッツォル山。)

スイスの高速道路料金前払いチケットは、ヴィニエッテVignetteと呼ばれている。ヴィニエッテは、国境の税関をはじめ街中の郵便局やガソリンスタンドなど、様々な場所で購入することができる。ヴィニエッテは特殊なシール状になっていて、これを車のフロントガラスの任意の場所に内側から貼り付ける決まりだ。

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写真は自転車ロードレースのツール・ド・スイスで見かけた、FDJチーム(フランス)のチームカー。フロントガラスの中央・バックミラーの裏側にヴィニエッテが貼られている。

ヴィニエッテの値段は1枚40スイスフラン(自家用車の場合)。物価が基本的に高いスイスの中では、かなり良心的な値段設定だと言える(2年前にこれを100スイスフランに値上げするかどうかの是非を問う国民投票があったが、否決された)。

オーストリアでは購入日から10日間・2か月間などの短期間ヴィニエッテも販売されているが、スイスでは1年間有効(厳密には最大1年2ヶ月)の1種類のみ。そしてこの1年間というのが「年度区切り」の有効期間で、購入日から1年間という訳ではないというのも特徴だ。

ヴィニエッテは毎年12月1日に次年度のものが販売開始・即日使用可能になり、これがその翌年の1月末まで有効。つまり、2015年度のヴィニエッテは、2014年12月1日から2016年1月31日まで有効ということだ。11月末まではその年度のヴィニエッテしか売っていないので、例えば何等かの事情(外国からの旅行者など)で11月30日にヴィニエッテを新規購入する場合、同じ金額40スイスフランを払わなければいけないのに、有効期間はたったの2ヶ月間ということになる。

ヴィニエッテは毎年違う色のものが販売される。2015年度のヴィニエッテは、メタリックイエロー地に紫色の年度数字「15」が入っている。もちろん単なるカラーシールではなく、偽造を防ぐための特殊加工が何重にも施されている。

SW_20150102_03.jpg(画像は2011年度のイメージ)

ヴィニエッテの購入は義務でも何でもないので、高速道路を利用しない人は購入する必要は全くない。しかしヴィニエッテ無しで高速道路を走行してコントロールに引っかかった場合、結構な金額の罰金が科せられてしまう。また、ヴィニエッテを偽造したりすると、高額の罰金や禁固刑が科せられる可能性もある。「たったの」40スイスフランをケチる代償は大きいので、スイスで車を運転される場合にはヴィニエッテの購入・貼付を強くお勧めしたい。

このヴィニエッテがあればスイス国内の有料道路はフリーパスで走行できるのだが、例外が2か所だけある。これが、スイス東部のプント・ラ・ドロッサPunt la Drossa(グラウビュンデン州)からイタリアのリヴィーニョLivignoに通じるムント・ラ・シェラMunt-la-Scheraトンネルと、スイス南西部のマルティニMartigny(ヴァリス州)からイタリアのアオスタAostaに通じるグローサー・ザンクト・ベルナルドGrosser-Sankt-Bernhardトンネル。これらのトンネルを通ってイタリアに行く場合(又は逆)は、スイスのヴィニエッテがあっても通行料金を払わなければならないので注意したい。

ちなみにスイスの道路標示は、高速道路が緑地に白抜き文字で、一般道が青地に白抜き文字。日本と同じなので、感覚的にパッと分かりやすいでしょう!

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Asami AMMANN-HONDA

スイス東部トゥールガウ州の農村在住。元書店員、現在は兼業主婦(介護補助士&日本語教師&日独英通訳)。趣味はスポーツ・園芸・料理、専門は音響映像技術。

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